運動とサウナの汗の違いは匂いで分かるか、濃度と出た量を分けて読む

運動とサウナの汗は、匂いやタオルの濡れ方だけで比べられるのか。自転車運動、食事条件、ラグビーの研究から、汗のアンモニア濃度と排出総量を分けて読む。採る場所や時刻で変わる測定の意味を確かめ、汗の多さを運動の成果に置き換えず、日々の記録に残したい条件を考える。

運動を終えて着替えるとき、サウナ帰りとは汗の匂いが違う気がする。そこで「運動の汗には別のものがたくさん出ている」と考えたくなる。しかし、汗の成分を比べるには、濃さと出た量を分ける必要がある。自転車運動の実験では、汗のアンモニア濃度が違っても、汗とともに失われた総量は近かった条件がある。[4]

匂いの印象から、運動とサウナの汗の成分や排出量を判定することはできない。ここで手がかりにするのは、鼻の評価ではなく、運動強度、室温、食事条件を変えて血液と汗を測った研究である。サウナの汗を低品質、運動の汗を高品質と順位づけするための比較ではない。[1][2][4]

既存記事「常温ヨガとホットヨガの違いは腋で決まるか、検温の時間と汗から比較を考える」には体温の比較を譲る。また、「汗のアンモニア臭は代謝が悪いせい?血液・汗・皮膚で違う成分の動きを読む」が扱う成分の由来よりも、この記事では、運動とサウナを比べたくなった場面で、何の量をそろえるべきかを考える。

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濃い汗と、たくさん出た汗は同じではない

アンモニア濃度とは、一定の体積の汗に含まれるアンモニアの量である。一方、汗による排出総量は、その汗の量も含めて考える値だ。自転車運動の研究が濃度と総量を別々に報告しているのは、両者が同じ動きをするとは限らないからである。薄い汗が多く出た場合と、濃い汗が少なく出た場合には、濃度の順位だけで総量の順位を決められない。[4]

男性の医学生が参加した実験では、最大酸素摂取量の80%に相当する強度で30分間、自転車をこいだ。最大酸素摂取量は、その人が運動中に取り込める酸素の量の上限を表す指標であり、この実験では人ごとの運動強度を決めるために使われた。同じ強度の運動を、室温20℃と0℃で行っている。男性医学生の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできず、ここでは濃度と総量を分ける比較の考え方を読む。[4]

20℃では汗の量が428±138ml、0℃では245±86mlだった。汗のアンモニア濃度は、20℃で7,140μmol/L、0℃で11,816μmol/Lである。μmol/Lは、汗の一定の体積に含まれる物質量を示す単位だ。この比較では、汗が少ない条件のほうがアンモニアは濃かった。[4]

ところが、汗とともに失われたアンモニア総量は、20℃で3,360±2,080μmol、0℃で3,310±1,250μmolと近い値だった。濃度だけを見れば寒い条件が大きく見えるが、総量まで読むと景色が変わる。これらの±は研究が報告したばらつきであり、個人に当てはめる判定範囲ではない。[4]

これは「寒い場所で運動すれば汗の成分がよくなる」という話ではない。比べたのは男性の自転車運動であり、サウナとの比較でもない。読み取るべきなのは、室温と汗の量が違うとき、濃度だけで排出の多さを決める読み方は成り立たないという点だ。タオルの濡れ方も濃度の代役にはならない。[4]

この数値を読むとき、集団の平均を自分の汗の量として扱わないことも必要だ。20℃の条件の排出総量には3,360±2,080μmolという幅のある表記が付いている。中心の値が近いという結果は、参加者全員が同じ量を出したという意味ではない。「研究では近かった」と「誰でも同じになる」の間には距離がある。[4]

また、濃度の単位に使われる体積と、実際に出た汗の体積は区別する。μmol/Lという表記は、汗を一定の体積に換算して濃さを示すためのものだ。実際にその量の汗が出たという意味ではない。研究では汗量がmlで別に報告されているので、濃度の数字だけを切り出した紹介より、汗量と並べて読むほうが比較を追いやすい。[4]

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運動強度を変えると、汗の量以外も変わる

同じ自転車実験には、室温20℃で最大酸素摂取量の40%の強度を用いた条件もある。この条件の汗の量は183±69ml、汗のアンモニア濃度は2,076μmol/L、総量は350±230μmolだった。同じ室温の高い強度の条件より、汗の量もアンモニア濃度も総量も小さい値だった。[4]

