プロテインを温めると匂いが変わる?硫黄の香りと傷みを分けて考える飲み方

プロテインを温めたときの卵のような匂いは、加熱で生じる硫黄系の成分が関わる場合がある。ホエイ溶液と乳たんぱく飲料の実験をもとに、温度と時間、原料の組成、製造方法で香りが変わる理由を読む。家庭の一杯に研究の条件をそのまま当てはめず、匂いと安全性を分けて考える。

朝の台所で、冷たい飲み物を避けたくてプロテインを温めた。いつもの甘い香りの奥に、卵を思わせる匂いがある。昨日までと違うだけに、傷んだのか、温め方が悪かったのかと手が止まる。

加熱によって、ホエイそのものから硫黄を含む香りの成分が生じることは実験で確かめられている。温めた乳たんぱく飲料の香りは、条件によって異なる。加熱の方式や原料の組成を変えると、硫黄・卵様の香りが検出される場合と、検出されない場合がある。[5][7][9]

したがって、匂いの変化をすべて傷みと結び付けることも、加熱臭なら飲めると決めることも避けたい。ここで扱うのは、温めると香りが変わる仕組みである。既存記事「女性のソイプロテインはなぜ豆の匂いがする?香りの成分と加工の違いを研究で読む」に大豆由来の香りを譲り、こちらでは乳由来のホエイと加工条件に焦点を置く。

既存記事「プロテインの香りは容器に移るもの?飲み終えた匂いと栄養の評価を分けて読む」は、飲み終えた容器で感じる匂いを扱う。ここでは容器への香り移りではなく、飲料を加熱した際に生じる成分を追う。

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卵のような香りは、加熱だけでも生じる

ホエイは乳由来のたんぱく原料である。加熱したホエイ溶液を調べた食品化学の実験では、揮発性硫黄化合物、つまり空気中へ移りやすい硫黄を含む成分のうち、硫化水素が最も多く見つかった。対象には、分離ホエイたんぱく、ホエイのモデル系、個別のホエイたんぱくが含まれていた。[7]

分離ホエイたんぱくの溶液では、90℃で10分間加熱した後に硫化水素が検出された。90℃で120分間の加熱や、超高温処理に似せた条件では、硫化水素が有意に増えた。この研究は、人がプロテインを飲んだ後の反応ではなく、容器内のたんぱく質に熱を加えた実験である。示すのは香りの発生源と加熱条件との関係だ。[7]

研究者は気体の成分を測るだけでなく、たんぱく質側で起きた反応も調べた。その結果、ホエイに含まれるβラクトグロブリンというたんぱく質のシステイン残基が、硫化水素の発生に関わっていた。システイン残基とは、たんぱく質の鎖の一部になっているシステインというアミノ酸の部分を指す。硫黄を含むその部分が、熱による香りの出発点だったのである。[7]

この結果は、匂いが変わるたびに外から別の物質が入り込んだと考えなくてもよいことを示している。原料にもともとある部分が、加熱によって別の成分の発生に関わる。コップの中身を替えなくても、熱のかけ方によって香りの顔ぶれは変わり得る。[7]

ただし、硫化水素を機器で検出することと、人が卵のような香りを感じることは、同じ測定ではない。溶液の実験は成分と反応の仕組みを捉え、飲料の研究は実際の香りの評価も組み合わせている。その両方を読むと、化学反応から飲み物の印象へつながる道筋が見えやすい。[5][7]

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最高温度だけでは、香りの種類を予想できない

バニラ風味の乳たんぱく飲料を比較した研究では、たんぱく質がおよそ6.5%の飲料を、異なる方式で熱処理している。直接蒸気を注入する超高温処理は142℃で3秒、レトルト処理は123℃で殺菌を達成する時間を5分、オートクレーブ処理は112℃で6分という条件だった。いずれも食品加工の実験条件であり、家庭の温め方の指定ではない。[5]

硫黄・卵様の香りが検出されたのは、直接蒸気を注入した飲料だけだった。この飲料では、硫化水素とメタンチオールという硫黄系の成分の相対量も最も多かった。一方、レトルトとオートクレーブの飲料では、カラメル様の香りが検出された。温めれば全部が卵の匂いになる、という結果ではなかった。[5]

カラメル様の香りを示した飲料では、多くのアルデヒド、アルコール、エステル、ケトン、フラン類の相対量が、未加熱および直接蒸気処理の飲料より多かった。研究は、メイラード反応やストレッカー分解による生成物が、その特徴的な香りに寄与したと位置付けている。ここでの要点は、熱で生じる成分が硫黄系だけではないことである。[5]

