ダイエットで「効果なし」「有意差なし」と聞いても、運動が無意味だと決めるのは早い。減量後の運動、強度の異なる運動、食事時間の研究を使い、平均差と信頼区間、群内と群間の違いを読む。小さな試験から同じ効果と言えるのか、どの数字を見て運動を選ぶかを立川の生活場面とともに考える。
運動の比較表に「体脂肪への効果は有意差なし」と書かれていたら、予定していた運動をやめるだろうか。昨日は運動を勧める記事を読んだのに、今日はやらなくても同じらしい。そんな読み替えが起きやすいが、減量後の運動を集めた研究では、体重の戻りには差があり、脂肪量については結論が定まらないという結果が並んでいる。[1]
答えの芯は、「差を確かめられなかった」と「差がないことを確かめた」を分けることだ。さらに、運動前後の変化を比べたのか、別の運動との差を比べたのかでも意味が違う。異なる強度を比べた試験では、どちらも開始時より体組成が改善しながら、運動同士の差は有意ではなかった。[17]
個人ごとの結果の違いは、既存記事「ダイエットの変化は同じ運動なら同じ?平均の効果と自分の結果を分けて読む方法」に譲る。ここでは研究の結論につく「差なし」の読み方に絞る。体重を減らすことを全員の目標にせず、研究が何を比較し、どこまで判断できたかから、自分の選択肢を整理したい。

「効果なし」の前に、何と何を比べたのか
具体例は、減量に成功した過体重・肥満の人を対象に、維持期の運動を調べた系統的レビューとメタ分析だ。系統的レビューは条件を決めて研究を集める方法、メタ分析は結果を統合する方法である。この研究には、参加者を無作為に介入群などへ分けるランダム化比較試験が11件、計568人含まれた。減量後の過体重・肥満の人の結果を、18〜39歳の女性の減量開始時にそのまま当てはめることはできない。[1]
運動群の体重の戻りは、対照群より平均2.81kg少なかった。平均差の95%信頼区間は−5.12〜−0.51kgだった。一方、脂肪量の平均差は−3.39kgで、95%信頼区間は−7.24〜0.46kg。有意ではなく、研究間の結果のばらつきも大きかった。[1]
ここで「運動は体脂肪に効果なし」とだけ書くと、大切な部分が落ちる。平均の推定値は運動群で脂肪量が少ない方向にあるが、その幅には差がない点も、運動群でわずかに多い方向も含まれる。著者らの結論も、減量後の体重維持には小さく一貫した利益があり、脂肪量への効果はまだ確定的でない、というものだ。[1]
比較の出発点にも注意したい。これは減量に成功した後の維持期を調べた研究で、運動を始めた全員が同じだけ体重を落とすという話ではない。示された平均差を、そのまま自分のこれからの減量目標に使うのは、研究の問いを取り替えることになる。[1]
たとえば記事を読んだメモに「体重」とだけ残さず、「減量後の体重の戻り、運動群と対照群の比較」と書く。短い付け足しだが、何の効果を論じていたかが残る。研究名を覚えるより、比較の文章を保存する方が、後から判断をやり直しやすい。
また、体重の戻りと脂肪量が同じ結論にならないこと自体が、矛盾ではない。この分析では、それぞれについて統合された結果の確かさが違っていた。体重維持の結果を使って脂肪量まで確実とすることも、脂肪量が未確定だから体重維持の結果まで消すことも避けたい。[1]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
平均差は点であり、信頼区間には幅がある
数字を読むときは、平均差だけで文章を終わらせない。先ほどの脂肪量では、−3.39kgという中心の数字と、−7.24〜0.46kgという幅が一緒に示されていた。この組み合わせなら、脂肪量への影響がないと断言するより、どの程度の差なのかを絞り切れていない、と読む方が結論に沿う。[1]
小規模な試験の限界が明記された別の例として、筋力トレーニングを行う成人の食事時間をまとめたメタ分析がある。含まれたランダム化比較試験は8件で、食べる時間帯を8〜10時間に収める方法と、普段の食事が比較された。著者らは試験数、参加者数、実施期間の限界から慎重な解釈を求めている。筋力トレーニングを行う成人の結果を、18〜39歳の女性全般にそのまま当てはめることはできない。[18]
体重の平均差は−1.82kg、95%信頼区間は−3.66〜0.01kgで、有意ではなかった。区間の端がゼロに近いからといって、ほぼ確実に効果があると読み替えるのも、「有意でない」のひと言から完全に効果がないと切り捨てるのも、この結果より強い言い方になる。[18]
