サイドプランクは呼吸を遅くすれば楽?息の回数と保持時間を取り違えない読み方

サイドプランクでゆっくり息を吐けば長く支えられるのか。呼吸のペースをそろえた握力運動の実験を手がかりに、息の回数、保持時間、神経や血管の反応を分けて考える。等尺性運動の研究で分かったことと、自宅の記録で確かめたい条件を整理し、血圧の変化を呼吸法の効果と混同しない見方を示す。

吐き終わりを合図に数えると、サイドプランクの成績は変わるのだろうか。マットを片付ける前、昨日より少ない呼吸で終えたことが気になる。短くしか保てなかったのか、それとも息の間隔が長かっただけなのか。自分の数え声を時計にすると、その時計の速さまで自分で変えられる。

先に答えの芯を置く。呼吸の回数と姿勢を保った時間は別の記録である。また、呼吸のペースをそろえて行う運動実験は、それだけで「遅い呼吸ほど保持する力が高まる」という比較にはならない。呼吸をそろえた握力運動の研究で検討されたのは、運動の強さと神経活動の関係である。[3]

既存記事「サイドプランクは上の脚を後ろへ伸ばす?横上げと比べる前に支える姿勢を読む」には脚の位置の問いを譲る。ここでは呼吸を数える練習場面を入口に、息の速さを変えることと、同じ条件で保持力を比べることの違いを追う。背筋や背中への効き方を、呼吸数だけで採点しないための読み物である。

既存の「サイドプランクの保持時間が伸びたら効果あり?持久力と暮らしの変化を分けて読む」には保持成績と生活の変化を、「サイドプランクは脇腹より肩が先に疲れる?支える筋肉と保持時間の限界を読む」には肩が先に疲れる問いを、「プランクの効果は重りを足すと増える?保持時間と筋肉の負荷を分けて読む」には加重の問いを譲り、ここでは呼吸の周期を時間の代わりに使う際の混同に絞る。

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息を数える時計は、自分で速さを変えられる

たとえば「吸って、吐いて」を区切りとして記録するなら、その区切りがゆっくりになるほど、同じ経過時間に収まる区切りは少なくなる。呼吸を数えた結果だけを見て「今日は弱かった」と判断すると、時計の進み方を変えたことまで体力の変化に含めてしまう。ここは運動効果以前の、記録の単位の問題だ。

反対に、いつもと同じ呼吸の回数まで続けようとすれば、ゆっくり息をする日に経過時間が延びることもある。この場合も、長くなった時間のすべてを筋力の向上と呼ぶわけにはいかない。何を終わりの合図にしたかが違うからである。自分の呼吸にストップウォッチ役まで頼むと、時計が練習に参加してしまう。

記録欄を作るなら、経過時間、呼吸のペースを意識したか、終えた理由を別に書く、という整理ができる。これは特定の呼吸法を勧める処方ではない。昨日の自分と比べるときに、何を測ったのかを後から読めるようにする工夫である。「息が少なかった」だけのメモでは、長く吐いたのか、途中で数え忘れたのかも区別できない。

研究を読むときにも同じ区別が要る。呼吸を一定のペースに合わせた条件で測定したことと、呼吸の速い条件と遅い条件を比べたことは同じではない。握力運動の実験では、呼吸のペースをそろえた参加者について、異なる強さの収縮と筋交感神経活動の関係が調べられた。主役になっている比較を確かめてから、練習への意味を考えたい。[3]

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呼吸をそろえた実験で、実際に比べたのは力の強さ

Victorらの実験では、参加者9人が呼吸のペースをそろえ、最大随意収縮の25%、50%、75%の強さで間欠的な握力運動を行った。最大随意収縮とは、この実験で本人が随意的に出す最大の力を基準にしたものである。間欠的とは、力を入れる時間と緩める時間を繰り返す形だ。神経に微小電極を用いて筋交感神経活動が記録された。[3]

筋交感神経活動は、ここでは筋肉に関係する交感神経の信号として読む。筋肉そのものの電気的な働きを見る筋電図とも、姿勢を保てた秒数とも別の測定である。25%と50%の強さでは、その神経活動への影響が認められなかった。一方、75%では収縮のタイミングに神経活動がそろい、収縮中の活動は弛緩中の5.7±1.3倍だった。[3]

この数字は「呼吸を遅くすると力が何倍になる」という意味ではない。比べたのは強い握力運動の収縮中と弛緩中であり、測ったのは神経活動である。数字の大きさが目を引いても、分母と分子を取り違えれば、まったく別の話になる。サイドプランクの記録更新の倍率として持ち帰ることはできない。[3]

さらに別の11人では、神経と筋肉の間の伝達を部分的に遮断する実験条件が使われた。力の出力が初めの最大随意収縮の25%未満に落ちても、運動と神経活動の同期は減衰せずに残った。研究者は、強い間欠的な運動では、運動を行おうとする中枢からの指令が運動活動と筋交感神経活動の同期を生むと結論している。[3]

