筋トレと有酸素運動を始め、動きやすくなったのに見た目は同じ。その時間差を、途中経過を追った研究から考える。筋力、持久力、除脂肪量、体脂肪率で変化が確認された時期を読み分け、体重だけで判断しない記録の方法と、研究の週数を自分の期限にしないための目安を示す。
筋トレの記録では、前より重いダンベルを動かせている。ところが帰宅して鏡を見ると、始める前と区別がつかない。筋トレと有酸素運動を組み合わせている人にとって、この食い違いは気になるところだ。鏡が無言だと、重りを動かした手応えまで取り消したくなる。
しかし、力、持久力、体の構成は、同じ時刻にそろって変わるとは限らない。閉経後女性の試験では、立ち座りで評価した筋力の改善が先に確認され、除脂肪量や体脂肪率の変化は後の測定で確認された。高血圧のある高齢者の試験では、持久力の改善と筋力の改善が確認された時期も違った。いずれも18〜39歳の女性の適応時期を直接示す試験ではなく、週数は対象集団の結果として読む。[8][3]
したがって「見た目が変わるまで何週間か」という問いには、全員共通の締め切りを置けない。まず、何の変化を待っているのかを分ける必要がある。[8][3] 基礎代謝の増減は既存記事「運動習慣で基礎代謝量は増える?筋トレと有酸素運動を続けた後の変化を読む」に譲り、ここでは途中の測定を手掛かりに、成果を確かめる時間軸を考える。

先に動けるようになっても、体重は同じことがある
筋トレと有酸素運動を併用する運動を、併用トレーニングと呼ぶ。疲れにくさを育てる運動と、筋肉量や力を育てる運動を一緒に続ける考え方だ。ただし、その適応、つまり運動を続けることで生じる体の変化は、運動の量、強さ、頻度、種類や、それまでの運動経験と切り離せない。[5]
時間差を具体的に示したのが、閉経後女性96人を機能的な運動を行う群、併用運動の群、対照群に無作為に割り付けた16週間の試験である。機能的な運動とは、ここでは研究で併用運動と比較された別の運動プログラムを指す。18〜39歳の女性とは閉経の状況が異なるため、この試験の変化の時期をそのまま当てはめることはできない。研究者は4週ごとに体組成と下肢の筋力を評価した。体組成は、脂肪とそれ以外の成分など、体を構成する内訳のことだ。[8]
運動を行った両群では、下肢の筋力の改善が4週目から確認された。評価には椅子から5回立ち座りする検査が使われた。その後、8週目から除脂肪量の増加、12週目から全身の体脂肪率の低下と四肢の除脂肪量の増加が確認された。一方、体重に差はなかった。[8]
ここで読みたいのは、「4週間で誰でも脚力が増える」という約束ではない。同じ試験の中で、動作の成績と体の構成が別々の時点で変わり、体重は同じでも成果が確認された、という組み合わせである。体重だけを合否判定にすると、研究で捉えられた変化を見落とすことは分かる。[8]
たとえば、運動記録には「立ち上がる動作」と「体重」を別の欄に置く。体重の欄が動かなくても、動作の欄まで空欄にしない。この試験では、運動群の体組成の適応は似ており、併用運動だけが特別に早く変わったという結果ではなかった。併用さえすれば最短で見た目が変わる、という宣伝に使える研究でもない。[8]
また、除脂肪量とは体重のうち脂肪以外の部分であり、見た目の採点表ではない。この研究の体組成評価は生体電気インピーダンス法、体に電流を流した際の性質を使う測定だった。測定で増えた除脂肪量と、鏡の中で自分が気づく輪郭の変化は、同じ指標として扱わないほうがよい。[8]
椅子から立つ検査も、ジムで持ち上げた重りそのものではない。研究の「筋力」という語を読むときには、何をさせて評価したかまで見る必要がある。この試験の成果は、立ち座りという課題で評価された下肢の力である。腕の力や走る速さは、それぞれの課題で評価する必要がある。[8]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
持久力が先に変わる試験もある
もう少し違う時間軸を示すのが、高血圧のある高齢者52人を対象とした無作為化比較試験である。年齢と高血圧という健康状態が異なるため、18〜39歳の健康な女性の適応時期の予測にはそのまま使えない。16週間の併用運動を行う群と、身体的に不活動のまま過ごす対照群に分け、開始時と4週ごとに評価した。こちらでは、筋力より早い測定時点で心肺持久力の改善が確認された。[3]
運動群は、最大酸素摂取量の63%に相当する歩行または走行を週3回行い、中程度の強度の筋力運動を週2回行った。筋力運動は7種目、それぞれ15回を1セットという内容だった。これは研究の条件であり、そのまま自宅用の処方にするための数字ではない。[3]
最大酸素摂取量は、運動中に取り込んで利用できる酸素の最大量を表す、心肺持久力の指標である。運動群では8週後に増加し、16週後にも増加が確認された。16週後の改善は約18%だった。筋力は16週後に約8%増え、体重は約1%減った。[3]
