HIITは一日の本数を朝夕へ移す?体力の伸びと続けやすさを測る条件を読む

HIITを朝と夜に分けたいとき、同じ本数なら体力も続けやすさも同じと考えてよいのか。日に複数回行った研究から、食事条件、筋肉の反応、運動中のきつさを読み分ける。分割と追加の違いを整理し、忙しい日の予定を決めるために、何をそろえて何を記録すればよいかを具体的に考える。

出勤前に途中まで動き、帰宅してから残りを行う。朝は自転車のペダルをこぐ時間が足りず、残した本数を夜の予定に書き込む。動画の途中で止めた画面を見て、「夜に続きをすれば、まとめて行うのと同じだろうか」と考える。

答えの芯は、分けた回数だけでは同じ効果とは判定できない、である。日に複数回のHIITを使った試験でも、比べたのが運動の分け方ではなく、運動の間に摂る炭水化物の条件だった例がある。その結果を、そのまま朝夕への分割が優れる証拠にはできない。[12]

既存記事「HIITは1日2回に分けてもよい?合計時間だけでは比べられない負担を読む」は負担の比較に譲る。また「HIITを連日続けるなら翌日は軽く?筋肉に残る糖と回復の違いを研究で読む」とは日をまたぐ回復を分け、ここでは同じ日の本数を移すときの、体力と続けやすさの評価に絞る。

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朝夕への移動と、朝夕への追加を分ける

朝に予定していた運動の一部を夜へ移すのと、朝の運動を終えて夜にも同じメニューを足すのは、別の計画だ。予定表ではどちらも「朝・夜」と書ける。しかし前者は配分の変更、後者は運動量の追加である。この区別が曖昧なままでは、分けたから変わったのか、多く動いたから変わったのかを考えられない。

実際に日に複数回を採用したCochranらの介入試験は、活動的だが高度に鍛えられてはいない成人18人を対象に、2週間のうち6日、それぞれの日に2回の自転車運動を行っている。各回は4分の運動を5本、間に2分の回復を挟む構成だった。短い動画の残りを夜へ回す日常の場面とは、まず運動そのものの組み方が違う。18〜39歳の女性が生活の中で分けて行った際にも同じ変化が出るかは、この成人集団の結果だけでは判断できない。[12]

この試験の両群は同じように日に複数回を行っている。したがって、結果が良かった群があっても「分割した群が、まとめた群に勝った」とは読めない。比較対象の名前を、結果の数字より先に確認したい。朝夕という言葉が目に入るだけで、自分の予定表を研究の中へ持ち込まないことである。[12]

生活の中で配分を考えるなら、最初に元のメニューを書き出すとよい。種目、負荷、各区間の長さ、休み方、実際に終えた本数を一緒に残す。これは新しい運動処方ではなく、何を移動したかを確かめるための作業だ。夜の欄が空いていることと、夜に運動を足す必要があることは同義ではない。

「朝夕に分けられれば続けられそう」という期待も、体力が伸びるという期待とは分けておく。前者を確かめるには予定と実施の記録が必要になり、後者には条件をそろえた体力評価が必要になる。予定が埋まった達成感だけで、体の変化まで採点しない。

運動量をそろえるときにも、時計の表示だけを見るわけにはいかない。Cochranらは運動区間の負荷を最高出力に対する割合で指定していた。本人の能力を基準にした設定を含む試験である。同じ長さの動画を再生したという事実と、研究で管理した条件をそろえたという事実には距離がある。[12]

例えば朝の残りを夜に行うつもりが、夜は別の動画を選んだとする。この日は予定の変更として記録できるが、「同じ運動の分割」を試した日としては扱わないほうが整理しやすい。どちらが良いかを急いで決める前に、何をした日なのかを言葉で残す。記録の目的は、予定からのずれを責めることではない。

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分割の研究でも、比較の主役は食事だった

Cochranらの試験では、運動間の3時間に摂った炭水化物が、片方の群で195g、もう片方で17gだった。参加者は年齢、性別、体力をそろえて無作為に割り付けられている。この試験が検証したのは、日に複数回の運動の間に、炭水化物の利用条件を変えると適応がどう違うか、という問いである。[12]

一定の仕事量を終えるタイムトライアルでは、炭水化物の少ない条件の群の出力が211±66Wから244±75Wへ、多い条件の群では203±53Wから219±60Wへ変化し、改善は少ない条件の群で大きかった。ただし、筋肉のミトコンドリア量を反映する酵素やたんぱく質の増加は、群間で同程度だった。走り切る成績と筋肉内部の指標が、同じ差を示したわけではない。[12]

