連載「その常識、研究では?」全10回の第4回です。
「筋肥大には8〜12回で限界が来る重さ」「軽い重量では持久力しか付かない」。トレーニングの教科書にも指導現場にも定着した処方です。負荷の大きさごとに得られる適応が決まっているという考え方で、反復回数の連続体(repetition continuum)と呼ばれます。
この処方は長いあいだ、検証よりも慣習として受け継がれてきました。実際に低負荷と高負荷を同じ条件で比べた試験が積み上がったのは、ここ15年ほどのことです。そして結果は、処方の半分を支持し、半分を否定しました。
結論を先に書きます。最大挙上重量の向上については高負荷が明確に有利である。しかし筋肥大については、限界近くまで反復する限り、負荷の大きさによる差はほとんど示されていない——これが現時点での要約です。「軽くてもよい」ではなく「軽くても、条件を満たせば同じくらい太くなる」という言い方が正確です。

出自——連続体という処方はどこから来たか
反復回数の連続体は、最大挙上重量に対する割合(%1RM)と、そこで可能な反復回数の関係から組み立てられた処方です。重い負荷は運動単位(神経とそれが支配する筋線維のまとまり)を強く動員するので筋力に、中程度は代謝的な刺激と量のバランスが取れるので筋肥大に、軽い負荷は持久力に向く——という配分になっています。
この枠組みは、生理学的な説明としては筋が通っています。しかし「中程度が筋肥大に最適」という部分だけは、長らく直接比較の試験を欠いたまま処方に組み込まれていました。低負荷でも限界まで反復すれば高閾値の運動単位が動員されうる、という指摘は以前からありましたが、それを長期の介入で確かめる試験は多くありませんでした。
Schoenfeld BJ, Grgic J, Van Every DW, Plotkin DL. Loading Recommendations for Muscle Strength, Hypertrophy, and Local Endurance: A Re-Examination of the Repetition Continuum. Sports. 2021;9(2):32.
この総説は、反復回数の連続体という処方が広く受け入れられている一方で、その前提の一部を現在の研究が支持していないと指摘し、筋の適応は幅広い負荷帯で得られ、場合によっては最適化されうるという枠組みへの置き換えを提案しました。処方そのものが誤りだったというより、処方が扱える範囲が実際より狭く見積もられていた、という整理です。以下、その根拠になった試験を順に見ていきます。
訓練者で比べた試験
Schoenfeld BJ, Peterson MD, Ogborn D, Contreras B, Sonmez GT. Effects of Low- vs. High-Load Resistance Training on Muscle Strength and Hypertrophy in Well-Trained Men. Journal of Strength and Conditioning Research. 2015;29(10):2954-2963.
トレーニング経験のある若い男性18名が、1セットあたり25〜35回を行う低負荷群と、8〜12回を行う高負荷群に割り付けられ、7種目3セットを週3回、8週間続けました。筋の厚みの増加は、肘屈筋群で5.3%(高負荷)対8.6%(低負荷)、肘伸筋群で6.0%対5.2%、大腿四頭筋で9.3%対9.5%。いずれも群間に有意差はありませんでした。
一方、筋力は明確に分かれました。バックスクワットの最大挙上重量は高負荷群で19.6%、低負荷群で8.8%の向上(有意差あり)。ベンチプレスも高負荷群が有利な傾向でした(6.5%対2.0%)。逆に、50%1RMで限界まで行う持久的な指標は低負荷群のほうが伸びました(16.6%対-1.2%)。
Morton RW, Oikawa SY, Wavell CG, et al. Neither load nor systemic hormones determine resistance training-mediated hypertrophy or strength gains in resistance-trained young men. Journal of Applied Physiology. 2016;121(1):129-138.
