良質な睡眠と運動、鼻の温度で寝つきは分かる?眠気と眠った時間を分けて読む

運動後に鼻が冷たくなったら眠れるのか。鼻の温度を睡眠の採点表にせず、寝つき、夜中の目覚め、睡眠時間、翌日の眠気を分けて考える。不眠症の運動併用研究と、光・画面利用・始業時刻の研究から、改善した指標と変わらなかった指標を読み、仕事帰りの運動を振り返る視点を示す。

仕事帰りに体を動かし、帰宅して顔を洗う。頬はまだ温かいのに、鼻先はひんやりしている。「体温が下がってきたから、今夜はよく眠れるのだろうか」。寝つきが気になる夜ほど、顔の小さな変化まで睡眠の予告に見えてくる。

ただ、鼻先に触れた感覚を、その夜の寝つきの合否に使うのは控えたい。睡眠を振り返るなら、寝つくまでの時間、途中で起きていた時間、実際に眠った長さを分ける。不眠症を対象とする運動併用の研究でも、寝つきなどの改善と睡眠時間の増加は同じ結果になっていない。[19]

ここで考えるのは「鼻が何度なら眠れるか」ではなく、「運動した夜の何を見れば、眠れたと言えるか」である。既存記事「睡眠不足のほてりは耳の温度で分かる?運動前の注意力と体温を分けて読む」の運動前の論点はそちらに譲り、こちらは帰宅後から翌朝にかけて、睡眠の変化を取り違えない読み方に絞る。

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鼻の温度より先に、眠れたの意味を決める

「眠れた」は便利な言葉だが、中身が広い。布団に入ってすぐ記憶が途切れたことなのか、夜中に起きなかったことなのか、朝まで十分な時間があったことなのか。運動した翌朝にどれを思い浮かべるかで、同じ夜の評価さえ変わる。研究でも睡眠の質、寝つき、総睡眠時間、途中の覚醒を別々に評価している。[19]

寝つきの指標である入眠潜時は、眠りに入るまでの時間を指す。総睡眠時間は眠っていた時間、中途覚醒時間は寝ついたあとに起きていた時間である。運動を含む介入を比較したネットワークメタ分析は、これらを分けて扱った。ネットワークメタ分析とは、複数の介入の直接比較や間接比較を組み合わせて評価する方法だ。[19]

鼻が冷たく感じたというメモと、寝つくまで長く感じたというメモは、別の欄に置くとよい。前者を後者の代用品にすると、「冷たいのに眠れない」という余分な矛盾を自分で作ってしまう。この記事では鼻の温度の目標値を設けない。睡眠の評価は、実際に困っている場面に戻して行う。寝つきが悩みなら寝つき、翌日の眠気が悩みなら眠気を、まず言葉にするのである。[19][18]

たとえば、翌朝早く出る予定があった夜を思い浮かべたい。寝つきが普段より楽でも、寝床に入った時刻そのものが遅ければ、眠るための時間は短くなる。逆に、長く横になったことだけをもって、途中で起きていた時間まで短かったと考えることもできない。睡眠の研究で複数の指標が必要なのは、こうした別の問いを区別するためだ。[19]

温度という数字には、気持ちを引きつける力がある。昨日より下がった、という形で比べやすいからだ。しかし、数字は、自分の問いに対応する指標を選んで読む必要がある。寝つきを知りたい夜に必要なのは、まず寝つきに対応する評価である。顔の感覚と睡眠そのものは、評価する対象が違う。[19]

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運動を組み合わせた研究は、何を改善したのか

不眠症の人を対象とした系統的レビューとネットワークメタ分析には、ランダム化比較試験31件、計2,457人が含まれた。ランダム化比較試験は、参加者を無作為に介入群などへ割り付け、結果を比較する研究である。この分析は運動だけでなく、運動と認知行動療法などを組み合わせた介入を比較した。不眠症の患者を対象とするため、18〜39歳の女性の日常的な運動に同じ効果をそのまま当てはめることはできない。[19]

認知行動療法とは、考え方や行動への働きかけを使う治療である。通常の対照条件と比べ、運動と認知行動療法の併用は、主観的な睡眠の質、寝つき、中途覚醒時間で有意な効果を示した。一方、総睡眠時間を有意に増やした介入はなかった。著者らは、併用の中ではこの組み合わせが最も一貫して支持されたとしつつ、証拠の確かさは全般に限られると評価している。[19]

