連載「研究が示す『続く条件』」全10回の第10回です。

この連載は、スタジオを選ぶための判断材料を研究から取り出してきました。最終回では、その取り出し方そのものを道具として渡します。健康に関する主張を目にしたとき、何を確かめれば、その主張の強さが分かるのか。

この道具は、ヨガに限らず使えます。サプリメントの広告でも、健康番組でも、医師の書いた記事でも同じです。そして残念ながら、研究者が書いた論文の要旨に対しても必要です——その理由も、この回で数字とともに示します。

結論を先に書くと、「科学的に証明された」という表現は、それ自体が情報を隠している。何と比べ、何を測り、どれだけの人数で、どの向きに偏りうるかを分けて確かめない限り、主張の強さは判定できない——これが、この連載を通じて繰り返してきたことです。

研究が示す続く条件 第10回 主張の見分け方科学的に証明されたをどう読むか|オンザショア立川店 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

「証明された」という語が隠すもの

科学の研究は、何かを証明しません。特定の条件のもとで、特定の集団について、特定の指標が、どれくらいの大きさで、どれくらいの不確かさを伴って動いたかを推定するだけです。

「科学的に証明された」という表現は、この5つの限定をすべて省略します。だから便利であり、だから危険です。省略された5つを取り戻す作業が、以下の道具にあたります。

道具1——比較の相手を見る

この連載で最も繰り返した問いです。第9回で見たとおり、慢性腰痛に対するヨガの効果は、運動しない対照と比べれば機能で1.69点(24点尺度)の改善ですが、他の背部運動と比べると0.38点で差がありません。第7回のオンラインヨガの試験は待機群との比較、第5回の高温と常温の比較は温度だけを変えた無作為化——同じ「効果があった」でも、比較の相手が違えば意味が違います。

確かめ方は単純です。「何と比べて」の部分を探す。 見つからなければ、その主張は評価できません。「使った人の80%が改善を実感」という表現には比較の相手がなく、したがって強さを判定できない主張です。

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

道具2——代理指標を見分ける

本当に知りたい結果(痛みが減ったか、転ばずに済んだか、長く生きたか)の代わりに、測りやすい指標(血液の数値、画像所見、来館回数)を使うことがあります。これを代理指標と呼びます。

代理指標は研究を早く安く済ませますが、代償があります。代理指標が動いても、本当に知りたい結果が動くとは限らない。 医学の分野では、代理指標で承認された薬が、後の大規模試験で有害だったと判明した例が繰り返されてきました。

Hochman M, McCormick D. Endpoint selection and relative (versus absolute) risk reporting in published medication trials. Journal of General Internal Medicine. 2011;26(11):1246-1252.

影響力の高い一般医学誌6誌に掲載された薬剤の無作為化試験316件を調べたところ、116件(37%)が代理指標を主要評価項目にしていました。そして代理指標を使った試験は、陽性の結果を報告する割合が高い(66%対49%、p=0.006)という関係がありました。2024年には、代理指標を使う試験の報告のための国際的な指針(CONSORT-Surrogate)が Manyara らによって公表されています。それだけ問題が認識されているということです。

同じ調査は、複合的な評価項目についても数えています。106件(34%)が複数の出来事をまとめた複合評価項目を主要評価項目にしていました。死亡を評価項目にした118件のうち32件(27%)は、全死亡ではなく特定の病気による死亡を使っていました。特定の死因だけを数えると、他の原因で亡くなった人が見えなくなります。

この連載での例を挙げます。第6回で扱った来館回数は、健康の代理指標です。罰則つきの契約で来館が21%増えたとしても、体力や健康指標が改善したかは測られていません。第9回で触れたMCID——臨床的に意味のある最小変化量——も、この道具と対になる概念です。指標が動いたかどうかと、その動きが本人に実感できる大きさかどうかは、別々に確かめる必要があります。

道具3——相対と絶対を区別する

「リスクが50%減少」と聞くと大きく感じます。しかし元のリスクが1,000人に2人なら、50%の減少は1,000人に1人になったという意味です。相対的な変化の大きさと、実際に自分に起きる確率の変化は、別の情報です。

