シニアヨガと気分の落ち込み|高齢期のうつ症状はどう変わるか、試験を読む

高齢期の気分の落ち込みに、ヨガは何をもたらすのか。地域在住者の研究、週2回の施設の椅子ヨガ、半年続けた試験で報告されたうつ症状の変化を紹介する。座って参加する選択肢や呼吸・休息を含む練習、治療との関係、受診を優先したい状態、立川で教室を選ぶ際の注意が分かる。

朝、出かける用事はあるのに、着替えるところで手が止まる。体を動かすことが、こんな日の気分にも働きかけるのか。その問いに対して、高齢者を対象としたヨガ研究は、うつ症状が軽くなる方向の結果を示している。地域で暮らす高齢者の試験を集めた解析でも、施設で行ったヨガの試験でも、気分を評価する点数に改善がみられた。[3][8]

注目したいのは、参加しやすい形でも気分の変化が調べられている点だ。施設の椅子ヨガでは、座って参加できる活動のあとに、落ち込みや否定的な感情の改善が報告されている。[7] 椅子に座る方法も、気分のために体を動かす入口になる。

この記事は、うつ症状の変化と、その活動を生活に置く方法に焦点を当てる。不安やストレスは本特集の〈シニアヨガで不安とストレスは軽くなるか 緊張をほどく研究とホルモンの話〉、眠りは睡眠の記事に譲る。ここで考えるのは「元気を出そう」という掛け声ではなく、気分の重さに対して、実際の試験で何が変わったかである。

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地域で暮らす高齢者にも、気分の改善が見える

ヨガそのものを調べた研究から入ろう。Koらの系統的レビュー・メタ分析は、地域で暮らす60歳以上を対象としたランダム化比較試験を集め、15研究を検討している。ランダム化比較試験とは、参加者を無作為に群へ分けて介入の違いを調べる研究だ。解析条件を確かめる感度分析のあと、うつ症状には改善方向の標準化平均差0.50、95%信頼区間0.09〜0.91が示された。[3]

このレビューでは、うつ症状の解析で研究間のばらつきを示すI2が0%だった。[3] 改善方向の結果がまとまっていた点は、気分の変化を考える手掛かりになる。一方、歩行やほかの心理的な評価項目は、まとめて解析するためのデータが不足していた。うつ症状の点数で得られた結果と、心理面全体の証拠の広さは分けて読む。身体面ではバランス、柔軟性、筋力にも改善が報告され、詳しくは本特集の〈シニアヨガで下肢筋力は上がるか、椅子から立ち上がる力を論文で確かめる〉で扱う。[3]

気分を扱う活動には、明るく振る舞うことを求める印象がつきまとう。しかし、研究で評価されているのは、うつ症状の尺度の変化だ。[3] 落ち込んだまま参加することも、活動の入口になりうる。元気そうに見せる努力を、ヨガを始めるための条件にしないでよい。

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半年の試験では、気分の点数が段階的に下がった

時間の経過が具体的に分かるのが、Krishnamurthyらの施設での試験だ。60歳を超える入所者69人を年齢と性別で層別化し、ヨガ、伝統的な薬草製剤を用いる介入、待機対照の群へ無作為に割り付けた。期間は24週で、開始時と3か月、6か月に、15項目の高齢者向けうつ症状評価尺度で調べている。[8]

ヨガ群の平均点は、開始時の10.6から3か月で8.1、6か月で6.7へ下がった。いずれも開始時からの変化は統計的に有意で、ほかの群では変化がなかったと報告されている。[8] 点数の動きが短い気分転換だけでなく、活動を続ける期間のなかで確かめられているところに、この試験の価値がある。

内容にも注目したい。このプログラムは姿勢の練習、リラクゼーション、呼吸の調整に加え、宗教的な歌や講義を含んでいた。実施量は週7時間30分だ。[8] 身体の練習に加えて、呼吸を調整する時間と休息の時間も組み込んだ、複合的な活動だった。姿勢の上達だけを目標にせず、動く時間と落ち着く時間を一緒に持つ構成が、この試験の特徴である。[8]

週の実施量だけを見ると、運動から遠ざかっていた人には高い壁に映るだろう。ここで参考にしたいのは、この量を急にまねることではなく、気分を確かめる時点を設けた考え方だ。始めた日の手応えだけで決めず、生活と折り合いをつけて続け、その後の状態を見直す。研究には、活動と評価を時間のなかに置く手順がある。[8]

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椅子に座る方法でも、気分を調べる試験がある

床から立ち上がることに不安があると、「ヨガは自分には無理だ」と入口で諦めやすい。Framptonらの予備的な研究では、介護施設の80〜101歳を対象に、椅子ヨガ参加者17人と、評価だけを受ける対照参加者16人を調べた。軽度から重度の認知症がある人も含まれ、椅子ヨガを週2回、8週間行った。[7]

