連載「研究が示す『続く条件』」全10回の第7回です。
2020年以降、オンラインのクラスは選択肢として定着しました。移動時間が消え、天候にも左右されません。一方で「画面越しでは見てもらえない」「家では集中できない」という声もあります。どちらも実感としては正しいのでしょう。問題は、その実感が数字の上でどう現れるかです。
この回は、遠隔での運動指導と対面を直接比べた研究を読みます。ヨガに限ると証拠は薄いので、理学療法と心臓リハビリテーションの領域まで広げます。既存の記事オンライン・遠隔ヨガの提供と継続と重なる部分は省き、ここでは「選ぶときの判断」に絞ります。
結論を先に書くと、オンラインだから脱落が多い、という単純な関係は成り立たない。参加率と遵守率はむしろ対面と同等かやや高い。しかし運動強度は明確に下がり、その差は小さくない——これが現時点で最も正確な要約です。

「オンラインは脱落が多い」は本当か
まず、そう見える数字から。9か国760人が参加した8週間の在宅オンライン運動プログラムの追跡研究では、53.8%(95%信頼区間 50.3〜57.3%)が脱落しました。第1回で見た運動試験の脱落率(17〜22%程度)と比べて、明らかに高い水準です。
Yuki G, Hespanhol L, Mohr L, et al. Predictors of dropping out from a home tele-exercise programme: A cohort study derived from a randomised controlled trial. Health Promotion Perspectives. 2024;14(3):238-247.
脱落の予測因子は、ベースラインの精神的健康度(オッズ比0.94)、障害の程度(1.02)、年齢(0.98)、運動の動機づけ(0.92)、衝動性・不安(1.04)でした。第1回で見た予測因子とよく似ています。
しかしこの数字は「オンラインだから」とは言えません。この研究には対面の比較群がないからです。 同じ人たちを対面でやったら何%が脱落したかは分かりません。比較しないと分からない、という当たり前のことが、ここでは決定的です。
直接比べたメタ分析は何を示したか
対面と遠隔を同じ試験の中で無作為に割り付けた研究だけを集めたメタ分析があります。リアルタイムの映像による理学療法を対象にしたものです。
Simmich J, Ross MH, Russell T. Real-time video telerehabilitation shows comparable satisfaction and similar or better attendance and adherence compared with in-person physiotherapy: a systematic review. Journal of Physiotherapy. 2024;70(3):181-192.
| 指標 | 遠隔と対面の差 | 研究数・人数 |
|---|---|---|
| セッションへの参加率 | 遠隔が8%高い(95%CI -1〜18) | 8件・1,110人 |
| 運動プログラムの遵守 | 遠隔が9%高い(95%CI 2〜16) | 9件・1,190人 |
| 満足度 | 標準化平均差0.03(95%CI -0.23〜0.28) | 12件・1,247人 |
符号は遠隔に有利です。 参加率の信頼区間は0をまたいでおり「同等から相当高い」までの幅がありますが、遵守については下限が2%で、少なくとも下回ってはいません。ただし著者らは、GRADEによる確実性の評価が「非常に低い」から「低い」にとどまることを明記しています。理由は研究間の不一致とバイアスのリスクの高さです。
心臓リハビリテーションの非劣性試験も同じ方向です。Hwang らが慢性心不全の患者53人を、週2回・12週間の遠隔プログラムと従来の通院プログラムに無作為に割り付けた試験では、6分間歩行距離の変化の群間差は15 m(95%信頼区間 -28〜59)で、あらかじめ定めた非劣性の幅28 m の範囲に収まりました。そして参加率は遠隔群のほうが有意に高いという結果でした。

効いているのは「遠隔かどうか」ではない
ここからが、この回で最も実用的な部分です。65歳以上を対象に在宅のビデオ運動プログラムを調べたメタ分析は、何が参加率を動かしているかを推定しました。
Rihova M, Jandova T, Vetrovsky T, et al. Adherence and Retention Rates to Home-Based Video Exercise Programs in Older Adults-Systematic Review and Meta-Analysis. Telemedicine and e-Health. 2024;30(11):2649-2661.
