連載「研究が示す『続く条件』」全10回の第1回です。
この連載の狙いを先に書いておきます。ヨガスタジオやフィットネスクラブを選ぶとき、私たちは設備や雰囲気や価格を比べます。けれど研究の世界で何度も確かめられてきたのは、もっと地味な事実です。どれだけ良い運動を選んでも、続かなければ効果は生まれない。そして大半の人は続かない。この連載は全10回をかけて、「どこを選ぶか」という問いを、健康行動科学と運動疫学の数字で考え直します。宣伝ではなく判断材料を渡すことが目的なので、通う側にとって都合の悪い数字も同じ精度で扱います。
第1回は出発点として、継続率そのものを見ます。運動を始めた人がどのくらいの割合で、いつ、なぜ辞めるのか。この数字を知らないまま施設を選ぶのは、合格率を知らずに受験校を決めるようなものです。
結論を先に言うと、民間のフィットネス施設では、最初の3か月で半数以上が離脱し、1年後も通い続けている人は少数派である。そして誰が辞めるかを事前に当てる精度は、どの研究でも驚くほど低い——これが現時点で最も正確な要約です。

最初の3か月で何が起きるか
最もよく引かれるのは、ブラジル・リオデジャネイロの施設で、会員記録そのものを追跡した研究です。会員を募集して調査に協力してもらったのではなく、施設の入退会記録という「辞めた人も含めて全員が残っている」データを使っている点が重要です。
Sperandei S, Vieira MC, Reis AC. Adherence to physical activity in an unsupervised setting: Explanatory variables for high attrition rates among fitness center members. Journal of Science and Medicine in Sport. 2016;19(11):916-920.
2005年1月から2014年6月までに登録した5,240人を、12か月間または退会までのいずれか早いほうまで追跡しました。生存曲線が示したのは次の2つです。新規会員の63%が3か月目を迎える前に活動をやめる。そして12か月以上続けて通える人は4%に満たない——原文はここを「less than 4%」と書いています。年齢、以前の運動習慣、開始時の体格指数、減量・筋肥大・健康・美容といった動機は、いずれも離脱リスクと関連していました。ただし著者自身が但し書きを添えています。最も条件の良い組み合わせを持つ人でさえ、12か月を迎える前に離脱する確率は依然として高い。
ノルウェー・オスロの25施設で新規会員250人を1年追跡した研究は、もう少し穏やかな数字を出しています。週2回以上を「規則的」と定義したとき、規則的に運動していた人の割合は3か月で63.4%、6か月で59.6%、12か月で57.2%でした。一方で完全に離脱した人は同じ時点で20.1%、21.1%、28.3%です。
Gjestvang C, Abrahamsen F, Stensrud T, Haakstad LAH. Motives and barriers to initiation and sustained exercise adherence in a fitness club setting-A one-year follow-up study. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2020;30(9):1796-1805.
ただしこの研究で本当に重要なのは別の数字です。4つの測定時点すべてで規則的に運動できていた人は37%でした。ある時点での断面を切れば6割が「続いている」ように見えますが、同じ人が1年を通して続けていたかを見ると、割合はぐっと下がります。断面の数字と縦断の数字は別物だということです。
通う回数はどう減っていくか
「辞めたかどうか」は、実は粗い指標です。籍は残したまま行かなくなる人がいるからです。英国の施設で新規会員1,726人の入館記録を12か月分解析した研究は、頻度そのものの推移を示しました。
平均入館回数は、入会1か月目の7.48回から、12か月目には0.92回まで落ちています。Rand らの分析では、最初の四半期の入館頻度と、3か月目に「同じ曜日・同じ時間・同じ場所」で通えていたかどうかが、入会後4番目の四半期の入館水準と有意に関連していました。文脈の安定、つまり通い方が生活の中の決まった位置に収まっているかどうかが効いている、という読み方になります。
退会した人だけを後ろ向きに調べた研究はさらに厳しい絵を描きます。欧州2チェーン・267施設で2012年に退会した259,355人から無作為に400人を抽出し、在籍期間中の入館記録を調べたものです。
Middelkamp J, Van Rooijen M, Steenbergen B. Attendance Behavior of Ex-members in Fitness Clubs: A Retrospective Study Applying the Stages of Change. Perceptual and Motor Skills. 2016;122(1):350-359.
