ダイエットのプロテインバーは保存で硬くなる?水分の移動と栄養量を分ける

ダイエット用に買ったプロテインバーが保存中に硬くなるのは、単なる乾燥だけでは説明できない。水分の変化、成分の分離、酸化、糖とたんぱく質の反応を食品実験から読み分ける。硬さと栄養量を混同せず、原料や甘味料の違い、保存試験の温度、日常で比較するときの確認点を整理する。

引き出しにしまっていたプロテインバーを開けたら、思っていたより歯ごたえがある。買ったときはしっとりしていた気がする。ダイエットの間食として選んだのに、硬くなった分だけ中身まで変わったのだろうか。

保存で硬くなることは、実験でも確認されている。ただし理由は水が抜けることだけではない。たんぱく質の種類、成分の分かれ方、酸化、糖との反応が関わり、同じ保存期間でも変化の仕方が異なる。[1][2][4] 歯で感じる硬さを、そのままたんぱく質の量や体への利用の尺度にするのは飛躍である。

「プロテインバーはよく噛めば腹持ちする?筋トレ後の満足感と成分を分けて読む」では満足感の問いを扱っている。ここで確かめるのは、食べる前の保存で起きる食感の変化だ。隣接するプロテインの原料表示や包材の話にも広げず、バーの内部で何が変わるかを追っていく。

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保存すると硬くなるが、原料で進み方が違う

食品の保存実験は、人に食べてもらって減量を比べる試験とは別物である。対象はバーという食品であり、測っているのは硬さや化学的な変化だ。食品の硬化の結果は、18〜39歳の女性が食べた後の栄養利用や減量へそのまま当てはめられない。この区別を先に置くと、「硬くなる仕組みが分かった」から「ダイエットに向いている」へ話が飛ぶのを防げる。

エンドウ豆、ホエイ、米のたんぱく質を使ったバーを保存した実験では、6週間で硬さがそれぞれ7.2倍、5.4倍、4.4倍になった。[1] ホエイとは乳由来のたんぱく質の一種である。どの原料のバーも硬くなった一方で、増え方はそろわなかった。植物由来という大きなくくりでも、エンドウ豆と米では違う結果だった。[1]

ここで比べているのは、それぞれの出発点からの変化である。7.2倍という数字だけを見て、店頭で売られるエンドウ豆のバーが米のバーより必ず硬い、と読むことはできない。増加倍率と、口に入れた時点の硬さは別の問いだ。実験の数字は市販品を原料名だけで順位づけするためのものではない。

さらに、米のバーでは酸化が起こらず、エンドウ豆とホエイではたんぱく質と脂質の酸化が観察された。それでも米のバーは硬くなっている。[1] 酸化さえなければ硬化しない、という単純な説明も成り立たない。食感は、ある化学反応の有無だけを知らせる表示灯ではないのである。

研究者は、水分の損失、酸化、糖との反応、たんぱく質の凝集が硬化と関連したと報告している。[1] 凝集とは、たんぱく質が集まってまとまりを作ることだ。複数の変化が並行していたという結果を、特定の変化だけが全てを決めたという説明に狭めないことが大切になる。

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水分が減ることと、内部で成分が分かれること

しっとりした食品が硬くなると、「乾いた」と言いたくなる。だが、水分が外へ失われる変化と、食品内部で成分のまとまり方が変わることは分けて考えたい。高たんぱくバーでは、水分損失と硬化の関連に加え、内部の成分が分離する現象と食感の変化も調べられている。[1][2]

乳たんぱく質濃縮物を使ったモデルバーの実験では、そのままの原料、押出処理した原料、加熱処理した原料が比較された。押出処理は原料に物理的な加工を施す方法である。押出処理した原料のバーは、他の原料のバーより保存中の硬化が遅かった。[2] 原料名が同じ系統でも、製造前の処理が食感に関わった例である。

顕微鏡で内部を観察すると、押出処理した原料のバーでは成分の分離が起きにくく、食感の変化も少なかった。[2] 成分の分離とは、食品の中で異なる成分が別々の領域に分かれることだ。均一に見える棒状の食品でも、保存中には内部の構造が変わる。[2]

この結果を、水がある成分から別の成分へ決まった量だけ移った、と読み替えることは避けたい。成分の分離を観察したことと、水分の移動先や移動量を特定することは同じではないからだ。日常語の「水分が移動して硬くなる」は分かりやすいが、説明の便利さと測定された事実は区別する必要がある。

同じ研究では、たんぱく質の結合や化学的な指標の変化が、食感の変化と一貫して対応するわけではなかった。[2] ある指標が増えれば必ず同じだけ硬くなる、という関係ではない。袋の外から触った感じだけで、内部の水分や結合の状態を逆算するのは難しいという読み方になる。