同じ Hochman らの調査では、陽性の結果を出した157件のうち69件(44%)が、要旨で結果を相対的な表現だけで報告していました。絶対的な数値を併記していれば、読者は自分に起きる確率の変化を見積もれます。併記がなければ見積もれません。

第9回で扱ったコクランのレビューが、1,000人あたりの件数を併記していたことを思い出してください。「有害事象の相対危険度4.76」だけを見れば恐ろしく感じますが、1,000人あたりヨガ群43件・非運動群9件と併記されると、大きさの実感が変わります。

立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

道具4——標本の小ささと検出力

運動科学の研究は、医学の研究に比べて標本が小さい傾向があります。

Mesquida C, Murphy J, Lakens D, Warne J. Publication bias, statistical power and reporting practices in the Journal of Sports Sciences: potential barriers to replicability. Journal of Sports Sciences. 2023;41(16):1507-1517.

スポーツ科学の主要誌に掲載された89件を統合した解析では、平均の検出力は53%(有意・非有意を含む)でした。有意な結果だけに限っても61%です。検出力とは、本当に効果があるときにそれを見つけられる確率のことです。同誌の過去の編集記事では、標本の大きさの中央値は19人と報告されています。

検出力が低いと2つのことが起きます。効果があっても見つからない。そして見つかった効果は実際より大きく見積もられます。Ekkekakis らは高強度インターバル運動の文献を検証し、小さな効果を検出力の乏しい研究で調べている状況が、心理学の再現性の危機を招いた研究環境に似ていると指摘しました。同じ論文は、p>0.05を根拠に「同等」「同程度」と主張する誤りにも警告しています。差が見つからなかったことは、差がないことの証拠ではありません。

この連載でも、標本の小ささは繰り返し出てきました。第5回の温度比較試験は22人から54人、第7回の遠隔と対面の比較は37人です。

道具5——有意性への偏りと再現性

個々の研究だけでなく、文献全体が偏っている可能性があります。

Büttner F, Toomey E, McClean S, Roe M, Delahunt E. Are questionable research practices facilitating new discoveries in sport and exercise medicine? The proportion of supported hypotheses is implausibly high. British Journal of Sports Medicine. 2020;54(22):1365-1371.

スポーツ医学の主要4誌に掲載された原著のうち、仮説を明示していた129件を調べると、106件(82.2%)が「仮説は支持された」と報告していました。著者らはこの割合を「あり得ないほど高い」と評しています。研究者の予想が8割の確率で当たるなら、そもそも研究する必要がありません。

Borg DN, Barnett AG, Caldwell AR, White NM, Stewart IB. The bias for statistical significance in sport and exercise medicine. Journal of Science and Medicine in Sport. 2023;26(3):164-168.

18誌・21年分の要旨48,390件から信頼区間を機械的に抽出した解析では、1,599件の論文から得た3,819の区間の分布に、有意性の境界のすぐ手前が不自然に少ないという歪みが見つかりました。p値が0.05を少し超える結果が、発表されにくいか、発表される前に加工されているということです。

Murphy J, Caldwell AR, Mesquida C, et al. Estimating the Replicability of Sports and Exercise Science Research. Sports Medicine. 2025;55(10):2659-2679.

そして再現の試みです。上位誌に掲載された研究を追試した25件のうち、3つの基準をすべて満たして再現できたのは7件(28%)でした。効果量の大きさは追試で実質的に小さくなっています。

ただし、出版バイアスの検定そのものにも限界があります。Afonso らは、よく使われる漏斗プロットに基づく検定が10件程度の研究数では検出力が著しく不足することを指摘し、「出版バイアス」ではなく「出版バイアスのリスク」と呼ぶべきだと提案しています。バイアスの有無を判定する道具にも、不確かさがあるということです。

道具6——資金源と、体験談の重み

Hochman らの調査では、代理指標を使った試験は商業的資金のみで行われた割合が高い(45%対29%、p=0.004)という関係がありました。資金源が結果を決めるわけではありませんが、どの指標を選ぶかという設計の段階に影響しうるということです。記事や広告の末尾にある資金・提供の表示は、読む価値があります。

