反り腰のスクワットは踵を支えると違う?腰の反りとしゃがむ深さを読み分ける

反り腰が気になり、スクワットで踵の下に台を置くか迷う人へ。踵の支持で上体が起きても、腰と骨盤の関係まで同じように変わるとは限らない。足首の動き、しゃがむ深さ、膝の負担を研究で読み分け、経験や対象者による結果の違いから、足元を変える前に確認したい点を考える。

仕事帰り、鏡の横でスクワットをする。腰が反って見えるのが気になり、踵の下に台を置くと、今度は上体を起こしてしゃがめた。これで腰の姿勢も直ったのだろうか。見た目の変化は分かりやすいが、答えはそれほど単純ではない。

踵を支えて高くすると、スクワット中の上体の前傾や脚の関節の動きは変わりうる。一方、上体の前傾が減った研究でも、体幹と骨盤の相対的な角度には有意な違いがなかった。上体が起きることを、そのまま腰の反りが整った証拠にはできないのである。[3][7]

既存記事「反り腰の原因はかかとの高さにもある?靴を替えたときの骨盤と腰を読み解く」には、靴を替えた際の姿勢の問いを譲る。ここでは、しゃがんで立つ動作に限り、踵の支持が何を変え、何を別に確かめる必要があるかを考える。「ダイエットのスクワットはかかとを高くする?足首の動きと膝の負担を読む」で扱う脚の負荷そのものからも焦点を移し、腰を見ているつもりで上体全体を見ていないか、という問いを中心に置く。

「反り腰でつま先立ちをすると腰も動く?踵を上げた研究と骨盤の補いを読み分ける」には立って踵を浮かせる問いを、「反り腰はうつ伏せで寝ると反りが増す?腰の角度と腹部の支えを研究で読み解く」には寝姿勢の問いを譲る。また、「インナーマッスルはスクワットで働く?深さと腰を支える活動を分けて読む」の中心は体幹筋の活動である。ここで比較するのは、踵を器具で支えたスクワットの前傾と、体幹・骨盤の相対角度である。

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上体が起きることと腰の反りは別の指標である

横から撮った動画には、いくつもの動きが重なって映る。肩から腰までが床に対してどれだけ傾くかを見るのか、骨盤に対して体幹がどう動くかを見るのかで、比較しているものが違う。この区別が、踵の台を使ったスクワットを読む出発点になる。実際に、上体の前傾と体幹・骨盤の関係が同じようには変わらない実験がある。[7]

筋力トレーニング経験のある男性14人を対象にした実験では、軽い負荷のバーベル・バックスクワットを、裸足と、両側の踵を2.5cmの木製ブロックで高くした条件で比較した。バックスクワットとは、背中側でバーを支えてしゃがむ種目である。動作、関節にかかる力の働き、筋肉の電気的な活動を同時に調べた研究であった。[7]

踵を高くすると、膝が最も曲がった時点での上体の前傾角度は小さくなり、股関節の外力による関節モーメントも小さくなった。関節モーメントは、関節を回そうとする力の働きを表す指標である。しかし同じ時点の体幹と骨盤の角度差には、有意な違いがなかった。測定した筋活動についても、ピーク値などに有意差は認められなかった。[7]

この結果を鏡の前へ持ち帰るなら、「上体が起きた」という観察は残し、その先の「腰の反りまで直った」という判定を保留するのが筋である。床に対する上体の向きと、体幹と骨盤の位置関係は別々に記録したい。台を置いた写真がすっきり見えても、写真の印象だけで研究が測った項目を置き換えることはできない。[7]

逆に、体幹と骨盤の角度差が変わらなかったからといって、台には何の役割もないとするのも早い。この実験では前傾と股関節モーメントは変わっている。役割があることと、反り腰への対策として目的に合うことは、分けて判断する必要がある。[7]

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踵の支持は関節同士の分担を変える

靴や踵の高さとバックスクワットを扱ったレビューでは、14本の論文を検討している。多くの研究で、履物の違いは動きや力の指標に影響していた。ウエイトリフティング用の靴では、ランニング用の靴や裸足に比べて上体の前傾が減り、足首が底屈側、つまりつま先を下へ向ける側の位置になる傾向が示された。外付けの踵の台でも、同様の作用が報告されている。[3]

ここで重要なのは、踵だけを変えたつもりでも、結果は足首だけにとどまらないことである。健康な成人20人、男女各10人のバーベルスクワット実験では、踵を高くした条件で足首の背屈角度が小さくなり、足首の仕事の割合は増えた。背屈とは、足の甲をすねへ近づける方向の動きである。角度が小さくなることと、その関節の仕事が減ることは同義ではなかった。[6]