26件・1,292人を統合した結果、継続率の加重平均は91.1、参加率は85.0でした。高い水準です。そして回帰モデルが示した2つの要因が重要です。
- 1回の時間が長いほど参加率が下がる。 20分未満から60分超へ変わると、参加率は24.390ポイント低下すると推定された(p<0.001)。
- 指導者との生の接触がないと参加率が下がる。 オンラインの同時参加型に対し、録画やDVDによる提供では11.482ポイント低い(p=0.010)。
つまり画面越しであること自体が問題なのではなく、生身の指導者とその場でやりとりできるかどうかが効いているということです。第3回で見た監督の効果と、同じ構造がここにも現れています。
消えるのは移動、減るのは強度
参加率が保たれるなら、オンラインで十分なのでしょうか。ここで代償が現れます。
統合失調症の人を対象にした有酸素運動の試験では、感染症の流行を境に提供方法が対面から在宅の遠隔へ切り替わりました。同じ頻度・同じ時間の設計です。
Kimhy D, Ospina LH, Wall M, et al. Telehealth-Based vs In-Person Aerobic Exercise in Individuals With Schizophrenia: Comparative Analysis of Feasibility, Safety, and Efficacy. JMIR Mental Health. 2025;12:e68251.
12週間で参加した回数は、遠隔26.8回、対面26.1回で差がありませんでした(P=.84)。脱落は遠隔群で0人(0/14)、対面群で7人(7/23、30.4%)と、遠隔群のほうが有意に少ないという結果です(P=.04)。ここまでは遠隔に有利です。
ところが、目標強度以上で運動していた時間の割合は、遠隔33.3%に対して対面63.5%でした(P<.001)。ほぼ半分です。最大酸素摂取量の変化に有意差は出ませんでしたが、参加者は37人であり、差を検出する力は乏しいと考えるべきです。
同じ方向の所見が、パーキンソン病の人を対象にした小規模な試験からも出ています。遠隔のコーチが映像で監督した群の出席率は99.2%だったのに対し、自己管理の群は出席率が35.9ポイント低く、総運動時間は48%少なく、中等度以上の強度で運動した時間は74.5%少ないという結果でした。
整理します。オンラインでは「来ること」は保たれやすいが、「強く動くこと」は保たれにくい。 そして第3回で見たとおり、監督の効果の実体は負荷の設定にありました。この2つを重ねると、オンラインの限界がどこにあるかが見えます。

ヨガに絞るとどうか
ヨガでの無作為化試験も出てきています。慢性腰痛のある成人140人を、週1回60分のオンラインのハタヨガのクラスを12回受ける群と、待機群に割り付けた試験です。
Tankha H, Gaskins D, Shallcross A, et al. Effectiveness of Virtual Yoga for Chronic Low Back Pain: A Randomized Clinical Trial. JAMA Network Open. 2024;7(11):e2442339.