月4回以上を「規則的」と定義したとき、6か月間それを維持できた人は10%、24か月間維持できた人は2.3%でした。さらに、契約したのに24か月間で一度も来館しなかった人が19.5%います。一方で、1か月まるごと来なかった後に規則的な通い方へ戻った人も49%いました。離脱は一方通行ではなく、行ったり来たりする過程だということです。
この研究はもう一つ、解釈に関わる数字を出しています。6か月目と12か月目の通い方には有意な正の相関があり(r=.61)、12か月目と24か月目のあいだにも相関がありました(r=.45)。半年続いた人は、その後も続きやすい。 一見すると希望の持てる所見ですが、読み方には注意が要ります。これは「半年続けば習慣になる」という因果の話ではなく、同じ人の過去の行動が未来の行動を予測するという自己相関にすぎない可能性があるからです。次の節で見るように、この区別が施設選びの判断を左右します。

辞める人は「いつ」辞めるのか
研究として実施された運動プログラムでは、脱落のタイミングまで記録されます。米国の STRRIDE 試験群は、脂質異常症または前糖尿病を持つ座位中心の成人947人を、対照群または10通りの運動介入のいずれかに割り付けたものです。
Collins KA, Huffman KM, Wolever RQ, et al. Determinants of Dropout from and Variation in Adherence to an Exercise Intervention: The STRRIDE Randomized Trials. Translational Journal of the American College of Sports Medicine. 2022;7(1):e000190.
完遂した652人に対し、脱落したのは295人でした。注目すべきは時期です。脱落した人の67%は、処方された運動量・強度に到達する前、つまり導入期か漸増期に辞めています。 最も多い理由は「時間がない」で40%でした。そして、漸増期を越えた人たちのその後6〜8か月の遵守率は、目立って低下しませんでした。
これは施設選びに直接効く知見です。難所は最初の数週間に集中している。そこを越えられるかどうかが分かれ目であり、越えた後は比較的安定する。したがって「最初の数週間に何が用意されているか」は、設備の豪華さより重みのある判断材料になります。
誰が辞めるかは、どこまで予測できるのか
では、自分が続く側かどうかは事前に分かるのでしょうか。同じ STRRIDE のデータで、38項目の臨床・人口統計・心理社会的指標から遵守率を予測しようとした解析があります。Collins らの2023年の報告では、臨床・人口統計の変数で説明できたのは遵守率のばらつきの16.7%、心理社会的変数では19.3%、すべてを投入しても22.1%でした。単独で5%以上を説明した変数は、健康関連QOL尺度(SF-36)の身体的側面スコアただ1つで、その寄与も8.9%です。
民間施設のデータでも事情は変わりません。Clavel San Emeterio らはスペインの3施設・14,522人の実際の行動データから離脱予測モデルを作りましたが、施設ごとにモデルが一致せず、的中率は70%程度にとどまりました。この分野の総説が繰り返し指摘しているのは、既存の予測モデルがいずれも外部での検証を経ておらず、臨床で使える水準にないということです。
つまり「あなたは続くタイプか」を入口で見分ける道具は、まだ存在しません。 逆に言えば、続かなかったことを個人の意志の問題として片づける根拠も薄いということです。

監督がつくと数字は変わるか
ここから先は、施設を選ぶ側が実際に比較できる要素の話です。膝または股関節の変形性関節症を対象とした運動試験209件、13,102人分を統合したメタ分析があります。
Vancampfort D, Van Damme T, McGrath RL, et al. Dropout From Exercise Interventions in Adults With Knee or Hip Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation. 2024;105(12):2317-2326.
