連載「研究が示す『続く条件』」全10回の第2回です。
スタジオを比べるとき、多くの人が手がかりにするのが指導者の肩書きです。「全米ヨガアライアンス200時間」「NSCA認定パーソナルトレーナー」といった表記は、たしかに何かを保証しているように見えます。では実際には何を保証しているのでしょうか。
この問いには、意外なほど直接的な答えが出ています。認定資格を持つ運動指導者が、その分野の標準的な指針をどれだけ正確に知っているかを、実際に試験して測った研究が複数あるからです。読む前に覚悟が要る数字が並びます。
結論を先に書くと、資格の有無や保有数は指導者の知識をほとんど説明しない。学歴のほうがまだ説明する。そして経験年数は、どの調査でも知識と関連していない——これが現時点で最も正確な要約です。ただし、これは「資格に意味がない」という話ではありません。後半で、資格が確かに効いている領域を見ます。

認定資格保有者の知識を測る
最も規模の大きい調査は、米国スポーツ医学会(ACSM)が2011年に出した運動処方の指針について、認定資格を持つ運動指導者1,808人に11問の試験を課したものです。頻度・時間・強度の推奨範囲を、心拍数・代謝当量・主観的運動強度の3つの表現で問う内容でした。
Zenko Z, Ekkekakis P. Knowledge of exercise prescription guidelines among certified exercise professionals. Journal of Strength and Conditioning Research. 2015;29(5):1422-1432.
回答者の平均正答率は42.87%でした。50問の試験ではなく11問ですから、当てずっぽうでもある程度は当たります。その水準を大きく上回ってはいない、という読み方になります。
内訳のほうがさらに示唆的です。
| 比較した属性 | 結果 |
|---|---|
| 性別・年齢・職業経験年数 | 全体の正答率と関連なし |
| 保有資格数(1個/2個/3個以上) | 全体の正答率に差なし |
| 学歴 | 有意差あり。「大学中退・在学」38.72% から「博士号」47.01% まで |
| 主たる職種 | 有意差あり。ただしどの職種も49%を超えない(パーソナルトレーナー40.59%、臨床運動生理士44.18%) |
もう一つ、この研究が拾った数字があります。回答者は自分の指針の知識を10点満点の7.01と自己評価し、安全かつ効果的に働くために必要な知識水準を8.32と評価しました。つまり、自分には少し足りないという自覚はある。しかし実際の正答率は、自己評価よりはるかに低い位置にありました。
大学教育と資格、どちらが説明するか
同じ研究チームは、この試験を運動科学系学部の学生683人と現役の運動指導者89人に実施しています。
Ekkekakis P, Albee MJ, Zenko Z. Knowledge of Exercise Prescription Guidelines Across One 4-Year Kinesiology Curriculum. Research Quarterly for Exercise and Sport. 2016;87(1):124-130.
正答率は1年生の24.30%から4年生の36.25%へ有意に上昇しました。教育には効果があるということです。しかし4年生と現役指導者(40.65%)のあいだには有意差がありませんでした。この現役指導者群は、58.14%が大学院の学位を持ち、44.95%が複数の資格を持つ層です。それでも4割です。
指標を分解した古い研究も同じ方向を指しています。Malek らは栄養・健康スクリーニング・体力測定法・運動処方・特別な集団への対応という5領域の知識を測り、運動科学の学士号と ACSM または NSCA の認定が知識の強い予測因子であった一方、経験年数は知識と関連していなかったと報告しました。
ここで注意が要ります。Malek らの研究は115人の調査であり、「どの認定か」で差が出たと述べています。つまり資格という言葉は一括りにできない。認定団体によって要求水準が違うのに、表記の上では同じ「認定トレーナー」に見えてしまう、というのがこの研究の含意です。

動きを見る目は、資格で保証されるか
指導の中身に近い能力を測った調査もあります。レジスタンス運動の技術を力学の観点から評価する能力を、30問の試験で測ったものです。対象はパーソナルトレーナー、ストレングスコーチ、理学療法士を含む運動専門職310人でした。
Petushek E, Breen S, Myer GD, et al. Competency and Confidence in Qualitative Biomechanical Assessment of Exercise Technique Among Exercise Professionals. Journal of Strength and Conditioning Research. 2026;40(1):16-23.
