筋トレの背中はご褒美を決めると力が出る?その場の努力と続く意欲を読み分ける

筋トレで背中を引く前にご褒美を決めれば、いつもより頑張れるのか。握力課題や報酬を選ぶ実験から、努力する意欲、実際に出る力、翌日も続けたい気持ちを分けて読む。空腹や負担の感じ方、偶然うまくいった日の評価にも目を向け、ご褒美だけで練習の良し悪しを決めない考え方を示す。

背中を引く持ち手に手をかけたところで、練習後に読む小説の続きを思い出す。「ここまで終えたら、あの続きを読もう」。楽しみを先に決めることで、今から出す力まで変わるのだろうか。

答えの芯は、ご褒美を期待して努力しようとすることと、背中の筋力が上がることを分ける点にある。人が報酬のために身体的努力をする握力課題では、意欲と空腹の関係が身体の状態によって異なった。報酬の存在だけで、その日の努力を一律には説明できない。[3]

さらに、報酬を選ぶ実験の成績は、背中を引く運動の上達や長く続ける意欲とは別に読む必要がある。[3][18] 動作への合図は既存記事「筋トレの背中は動く速さを音で聞くと違う?引く動きの再現と回数を読み分ける」に譲る。ここでは、ご褒美を条件にしたとき、何を頑張れたと判断するかを考える。

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ご褒美で変えたいのは、出席か、努力か、力か

「ご褒美があれば頑張れる」という言葉には、いくつもの出来事が入っている。着替えて出かける、難しい課題を選ぶ、実際に力を出す、終わった後もまた行きたいと思う。日常の相談ではまとめて語れても、研究の結果を読む際には、どこを測ったかを確かめたい。

報酬への期待を、報酬を得るための努力へ移す過程は、誘因動機づけと呼ばれる。人を対象とした研究では、食べ物や金銭を得るために握力を発揮する課題が用いられた。ここでの焦点は、報酬に向けてどのように努力するかである。[3] 背中の筋トレを何度も続けた後の変化と同じ物差しではない。

また、報酬と努力の大きさが変わる選択肢を学び、繰り返し選ぶ人の実験もある。これは選び方を調べるもので、報酬があるから背中の筋肉そのものが強くなる、という実験ではない。[18] 「意欲が上がる」という見出しを見たら、選択、実行、身体の変化のどこまでを扱う話なのか、立ち止まって読む必要がある。

例えば、練習後に好きな本を読むと決めた日の記録を考えよう。店に着いたことを評価したいなら、来られたかを振り返る。引く動作を評価したいなら、何を練習したかを書く。ご褒美を楽しみに感じたかは、その横に別の感想として置く。これは研究が証明した練習法ではなく、違う出来事を同じ「成功」に押し込めないための整理である。

予定していた練習に来られた日を、重量が増えなかったから失敗にする必要はない。反対に、ご褒美がうれしかった日を、そのまま筋力向上の証拠にもできない。財布の満足と背中の記録は、同じ欄に書かなくてよい。

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握力で報酬を得る実験では、空腹との関係も違った

握力課題を用いた研究は、痩身の参加者21人と肥満の参加者16人を対象にした、無作為化・プラセボ対照のクロスオーバー試験である。クロスオーバーとは、参加者が異なる条件を経験して比べる方法だ。別の検査日に、GLP-1という身体の信号に関わる物質の類似薬、またはプラセボを投与し、食べ物と金銭の報酬に向けた努力を調べた。対象は体格の異なるボランティアであり、18〜39歳の女性の背中の筋トレにそのまま当てはめられるかは、別に確かめる必要がある。[3]

痩身の参加者では、空腹が強いほど誘因動機づけが高く、その関係は食べ物か金銭かによらなかった。一方、肥満の参加者では同じ空腹との関係は統計的に有意ではなかった。前者の係数はβ=0.19、後者はβ=−0.12だった。[3] これは握力が何割増えたかを示す数字ではない。条件と意欲の関係を表す係数である。

さらに、血糖調節に関わるインスリンへの身体の反応性によっても、空腹と動機づけの関係が異なった。反応性が高い人では空腹が動機づけを高める方向にあり、低い人ではその関係が弱かった。薬の条件では、この反応性による違いが調整された。[3] ご褒美の価値を考える際にも、身体の状態が関わることを示す実験である。

ただし、薬の条件を無作為に比べたことと、体格や空腹の関係を読むことは区別したい。この研究から、「空腹にすれば筋トレで強い力が出る」とは言えない。食べ物以外の報酬にも関係したという結果は興味深いが、食事を抜く提案へつなげるものではない。[3]