血液では、80%の強度の運動後に血漿アンモニアが上昇し、40%では安定していた。血漿は血液の液体部分であり、この実験では汗と並行して採血も行われた。研究者は、運動中に生じたアンモニアの一部が汗から失われ、その量は運動の仕事率や血漿濃度の上昇とともに増えたと報告している。[4]

ここでは、室温の比較と運動強度の比較を混ぜないことが大切だ。高い強度のまま室温を変えたときには、汗の濃度が違っても総量は近かった。室温をそろえて強度を変えたときには、総量も違った。同じ論文の中でも、変えた条件が違えば答えている問いは別になる。[4]

仕事帰りに駅から早足で歩いた日と、休日に座って温まった日を思い浮かべてほしい。本人はどちらも「よく汗をかいた」と記憶していても、そこには動いた条件の違いがある。汗の成分を比較したいなら、まず何をした時間だったのかを分ける。この実験の自転車の数値をそのまま当てはめる必要はないが、動いた強さを消して濡れた量だけを比べるのは避けたい。[4]

また、研究の高い強度を、アンモニアを多く出すための推奨強度に変えてはいけない。測定値の増加は、健康上の利益の大きさと同義ではない。この実験が確かめたのは運動に伴う血液と汗の成分の変化であり、自分の運動を評価する採点表として使うものではない。[4]

食事条件も違えば、同じ運動でも比較が変わる

食事を変えて同じ運動を行った小規模な試験もある。対象は健康で運動習慣のない男性7人で、最大酸素摂取量の50%の強度で60分間、自転車をこいだ。通常の混合食を3日間とった後と、同じエネルギー量の低糖質食を3日間とった後が比べられた。男性7人の試験なので、18〜39歳の女性でも同じ大きさの変化が起きるかは、この比較から判断できない。[2]

通常食ではエネルギーの60%が糖質、25%が脂質、15%がたんぱく質だった。低糖質食では糖質が5%未満、脂質が50%、たんぱく質が45%だった。このため、「糖質だけを減らして他は全く同じにした比較」と理解するのは正確ではない。食事全体の組み合わせが大きく変わった試験である。[2]

低糖質食の後には、運動開始後30分と60分の血漿アンモニアが通常食の後より高く、汗のアンモニア濃度と汗から失われた総量も高かった。研究者は、運動開始時の糖質の蓄えの少なさと関連して、アンモニアの産生が増えた可能性を示している。これは可能性についての説明であり、汗の匂いから糖質の蓄えを読み取れるという意味ではない。[2]

この結果から、帰宅時の汗が気になった人に食事制限を勧めることはできない。対象は男性の少人数で、食事条件も大きく異なる。いつもの夕食で主食を少し残した場面と、実験の食事条件は区別する必要がある。汗を変えるために実験の食事を再現するのではなく、比較する日の食事まで同じとは限らないと理解するための研究だ。[2]

運動とサウナの違いを考える場合も、前の日の食事を飛ばして場所だけを原因にするのは早い。運動内容をそろえた試験でさえ、食事条件によって汗のアンモニアが変わったからである。ただし、食事の違いが自分の感じた匂いの原因だと断定することもできない。測定した成分と、生活の中の印象を行き来するときには、その境目を残しておく。[2]

食事試験の採血は、運動直前、運動開始後30分、60分に行われている。つまり、同じ運動中の変化を時間に沿って確かめた設計だ。汗のアンモニアも低糖質食の後で高かったが、血液の値と汗の値は別々の測定結果として報告されている。血液の変化を知っただけで汗の濃度まで決めた研究ではない。[2]

この手順は、生活の比較を考えるうえでも役立つ。朝の運動が終わった直後の印象と、夕方のサウナから帰宅した後の印象では、場所の違いに時刻の違いも重なる。どちらがよい汗かを急いで決める前に、比較したい条件を言葉にする。そのうえで、実験の結果は運動中の成分測定として読み、自分の鼻が感じた違いの説明に直結させない。[2][4]

数字で読む汗のアンモニア

30分:男性医学生が自転車運動を行った時間。運動の条件をそろえた比較である。[4]

428±138mlと245±86ml:高い強度で運動したときの20℃と0℃の汗の量。汗量は同じではなかった。[4]

7,140μmol/Lと11,816μmol/L:同じ条件の汗のアンモニア濃度。少ない汗のほうが濃かった。[4]

3,360±2,080μmolと3,310±1,250μmol:同じ条件のアンモニア排出総量。濃度差をそのまま総量差にはできない。[4]

7人:食事を変えて自転車運動中の血漿と汗を調べた試験の参加者数。個人差を含む大規模な判定基準ではない。[2]

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宮川涼 Founder

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