腹筋の筋トレは何キロカロリー?回数の換算表より先に確かめたい測定の条件

腹筋の筋トレで使うカロリーは、回数だけで決まるのか。酸素摂取量をそろえた比較試験を手がかりに、運動時間、全身と腹部、脂肪の利用と体脂肪の変化を分けて読む。短い自宅運動を一律の消費量に置き換えず、研究の対象と測定方法から数字の意味を確かめ、日々の記録に生かすための記事である。

マットの上で腹筋を終え、運動記録のカロリー欄で手が止まる。お腹は十分に疲れたのに、記録欄には何を入れればよいのか。回数を入力するだけで答えが出るなら便利だ。しかし研究では、腹部の運動と走る運動を比べる際にも、回数ではなく酸素摂取量を測って消費エネルギーを管理している。[1]

答えの芯は、短い腹筋運動を一律の「何回で何キロカロリー」に置き換えないことにある。腹部の持久運動と走行を組み合わせた試験はあるが、そこで行われたのは長い時間をかけた複合的な練習である。自宅で短く行う起き上がり運動とは、種目も時間も対象者もそろわない。[1]

既存の「筋肉痛が強いほどカロリー消費は多い?翌日の痛みと運動の消費量を分けて読む」には痛みの話を譲る。ここで扱うのは、腹筋運動の記録に付ける数字の条件である。「部分やせと腹筋運動の科学 お腹だけ痩せたい願いに、異なる試験が示した答え」で扱う部分やせの是非とも問いを分け、消費量を比較するために何をそろえたのかを見る。

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腹筋の回数より、研究がそろえた条件を見る

手がかりになるのは、過体重の男性を対象にした無作為化比較試験である。参加者は16人、平均年齢は43歳、平均の体格指数は29.8だった。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、性別と年齢の異なる対象での検証が必要だ。体格指数とは体重と身長から求める体格の指標である。この試験では、参加者を腹部の持久運動を含む群と、走行のみの群に割り付けて比較した。[1]

腹部の運動を含む群は、最大心拍数の70%で27分間走り、体幹の回旋と腹部を曲げるクランチを組み合わせた57分間の練習も行った。腹部の種目には最大筋力の30〜40%という負荷が使われ、4分間を4回行う構成だった。比較群は、同じく最大心拍数の70%で45分間の走行を行った。[1]

つまり、腹筋だけを短く行う群と、何もしない群を比べた実験ではない。走る時間も腹部運動の有無も違うプログラムを用い、運動中の酸素摂取量を測って、消費エネルギーを近づけた比較である。腹筋の回数が同じなら同じ量を使う、という前提で組まれた研究ではない点が大切だ。[1]

この区別を自宅の記録に当てはめよう。「腹筋をした」とだけ書くと、身体を起こしたのか、体幹をひねったのか、負荷を使ったのかが消えてしまう。論文の運動に自分の練習を近づけて読むには、名前だけでなく動作と負荷を残す必要がある。これは細かい記録の競争ではなく、別の運動を同じものとして換算しないための準備だ。[1]

研究の対象も省けない。過体重の中年男性に得られた結果を、若い女性の寝る前の腹筋運動へそのまま当てはめることはできない。年齢や性別が違うだけでなく、家庭の練習では走行との組み合わせもそろわないからだ。この試験を読む価値は、自分の消費量の答えを借りることより、数字に付いている条件を知ることにある。[1]

負荷の設定にも読みどころがある。最大筋力に対する30〜40%とは、その人が発揮できる力を基準にした条件である。同じ重りを全員に渡すという意味ではない。研究に近い言葉で練習を説明するには、重りの有無に加え、その負荷をどう決めたのかも関わってくる。自重で行ったという情報だけで、実験の負荷と等しいことにはならない。[1]

また、走行では最大心拍数に対する割合が使われている。腹部運動の負荷を表す最大筋力の割合と、走行の強さを表す心拍数の割合は、同じ尺度ではない。数字に同じ%が付いていても、何を基準にしたかが違う。その間の比較を支えたのが、運動中に測った酸素摂取量だった。運動の強さを示す数字を見つけたら、基準の言葉まで一緒に読む習慣を持ちたい。[1]

スマホの入力欄は短いが、研究の条件は長い。腹部運動という単語だけを切り取ると、その後ろの走行、負荷、継続時間、測定方法が見えなくなる。検索で見つけた値を使う前には、どんな動きをした誰の数字なのかを確かめたい。今回の試験から持ち帰るのは、家庭用の換算表ではなく、この確認の順番である。[1]

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酸素で測る全身の消費と、お腹の脂肪は別の欄だ

酸素摂取量は、身体に取り込まれる酸素の量を表す。腹部運動の比較試験では、呼吸から測るこの値が運動中の消費エネルギーを管理するために使われた。一方、体幹の脂肪量は、二重エネルギーX線吸収法という身体の組成を調べる方法で測られた。エネルギーと脂肪量は、別々の測定で確かめられている。[1]