| 条件 | 脱落率(出版バイアス調整後) |
|---|---|
| 全試験の平均 | 17.5%(95%CI 16.7〜18.2%) |
| 運動の専門家による監督あり | 13.2%(95%CI 11.7〜14.9%) |
| 監督なし | 20.8%(95%CI 18.3〜23.5%) |
差は約7ポイント、比にして3分の1ほどの低下です。小さくはありませんが、監督があっても8人に1人は脱落しています。監督は脱落を減らすが、なくすわけではない。 なお同じ解析では、運動群の脱落率は対照群と同程度でした。運動そのものが特別に脱落を招くわけではない、という意味です。
民間の小規模な指導つきスタジオを7年分さかのぼった研究もあります。da Silva らがサンパウロの1施設で2018年から2024年までの587人を解析したところ、平均在籍は13.8か月(標準偏差7.8)、12か月時点の生存率は51.7%でした。前節までの大規模チェーンの数字と比べれば高い水準ですが、それでも1年以内におよそ半数が離れています。減量を主目的とする人(ハザード比0.639)、男性(同0.614)、体格指数25以上(同1.220)が早期離脱と関連していました。
この数字をどう読むか
ここまでの研究のほとんどは観察研究です。解釈には3つの注意が要ります。
第一に自己選択バイアスです。監督つきの環境を選ぶ人、小規模な施設に通う人は、そもそも健康で、意欲が高く、経済的な余裕もある傾向があります。「監督がある施設は継続率が高い」という観察結果の一部は、監督の効果ではなく、そこを選んだ人の性質を映しているだけかもしれません。統計的に有意であることと、その施設に移れば自分の継続率が上がることは別の話です。
第二に定義の不統一です。「継続」を月4回以上とするか週2回以上とするか、籍の有無で見るか入館記録で見るかによって、同じ集団の数字が大きく変わります。上で挙げた研究の継続率が2.3%から57.2%まで開いているのは、人が違うからだけではなく、物差しが違うからでもあります。異なる施設の宣伝文句に並ぶ「継続率」を横並びで比べられない理由がここにあります。
第三に出版バイアスと文脈の差です。メタ分析の脱落率はいずれも出版バイアス調整(trim-and-fill)を経た値であり、調整前の生の数字より高めに補正されています。また臨床試験の参加者は、無償で指導を受け、定期的に測定に呼ばれる立場にあります。自費で通う人と条件が同じではありません。
なぜ観察研究から「続く条件」を読めないのか
この連載は「どこを選べば続くか」を扱います。しかしここまでの研究の設計は、その問いに答えられる形になっていません。理由を具体的に書きます。
施設を選ぶのは本人です。研究者がくじ引きで「あなたは監督つきの施設へ、あなたは監督なしの施設へ」と割り付けているわけではありません。したがって「監督つきの施設は継続率が高い」という観察は、監督の効果と、監督つきを選ぶ人の性質が、分離できないまま混ざった数字です。専門家の指導がつく施設は価格が高い傾向があり、そこを選べる人は所得が高く、時間の融通が利き、健康状態も良い可能性があります。運動を続けられる条件を、施設以外にすでに持っている人たちなのです。
この混ざり方は、逆向きにも働きます。第1回で見た研究のうち、脱落の予測因子として繰り返し挙がったのは、開始時の体格指数、以前の運動習慣、体力、教育年数でした。もともと運動に向いた条件を持っている人ほど続いているのですから、「続いた人がどの施設にいたか」を数えても、施設の効果は取り出せません。
では、何を測れば埋まるのでしょうか。3つあります。第一に、施設そのものではなく、施設の中の特定の要素だけを無作為に割り付けること。第3回で見るように、監督の有無を無作為化した試験は存在します。第二に、本人の選択によらない変化を利用すること——たとえば職場の移転や施設の新設のように、本人の意志と無関係に条件が変わる場面を追う設計です。第三に、開始時の条件を揃えて比較すること。上で挙げた予測因子をあらかじめ測っておき、同じ条件の人どうしを比べる方法です。
この連載で以降に出てくる数字は、この3つのどれに当たるかを毎回確かめながら読みます。無作為化された比較なのか、条件を揃えた観察なのか、ただの相関なのか。 同じ「継続率が高い」という表現でも、意味の強さはまるで違います。
この回から言える判断材料
- 最初の数週間に何が用意されているかを見る。 脱落者の67%は目標の運動量に到達する前に辞めている(STRRIDE)。導入期の設計は、設備の新しさより継続に直結する。
- 「同じ曜日・同じ時間・同じ場所」で通えるかを、選ぶ前に確かめる。 早期の頻度と通い方の安定が、後半の入館水準と関連していた(Rand ら 2020)。
- 運動の専門家による監督の有無は、比較できる数少ない要素の一つ。 脱落率20.8%対13.2%という差は小さくないが、監督があっても脱落は残る。
- 継続率の数字は、定義を確かめずに比べない。 月4回か週2回か、籍か入館記録かで数字は桁が変わる。同じ集団でも、断面で見れば57.2%、1年を通しての縦断で見れば37%になる。
- 「この施設は継続率が高い」を効果として読まない。 施設は本人が選ぶため、継続率の差には選んだ人の所得・体力・健康度の差が混ざる。無作為化された比較でない限り、施設を変えれば自分の継続率が上がるとは言えない。
- 「自分は続くタイプか」を入口で判定しようとしない。 38の指標を使っても、遵守率のばらつきの22.1%しか説明できていない。続かなかったことは、意志の弱さの証拠にはならない。
次回予告