12週時点で、痛みの強さは11点尺度で-1.5点(95%信頼区間 -2.2〜-0.7)、機能障害は23点尺度で-2.8点(-4.3〜-1.3)、いずれも待機群より良好でした。24週時点でも改善は維持され、鎮痛薬を使った人の割合は21.4ポイント少なくなっています。
ただし比較の相手は待機群であって対面のクラスではありません。「オンラインでも効果が出る」は言えますが、「対面と同等だ」はこの試験からは言えません。第4回までに何度も出てきた区別です。
指導者側の実感も記録されています。米国北東部の指導者407人への調査では、流行期に47%がオンライン、45.9%が併用、7.1%が対面のみとなり、オンラインで教えた指導者の84.6%が流行後も継続したいと答えました。ケガの報告数は対面3.6%・オンライン4.2%で有意差がありません。
一方、Sharma らがインドの指導者181人に行った調査は、利点と欠点の両方を数えています。利点の上位は感染の危険が小さいこと(93.92%)、費用の節約(82.87%)、国内のより広い範囲の受講者に届くこと(77.90%)でした。欠点の上位は技術的な困難(74.03%)、対面の接触がないこと(63.90%)、オンラインの指示がケガにつながりうるという懸念(59.16%)です。
この調査で最も示唆的な数字は、満足度の内訳です。教える内容に注意を向けられたと感じた指導者は70.16%いたのに対し、受講者の様子を監視できたと感じた指導者は66.30%にとどまりました。3人に1人は、見えていないと感じながら教えているということになります。第3回で見た「6人を超えると誤りの検出率が落ちる」という所見を思い出すと、画面越しの上限はさらに低いと考えるのが自然です。
この証拠の限界
第一に比較の非対称性です。対面群は同じ部屋・同じ器具で運動しますが、在宅群の環境は家ごとにばらばらです。研究が測っているのは「遠隔という方法」の効果ではなく、「遠隔という方法と、参加者の家の環境の組み合わせ」の効果です。
第二に参加者の選別です。遠隔の試験に参加できるのは、機器と通信環境を持ち、操作できる人だけです。技術的な障壁で参加できなかった人は、脱落者としても数えられません。 高齢者や低所得層では、この選別が特に強く働きます。Rihova らのメタ分析が高い継続率を出したのも、この選別の後の集団を見ているからかもしれません。
第三に時期の偏りです。遠隔の研究の多くは感染症の流行期に行われました。Rihova らの解析では、都市封鎖の期間であったことが参加率と継続率の両方を押し上げる方向に働いていました(それぞれ10.321、9.577ポイント)。外出の選択肢がない時期のデータを、平時にそのまま当てはめることはできません。
何を測れば埋まるのか
この回の証拠には、大きな空白が2つあります。
ひとつは、ヨガで対面とオンラインを無作為に割り付けた試験が見当たらないことです。慢性腰痛の試験は待機群との比較でした。効果が同等かどうかを言うには、同じ指導者が同じ配列を対面と画面越しに教え、受講者をくじ引きで割り付ける設計が要ります。理学療法や心臓リハビリテーションでは実施されている設計であり、技術的な困難はありません。
もうひとつは、姿勢の質が測られていないことです。参加率も遵守率も、出席の記録にすぎません。オンラインで指導者が見落とした誤りが何件あったかは、第3回で見たCPRの実験と同じ手法——あらかじめ決めた誤りを演じさせ、検出率を測る——で調べられます。オンラインと対面の差が最も現れそうな指標なのに、測った研究はありませんでした。
そして両方に共通する交絡として、選ぶのは本人であるという第1回からの問題が残ります。オンラインを選ぶ人は、家に運動できる空間があり、機器の操作に慣れ、自分を律することに自信がある人かもしれません。観察された継続率の高さの一部は、その選別を映しています。無作為化された比較で参加率の差が「8%高い、ただし信頼区間は0をまたぐ」という控えめな値にとどまったことは、この選別の大きさを裏側から示しています。
この回から言える判断材料
- 「オンラインは続かない」を前提にしない。 対面と無作為に比べたメタ分析では、参加率は遠隔が8%高く、遵守は9%高かった(いずれも確実性は低い)。
- 録画かライブかを確かめる。 高齢者の在宅ビデオ運動の解析では、指導者との生の接触がない提供方法は参加率が11.482ポイント低かった。効いているのは画面の有無ではなく、その場でのやりとりである。
- 1回の長さが短いほうが続く。 同じ解析で、20分未満から60分超になると参加率は24.390ポイント下がると推定された。
- 強度は下がることを織り込む。 目標強度以上で運動した時間の割合は、遠隔33.3%に対し対面63.5%だった。体力向上が目的なら、この差は無視できない。
- オンラインの効果は「何もしない」との比較で示されている。 慢性腰痛で痛み-1.5点・機能-2.8点という結果は待機群との比較であり、対面のクラスと比べたものではない。
- 移動時間という障壁が本当に自分の障壁かを確かめる。 第1回で見たとおり、脱落の最多の理由は「時間がない」(40%)だった。移動が消えることの価値は、その人の生活によって大きく違う。
- 指導者の側も「見えていない」と感じている。 オンラインで教えた指導者のうち、受講者の様子を監視できたと感じたのは66.30%にとどまる。姿勢を細かく直してほしい段階では、この差を見込んでおく。
次回予告
第8回は「立地と時間帯——通いやすさは継続をどこまで決めるか」を扱う。自宅から施設までの距離と利用頻度の関係を測った研究群を読み、新しい施設ができても不活動な人は使わなかったという追跡研究と突き合わせる。距離の効果には、近くに住むことを選べる人の属性が混ざっているという交絡も扱う。