この比較から、最高温度の順に匂いの強さや種類を並べる読み方はできない。温度に加えて時間と加熱方式が違い、現れる香りも異なるからだ。数字だけ見れば最も高温の処理は短いが、短時間だから香りが変わらないわけでもなかった。温度計の表示は、飲み物が通った工程全体の代わりにはならない。[5]

家庭で「何℃なら絶対に臭くならない」と線を引きたくなる気持ちは分かる。しかし、これらの条件は特定の溶液や配合飲料で比較したものだ。粉の種類も配合も異なる一杯に、工場の条件を移して温度の正解を作ることはできない。加熱法の研究は、まず違いが生じる理由を考えるために使いたい。[5][7]

同じ乳たんぱくでも、原料の内訳で変わる

高温で処理しても硫黄・卵様の香りが検出されなかった乳飲料の研究もある。脱脂乳から、乳糖や小分子の成分と乳清たんぱくを同時に除く微細な膜ろ過を行い、たんぱく質濃度が3.4〜10.5%の飲料を作った実験である。直接蒸気を注入し、140℃で2〜3秒保持する処理をしても、硫黄・卵様の香りは検出されなかった。[9]

この飲料では、熱処理による褐色化も見られなかった。一方で、粒子径の測定ではたんぱく質の凝集が捉えられ、見かけの粘度と感覚としての粘りは、濃度や加熱によって増した。香りが変わらないことは、飲料の中で何も変化しなかったことと同じではない。見た目、口当たり、香りを分けて調べる必要がある。[9]

別の実験は、カゼインを中心とする乳たんぱく飲料で、乳由来ホエイの除去の程度を変えている。たんぱく質がおよそ6.5%の飲料において、ホエイを95%除去した場合、脂肪が0.1%、1%、2%のいずれでも硫黄・卵様の香りは検出されなかった。これは特定の分離工程で作った試料の結果であり、市販品を一括して分類する基準ではない。[10]

同じ研究では、脂肪が多くなるにつれて硫黄・卵様の香りの強さと硫化水素濃度が下がった。ただし、その影響はホエイ除去の程度を高める影響より小さかった。ここからは「脂肪を足せば解決する」という献立の指示ではなく、香りに関わる要因の重みが同じではないことを読みたい。原料のたんぱく質構成が、結果を大きく左右したのである。[10]

直接蒸気を使った高温処理で卵様の香りが出た研究と、出なかった研究は、表面上は反対に見える。ただ、両者はレシピも処理条件も異なる実験である。バニラ風味の再構成飲料と、膜ろ過によって組成を変えた飲料では出発点が異なる。加熱方式の名前だけをそろえて比較すると、その違いが抜け落ちる。[5][9]

朝は水、夜は牛乳というように混ぜ方を替えているなら、匂いの感想だけを横に並べない方が整理しやすい。何を混ぜたかまで記録しておけば、温め方を変えた影響と、材料を変えた影響を混同しにくい。研究でも、配合を固定した比較と、組成を変えた比較は別の問いになっている。[5][10]

ここで、分析でいう「相対量」と、自分が感じる「強い匂い」も分けておきたい。バニラ風味飲料の比較は、ある成分がほかの処理より多いことを示すとともに、訓練を受けた評価者による風味の判定を行っている。成分の値を測る作業と、風味を言葉にする作業を重ねているのである。家庭で匂いを嗅いだ感想は、その両方を代行する測定にはならない。[5]

また、膜ろ過した飲料の研究では、異なる脱脂乳を用いて製造を繰り返している。特定の配合と製造工程の結果を確かめた点に意味がある一方、読者が持つ粉末の袋をそのまま調べた実験ではない。研究結果を暮らしに使うとは、自分の製品と同じだと見なすことより、比べる際にどの条件をそろえるべきかを学ぶことである。[9]

この違いは、家族と同じ飲み物を飲んだつもりで感想が食い違うときにも役立つ。「温めた」という言葉には、材料も時間も工程も入っていない。何をどのように作ったかを先に確かめれば、単に好き嫌いが違うのか、そもそも違う一杯を比べているのかを整理できる。原料の構成と加熱方式を分けて調べた研究の読み方を、感想の整理にも使うのである。[5][10]

数字で読む加熱と香りの実験

90℃・10分:分離ホエイたんぱく溶液で硫化水素を検出した条件である。[7]

90℃・120分:より強い加熱負荷では、硫化水素が有意に増えた。[7]

142℃・3秒:約6.5%の乳たんぱく飲料で硫黄・卵様の香りが検出された直接蒸気処理の条件である。[5]

140℃・2〜3秒:組成を変えた乳たんぱく飲料では、硫黄・卵様の香りは検出されなかった。[9]

95%:特定のカゼイン主体飲料で、硫黄・卵様の香りが検出されなくなった乳由来ホエイの除去率である。[10]

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宮川涼 Founder

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