体験談についても書いておきます。体験談は、比較の相手がなく、標本が1人で、良い結果が出た人だけが語る、という3つの弱点を同時に持っています。 第4回で見た生存者バイアスと同じ構造です。ケガをして辞めた人は、体験談を書きません。体験談は「そういう人がいた」ことの証拠にはなりますが、「自分にも起きる」ことの証拠にはなりません。

なお、研究の質そのものは改善してきてもいます。Preobrazenski らが運動科学の340件を評価した研究では、1995年と比べて2020年には選択・実施・検出・報告の各バイアスが有意に減っていました。ただし2020年の研究でも、大半は依然としてバイアスのリスクが不明または高いままです。

第1回から第9回までの判断材料

回最も使える判断材料証拠の強さ
第1回 継続率最初の数週間の設計を見る。脱落者の67%は目標量に到達する前に辞めている観察(自己選択あり)
第2回 指導者の資格資格の有無より「どの認定か」。経験年数は知識と関連しない横断調査(運動指導者一般からの外挿)
第3回 人数と監督人数より個別に声がかかるか。誤り検出の上限は6人前後(CPR実験)無作為化(監督の効果)+類推(人数)
第4回 ケガ倒立系と極端な脊椎の屈伸の扱いを確かめる。45歳以上は部位が変わる救急データ+横断調査(生存者バイアスあり)
第5回 高温環境消費エネルギーは常温と変わらない。血管機能の改善に温度は不要無作為化(この連載で最も強い)
第6回 価格と契約利用回数の見積もりを半分にする。長期契約が有利とは限らない無作為化(報酬・通知)+観察(契約選択)
第7回 オンライン録画かライブかを見る。強度は下がる(33.3%対63.5%)無作為化(確実性は低い)
第8回 立地距離の効果は小さい。近くにできても73.8%は使わなかった観察+自然実験
第9回 目的他の運動より優れているという証拠は、ほぼどの目的にもない系統的レビュー(盲検化なし)

この回から言える判断材料

  • 「何と比べて」を最初に探す。 見つからない主張は、強さを判定できない。待機群との比較か、他の運動との比較かで、見える大きさは桁で変わる。
  • 測ったのが代理指標かどうかを確かめる。 主要医学誌の薬剤試験でも37%が代理指標を使い、そうした試験は陽性の結果を報告する割合が高かった(66%対49%)。
  • 相対だけの表現を受け取らない。 陽性の結果を出した試験の44%が、要旨で相対的な表現だけを使っていた。1,000人あたり何人かを尋ねる。
  • 人数を見る。 スポーツ科学の標本の中央値は19人、平均検出力は53%。小さな研究で見つかった効果は、実際より大きく見積もられている。
  • 「差がなかった」を「同等だ」と読み替えない。 検出力の乏しい研究では、差があっても見つからない。
  • 再現の実績を重く見る。 上位誌の研究を追試した25件のうち、基準をすべて満たして再現できたのは7件(28%)だった。一度の研究で結論は出ない。
  • 体験談は3つの弱点を同時に持つ。 比較の相手がなく、標本が1人で、うまくいった人だけが語る。

連載を終えて

10回を通して、同じ結論に何度も戻ってきました。種目や施設の選択より、続けられるかどうかのほうが結果を左右する。 そして続くかどうかを事前に予測する道具は、まだ存在しません。第1回で見たとおり、38の指標を使っても遵守率のばらつきの22.1%しか説明できませんでした。

この連載を書くにあたって、自分たちに不利な数字も同じ精度で扱うことを決めていました。高温環境は消費エネルギーを増やさない。集団のクラスでは指導者が見落とす。長期契約は継続に有利とは限らない。近くにできても人は使わない。ヨガが他の運動より優れているという証拠はない。これらはいずれも、この文章を書いている側にとって都合の悪い事実です。

