朝ごはんのチャーハンと肉まんは消化が違う?米粒と小麦生地の構造から読む選び方

朝ごはんのチャーハンと肉まんは、米か小麦かだけで消化の速さを決められない。粉砕、たんぱく質との組み合わせ、加熱によるでんぷんの構造を論文から読む。実験室で測った分解速度と最終的な消化量の違いを確かめ、運動前の主食を「太る・太らない」の二択で選ばないための見方を整理する。

冷凍庫のチャーハンを温めるか、湯気の出る肉まんを持って出るか。朝の支度中に迷うと、「米のほうが消化によい」「小麦はお腹に残る」と、原料の名前で答えを出したくなる。しかし、でんぷんの消化には、でんぷん自身と、それを取り囲む食品の構造が関わる。米と小麦という札だけでは、分解の速さは決まらない。[7][9]

ここで注目するのは、太りやすさの順位ではなく、消化酵素がでんぷんに届くまでの道筋である。黒米を細かく加工した実験では、分解の速度が上がっても、最大の消化率は変わらなかった。「速く分かれる」と「最後までに多く分かれる」は別の問いなのだ。[20]

油の量や食べる量、運動までの時刻は、既存記事「運動前のチャーハンと焼きそばは油も数える、一皿の量と開始時刻の決め方」に譲る。また、「糖質制限のチャーハンは油で消化が遅くなる?でんぷんとの結合を研究で読む」が扱う脂質との複合体の論点も、そちらに譲る。こちらでは、皿の米粒と肉まんの生地を入口に、粉砕と小麦生地の組み上がり方を比べる。料理名から主食の優劣を急いで決めず、原料がどんな形に加工されたかを読むための話である。[7][9]

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米粒と、でんぷんの粒は同じ大きさの話ではない

研究で扱う「構造」には、いくつもの層がある。目で見える食品の形、その内部で成分が集まる配置、でんぷんの分子の並びである。食品マトリックスとは、でんぷんやたんぱく質などが組み合わさってできた食品内部の構造を指す。穀物食品を調べた研究では、粉の成分だけでなく加工とこの構造が、消化され方に関わっていた。[9]

茶碗や皿に残る米粒を見て、「粒があるから消化が遅い」と考えるのは早い。外形と内部の分子の並びは、別々に確かめる必要がある。米を材料にした加工研究でも、粒の大きさに加えて結晶性や短い範囲での分子の規則正しさが測られている。結晶性は、分子が秩序をもって並ぶ性質のことだ。[10][20]

赤米を超微粉砕した食品実験では、粒子径の指標であるD90が83.5%小さくなり、表面積が増えた。同時にでんぷんの結晶性が低下し、保水性・保油性や模擬消化での性質も変化した。見える粒の大きさだけが変わる加工ではなかったのである。[10]

このD90の変化は、食べた人の血糖が83.5%変わったという意味ではない。粉の大きさを表す指標の変化である。何を測った数字かを外すと、同じ米の研究が、朝食の効能を競う話にすり替わってしまう。赤米粉の実験は、家庭のチャーハンを食べた結果として読むのではなく、粉砕によって複数の構造が動く例として読むのが適切だ。[10]

肉まんの断面と、チャーハンの米粒は、食卓では見分けやすい。だが、その見た目を実験の粒子径や結晶性の代わりにはできない。朝の台所で顕微鏡を出す必要はない。見える形だけでは決めきれない部分がある、と押さえることが出発点になる。[9][10]

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細かくした黒米では、消化の速度と最大量が別の結果になった

黒米の粒子を使った加工実験は、この違いをよく示している。メディアミリングという粉砕処理によって、粒子が小さくなっただけでなく、でんぷんを構成するアミロースやアミロペクチンが分解され、分子の規則性と結晶性が低下した。その条件で、試験管内の消化速度が速くなった。[20]

速度を表す定数は0.016から0.039 min⁻¹へ増加したが、最大消化率には影響しなかった。ここでの単位は、食べ終わってから何分で胃が空になるかを示すものではない。実験条件下で進む、でんぷんの分解の速さを数式で表した値である。[20]

たとえば、同じ終点に向かう曲線でも、途中の上がり方は違い得る。この研究では、加工の影響が速度と最大値に分かれて現れた。したがって「分解が速くなったのだから、最終的に吸収される量も必ず増える」とは読めない。変化した項目と変わらなかった項目を、並べて残しておきたい。[20]

一方、赤米の超微粉砕研究では、構造の破壊、結晶性の低下、消化特性の変化が示されている。黒米研究の速度の数字を、この赤米に移して使うことはできない。原料も処理も違うからだ。似た加工名でも、別の実験の測定値を借りると、実際には測っていない食品の性質まで決めてしまう。[10][20]