この連載の全10回
- 第1回|なぜ人は辞めるのか——運動の継続率が示す数字
- 第2回|指導者の資格は何を保証するのか
- 第3回|クラスの人数と監督——集団指導で失われるもの
- 第4回|ケガはどこで起きるか——場面・姿勢・経験年数
- 第5回|高温環境は選択基準になるか
- 第6回|価格と契約——支払い方は継続を変えるか
- 第7回|オンラインと対面——効果と継続率の比較(この記事)
- 第8回|立地と時間帯——通いやすさは継続を決めるか
- 第9回|目的で選び方は変わるか——腰痛・不眠・体力向上
- 第10回|主張の見分け方——「科学的に証明された」をどう読むか
出典
- Yuki G, Hespanhol L, Mohr L, et al. Predictors of dropping out from a home tele-exercise programme: A cohort study derived from a randomised controlled trial. Health Promotion Perspectives. 2024;14(3):238-247.
- Simmich J, Ross MH, Russell T. Real-time video telerehabilitation shows comparable satisfaction and similar or better attendance and adherence compared with in-person physiotherapy: a systematic review. Journal of Physiotherapy. 2024;70(3):181-192.
- Hwang R, Bruning J, Morris NR, Mandrusiak A, Russell T. Home-based telerehabilitation is not inferior to a centre-based program in patients with chronic heart failure: a randomised trial. Journal of Physiotherapy. 2017;63(2):101-107.
- Rihova M, Jandova T, Vetrovsky T, et al. Adherence and Retention Rates to Home-Based Video Exercise Programs in Older Adults-Systematic Review and Meta-Analysis. Telemedicine and e-Health. 2024;30(11):2649-2661.
- Kimhy D, Ospina LH, Wall M, et al. Telehealth-Based vs In-Person Aerobic Exercise in Individuals With Schizophrenia: Comparative Analysis of Feasibility, Safety, and Efficacy. JMIR Mental Health. 2025;12:e68251.
- Lai B, Bond K, Kim Y, Barstow B, Jovanov E, Bickel CS. Exploring the uptake and implementation of tele-monitored home-exercise programmes in adults with Parkinson’s disease: A mixed-methods pilot study. Journal of Telemedicine and Telecare. 2020;26(1-2):53-63.
- Tankha H, Gaskins D, Shallcross A, et al. Effectiveness of Virtual Yoga for Chronic Low Back Pain: A Randomized Clinical Trial. JAMA Network Open. 2024;7(11):e2442339.
- Kim S, Solow J, Lein DH, Singh H. Understanding the impact of COVID-19 on yoga instruction: Examining teaching methodology, class components, and injury patterns in the Northeastern US. Explore. 2024;20(6):103079.
- Sharma SK, Telles S, Gandharva K, Balkrishna A. Yoga instructors’ reported benefits and disadvantages associated with functioning online: A convenience sampling survey. Complementary Therapies in Clinical Practice. 2022;46:101509.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。自宅で一人で運動する場合、転倒や無理な動作に気づいてもらえる人がいません。持病がある方、服薬中の方、めまいや平衡感覚の不安がある方は、開始前に医療機関にご相談ください。練習中に強い痛み、しびれ、動悸、息切れが生じた場合は中止してください。