呼吸を使う測定は、ほかの運動研究にも登場する。持久的なトレーニングを積んだ男性8人の自転車運動を調べた研究では、間接熱量測定という呼吸から代謝を調べる方法と、腹部の皮下脂肪組織を調べる方法を併用した。全身で脂肪が燃料として使われる量と、腹部で脂肪が分解される反応を別に追ったのである。18〜39歳の女性の短い自宅運動へ、この結果を直接移すことはできない。[11]

脂肪の「分解」は、脂肪組織から燃料を動員する過程を指す。「酸化」は、脂肪を燃料として利用する過程である。どちらにも脂肪という言葉が入るが、同じ測定値ではない。高齢女性の運動実験では、腹部の脂肪から動員された脂肪酸が、その場で再び組み立てられる過程も示されている。動員された分をそのまま身体から消えた脂肪と数えることはできない。高齢女性での観察なので、18〜39歳の女性でも同じ反応になるかは別に確かめる必要がある。[20]

この違いは、腹筋の消費カロリーを知りたいときにも関わる。全身で使ったエネルギー、腹部の脂肪組織の反応、練習期間の前後で変わった脂肪量は、それぞれ別の問いの答えだ。全身の消費エネルギーを管理した研究であっても、身体のどこから脂肪がどれだけ減ったかは別途調べている。[1][11][20]

腹筋運動後に「お腹を使った」と感じることを、そのまま腹部脂肪の消費量に読み替えないようにしたい。今回の比較試験でも、腹部の筋力、体幹の脂肪量、全身の脂肪量、体重をそれぞれ測った。運動の成果をカロリーだけにまとめるより、何を確かめたいのかに応じて記録欄を分けるほうが、研究の設計には近い。[1]

さらに、脂肪を使う割合の話を、運動で使う総量の話と混ぜないことも必要だ。自転車運動の実験では、前日に運動した条件と休んだ条件で、翌日の運動中の燃料利用が異なった。運動の名前だけで代謝の様子を固定せず、前後の条件まで扱った研究なのである。[11]

短い練習を、長い持久運動の数字で埋めない

自転車の実験に参加したのは、持久的なトレーニングを積んだ男性8人である。最大酸素摂取量の70%に相当する運動を90分間行い、前日に同じ相対強度で2時間運動した場合と、休んだ場合を比べた。最大酸素摂取量とは、運動中に取り込める酸素量の最大値を指す。男性の持久運動の条件なので、18〜39歳の女性の腹筋運動への適用は検証を要する。[11]

同じ参加者が条件を替えて行う交差試験で、前日に運動した条件では、実験全体を通じた脂肪の酸化が高かった。腹部皮下脂肪の分解を示す指標も高く、運動中の燃料選択には脂肪酸の供給が関わると報告された。これは長時間の自転車運動を調べた結果であり、腹筋の反復回数に対応する結果ではない。[11]

ここから「昨日も運動したから、今日の腹筋は多くのカロリーを使う」と結論してはいけない。調べたのは主に燃料の選択であり、短い腹筋運動の総消費量を比較した試験ではないからだ。生活に近づけて読むことと、別の運動へ数字を移すことは違う。前日の活動も実験条件になると理解するところで止めるのが適切である。[11]

別の研究では、平均75歳の健康な女性7人が、最大酸素摂取量に対して60%相当の負荷で60分間、自転車をこいだ。腹部皮下脂肪からのグリセロールと脂肪酸の動員は運動中に増えた。一方で、脂肪組織への血流は有意には増えず、動員と血流は異なる反応を示した。18〜39歳の女性に同じ反応が起こるかは、この高齢女性の結果だけでは判断できない。[20]

この研究も、お腹の脂肪組織を調べているから腹筋運動の研究なのではない。動かしたのは自転車であり、測った場所の一つが腹部だったのである。論文の見出しに腹部脂肪が登場していても、どこを動かした実験なのかまで見る必要がある。測った部位と運動種目を取り違えると、検索結果は簡単に別の意味になる。[20]

短い自宅運動に数字を付けたいときほど、こうした距離を保ちたい。長時間の運動で見えた脂肪の動員を、反復回数で割って家庭の腹筋へ配ることはできない。誰が、どの運動を、どれだけ続けたか。まずそれを読むことが、目安という言葉で違う条件を覆い隠さない方法である。[11][20]

数字で読む腹筋運動と測定の条件

16人:腹部の持久運動を含む無作為化比較試験の参加者数。対象は過体重の男性だった。[1]

10週間:同試験で、週4日のプログラムを続けた期間。単発の腹筋運動の比較ではない。[1]

27分と45分:腹部運動を含む群と走行のみの群で異なる走行時間。回数で消費量をそろえたのではない。[1]

90分:男性自転車選手を対象に、前日の運動条件と燃料利用を調べた運動時間である。[11]

12週間:高齢女性の試験で、トレーニング前後の脂肪代謝を比較した継続期間である。[4]

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宮川涼 Founder

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