ここから「運動をすれば誰でもすぐ眠れる」と読むと、研究の条件が消えてしまう。対象は不眠症の人であり、目立った結果は治療との併用である。日常の運動と治療の組み合わせを、帰宅後の単発の運動だけに置き換えることはできない。また、寝つきの結果が良くても、それを眠った時間の延長として説明すると、研究が分けて測った意味が失われる。[19]

立川駅北口を出て、「今日は動いたから睡眠の準備も完了」と思うことはあるだろう。ただ、運動は睡眠の領収書ではない。研究が支えるのは、一定の対象と介入条件で特定の睡眠指標が改善する可能性である。運動したという事実だけで、その夜の長さや翌朝の感覚を先に決めてしまわない方が、振り返りは具体的になる。[19]

比較の順位にも注意したい。この分析は介入の順位を示しているが、順位が上であることと、自分にとって大きな変化が確実に得られることは違う。しかも、睡眠の質を評価する順位と、総睡眠時間を評価する順位は同一ではなかった。どの介入が「一番」かを覚えるより、何を評価した順位なのかを確認する方が、日常での読み違いを減らせる。[19]

自分の目的が「寝つきの苦しさを軽くしたい」なら、睡眠時間が伸びなかったことだけで全体を失敗と決める必要はない。反対に、「眠る時間を確保したい」なら、寝つきの改善だけでは答え切れない。目的と評価項目の対応を保つことが、研究の期待を大きくし過ぎず、得られた変化も取りこぼさない方法である。[19]

眠気と疲れは、研究でも別の結果になる

体を動かしたあとの「疲れた」と、布団に入るころの「眠い」は、普段の会話では混ざりやすい。そこで、睡眠の介入研究がどう評価しているかを見るとよい。朝の青色光療法を扱ったメタ分析は、睡眠の質に加えて、日中の過度な眠気と疲労を別の結果として検討している。[1]

この分析には、不眠症の成人444人を含む14本の論文が入った。神経疾患や内科疾患を伴う人、併存疾患のない人が対象である。主観的睡眠の質や日中の過度な眠気などには改善が見られたが、疲労は有意には減少せず、総睡眠時間も改善しなかった。著者らの評価は、一部の睡眠指標に控えめな改善の可能性があるというものだ。不眠症の成人の結果であり、18〜39歳の女性全般に同じ効果が得られるかは別に検討する必要がある。[1]

寝つきについて示された標準化効果量は−0.545である。これは異なる尺度などの結果を共通の物差しにして比較する値であり、寝つくまでの時間がそのまま同じ数の分だけ短くなった意味ではない。研究の数字を生活の時間に読み替えるときには、単位まで確認したい。小数点のある効果量も、その指標の定義に沿って読む。[1]

この光の研究を、運動後の鼻の温度の説明に転用することはしない。役立つのは、眠気、疲労、睡眠の連続性、長さをそれぞれに評価する読み方である。運動した翌日にも「眠いのか、疲れているのか、両方なのか」と言い直す余地を残したい。[1][19]

たとえば、脚の疲れを感じるのに眠気は少ない朝と、体は軽いのに眠気が強い朝を、同じ「調子が悪い」にまとめないということだ。これは疲労の原因を自分で診断する作業ではない。医師に相談する場合にも、どの感覚が生活のどこで困り事になっているかを伝えるための整理になる。眠気と疲労を別の結果として扱う研究の読み方を、そのまま言葉の選び方に使うのである。[1]

光療法の分析では、装置の種類、介入の期間、光の強さによって睡眠の質の結果が異なり、介入の期間や頻度は睡眠効率の結果に関係した。睡眠効率は、寝床で過ごす時間に対して眠っている時間が占める割合を指す。介入の名前に加えて、期間や頻度も比較の条件となる。[1]

これは、自宅で光の条件を自己流に調整する勧めではない。研究の結果を読むときに、何をしたかに加えて、どのような条件で評価したかも見るための例だ。運動と認知行動療法の併用という条件も同様に、結果から切り離さずに扱いたい。[1][19]

数字で読む運動と睡眠の評価

31件・2,457人:不眠症の運動併用介入を比較したランダム化比較試験の規模である。[19]

14本・444人:朝の青色光療法のメタ分析が扱った、不眠症の成人の規模である。[1]

−0.545:朝の青色光療法による寝つきの標準化効果量であり、分数ではない。[1]

25件・4,562人:画面利用と睡眠の、同じ人の日ごとの関連を統合した研究の規模である。[5]

26分:始業を遅らせた思春期の試験で、追跡時に見られた群間の総睡眠時間差である。[18]

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宮川涼 Founder

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