ここから得られるのは、外へ出た力だけを見ても、運動中の神経活動には中枢からの指令も関わるという視点だ。実験で用いた特殊な条件を日常の疲れと同一視する必要はない。むしろ、見た目には動かない運動でも、内部で測る対象によって答えが変わることが読みどころになる。呼吸を整えた実験だったという事実は、その結論の範囲を広げる合言葉にはならない。[3]

保持中、終了後、続けた後は別の時間帯だ

サイドプランクを調べていると、動かずに力を入れる等尺性運動の話に出会う。そこで血圧に関する結果を見つけても、「ゆっくり呼吸しながら支えると、その場ですぐ楽になる」とは結び付けない。保持中の体感、運動終了後の測定、練習を続けた後の安静時の値は、それぞれ異なる問いである。[7][8][20]

血圧が高めの男性17人を対象とした無作為化クロスオーバー試験では、最大随意収縮の60%と30%の下肢等尺性運動、運動をしない条件が比較された。クロスオーバーとは、参加者が異なる条件を経験する比較の設計である。運動量をそろえたうえで強度の違いを検討したところ、有意な血圧低下は認められなかった。対象は血圧が高めの男性であり、18〜39歳の女性に同じ反応が起こるかは、この試験からは判断できない。[8]

血圧以外の測定には変化があった。高強度条件では回復中の心拍数が高まり、心拍変動の指標が低下するなど、自律神経に関する反応が低強度条件より大きかった。心拍変動は拍動の間隔の変動を見る指標である。血圧が下がるかという問いと、回復中に神経系がどう反応するかという問いには、同じ試験でも異なる答えが出た。[8]

一方、高血圧のある40〜70歳の36人を無作為に分けた試験では、両手の握力運動と両脚の膝伸展運動が、運動をしない条件と比較された。どちらも本人の最大能力の30%で、2分の収縮を4回行った。その後24時間の携帯型測定で、収縮期血圧は握力群で4.1 mmHg、膝伸展群で5.6 mmHg低く、運動群同士の差は認められなかった。40〜70歳の高血圧患者の結果であり、18〜39歳の女性全般に同じ低下幅を見込むことはできない。[20]

後者では拡張期血圧は24時間の測定で変化しなかった。収縮期と拡張期は、血圧の高い側と低い側として示される別の値である。「血圧に変化があった」とだけ覚えると、変化しなかった測定まで都合よく塗り替えてしまう。また、運動後の生活時間を追った結果は、保持している最中の楽さの点数にはならない。[20]

試験間で結果を読む際には、対象、運動の種類、強度、測定した時刻を並べたい。男性の下肢運動の回復期に有意な血圧低下がなかったことと、高血圧の成人の運動後24時間に収縮期血圧が低かったことは、異なる条件の結果として扱う。片方を消して「等尺性運動は必ず下がる」、あるいは「変わらない」とするのは粗い読み方になる。[8][20]

握力の研究で使われた最大随意収縮の割合は、その人の最大の力に対してどれだけ力を出したかを示している。同じ割合でも、呼吸の回数を指す数値ではない。実験の説明に呼吸と強度が並んでいると、息を調整して強度を作ったように読めるかもしれないが、この比較で段階が設定されているのは握る力である。運動の条件を読む際は、何をそろえて、何を変えたかを別々に拾うと混乱しにくい。[3]

また、部分的な神経筋遮断の条件で出力が低下しても神経活動の同期が残ったことは、単純に「力が弱いから神経の反応も弱い」と説明しきれない場面を示す。日常の練習で感じる楽さを、そのまま神経活動の小ささの証拠にしないためにも、この測定対象の違いは覚えておきたい。体感を否定するための研究ではなく、体感とは別に測れる事柄があると知るための実験である。[3]

血圧の比較でも、平均差の対象を確かめたい。握力群の低下と膝伸展群の低下は、それぞれ運動をしない対照群と比較された結果だ。手と脚の数値を引き算して、脚のほうが必ず優れると決めた試験ではない。運動群同士の差は認められなかったという結果まで含めて、初めて比較の形が保たれる。[20]

数字で読む呼吸と等尺性運動の距離

9人:呼吸のペースをそろえて間欠的な握力運動を行った実験の参加者数である。[3]

5.7±1.3倍:最大随意収縮の75%で、収縮中の筋交感神経活動を弛緩中と比べた値である。[3]

17人:下肢等尺性運動の強度を比較した男性の試験で、有意な血圧低下はなかった。[8]

40試験:安静時血圧への効果を統合した無作為化比較試験の数である。[7]

375人:中高年の血管指標を調べた10試験のメタ分析に含まれた人数である。[6]

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宮川涼 Founder

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