ただし、運動群で血圧は低下しなかった。体組成、糖や脂質に関わる項目などにも変化は確認されなかった。持久力や筋力の改善を、健康診断の全項目が一斉に良くなることへ広げてはいけない。高血圧がある人は、運動の手応えを薬や診療の要否の判断に使わず、血圧の管理について医師に相談する必要がある。[3]
閉経後女性の試験では立ち座りの改善が4週目から、高血圧のある高齢者の試験では持久力の改善が8週後から確認された。対象も運動も評価法も違うため、並べて「筋力は持久力より速い」と順位を付けることはできない。読み取れるのは、何を測るかによって、成果が見える時期が変わるということだ。[8][3]
仕事帰りの運動で「息が整うまでの感じ」と「重りを動かす力」を同じ言葉で記録してしまうと、どちらの変化なのか後で分からなくなる。「楽になった」だけで終えず、どの動作、どの場面だったかを添えたい。これは研究と同じ検査をするという意味ではなく、持久力と筋力を別の指標で追った研究の考え方を、記録に取り入れる工夫である。[3]
途中で測る日がなければ、変化の始まりは分からない
「8週後に変わった」という表現には注意が要る。その日に突然、体の内部で変化が始まったという意味ではない。高血圧のある高齢者の試験は4週ごとの評価だった。閉経後女性の試験も同じ間隔で測定している。研究が示すのは、設定された測定時点で改善が確認された、という時間の区切りである。[3][8]
たとえば、ある測定で差が確認できず、後の測定で確認されたとしても、その間の毎日の経過を描くことはできない。変化を確認した時点と、変化そのものの始まりは分けて考える。研究の週数を、体の中にあるタイマーの表示として読むと、予定の日に見た目が変わらないだけで焦ることになる。[3][8]
途中の評価を含む別の研究として、オーストラリアの新兵を対象にした12週間の比較介入がある。軍事訓練中の集団を調べた研究であり、18〜39歳の女性が生活の中で運動を始める場合へ、その成績や週数を直接当てはめることはできない。実験群78人は少ない量で強度の高い筋力運動と高強度のインターバル運動を行い、対照群69人は通常の軍事訓練を行った。総セッション数と総時間はそろえられていた。体力の評価は1、6、12週に行われた。体組成の評価日は2、7、9週で、体力とは測定の日程も違った。[11]
荷物を運ぶ課題は、22kgを負って3.2km進む検査だった。日常の散歩よりも、荷重下で移動する任務に近い評価である。筋力の検査にはベンチプレス、スクワット、箱を持ち上げる課題などが含まれ、局所の筋持久力や跳躍のパワーも調べられた。ここでは「体力」を単独の検査で代表させず、訓練が求める動作ごとに成果を分けている。自分が運動を続ける目的を考えるときも、どんな動作を行いやすくしたいのかまで言葉にすると、研究の評価項目との対応が見えてくる。[11]
12週時点では、実験群のほうがスクワットの最大筋力は38.9kg大きく、荷物を運ぶ課題は49.9秒速かった。一方、別日程で評価した体組成の群間差はなかった。最大筋力や課題の遂行成績には違いが出ても、体の内訳に同じような群間差が出るとは限らない例である。[11]
この結果を「私も同じ期間で同じ重さが伸びる」と読むのは無理がある。対象は新兵であり、比較したのは訓練しない生活ではなく、通常の軍事訓練だった。38.9kgは一般の人の平均的な上達量でも、実験群全員の増加量でもなく、その時点の群間差である。数字の大きさより、誰と誰を比べた数字かを先に確かめたい。[11]
途中経過の研究を読むときは、開始時の状態、測った日、用いた検査、比較相手をひとまとまりにする。その枠が違えば、同じ「12週間」でも意味は違う。スマートフォンの運動記録にも、開始日だけでなく、どの種目をどの条件で行ったかを残すと、別の課題を同じ成績表で比べずに済む。[11][8]
新兵の研究では、最大筋力だけでなく、跳ぶ課題や腕立て伏せなども評価された。実験群と対照群の違いを表す効果量は、スクワットの最大筋力で1.05、スクワットジャンプで0.65、腕立て伏せで0.26だった。効果量は差の大きさを共通の尺度で表す数値であり、改善率ではない。同じ期間、同じプログラムの比較でも、評価する課題ごとに差の大きさは違った。運動の成果をひとつの割合だけで代表させないための材料になる。[11]
数字で読む併用運動の時間差
96人・16週間:閉経後女性を運動群と対照群に分け、途中経過を評価した試験である。[8]
4週目:その試験の運動群で、立ち座りによる下肢筋力の改善が確認され始めた。[8]
8週目・12週目:除脂肪量の増加、体脂肪率の低下などが順に確認された時点である。[8]
約18%・約8%:高血圧のある高齢者の試験における16週後の最大酸素摂取量と筋力の改善である。[3]
12週間:新兵の比較介入では体力に群間差が出たが、体組成には群間差がなかった。[11]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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