この研究は、個人に合わせた筋骨格モデルで関節の働きや筋活動を分析している。踵を高くすると、太もも外側の外側広筋、腿裏の大腿二頭筋、ふくらはぎの腓腹筋の活動が増え、すねの前側の前脛骨筋の活動は減った。男性では膝の関節モーメントと仕事の増加、股関節の仕事の減少も認められた。結果には男女差があったため、男性の変化をそのまま女性の標準として扱うことはできない。[6]

足元の変更は、負担を消す操作というより、関節や筋肉の分担を変える操作として読むほうが結果に沿っている。腰が気になるから踵を上げるとしても、膝や脚の働きが一緒に変わる可能性を見落としたくない。鏡には上体が映るが、脚の側でも仕事の割り振りが変わっている。[4][6]

また、このレビューは、初心者や女性を含む幅広い対象での検討が必要だと指摘している。靴底の硬さと踵の高さ、それぞれの影響をさらに調べる必要も挙げている。同じように踵が高く見える道具なら、すべて同じ条件になると考えるのは避けたい。[3]

深くしゃがめる結果を反り腰の改善に置き換えない

健康な成人を対象にした系統的レビューとメタ分析では、14研究、計177人の結果が統合された。メタ分析は複数の研究の結果をまとめて効果の傾向を調べる方法である。踵を高くした際の足首の可動域は平均差4.33°大きくなり、標準化した効果量は0.370だった。膝の可動域についても増加が示され、効果量は0.288だった。[1]

ここでいう可動域は、動作中に関節が動く範囲である。先ほどの実験にある足首の背屈角度と、まったく同じ読み方はできない。ある姿勢でどこまで曲がったか、動作を通じてどの範囲を動いたかでは、数字が答える問いが異なる。研究間の「足首が増える」「背屈が減る」を、言葉だけで正反対の結果だと決めるべきではない。[1][6]

統合結果では、低い踵の支持でも高い支持でも膝の可動域が増え、平均差はそれぞれ3.39°と6.65°であった。また、研究間の関係を調べる解析では、踵が高いほど股関節と体幹の可動域が小さいこととの関連が示された。これは動きの分担についての結果であり、読者個人に最適な台の高さを決定するものではない。[1]

しゃがむ深さを出せた日は、以前より動きやすいと感じるかもしれない。その感覚を否定する必要はない。ただ、深さは深さとして記録し、腰の姿勢は別の項目として見る。膝の可動域が増えたことから、立ったときの腰の反りが改善したと結論を飛ばすと、研究が確かめた動作の範囲を越えてしまう。[1][7]

「床に近づけたから成功」とだけ記録すると、上体の向きや膝の曲がり方がどう変わったかは残らない。比較するなら、同じくらいの深さで上体を見る場面と、無理なくしゃがめる深さを見る場面を分けて考えたい。これは研究結果を自分の観察へ整理するための見方であり、特定の深さを全員の合格点にする提案ではない。[1][7]

見落としたくないのは、平均差という数字の性質である。足首の可動域が平均で4.33°増えたという結果は、すべての参加者が同じだけ変わったという意味ではない。まして、同じ数字だけ腰の角度が減るという対応関係でもない。数字を読む際には、単位の前に、どの関節のどの指標なのかを置いておくと混同を防ぎやすい。[1]

また、膝の可動域の平均差が高い支持で大きかったことを、台を高くするほど練習の価値も上がると訳す必要はない。この解析が比べたのは動く範囲である。動く範囲を広げたいのか、今の深さで上体の向きを変えたいのか、腰と骨盤の位置関係を見たいのか。目的を言葉にすれば、可動域の数字だけでは決まらない部分がはっきりする。[1][7]

机の下の物を拾うようなしゃがみ方と、バーを支えた練習とでは、日常の目的も異なる。今回の踵の支持に関するレビューが扱ったのは重りを使うバックスクワットである。そこでの結果を日常のあらゆるしゃがみ方の正解として掲げるより、足元が変わると上体や脚の動きも変わりうるという観察の手がかりとして使いたい。[3]

数字で読む踵の支持とスクワット

14研究・177人:健康な成人の可動域を統合したメタ分析の規模である。[1]

4.33°:踵を高くした条件で増えた足首の可動域の平均差であり、腰の角度ではない。[1]

3.39°と6.65°:低い支持と高い支持での膝の可動域の平均差である。[1]

14人・2.5cm:前傾が減っても体幹と骨盤の角度差は有意に変わらなかった男性の実験条件である。[7]

30人・0〜5cm:足首の背屈が制限された男性で、高さの違いを比較した実験である。[4]

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宮川涼 Founder

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