ミトコンドリアは筋肉内でエネルギー供給に関わる構造である。この試験では、その量を反映するクエン酸合成酵素の活性やたんぱく質などを調べている。運動の成績に群間差が出ても、測った内部の指標すべてに差が出るとは限らない。「体力が変わる」を、体の中のあらゆる変化がそろって進む意味で使わないほうがよい。[12]

この結果は、日常の食事を削って夜も追い込む提案ではない。決められた運動と食事条件を置いた短期間の試験で、運動成績に差が出たという範囲で読む。朝食を抜いた会社員の夕方のレッスンに、同じ結果を約束する数字ではない。[12]

また、食事を変えながら本数も分け、種目も変えれば、手元の記録だけで分割の影響を取り出すことは難しくなる。昼食を取れなかった日と、落ち着いて食べられた日の運動を、同じ「朝夕実施」の印だけで並べない。生活の事情は誤差として消すより、違う条件として残すほうが判断に使える。

ここでは、運動間に何をしたかも介入の一部である。食事の差を置いた研究から運動の配置だけを抜き出すと、結果を生んだ条件を切り離してしまう。朝夕の運動に関心があるからこそ、朝夕の間にも目を向ける。研究の題名に自分の疑問と似た語があっても、実験で変えたものを確かめる必要がある。[12]

筋肉の反応が小さくなったら、効果も消えたのか

Granataらは、健康で余暇に運動する参加者10人について、日に2回の高量HIITを計40回行う前後で、筋肉の反応を調べた。同じ絶対強度の運動を行い、直前、直後、3時間後に採取した筋肉を分析している。これは、運動を続けた前後で筋肉内の急性反応がどう変わるかを見る研究である。余暇に運動する参加者の結果を、18〜39歳の女性が日常で行うHIITにそのまま適用するには、運動歴や負荷の違いを考える必要がある。[6]

訓練前には、ミトコンドリアを作る過程に関わるPGC-1αなどの核内たんぱく質や、遺伝情報の読み出しに関わる指標が運動後に増えたが、訓練後には測定した反応に有意な変化が見られなくなった。著者らは、相対的な運動強度の低下や、同じ刺激への慣れが関係する可能性を挙げている。[6]

絶対強度とは実際の仕事の大きさ、相対強度とはその人の能力に対する負荷の割合、と考えると読みやすい。同じ設定で比べた研究だからこそ、訓練後には本人にとっての重さが違った可能性が残る。反応が小さかったことを、そのまま「日に何度も動くと無効になる」と翻訳するのは行き過ぎだ。[6]

ここで測っているのは、運動後のある時点での筋肉内の出来事である。翌月も参加したいと思うか、朝夕の準備を面倒に感じるかとは、観察する対象が違う。研究の精密さと、生活への答えの近さは別だ。筋肉の写真を詳しく見ても、仕事帰りの乗り換え予定までは映らない。

別の介入研究では、健康な若い男性9人が20日間の日に2回の高量HIITを行い、その前後で筋肉の遺伝子発現を測った。18〜39歳の女性にも同じ反応が出るかは、男性だけの結果からは判断できない。FNDC5という因子の安静時の発現などが増えている。測る因子や測定時点によって、見える適応の姿が違うのである。[13]

ただし、遺伝子の発現は、その後に作られるたんぱく質の量や、体外への分泌と同じ指標ではない。この研究も、たんぱく質や分泌の段階での確認を今後の課題としている。細胞の反応を手掛かりにはできるが、朝夕への分割を万人に勧める判定札にはしない。[13]

筋肉を採取して内部を調べる研究は、変化の場所を細かく示してくれる。その一方で、参加者の対象は研究ごとに違う。健康な若い男性の細胞の反応を、生活での継続率に読み替えると、測った対象も結果も変わってしまう。誰に起きた変化かを残して読むことが、自分に当てはめすぎないための支えになる。[13]

数字で読む、同じ日に繰り返す研究

18人:活動的だが高度な訓練者ではない成人を対象にした、食事条件の比較試験。[12]

3時間:運動間に炭水化物の摂取条件を変えた時間であり、万人向けの休息基準ではない。[12]

40回:高量HIITの前後で筋肉内の急性反応を比べた研究の実施回数。[6]

9人:遺伝子発現を調べた高量HIIT研究の健康な若い男性参加者数。[13]

13人:日に2回の走運動を行い、気分の疲労や活気も調べた試験の参加者数。[14]

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宮川涼 Founder

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