より大きな試験も同じ方向を示しました。トレーニング経験のある男性49名が12週間の全身トレーニングを行い、30〜50%1RMで20〜25回を行う群(24名)と、75〜90%1RMで8〜12回を行う群(25名)に無作為に割り付けられ、全セットを限界まで実施しました。除脂肪量、タイプI・タイプIIの筋線維横断面積のいずれにも群間差はなく、最大挙上重量もベンチプレスを除いて差がありませんでした(ベンチプレスのみ高負荷群が有利、P=0.012)。運動直後の「同化ホルモン」の上昇は、筋肥大とも筋力向上とも相関していませんでした。

統合するとどうなるか
Schoenfeld BJ, Grgic J, Ogborn D, Krieger JW. Strength and Hypertrophy Adaptations Between Low- vs. High-Load Resistance Training: A Systematic Review and Meta-analysis. Journal of Strength and Conditioning Research. 2017;31(12):3508-3523.
60%1RM以下と60%超を比べ、全セットを限界まで行い、6週間以上続けた21件の研究を統合したものです。結果は、最大挙上重量の向上は高負荷が有意に優れ、等尺性筋力には差がなく、筋肥大の指標は両群で同等でした。
Lopez P, Radaelli R, Taaffe DR, et al. Resistance Training Load Effects on Muscle Hypertrophy and Strength Gain: Systematic Review and Network Meta-analysis. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2021;53(6):1206-1216.
28件の研究・747名を、低負荷(15RM超)・中負荷(9〜15RM)・高負荷(8RM以下)の3群に分けて統合したネットワークメタ解析です。
| 比較 | 筋肥大 | 筋力(標準化平均差) |
|---|---|---|
| 高負荷 対 低負荷 | 有意差なし(P=0.113〜0.469) | 0.60〜0.63(P<0.001〜0.003) |
| 中負荷 対 低負荷 | 有意差なし | 0.34〜0.35(P<0.001〜0.003) |
| 高負荷 対 中負荷 | 有意差なし | 0.26〜0.28(P=0.068、有意でない) |
筋肥大は負荷に依存せず、筋力は高負荷が優れる。この非対称は、複数の統合研究で繰り返し再現されています。なお同じ解析では、未訓練者のほうが筋肥大が大きく(P=0.033)、訓練経験のある人では実施したセッション数が多いほど大きい、という関係も示されました。
量をそろえても同じか
ここでひとつ疑問が残ります。低負荷では反復回数が多くなるため、総挙上量(セット×回数×重量)が高負荷より大きくなりがちです。差が出ないのは、量で補っているだけではないのか。
Carvalho L, Junior RM, Barreira J, et al. Muscle hypertrophy and strength gains after resistance training with different volume matched loads: a systematic review and meta-analysis. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism. 2022;47(4):357-368.
この統合研究は、総挙上量をそろえた条件だけを集めました。結果、最大挙上重量は高負荷が低負荷・中負荷より優れ、中負荷が低負荷より優れました。一方筋肥大は、量をそろえても負荷の大きさによる差がありませんでした。量で補っているという説明では、この結果は説明できません。

筋線維のレベルで見ると
超音波や画像で測る筋の厚みは、水分量の変化にも影響されます。より直接的な指標として、生検で筋線維の断面積を測った研究を統合したものがあります。Grgic は10の研究群をまとめ、タイプI線維で標準化平均差0.28(95%CI -0.27〜0.82、p=0.316、I2=18%)、タイプII線維で0.30(95%CI -0.05〜0.66、p=0.089、I2=0%)と報告しました。どちらも有意差はありません。
ただし著者自身が強調しているとおり、信頼区間も予測区間も非常に広く(タイプI線維の予測区間は-0.71〜1.28)、将来の研究がどちらの方向にどの程度の大きさで出るかは定まっていません。これは「差がない」ではなく「差の大きさも向きも決められていない」状態です。実際、より精密な設計の小規模試験でも像は定まりません。Cumming らはトレーニング経験のある男女14名(26.4 ± 4.4歳)の左右の脚に、3〜5回で限界が来る高負荷と、20〜25回で限界が来る低負荷を割り当て、週2回、9週間行いました。多関節種目の最大挙上重量はどちらも同程度に増加し(21 ± 10%)、単関節種目では高負荷が優れました(9 ± 13%対-3 ± 10%)。筋の厚みは負荷によらず増加した一方(大腿中央で7 ± 17%、遠位で8 ± 8%)、生検で測った筋線維横断面積には、どちらの条件でも有意な変化が見られませんでした。参加者14名という規模では、この不一致がどちらの測定法の限界によるものかを決められません。Refalo らの統合でも、全身の除脂肪量(効果量0.05、95%CI -0.20〜0.29、P=0.70)や筋の断面積(0.06、95%CI -0.11〜0.24、P=0.47)に差はなく、最大挙上重量(0.34、95%CI 0.15〜0.52、P=0.0003)と等尺性筋力(0.41、95%CI 0.07〜0.76、P=0.02)では高負荷が優れる、という同じ形が出ています。