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糖との反応は保存の後半にも関わる

水の話だけで説明しようとすると、時間を置くほど進む化学変化を見落とす。還元糖という反応に関わりやすい糖を含むモデルバーでは、メイラード反応とたんぱく質の変化、硬化との関係が調べられた。[4] メイラード反応は、ここでは糖とたんぱく質が関わる反応として捉えればよい。

実験の保存温度は25°C、35°C、45°Cだった。反応の初期には硬さの変化が小さかったが、その後の保存では、たんぱく質が大きな分子のまとまりを作る変化とともに、食感が硬くなった。[4] 保存の初期と後半では、反応の進み方も食感への現れ方も異なる。[4]

たとえば、買った直後には気にならなかった歯ごたえが、後になって目立つ場面を考える。そこで「最初からこの原料は硬い」と考えるのか、「保存に伴う変化かもしれない」と考えるのかで、確認したい情報は変わる。研究は、初期の食感だけでは保存後の状態を語り尽くせないことを示している。[4]

このモデルでは、還元糖を糖アルコールなどの還元性を持たない原料に置き換えると、食感の変化が小さくなった。[4] ただし、これは配合を変えた食品実験の結果である。家庭で完成品に何かを足して元へ戻す方法や、特定の甘味料を含む商品が万人に適するという話ではない。

エンドウ豆とホエイのバーを調べた別の保存実験でも、糖がたんぱく質に結びつく変化が確認された。[1] 方向の近い結果ではあるが、違う配合の研究を合わせて、全商品に共通する硬化速度を決めることはできない。食品の仕組みを理解することと、手元の商品の残り日数を計算することには距離がある。

酸化の実験では、化学変化の調べ方も複数組み合わされている。たんぱく質の状態を示す蛍光や化学的な指標、脂質の酸化を示す指標、たんぱく質の集まり方を調べる分析などである。[1] 硬さを測って終わりではなく、内部で起きた変化と照らし合わせている点が、この研究を読む手がかりになる。

それでも、関連が見られたという記述と、原因を切り分けて確定したという記述は区別したい。同じ保存期間に硬さと酸化の指標がともに変わった場合、同時に起きた別の変化も考える必要がある。研究者も、化学変化が凝集を起こして硬化につながる可能性を述べている。[1] 日常の説明でも、その可能性を確定した工程図に変えない方が正確だ。

甘味料だけで硬さを決めつけない

低糖質のバーは甘味料のせいで硬い、と考える人もいるだろう。エンドウ豆、乳、ホエイのたんぱく質と、複数の甘味料を組み合わせた食品実験では、甘さをそろえた15種類のバーが比較された。[3] 甘さを同程度に調整することで、単に甘いほど好まれるかという問いから、原料と食感の関係へ焦点を移している。

保存条件は35°C、湿度55%、期間は35日だった。ホエイと果糖を組み合わせたバーは初期には最も硬かったが、保存が進むと他の配合との差の現れ方が変わり、21日目にはバー間の硬さに有意差がなくなった。[3] 有意差がないとは、この比較で統計的に明確な差が確認されなかったという意味で、全てが完全に同一になったという意味ではない。

同じ実験で、エンドウ豆のバーは乾いた食感でまとまりにくく、ホエイのバーは密でまとまりが強かった。非栄養性甘味料は、この低糖質・高たんぱくバーの硬さを悪化させなかった。[3] 原料名の印象で原因を決めるより、どの配合をどの時点で比べたかを見る方が役に立つ。

甘味料の研究と糖の反応の研究は、単純な賛否の関係ではない。前者は甘さをそろえた配合全体を保存して比べ、後者は反応に関わる糖を置き換えたモデルを調べている。[3][4] 問いが違えば、結果の使い道も違う。甘味料という言葉だけを共通項にして結論をひとつに束ねると、その違いが消えてしまう。

数字で読む保存中の食感

6週間:エンドウ豆、ホエイ、米のバーを追った保存期間で、人の減量期間ではない。[1]

7.2倍・5.4倍・4.4倍:同じ実験での硬さの増加倍率。原料ごとの出発点に対する変化である。[1]

25°C・35°C・45°C:糖との反応を調べたモデルバーの保存温度。家庭の保管条件へ一律に換算しない。[4]

15種類:甘さをそろえ、たんぱく質と甘味料を組み合わせて比較したバーの数である。[3]

21日目:甘味料とたんぱく質を比較した保存実験で、硬さの有意差が見られなくなった時点だ。[3]

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宮川涼 Founder

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