第2回は「指導者の資格は何を保証するのか——養成課程と質」を扱う。認定資格を持つ運動指導者が、運動処方の指針をどの程度正確に知っているかを測った調査群を読み、資格・学歴・経験年数のうち何が知識と結びついていたのかを見る。
この連載の全10回
- 第1回|なぜ人は辞めるのか——運動の継続率が示す数字(この記事)
- 第2回|指導者の資格は何を保証するのか
- 第3回|クラスの人数と監督——集団指導で失われるもの
- 第4回|ケガはどこで起きるか——場面・姿勢・経験年数
- 第5回|高温環境は選択基準になるか
- 第6回|価格と契約——支払い方は継続を変えるか
- 第7回|オンラインと対面——効果と継続率の比較
- 第8回|立地と時間帯——通いやすさは継続を決めるか
- 第9回|目的で選び方は変わるか——腰痛・不眠・体力向上
- 第10回|主張の見分け方——「科学的に証明された」をどう読むか
出典
- Sperandei S, Vieira MC, Reis AC. Adherence to physical activity in an unsupervised setting: Explanatory variables for high attrition rates among fitness center members. Journal of Science and Medicine in Sport. 2016;19(11):916-920.
- Gjestvang C, Abrahamsen F, Stensrud T, Haakstad LAH. Motives and barriers to initiation and sustained exercise adherence in a fitness club setting-A one-year follow-up study. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2020;30(9):1796-1805.
- Rand M, Norman P, Barker AB. Why do new members stop attending health and fitness venues? The importance of developing frequent and stable attendance behaviour. Psychology of Sport and Exercise. 2020.
- Middelkamp J, Van Rooijen M, Steenbergen B. Attendance Behavior of Ex-members in Fitness Clubs: A Retrospective Study Applying the Stages of Change. Perceptual and Motor Skills. 2016;122(1):350-359.
- Collins KA, Huffman KM, Wolever RQ, et al. Determinants of Dropout from and Variation in Adherence to an Exercise Intervention: The STRRIDE Randomized Trials. Translational Journal of the American College of Sports Medicine. 2022;7(1):e000190.
- Collins KA, Ross LM, Slentz CA, et al. Demographic, Clinical, and Psychosocial Predictors of Exercise Adherence: The STRRIDE Trials. Translational Journal of the American College of Sports Medicine. 2023.
- Clavel San Emeterio I, García-Unanue J, Iglesias-Soler E, Luis Felipe J, Gallardo L. Prediction of abandonment in Spanish fitness centres. European Journal of Sport Science. 2019;19(2):217-224.
- Vancampfort D, Van Damme T, McGrath RL, et al. Dropout From Exercise Interventions in Adults With Knee or Hip Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-analysis. Archives of Physical Medicine and Rehabilitation. 2024;105(12):2317-2326.
- da Silva CER, de Jesus Santana W, Morales V, et al. Dropout in supervised small-group exercise programs: a 7-year retrospective cohort study. Frontiers in Public Health. 2026;14:1710202.
この記事は公表された研究の要約であり、診断や治療の助言ではありません。運動の継続に関する数字は、集団の平均であって個人の予測ではありません。持病がある方、服薬中の方、胸痛・強い息切れ・めまいなどの症状がある方は、運動を始める前に医療機関にご相談ください。