低負荷が成り立つ条件
重要なのは、これらの試験がほぼ例外なく「限界まで反復する」条件で行われていることです。この条件が外れるとどうなるかを調べた試験があります。
Lasevicius らは、未訓練の男性25名の左右の脚に、30%1RMまたは80%1RMで、限界まで行う条件と行わない条件の4通りを割り当て、総量をそろえて8週間実施しました。大腿四頭筋の横断面積は、高負荷では限界まで行っても行わなくても同程度に増加しました(8.1%と7.7%)。低負荷では、限界まで行った条件は7.8%増えた一方、限界まで行わない条件では有意な増加が見られませんでした(2.8%)。最大挙上重量はいずれも高負荷が優れました。
2026年に公表されたアメリカスポーツ医学会の見解書も、この構図を追認しています。
Currier BS, D’Souza AC, Singh MAF, et al. American College of Sports Medicine Position Stand. Resistance Training Prescription for Muscle Function, Hypertrophy, and Physical Performance in Healthy Adults: An Overview of Reviews. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2026;58(4):851-872.
137件の系統的レビュー、延べ3万名を超える参加者をまとめた文書です。筋力は80%1RM以上の重い負荷、完全な可動域、2〜3セット、週2回以上で高まる。一方筋肥大を高めたのは量(1週あたりのセット数)とエキセントリック局面の過負荷であり、負荷の大きさは主要な決定要因として挙げられていません。また、限界まで追い込むこと自体は結果に一貫した影響を与えなかった、とも書かれています。低負荷の応用である血流制限下のトレーニングについては加圧式トレーニングの研究を、負荷と筋肥大の関係については高強度だけが筋肥大の道かを扱った記事があります。
現在どこまで言えるか
- 筋肥大は負荷の大きさにあまり依存しない。総挙上量をそろえても同じ結論になる。
- 最大挙上重量の向上は高負荷が明確に優れる。標準化平均差で0.60前後の差がある。
- 低負荷が高負荷に並ぶのは限界近くまで反復した場合に限られる。余力を残した低負荷では筋肥大が確認されなかった試験がある。
- 筋線維レベルの統合では信頼区間も予測区間も広く、差の大きさは定まっていない。
- 持久的な指標(軽い重量で何回反復できるか)は、低負荷のほうが伸びる。
限界も書いておきます。ここで挙げた試験の多くは8〜12週間と短く、参加者は若い男性に偏っています。低負荷で限界まで反復するのは主観的にかなりつらく、長期の継続率が同じかどうかは検証されていません。また筋肥大の測定法(超音波・画像・生検)によって数値は揃わず、統合時の異質性の原因になっています。上で見たとおり、同じ試験のなかでも超音波の筋厚は増え、生検の筋線維断面積は変わらない、ということが起こります。
出版バイアスも考慮すべきです。「低負荷でも同じだけ太くなった」という意外な結果は発表されやすく、「やはり高負荷が優れていた」という予想通りの結果は埋もれやすい——という向きのバイアスは、この領域では十分ありえます。ただし複数の独立した統合研究が同じ結論に達しており、しかも筋力については一貫して高負荷が優れるという「差が出る側」の結果も同時に報告されています。すべてが低負荷に都合よく歪んでいるとは考えにくい状況です。
実務的な読み替えはこうです。重い重量を扱えない事情があるなら、軽い重量で限界近くまで反復する方法に切り替えても、筋肥大という目的は損なわれにくい。ただし「重いものを持ち上げられるようになりたい」のであれば、重いものを扱う必要があります。関節に不安がある方、血圧が高い方は、負荷の設定を変える前に医療機関で相談してください。
次回予告
第5回は「限界まで追い込む必要はあるか——反復限界という考え方」を扱います。今回、低負荷が成り立つ条件として出てきた「限界まで」が、高負荷でも必要なのかどうかを正面から見ていきます。
この連載の全10回
- 第1回|「超回復」は本当にあるのか
- 第2回|筋肉痛は効いた証拠か——遅発性筋痛と筋肥大
- 第3回|プロテインは運動後30分以内か
- 第4回|重い重量でなければ筋肥大しないのか(この記事)
- 第5回|限界まで追い込む必要はあるか
- 第6回|有酸素運動は筋肉を減らすのか——干渉効果
- 第7回|フルレンジでなければ効かないのか——可動域と部分反復
- 第8回|マシンとフリーウエイト、どちらが優れているのか
- 第9回|サプリメントは必要か——証拠水準を並べる
- 第10回|「効かせる」とは何か——意識の向け方と総括
出典
- Schoenfeld BJ, Peterson MD, Ogborn D, Contreras B, Sonmez GT. Effects of Low- vs. High-Load Resistance Training on Muscle Strength and Hypertrophy in Well-Trained Men. Journal of Strength and Conditioning Research. 2015;29(10):2954-2963.
