下腹痩せの腹筋は上と下を別々に使える?活動する場所と見た目を分けて読む

下腹痩せを調べると出会う「上の腹筋」「下の腹筋」。お腹をへこませる動きと固める動きの比較、妊娠中と産後の試験から、筋肉の活動、厚さ、へそより下で測った変化を読み分ける。下腹に効く感覚を脂肪の減少と取り違えず、腹筋運動を選ぶ前に確かめたい研究の対象と測定の意味を考える。

帰宅してマットに寝転び、動画の「下腹に効く」という字幕を見ながら脚を持ち上げる。上体を起こす腹筋運動とは違う場所がつらい。これなら下だけを使えているのか、と考えたことはないだろうか。

違う場所がつらくても、上下を独立して使えた証拠にはならない。男女を含む健康な成人の試験では、お腹の力の入れ方による違いが、静止した課題では現れ、動く課題では明確でなくなった。18〜39歳の女性だけでも同じ結果になるかは、別に確かめる必要がある。腹筋の働きは動作の条件に左右されるが、この結果を「下腹だけのスイッチがある」と読み替えることはできない。[4]

へそより下で変化が測られた研究もある。ただし産後の腹直筋離開を対象に、筋肉の間隔や腹囲を測った試験である。下側で測った変化、下側の筋活動、下腹の脂肪の減少は、同じ意味ではない。[19] 今日はその境界を、運動の名前より先に確かめたい。

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「下に効く」は、何が変わったという意味か

「下腹に効く」という言葉には、運動中の感覚、筋肉の活動、体の形への期待が一緒に入っている。レッスンの説明としては短くて便利だが、論文を読むときには少しほどく必要がある。へそより下が疲れたという自分の感想と、測定器で確かめた変化は、同じ欄に記録しないほうがよい。

健康な成人を対象にした研究では、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋、腹横筋を区別して厚さを調べている。腹直筋はお腹の前側の筋肉、腹斜筋は脇腹側の筋肉、腹横筋は深い層の筋肉として読み進めればよい。この研究が比べたのは、腹直筋の上と下ではなく、異なる筋肉と力の入れ方である。[4]

一方、妊娠中の試験では、へその上と下で腹直筋の左右の間隔を測っている。これは腹直筋離開、つまり左右の腹直筋の間が離れる状態を評価するための測定である。「下で測った」という表現は、ここでは筋活動の記録場所を意味しない。[18] 上下という同じ言葉が出てきても、見ているものは違うのだ。

検索結果で「下腹への効果」という見出しを見たら、その続きを読む際に、何の効果なのかを確かめたい。力を入れやすかったのか、超音波で厚さが違ったのか、筋肉の間隔が変わったのか。測ったものが分かれば、魅力的な言葉のまま受け取らず、自分が知りたかった問いとの距離を判断できる。

筋電図の大きさと筋肉の成長の関係は、既存記事「ピラティスで筋電図が大きいとよく鍛えられる?その場の活動と筋肉の成長を読む」に譲る。ここでは、数字の大小よりも、どの筋肉を、どの場所で、どんな課題の最中に見たかに焦点を絞る。

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へこませる動きと固める動きは、課題で違いが変わる

Jungらの無作為化クロスオーバー試験には、健康な成人18人、男性9人と女性9人が参加した。同じ人が、お腹をへこませる方法と、全体を固める方法の両方を、順序を無作為にして行った。条件の間には1週間を置いている。別人同士の体つきの比較ではなく、同じ参加者の方法による違いを見る設計である。男女を含む結果なので、18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには慎重さが要る。[4]

お腹をへこませる方法はホローイング、全体を固める方法はブレーシングと呼ばれる。この試験では、超音波で筋肉の厚さを、表面筋電図で筋肉の活動を調べた。表面筋電図は、皮膚に置いた電極から筋肉の電気的な活動を捉える測定である。厚さと活動を、別の測り方で見ているところに注目したい。[4]

腹直筋の厚さは、固める方法で10.07±1.55 mm、へこませる方法で9.22±1.46 mmであり、前者が大きかった。反対に、内腹斜筋と腹横筋の厚さは、へこませる方法のほうが大きかった。腹横筋では4.08±1.23 mmと2.41±0.80 mmという値が報告されている。[4] お腹を使う、とひとくくりにしても、筋肉ごとの反応はそろわない。

ここでの厚さは、それぞれの方法を行う条件での測定値である。長く練習した結果として筋肉がどれだけ成長したか、という数字に置き換えない。筋肉が厚く見える条件を探すことと、自分に合う練習を選ぶことも同義ではない。まず「その方法の最中の比較」として受け止めるのが、この試験に沿った読み方である。[4]