朝食を選ぶ場面では、「米は粒だから遅い、小麦は粉だから速い」と覚えるより、粉砕後にも成分の配置や加熱による変化が続くと考えるほうが研究に近い。粉砕は加工の一工程であり、その後の配合や加熱も完成した料理の消化特性に関わる。食品として形になる過程まで含めて、消化特性を読む必要がある。[9][20]

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小麦のたんぱく質は、量だけでなく組み上がり方を見る

小麦だから一律に消化が遅い、という説明も十分ではない。穀物からパン、パスタ、ピザ生地などを作った食品実験では、たんぱく質の消化に食品の構造が影響し、パンとピザで高い値が示された。これは人の胃の軽さの比較ではなく、模擬消化によるたんぱく質の測定である。[9]

同じ研究で、小麦と比較した別の穀物はたんぱく質量が多かったものの、生地の網目は弾力と安定性が低かった。含有量の多さと、丈夫な構造ができることは同義ではなかったのである。また、でんぷんでは、加工したパンの長時間消化後の消化性画分が小さく、難消化性でんぷんが多いという結果が得られた。[9]

たんぱく質の消化と、でんぷんの消化は、同じ食品でも別々の指標として測られている。前者が高い結果を、そのまま後者の高さに置き換えてはいけない。成分表の「たんぱく質が多い」という一行から、主食全体がゆっくり消化されると判断することにも、この区別が役立つ。[9]

さらに、小麦のグルテンというたんぱく質の集まりを、いったん加水分解して調べた食品実験がある。弱いグルテン由来の分解物が、強いもの由来の分解物より、でんぷんの消化を抑えた。加熱と水を使う処理のなかで、再びたんぱく質が集まることと、密な構造が関係すると考えられた。[13]

これは「弱い生地ほど腹持ちする」という法則ではない。いったん分解したグルテンを使う実験であり、パンや肉まんの手触りを比べた試験ではないからだ。原料の強い・弱いという分類と、加工後に再構成された構造を分けて読む例である。朝の肉まんを指で押して、内部の酵素の通り道まで採点することはできない。[13]

加熱と配合で、同じ穀物の中にも違いができる

小麦粉の水分を調整して熱処理した研究では、水分30%の処理条件で難消化性でんぷんの割合が23.75%から44.42%へ増えた。難消化性でんぷんとは、小腸で完全に消化されず、平均的に大腸へ届くでんぷんと分解産物を指す。ここでは、酵素が届きにくい構造への変化が説明されている。[7][15]

処理によって、でんぷんの結晶の整い方や分子の秩序、でんぷんとたんぱく質の相互作用が強まった。同じ研究では、この粉を使った蒸しケーキの保存中の水分移動や老化も調べられている。加熱は単に温度を上げる行為ではなく、水分の条件と組み合わさって原料の性質を変える工程だった。[15]

ただし、研究で設定された粉の水分条件を、肉まんの温め直し時間に置き換えることはできない。粉への熱処理と、できあがった料理の再加熱は別の工程である。実験の割合は、その条件の原料についての値として扱う。家庭の蒸し器に同じ効果を期待する手順にはしない。[15]

小麦粉の研究を読むときは、実験の入口と出口も見たい。入口は水分を調整した粉への熱処理であり、出口は構造や消化性の測定と蒸しケーキへの応用である。その間を飛ばして「蒸した小麦は消化されにくい」と短くすると、どの条件で変化したのかが消える。調理法の名前が似ていても、研究で操作した条件は残して読む必要がある。[15]

また、難消化性でんぷんの割合が大きくなったという結果と、料理を食べる量を減らせるという結果は異なる。割合は試料の性質を説明するものだ。朝食の満足感を何点上げるか、運動時にどれほど快適かという数字としては扱わない。食品の構造を知る面白さは、すぐに食事の規則へ変えることより、同じ粉にも加工の履歴があると気づくところにある。[7][15]

数字で読む主食の構造と消化

赤米粉の粒子径指標D90は超微粉砕で83.5%低下した。血糖の変化率ではない。[10]

黒米粒子の消化速度定数は0.016から0.039 min⁻¹へ増加した。最大消化率は変わらなかった。[20]

熱処理した小麦粉では、難消化性でんぷんが23.75%から44.42%へ増えた。水分30%の処理条件の結果だ。[15]

ヒトで難消化性でんぷんの測定法を検討した研究の参加者は9人であった。回腸ストーマのある人を対象とした試験だ。[7]

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宮川涼 Founder

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