- Morton RW, Oikawa SY, Wavell CG, et al. Neither load nor systemic hormones determine resistance training-mediated hypertrophy or strength gains in resistance-trained young men. Journal of Applied Physiology. 2016;121(1):129-138.
- Schoenfeld BJ, Grgic J, Ogborn D, Krieger JW. Strength and Hypertrophy Adaptations Between Low- vs. High-Load Resistance Training: A Systematic Review and Meta-analysis. Journal of Strength and Conditioning Research. 2017;31(12):3508-3523.
- Schoenfeld BJ, Grgic J, Van Every DW, Plotkin DL. Loading Recommendations for Muscle Strength, Hypertrophy, and Local Endurance: A Re-Examination of the Repetition Continuum. Sports. 2021;9(2):32.
- Cumming KT, Elvatun IC, Kalenius R, et al. Divergent Strength Gains but Similar Hypertrophy After Low-Load and High-Load Resistance Exercise Training in Trained Individuals: Many Roads Lead to Rome. Journal of Applied Physiology. 2025;139(3):685-697.
- Lopez P, Radaelli R, Taaffe DR, et al. Resistance Training Load Effects on Muscle Hypertrophy and Strength Gain: Systematic Review and Network Meta-analysis. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2021;53(6):1206-1216.
- Carvalho L, Junior RM, Barreira J, et al. Muscle hypertrophy and strength gains after resistance training with different volume matched loads: a systematic review and meta-analysis. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism. 2022;47(4):357-368.
- Grgic J. The Effects of Low-Load Vs. High-Load Resistance Training on Muscle Fiber Hypertrophy: A Meta-Analysis. Journal of Human Kinetics. 2020;74:51-58.
- Refalo MC, Hamilton DL, Paval DR, Gallagher IJ, Feros SA, Fyfe JJ. Influence of resistance training load on measures of skeletal muscle hypertrophy and improvements in maximal strength and neuromuscular task performance: A systematic review and meta-analysis. Journal of Sports Sciences. 2021;39(15):1723-1745.
- Lasevicius T, Schoenfeld BJ, Silva-Batista C, et al. Muscle Failure Promotes Greater Muscle Hypertrophy in Low-Load but Not in High-Load Resistance Training. Journal of Strength and Conditioning Research. 2022;36(2):346-351.
- Currier BS, D’Souza AC, Singh MAF, et al. American College of Sports Medicine Position Stand. Resistance Training Prescription for Muscle Function, Hypertrophy, and Physical Performance in Healthy Adults: An Overview of Reviews. Medicine and Science in Sports and Exercise. 2026;58(4):851-872.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。高血圧・心疾患・脳血管疾患の既往がある方、関節の痛みや腫れがある方は、負荷や反復回数を変える前に医療機関にご相談ください。