全体の正答率は50%でした。職種による有意差も、経験年数による有意差もありませんでした。一方で自信は高く、目的の筋を狙う種目選択に自信があると答えた人は72%、不良な動作を見抜けると答えた人は70%です。能力と自信の距離が、ここでも開いています。なお97%が「もっと学びたい」と答えており、当人たちが手応えの薄さを感じていないわけではありません。
ただし、資格が効いている証拠もあります。1,298人の運動専門職を対象にした別の調査では、CSCS(認定ストレングス&コンディショニングスペシャリスト)を保有していることが、筋力トレーニングの知識問題で7割以上を取るオッズを2.47倍(99%信頼区間 1.46〜4.16)に高めていました。逆にパーソナルトレーナーは理学療法士と比べてオッズ比0.22(99%信頼区間 0.06〜0.79)でした。
McCall CH, Handlery K, Stock MS, Handlery R. Exercise Professionals’ Strength Training Attitudes, Behaviors, and Knowledge: A Survey. Journal of Strength and Conditioning Research. 2026;40(1):24-38.
つまり「資格を持っているか」ではなく「どの資格か」に情報がある。試験の難度と要求水準が高い認定は、実際に知識と結びついています。ここで注意したいのは、この調査が測ったのが知識問題の成績であり、指導の成果ではないことです。オッズ比2.47は「その資格を持つ人のほうが試験に受かりやすい」以上のことを言っていません。
なお、運動指導者の資格制度そのものを扱った調査は、業界に統一された監督機関がないことを繰り返し指摘してきました。Waryasz らが605人のパーソナルトレーナーに行った調査では、運動関連の学士号を持つ人が64.2%、パーソナルトレーニングの認定資格を持つ人が89.0%で、そのどちらも持たない人は2.9%でした。資格そのものはほぼ全員が持っている、ということです。同じ調査は、教育背景や資格の組み合わせによって実務にばらつきがあると述べたうえで、そのばらつきがケガや運動処方の有効性にどう影響するかは不明である、と明記しています。資格の乱立を問題視する研究は多いのに、乱立の帰結を測った研究はほとんどないということです。
ヨガの指導者では何が測られているか
ヨガの指導者資格は、上に挙げたような標準化された知識試験を持ちません。そのぶん、実際の運用を調べた研究が手がかりになります。米国北東部のヨガ指導者への質問紙調査では、受講者に体力面のスクリーニングを行っている指導者は8.8%、医学的なスクリーニングを行っているのは33.7%にとどまりました。
Lein DH, Singh H, Kim S. Are screening by yoga instructors and their practice patterns important to prevent injuries in yoga clients? Complementary Therapies in Clinical Practice. 2020;40:101196.
同じ研究で、受講者のケガが少ないことを予測したのは2つでした。指導者が自身の受けた養成内容に忠実であること(p=0.031)と、太陽礼拝をクラスに取り入れていること(p=0.002)です。養成課程を修了したかどうかではなく、そこで習ったとおりに教えているかが効いていた、という点に注目してください。
受講者側のデータからも同じ方向の示唆が出ています。Cramer らがドイツの1,702人を対象に行った全国調査では、指導を受けずに独学だけで練習していることが、急性・慢性いずれの有害事象のリスク上昇とも関連していました。急性の有害事象を報告した人は21.4%、慢性は10.2%です。ヨガの有害事象の全体像はヨガの有害事象と安全性で詳しく扱っています。

なぜヨガ指導者を直接測った研究が無いのか
ここまでで読者は当然の疑問を持つはずです。紹介した知識調査はどれも運動指導者一般のものであって、ヨガの指導者を測ったものではない。 そのとおりです。この外挿の限界を、はっきり書いておきます。
直接の研究が乏しい理由は3つあります。第一に、共通の試験が存在しないこと。運動処方の分野には米国スポーツ医学会の指針という共通の物差しがあり、だからこそ11問の試験が作れました。ヨガの養成課程は民間の認定団体ごとに内容が違い、全員に出せる共通問題がありません。第二に、名簿が無いこと。誰が指導者であるかを網羅した公的な登録がないため、代表性のある標本を作れません。紹介した Lein らの調査も、回答率46%の地域限定の質問紙です。第三に、成果の定義が難しいこと。筋力や歩行速度と違い、ヨガのクラスの「良し悪し」を何で測るかについて合意がありません。