さらに興味深いのは、仰向けで膝を曲げて静止する課題では、腹直筋、外腹斜筋、内腹斜筋の筋活動が、へこませる方法で高かった点だ。ところが仰向けでつま先を床に触れる動的課題では、方法の間に有意な差がなかった。[4] 静かな場面でついた順位を、そのまま動く場面に持ち込めない。

したがって「へこませれば深い筋肉だけ」「固めれば前の筋肉だけ」と仕切る説明にも注意が要る。深い筋肉の厚さの違いと、表面の筋活動の違いは、同じ方向に単純には並ばなかった。少人数の健康な成人の試験として、力の入れ方と課題の組み合わせで応答が変わった、と読むのが適切である。[4]

動画をまねていると、「もっと下だけを意識して」と言われることがある。その言葉で動きが分かりやすくなったかどうかは、自分の練習上の感想として残してよい。ただし、静止した練習の感覚を、脚を動かす練習でも再現しなければ失敗だ、と決める必要はない。課題によって違いが変わるという研究結果を、採点の厳しさを緩める材料にしたい。[4]

この試験のように同じ人が両方の方法を行う設計では、「もともと腹筋の厚い人が一方に集まったのではないか」という心配を減らせる。ただし、参加者を増やしたことにはならない。男女を含む18人の結果を、あらゆる年齢や運動経験の人に同じように当てはめることは控えたい。研究の設計上の長所と、対象の範囲は一緒に持っておく必要がある。[4]

また、筋肉ごとの数値を読むときは、何と何の差なのかを文に戻すとよい。「腹直筋の厚さが大きかった」は、固める方法とへこませる方法の比較であり、上側と下側の比較ではない。「筋活動に差がなかった」は、動的課題で両方法を比べた結果であり、お腹の筋肉が働かなかったという意味ではない。比較相手を省略した説明ほど、別の話へ運びやすくなる。[4]

不安定な足場で増えた活動も「下だけ」の証拠ではない

足場を不安定にすると腹筋がよく働く、という説明を聞くこともある。Baoらの系統的レビューとメタ分析は、28研究、計579人をまとめ、不安定な条件と安定した条件の筋活動を比較した。腹直筋の活動について、標準化平均差は0.32、95%信頼区間は0.18〜0.46であり、不安定な条件で高かった。運動経験や課題の異なる参加者をまとめた分析であり、18〜39歳の女性の日常的な腹筋運動にも同じ差が出るかは別の問いになる。[20]

標準化平均差とは、異なる研究の結果を比較しやすい共通の尺度にした差である。0.32は、腹筋が32%多く働いた、腹囲が32%減った、という意味ではない。95%信頼区間は、その差の推定に幅があることを示す。単位のない値を、見た目の変化率に変換してはいけない。[20]

この分析では、道具、運動の種類、負荷、運動経験、収縮の条件などによっても結果を分けている。腹直筋の活動の差を、ただ「揺れるものほどよい」という道具選びの原則に縮めるのは粗い。測っているのは筋活動であり、下腹だけを切り離して使えたかという問いへの答えではない。[20]

マットで行う腹筋運動と、不安定な支えを使う運動のどちらが立派か、という競争を始める必要もない。読みたいのは、支持条件を変えたときに測定値がどう応答したかである。不安定な条件の数字を見たら、まず運動の種類と負荷も一緒に確認する。それなら道具の印象だけが先に走らずに済む。[20]

中央線の満員電車で揺れに耐えたからといって、下腹専用のレッスンを終えたことにはしない。日常の「支える感じ」と、条件を決めて測った研究結果の間には距離がある。研究の数字は、その距離を飛び越えるためではなく、何を比べたかを落ち着いて読むために使いたい。

数字で読むお腹の活動と測る場所

18人:へこませる方法と固める方法を比べた健康な成人の試験。腹直筋の上下別の比較ではない。[4]

10.07 mmと9.22 mm:固める方法とへこませる方法での腹直筋の平均の厚さ。練習後の成長量ではない。[4]

28研究・579人:不安定な条件と安定した条件の筋活動をまとめた分析の規模である。[20]

0.32:その分析の腹直筋活動の標準化平均差。95%信頼区間は0.18〜0.46である。[20]

へその上下2 cm:妊娠中の試験で腹直筋の左右の間隔を測った位置。活動が強かった場所を示す数字ではない。[18]

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