プロテインを水で飲む日の濃さ、一杯の栄養量だけでは浸透圧が分からない理由

プロテインを水で飲むとき、一杯のたんぱく質量と飲料の浸透圧は同じ指標ではない。乳たんぱくの形や糖質などの配合を測った研究、胃から出る速さと運動後の水分保持を調べた試験を読み分ける。濃いほど吸収が遅い、水割りなら水分補給にも優れるという思い込みを見直し、表示と作り方を確かめる視点を示す。

朝食の皿を片付けた台所で、シェーカーに粉を入れ、水は目分量で注ぐ。昨日より濃く感じても、袋の栄養表示は変わらない。その「濃い」は、味の話なのか、たんぱく質の量なのか、それとも飲料としての性質なのか。

プロテインを水で飲むとき、一杯の栄養量だけで浸透圧の高低を決めることはできない。母乳へ栄養を添加した測定研究では、同じ質量でも、加えた成分やたんぱく質の形によって浸透圧の増え方が違った。ただし、これは成人の水割りプロテインの最適な濃さを決めた試験ではない。[19]

さらに、飲料の性質を測ることと、それを飲んだ人の胃や水分収支を調べることは別の仕事だ。健康な男性の小規模試験では、条件をそろえた乳たんぱく液の胃排出速度は似ており、運動後に水へホエイを加えた試験でも、水分保持の改善は認められなかった。「水で溶いたから吸収まで保証」は、シェーカーに任せる仕事が多すぎる。[1][7]

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一杯に入る量と、液体としての濃さを分ける

まず記録の欄を分けたい。粉の量、加えた水、出来上がった飲料、栄養表示は、それぞれ別の情報である。袋に書かれた一食分を作ったつもりでも、水を注ぐところだけ目分量なら、翌日に同じ条件を再現しにくい。「今日は飲みにくかった」という感想を残すなら、その横に作り方も置くと比較しやすい。

ここで扱う浸透圧は、研究では mOsm/kg などの単位で示される飲料の性質である。大切なのは、たんぱく質のグラム数をそのままこの数値へ読み替えないことだ。母乳への添加を調べた研究では、糖質、加水分解たんぱく、ホエイたんぱくで、同じ質量を加えたときの測定値の変化が異なっていた。[19]

「女性のプロテインは冷たいほど胃に残る?飲みやすい温度と消化の速さを研究で読む」は温度の問いを扱う。また、「女性のプロテインは薄めて飲むと胃が楽?水の量と飲料の濃さを分けて研究で読む」に薄め方の問いを譲り、ここでは栄養量から飲料の浸透圧を推測できるかを考える。

水を増やす手順そのものを、体調改善の処方として紹介するのではない。台所で確かめる対象は作り方、研究で確かめる対象は配合の測定値や人体の反応だ。この区別を置けば、濃く感じた日の体験を否定せずに、原因の名前を急いで付けることも避けられる。

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同じグラムでも、加える成分で測定値が違う

母乳を栄養強化するための研究では、母乳100 mLへ糖質の一種であるグルコースポリマーを1 g加えると、浸透圧は平均20 mOsm/kg増えた。同量の加水分解たんぱくでは38 mOsm/kg、ホエイたんぱくでは4 mOsm/kgの増加だった。ここでの加水分解たんぱくとは、あらかじめ分解を施したたんぱくであり、研究はそれを別の添加成分として測っている。[19]

同じ「たんぱくを足した」という説明でも、増え方はそろわない。この結果が支えるのは、成分の質量だけでは測定値の変化を一律に扱えないという点だ。「分解済みなら胃に優しい」「ホエイならどんな配合でも低い」といった体感や製品全体の評価は、この測定だけでは決まらない。[19]

この研究は予測式も作り、別の試料で検証している。臨床試料696件を用いた比較では、測定値と予測値の平均差は3±11 mOsm/kgで、有意差はなかった。決まった材料と条件であれば配合から予測する手掛かりが得られたのであり、栄養表示の合計量だけを見て、どんな飲料にも使える換算式が完成したという意味ではない。[19]

台所のシェーカーと母乳の栄養強化は目的も材料も違う。したがって、先ほどの増加量を自分の一杯に掛け算して、手製の浸透圧表示を作るのは避けたい。数値を借りるより、「同じ質量でも成分ごとに違った」という比較の読み方を借りるほうが、成人の飲料選びには筋が通る。[19]

仕事帰りに水だけで溶く日と、甘い飲み物へ混ぜる日があるなら、どちらも「いつもの粉」とだけ記録しない。これは飲み合わせの良し悪しを決める提案ではなく、何を比較しているかを明確にするための工夫である。材料の名前を残しておけば、粉を替えたのか、液体を替えたのかを後から区別できる。

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複数の成分が入った飲料は、配合全体で見る

果実を用いた回復用飲料の開発研究では、電解質、糖質、たんぱく、食物繊維などを組み合わせている。作製した6種類の飲料の浸透圧は388〜607 mOsm/kg水だった。これは、飲料を設計し、成分や官能的な品質を評価した研究である。[17]