同じ分析で、除脂肪量、つまり脂肪を除いた体の量の平均差は0.27kg、95%信頼区間は−0.80〜1.34kgだった。ここから「筋肉が増える方法」とすることはできない。そもそもこの結果の項目は除脂肪量であり、筋肉だけを表す数字として置き換えない方がよい。[18]
対して脂肪量の平均差は−1.25kg、95%信頼区間は−1.95〜−0.54kgで、有意な減少が示された。体重には有意差がなくても、脂肪量には有意差がある。だから「ダイエットに効いたか」という大きな質問を、体重なのか脂肪量なのかに分ける必要がある。[18]
この結果は、食べる時間を狭めることを全員に勧める理由にはしない。対象は筋力トレーニングを行う成人であり、小規模で短期間の試験を含む結果だ。この記事で持ち帰りたいのは食事の時間割ではなく、同じ研究でも項目ごとに結論が違うという読み方である。[18]
数字を見たら、「平均ではこちらの方向」「幅はここからここまで」「対象はこの人たち」と文章にしてみる。大きな文字の結論だけを保存するより、読み直したときに期待が膨らみすぎにくい。自分にとって都合のよい端だけを選ばず、両端を同じ重さで残しておきたい。
食事時間の研究では、体脂肪率にも平均差−1.57ポイント、95%信頼区間−3.12〜−0.01ポイントという有意な差があった。ただし、体重の区間と同じように、端がゼロに近い点だけで結果の価値を決めない。脂肪量の結果と合わせても、著者らの表現は小さい減少であり、確実に大きく変わる方法という結論ではない。[18]
体重と脂肪量を別の欄に置くのは、体重計を見ないようにするためではない。何を測った数字なのかを失わないためだ。食事の話題であっても、食べる時間、比較する食事、運動をしている対象という条件までが、この結果を読む際のひとまとまりになる。[18]
両方で変わったのに、運動同士の差がないこともある
運動の比較では、「始める前と比べた変化」と「別の方法との違い」が混ざりやすい。HIVとともに生活する50歳以上の、以前は座っていることの多かった人を対象に、高強度の間欠運動と中強度の連続運動を比べたランダム化比較試験が、その違いをよく示している。対象の年齢や健康状態が異なるため、18〜39歳の女性に同じ変化が起きると見込むことはできない。[17]
どちらの群にも筋力トレーニングが組み合わされ、介入は16週間だった。開始前後の体組成測定がそろった人は95人、年齢の中央値は58歳、女性は14%だった。この対象の特徴も、若い女性が自分の生活へ当てはめる際に残しておきたい情報だ。[17]
体脂肪率の開始時からの相対的な変化は、高強度群でも中強度群でも−3.3%だった。95%信頼区間は高強度群が−5.2〜−1.6%、中強度群が−5.3〜−1.6%である。これは体脂肪率そのものが3.3ポイント下がった、という意味ではなく、開始時に対する変化率として報告された数字だ。[17]
両群で開始時からの改善がみられた一方、群間の比較は有意ではなかった。「高強度が中強度を上回る差は確認されなかった」と「どちらを行っても変化しなかった」は、まったく違う文章である。後者はこの試験の結果に反する。[17]
ただし、改善がみられた条件も残す必要がある。これは監督下で行われ、どちらにも筋力トレーニングが含まれた運動の比較だ。高強度という言葉だけを切り取り、自己流の短い運動にも同じ結果を約束することはできない。中強度側についても同様である。[17]
帰宅後に運動を選ぶときも、「きつい方が勝ったか」と「その方法で何が変わったか」を別々の欄に置くとよい。汗の量で研究の勝敗を決める必要はない。比較した方法、付け加えられた運動、対象者まで含めて読むことが先だ。[17]
数字で読む「差なし」の中身
11試験・568人:減量後の維持期における運動を統合した規模である。[1]
−2.81kg:運動群の体重の戻りの平均差。95%信頼区間は−5.12〜−0.51kgだった。[1]
−3.39kg:同じレビューの脂肪量の平均差。95%信頼区間は−7.24〜0.46kgで結論は未確定だった。[1]
−1.82kg:食事時間を制限した研究の体重の平均差。95%信頼区間は−3.66〜0.01kgだった。[18]
95人・16週間:強度の違う運動を比べ、開始時からは改善したが群間差は有意でなかった試験の条件である。[17]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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