では何を測れば埋まるのでしょうか。3つ考えられます。ひとつは受講者側のアウトカムで比べること——同じ内容のクラスを、養成時間の長い指導者と短い指導者に無作為に割り当て、受講者の継続率と有害事象を比べる設計です。ふたつめは共通の知識試験を作ること。禁忌、既往のスクリーニング、姿勢の代替案といった、流派によらず答えの定まる領域なら試験化できます。みっつめは有害事象の届出制度です。第4回で見るように、現在のヨガのケガのデータは救急受診と自己申告に依存しており、クラスの中で何が起きたかを追える仕組みがありません。
もう一点、自己選択の問題があります。資格を複数持つ人は、もともと学ぶ意欲が高い人である可能性が高い。 それにもかかわらず保有資格数が正答率と関連しなかったという Zenko らの所見は、むしろ意外な結果として読むべきです。意欲の高い人が集まっているはずの群でも点数が上がらなかったのだから、資格制度が知識を担保していないという読みは、この場合むしろ強まります。
資格ではなく「誰が監督しているか」
知識試験の成績が振るわない一方で、指導者の職種が結果を変えている領域があります。うつ病を対象とした運動試験40件・1,720人分を統合したメタ分析では、理学療法士(β=-1.2029、95%CI -2.0967〜-0.3091、p=0.008)および運動生理士(β=-1.3396、95%CI -2.4478〜-0.2313、p=0.01)が指導した監督つき介入が、脱落率の低さを予測していました。
Stubbs B, Vancampfort D, Rosenbaum S, et al. Dropout from exercise randomized controlled trials among people with depression: A meta-analysis and meta regression. Journal of Affective Disorders. 2016;190:457-466.
第1回で見た変形性関節症のメタ分析でも、運動の専門家による監督があると脱落率は13.2%、なければ20.8%でした。資格試験の点数は低くても、その場に専門職がいることは結果を動かしている。この2つは矛盾しません。指針の暗記と、目の前の人を続けさせる技術は、別の能力だからです。
ただしこの所見にも交絡が残ります。メタ回帰が比べているのは試験どうしであって、同じ試験の中で指導者を無作為に割り付けたわけではありません。理学療法士や運動生理士を配置できる試験は、たいてい研究費が潤沢で、通いやすい会場を確保でき、参加者への連絡も丁寧です。脱落率の低さは、専門職の力量そのものではなく、専門職を雇えるだけの資源を持つ研究環境の反映かもしれない。 この可能性を排除するには、同一の研究の中で指導者の職種を無作為に割り付ける必要がありますが、そうした試験は見当たりませんでした。
この証拠の限界
3点だけ注意を書いておきます。第一に、ここで紹介した知識調査はいずれも自発的に回答した人の集まりであり、業界全体の代表ではありません。回答した人のほうが学習意欲が高い可能性すらあります。
第二に、知識試験の点数が、受講者の成果や安全と直接結びつくことを示した研究はありません。Waryasz らの調査は、教育背景や資格による実務の違いが「ケガや運動処方の有効性にどう影響するかは不明である」と明記しています。点数が低いことは問題の存在を示しますが、その被害の大きさは測られていないのです。
第三に、ヨガの調査群はいずれも横断調査であり、因果の向きを決められません。スクリーニングをする指導者のクラスにケガが少ないとしても、慎重な指導者のもとに慎重な受講者が集まっているだけかもしれません。
この回から言える判断材料
- 「資格の有無」より「どの認定か」を見る。 保有資格数は知識の差を説明しなかったが(Zenko ら 2015)、CSCS のような要求水準の高い認定は知識と結びついていた(オッズ比2.47)。
- 経験年数を保証とみなさない。 知識を測った3つの調査すべてで、経験年数は正答率と関連していなかった。ただしこれは「ベテランが下手だ」という意味ではなく、経験年数という表示からは知識の量を推定できないという意味である。
- 初回に体調や既往を尋ねられるかを見る。 ヨガ指導者で医学的スクリーニングを行っていたのは33.7%、体力面は8.8%にとどまる。尋ねられること自体が、少数派の実践である。
- 独学だけにしない。 監督なしの自己流練習は、急性・慢性の有害事象リスクの上昇と関連していた(Cramer ら 2019)。
- 資格は「知識の証明」ではなく「一定の教育を受けた証拠」として読む。 指針の正答率は平均42.87%だが、専門職が監督する環境は脱落率を下げている。効いている場所が違う。
- ここで紹介した数字は、ヨガ指導者を直接測ったものではない。 運動指導者一般からの外挿であり、共通の試験・網羅的な名簿・成果の定義が無い以上、ヨガの養成課程の質を数字で比べることは現時点でできない。この不在自体を、判断材料として受け取ってほしい。
次回予告
第3回は「クラスの人数と監督——集団指導で失われるもの」を扱う。指導者が受講者の誤りを見つけられる人数には上限があることを実験で示した研究を読み、監督つきと監督なしの運動効果を比べたメタ分析と突き合わせる。