夕食前の練習で気持ちが乗った日があっても、それだけで空腹をご褒美の増幅装置にしないことだ。ここで持ち帰りたいのは、同じ人への同じ誘いでも、身体の状態を切り離して解釈しない姿勢である。体格の分類も、誰が努力できる人かを決める札ではない。研究で認められた群の違いを、目の前の人の性格に置き換えない。[3]

同じ負担でも、本人が払うと感じる代価は違う

ご褒美を考えると、もらえる物の方に目が向く。しかし、何をもらえるかと同じくらい、何をしなければならないかも選択の一部になる。腕を伸ばして目標へ届かせる動作を調べた人の実験では、抵抗を増やしながら、吐いた息の分析で代謝の負担を測った。そのうえで、本人が努力をどれほどの負担と評価するかを調べている。対象は到達動作を行う実験参加者であり、18〜39歳の女性が筋トレで感じる負担にも同じ関係が成り立つかは、別の検証を要する。[4]

この低い努力水準の到達動作では、平均すると、主観的な努力の評価は客観的な代謝の負担に沿っていた。ただし個人差は大きく、負担を小さく評価する人も、大きく評価する人もいた。著者らは、金銭的報酬の評価で見られる特徴と、努力の評価が同じではないことを示した。[4]

この結果を「努力のつらさは消費したエネルギーで全部決まる」と読むのは行き過ぎだ。対象は日常にもあるような低負担の到達動作であり、背中を強く引く筋トレ全般を代表するものではない。[4] 一方、物理的な条件をそろえても、感じる代価には個人差がある。

友人と同じ内容の練習をして、同じご褒美を約束したとする。友人が楽しそうで、自分には重い予定に感じられたとしても、報酬への反応が弱い人と決めつける材料にはしない。まず、何が負担だったかを分けて言葉にしたい。動作そのものか、移動の手間か、終わる時刻か。ここで挙げた生活上の負担は、到達動作の実験で測られた代謝とは別の項目である。

その区別があれば、「ご褒美を豪華にしよう」以外の問いが生まれる。練習内容について相談したいのか、予定を組み直したいのか、自分でも困りごとの所在を示せる。研究の平均から理想のご褒美を計算するより、今回の練習で何と何を交換しようとしているのかを具体化する。努力の主観的な評価に個人差があった結果は、その確認を省かない理由になる。[4]

もう少し測り方を見よう。この到達動作の研究では、力の指標だけで努力を代表させず、呼気から代謝の負担を調べた。以前の力に基づく運動課題で見られた努力評価の特徴より、負担への感度が小さかった点も報告している。[4] 「努力」という同じ単語でも、測る方法と課題の性質が違えば、読み取れる意味は変わる。筋トレの持ち手に表示された負荷を、そのまま気持ちの負担の目盛りにはできない。

また、平均が客観的負担に沿うことと、全員の評価がそろうことも違う。平均だけを見ればすっきりした関係でも、その中には過小評価する人と過大評価する人がいた。[4] 自分の記録を研究と照らすときは、平均の線から外れる感覚をすぐ誤りとせず、課題がそもそも同じかを確かめたい。腕を伸ばして目標へ届かせる実験と、仕事帰りの背中の練習では、比較している場面が異なる。

実際の相談では、「このご褒美なら頑張れるはず」という予想を先に置かず、「今日は何を負担と感じたか」から話してもよい。報酬を受け取る楽しみについての答えと、練習内容についての答えが違っていても構わない。研究を生活に使う際の役割は、人の感覚を採点することよりも、混ざった問いをほどくことにある。

自分へのご褒美を考える場面でも、報酬の魅力と、そのために払う負担の感覚を別々に尋ねる。この区別は、到達動作で客観的負担と主観的評価を分けて測った研究の読み方にも通じる。[4]

数字で読むご褒美と努力

握力で報酬を得る試験の痩身群は21人。背中の筋トレの長期試験とは区別する。[3]

同じ試験の肥満群は16人。群の違いを個人の意志の強さに読み替えない。[3]

痩身群の空腹と動機づけの関係はβ=0.19。筋力の増加率ではない。[3]

肥満群の同じ関係の検定はp=0.17。有意な関係が確認された結果ではない。[3]

認知的努力の実験の報酬は20ドル。身体的な筋力を測った数字ではない。[14]

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宮川涼 Founder

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