椅子ヨガ群では、病院不安・抑うつ尺度で測った不安とうつ症状、および感情の評価尺度で測った否定的な感情に改善がみられ、対照群では同じ改善がみられなかった。[7] 気分の落ち込みを測る尺度に加え、否定的な感情も評価した点が興味深い。ひと口に気分がよいと言うだけでなく、違う角度から心理面を調べている。

この小規模な予備的研究は、参加前後の評価を行ったものだ。高年齢や認知症を理由に活動への参加可能性を一律に閉ざさず、参加しやすい形を試した研究として意味がある。[7]

気分の改善と同時に、バランスへの自信と健康関連の生活の質は変わらなかった。[7] 座る形式で得られる心理面の利点と、立つ・歩くことへの自信は、別々に評価されている。ヨガに参加したから生活の全部が一度に変わるのではなく、変わった領域を見つける。この見方は、小さな手応えを見逃さず、過大な期待も抱かないために役立つ。

椅子ヨガの姿勢や動きは、詳しくは本特集の〈椅子ヨガの効果を研究で読む 床に座れないシニアにも開かれる運動の入口〉で扱う。ここで覚えておきたいのは、気分を扱う研究に、座って参加する方法も登場することだ。[7] 初めから床での動作を必須にせず、参加方法を相談するという選択ができる。できない姿勢の数を数えるより、無理なく参加できる形を探すほうが、研究の問いに近い。

1回の長さまで示された施設の研究もある。Ghitapennyらは、ジャカルタの施設でヨガを週3回、9週間、毎回40分行い、開始前と終了後のうつ症状を比べた。評価には15項目の高齢者向けうつ症状尺度を使い、参加前後に有意な点数の違いを報告している。[9] 椅子ヨガの研究では分からなかった1回の時間が、この研究では具体的に示されている。

ただし、この試験は同じ参加者の前後を比べる設計で、比較する対照群を置いていない。[9] 活動期間中に点数が変わったという報告を、ヨガだけが変化を生んだ証明として扱わない。参加した場所も施設であり、自宅で一人で行う40分の練習を試した研究ではない。実施時間が分かることと、そのまま家庭で再現できることは別の問いだ。

週2回の椅子ヨガ、週3回で毎回40分のヨガ、週7時間30分の複合プログラムは、対象も内容も違う実施例である。[7][8][9] 自分の予定を考えるときに役立つのは、回数に加えて、その時間に何をする活動かを見ることだ。半年の試験には姿勢、呼吸、休息だけでなく歌や講義も含まれた。[8] その総時間を全部、姿勢を練習する時間と受け取ると、研究の内容から離れてしまう。

ヨガは運動の選択肢のなかでも検討されている

ヨガだけを特別視せず、ほかの運動と並べた研究も読んでおこう。Tangらは、高齢者のうつ症状に対する運動の47研究、2,895人を集め、運動の種類と実施量をネットワークメタ分析で検討した。実施量を考慮しない解析では、歩行に加え、有酸素運動、ヨガ、気功、筋力トレーニング、太極拳が症状を和らげる方向の結果を示している。[1]

ヨガのほかにも、気分を支える運動の候補がある。これは選択を狭める話ではなく、選べる活動があるという利点だ。運動を始めようとすると、最も効くものを選びたい気持ちになる。しかし、興味のある活動を続けることも研究者が重視している。心身運動を比較したDongらのレビューも、本人の関心に合う種目を選び、継続しやすくすることを勧めている。[2]

Dongらの解析には42研究、2,974人が含まれ、心身運動全体のうつ症状への標準化平均差は−0.52、95%信頼区間は−0.71〜−0.34だった。種目の順位では太極拳、ピラティス、ヨガなどが並んだ。[2] この値は心身運動全体の結果である。呼吸や注意と動きを組み合わせる活動を選ぶ際の背景として読む。

一方、Daiらが高齢者のうつ症状と運動参加を検討した31件のランダム化比較試験、3,238人の解析では、ヨガの標準化平均差は−0.88、95%信頼区間は−1.55〜−0.21だった。歩行や筋力トレーニングにも有意な効果が示されている。[5] 異なるレビューの値を競争させるより、複数の研究でヨガが改善方向に位置していることを、活動を選ぶ足場にしたい。

数字で読む高齢期の気分とヨガ

  • 地域在住の60歳以上を扱う15研究のレビューで、うつ症状の標準化平均差は0.50、95%信頼区間0.09〜0.91。改善方向の結果である。[3]
  • 施設の試験は69人、24週。ヨガ群の平均点は10.6から3か月で8.1、6か月で6.7へ変化した。[8]
  • 椅子ヨガの予備的研究では80〜101歳が参加し、週2回、8週間の活動後に心理面の改善がみられた。[7]
  • 高齢者の運動を扱う31試験の解析で、ヨガの標準化平均差は−0.88、95%信頼区間−1.55〜−0.21だった。[5]
  • 診断されたうつ病を扱う成人の解析では、受動的対照との短期の症状差は−0.43、能動的対照との症状差は有意でなかった。[6]

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