それでも書いたのは、読者に必要なのが宣伝ではなく判断材料だと考えたからです。そして、こうした事実を隠さずに示せる場所のほうが、結果として信頼に値するとも考えています。

この連載で意識的に使わなかった表現があります。「証明された」「治る」「デトックス」「奇跡の」。使わなかったのは慎重さのためだけではありません。これらの語は、比較の相手・指標・人数・偏りという4つの情報をまとめて消してしまうからです。 消えた情報は、読者の側からは復元できません。逆に言えば、こうした語を使わずに書かれた説明は、その時点で確かめやすい説明だということでもあります。

最後に一つだけ、研究から言えることを超えない範囲で書きます。どのスタジオを選ぶかを決めるとき、最も確かめる価値があるのは、自分がそこへ何度も足を運ぶ姿を具体的に想像できるかどうかです。 曜日と時刻、行き方、終わったあとの予定。第8回で見たとおり、通い方の型の安定は継続と関連していました。因果は証明されていませんが、この連載が集めた数字のうち、選ぶ前に自分で確かめられるものは、それほど多くありません。

この連載の全10回

  1. 第1回|なぜ人は辞めるのか——運動の継続率が示す数字
  2. 第2回|指導者の資格は何を保証するのか
  3. 第3回|クラスの人数と監督——集団指導で失われるもの
  4. 第4回|ケガはどこで起きるか——場面・姿勢・経験年数
  5. 第5回|高温環境は選択基準になるか
  6. 第6回|価格と契約——支払い方は継続を変えるか
  7. 第7回|オンラインと対面——効果と継続率の比較
  8. 第8回|立地と時間帯——通いやすさは継続を決めるか
  9. 第9回|目的で選び方は変わるか——腰痛・不眠・体力向上
  10. 第10回|主張の見分け方——「科学的に証明された」をどう読むか(この記事)

出典

  1. Hochman M, McCormick D. Endpoint selection and relative (versus absolute) risk reporting in published medication trials. Journal of General Internal Medicine. 2011;26(11):1246-1252.
  2. Manyara AM, Davies P, Stewart D, et al. Reporting of surrogate endpoints in randomised controlled trial reports (CONSORT-Surrogate): extension checklist with explanation and elaboration. BMJ. 2024;386:e078524.
  3. Mesquida C, Murphy J, Lakens D, Warne J. Publication bias, statistical power and reporting practices in the Journal of Sports Sciences: potential barriers to replicability. Journal of Sports Sciences. 2023;41(16):1507-1517.
  4. Ekkekakis P, Swinton P, Tiller NB. Extraordinary Claims in the Literature on High-Intensity Interval Training (HIIT): I. Bonafide Scientific Revolution or a Looming Crisis of Replication and Credibility? Sports Medicine. 2023;53(10):1865-1890.
  5. Büttner F, Toomey E, McClean S, Roe M, Delahunt E. Are questionable research practices facilitating new discoveries in sport and exercise medicine? The proportion of supported hypotheses is implausibly high. British Journal of Sports Medicine. 2020;54(22):1365-1371.
  6. Borg DN, Barnett AG, Caldwell AR, White NM, Stewart IB. The bias for statistical significance in sport and exercise medicine. Journal of Science and Medicine in Sport. 2023;26(3):164-168.
  7. Murphy J, Caldwell AR, Mesquida C, et al. Estimating the Replicability of Sports and Exercise Science Research. Sports Medicine. 2025;55(10):2659-2679.
  8. Afonso J, Ramirez-Campillo R, Clemente FM, Büttner FC, Andrade R. The Perils of Misinterpreting and Misusing “Publication Bias” in Meta-analyses: An Education Review on Funnel Plot-Based Methods. Sports Medicine. 2024;54(2):257-269.
  9. Preobrazenski N, McCaig A, Turner A, et al. Risk of bias in exercise science: A systematic review of 340 studies. iScience. 2024;27(3):109010.

この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。ここで紹介した読み方は、医療者の説明に代わるものではありません。症状がある場合、健康上の不安がある場合は、情報の読み方を工夫する前に医療機関にご相談ください。

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

ご体験予約