この範囲の数値を、そのまま「ここを超えると成人の胃が止まる」という線にしてはいけない。飲料開発で測った浸透圧と、人が飲んだときの胃排出や脱水からの回復は、評価の対象が異なる。配合研究は材料同士の組み合わせを考える材料になるが、それだけで人体の効果の順位表にはならない。[17]

研究では電解質、糖質、果実粉末、たんぱくなど各成分の浸透圧に関する関係を調べることが、飲料設計に役立ったとされる。「たんぱく質入り」という表の文字だけに注目するより、飲み物全体の構成を見る必要があることを示す研究だ。[17]

購入時には原材料の欄、作るときには混ぜる液体の欄、と確認の場所を分けておくとよい。表示に浸透圧の数字を見つけられない場合、甘さや口当たりで代わりの数字を作る必要はない。自分が把握しているのは成分なのか、味の印象なのかを区別するだけでも、広告や口コミの読み方は変わる。

水割りという呼び名も、研究の条件をそろえる言葉としては粗い。同じ水を使っていても、試験飲料の配合が異なれば、同じ比較にはならない。飲料開発研究が配合を具体的に記すのは、出来上がった一杯の性質を材料の組み合わせと結び付けて扱うためである。[17]

胃から出る速さは、配合をそろえて比べる

健康な男性6人を対象にした無作為化試験では、ホエイ、カゼイン、それぞれの加水分解物という乳たんぱく液を胃内へ投与している。飲料の量は600 mL、浸透圧は288〜306 mOsm/kgで、窒素量、エネルギー密度、酸性度、温度などもそろえて比較した。男性の胃内投与の結果を18〜39歳の女性の日常の飲用にそのまま当てはめることはできない。[1]

胃排出とは、胃の中身が先へ出ていく過程である。この試験の平均半排出時間、すなわち半分が出るまでの時間は18.0〜21.4分で、各液は似た速度で胃から出た。たんぱくの分解の程度が違っても、この条件下では胃排出が大きく分かれなかったのである。[1]

ただし、胃に入れた液の半分が出た時刻は、飲んだたんぱく全部が体で使われた時刻ではない。この研究でも胃排出と腸での吸収を別々に調べており、カゼイン液では腸のアミノ酸吸収が他の液より遅かった。水の吸収速度は似ていた。[1]

加水分解物では、分解していないたんぱく液に比べて胃の分泌がおよそ50%多かった。それでも胃排出速度は似ていた。分泌量の違いを見つけたからといって、飲料が胃に残る時間の違いまで自動的に言えるわけではない。測る項目を変えると、同じ試験の中でも答えが変わる。[1]

この試験は日常の飲み方そのものではなく、健康な男性へ胃内投与して条件をそろえた比較である。そこから持ち帰れるのは「分解済みという表示だけで速さを決めない」という視点だ。朝の一杯に対して半排出時間を当てはめたり、出発までの待ち時間を決めたりする用途ではない。[1]

小児を対象とした比較も、濃さだけで胃排出を予想しないための材料になる。飲める量に制約があり、体重が増えにくい4.5〜12歳の子ども10人に、同じ量のホエイベースの栄養液を与えた研究である。比較した液はエネルギー密度が4.18 kJ/mLと6.27 kJ/mL、浸透圧が270 mOsm/kgと450 mOsm/kgで異なっていた。栄養摂取に課題のある小児が対象で、18〜39歳の女性への適用は別に検証する必要がある。[3]

胃排出は投与後30、60、90、120分に調べられ、両者で同程度だった。ここではエネルギー密度と浸透圧が同時に違うため、浸透圧だけを動かした試験としては読めない。それでも、数値が高い液なら必ず胃から遅く出る、という一律の予想とは合わない結果である。[3]

対象は栄養摂取に課題のある子どもであり、健康な成人女性の水割りの適量を教える研究ではない。小児の栄養管理で得られた結果はその場面に置いたうえで、「高い数値を見つけたら、すぐ消化の遅さへ結び付ける」という読み癖を点検するために使いたい。[3]

この研究と成人男性の試験を並べると、比較の作り方の違いが見える。小児の研究は異なる密度の栄養液を比べ、成人の試験は量や浸透圧などをそろえてたんぱくの形を比べた。どちらも胃排出を測っているが、問いは同じではない。結果の数字だけを集めて、家庭の一杯に最適な浸透圧を選ぶことはできない。[1][3]

数字で読む一杯の配合と体の反応

母乳100 mLに1 gを添加:浸透圧の平均増加は加水分解たんぱく38、ホエイたんぱく4 mOsm/kgだった。成人飲料への換算値ではない。[19]

果実ベースの試作飲料6種類:浸透圧は388〜607 mOsm/kg水で、配合を設計する研究で測られた。[17]

健康な男性6人の比較:乳たんぱく液の平均半排出時間は18.0〜21.4分で、胃排出速度は似ていた。[1]

運動後の水への添加量20 g/L:飲料保持率は水40%、ホエイ入り37%で、有意差はなかった。[7]

健康な男性12人の比較:糖質飲料と糖質・ホエイ飲料の保持率は50%と49%で、有意差は認められなかった。[8]

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宮川涼 Founder

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