この連載の全10回
- 第1回|なぜ人は辞めるのか——運動の継続率が示す数字
- 第2回|指導者の資格は何を保証するのか(この記事)
- 第3回|クラスの人数と監督——集団指導で失われるもの
- 第4回|ケガはどこで起きるか——場面・姿勢・経験年数
- 第5回|高温環境は選択基準になるか
- 第6回|価格と契約——支払い方は継続を変えるか
- 第7回|オンラインと対面——効果と継続率の比較
- 第8回|立地と時間帯——通いやすさは継続を決めるか
- 第9回|目的で選び方は変わるか——腰痛・不眠・体力向上
- 第10回|主張の見分け方——「科学的に証明された」をどう読むか
出典
- Zenko Z, Ekkekakis P. Knowledge of exercise prescription guidelines among certified exercise professionals. Journal of Strength and Conditioning Research. 2015;29(5):1422-1432.
- Ekkekakis P, Albee MJ, Zenko Z. Knowledge of Exercise Prescription Guidelines Across One 4-Year Kinesiology Curriculum. Research Quarterly for Exercise and Sport. 2016;87(1):124-130.
- Malek MH, Nalbone DP, Berger DE, Coburn JW. Importance of health science education for personal fitness trainers. Journal of Strength and Conditioning Research. 2002;16(1):19-24.
- Petushek E, Breen S, Myer GD, et al. Competency and Confidence in Qualitative Biomechanical Assessment of Exercise Technique Among Exercise Professionals. Journal of Strength and Conditioning Research. 2026;40(1):16-23.
- McCall CH, Handlery K, Stock MS, Handlery R. Exercise Professionals’ Strength Training Attitudes, Behaviors, and Knowledge: A Survey. Journal of Strength and Conditioning Research. 2026;40(1):24-38.
- Waryasz GR, Daniels AH, Gil JA, Suric V, Eberson CP. Personal Trainer Demographics, Current Practice Trends and Common Trainee Injuries. Orthopedic Reviews. 2016;8(3):6600.
- Lein DH, Singh H, Kim S. Are screening by yoga instructors and their practice patterns important to prevent injuries in yoga clients? Complementary Therapies in Clinical Practice. 2020;40:101196.
- Cramer H, Quinker D, Schumann D, Wardle J, Dobos G, Lauche R. Adverse effects of yoga: a national cross-sectional survey. BMC Complementary and Alternative Medicine. 2019;19(1):190.
- Stubbs B, Vancampfort D, Rosenbaum S, et al. Dropout from exercise randomized controlled trials among people with depression: A meta-analysis and meta regression. Journal of Affective Disorders. 2016;190:457-466.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。ここで扱った調査は指導者集団の平均像であり、個々の指導者の力量を判定するものではありません。持病がある方、服薬中の方、関節や腰背部に痛みがある方は、運動を始める前に医療機関にご相談ください。






