食欲をそそる匂いは強いほどよい?濃さと心地よさがずれる条件を研究で読む

食欲をそそる匂いを強くすれば、料理はもっと魅力的になるのか。人の選択実験や唾液の研究から、香りの濃度、感じる強さ、心地よさ、実際の食事量を分けて読む。食べた料理によって好む強さが変わる結果や、香り成分の混合による違いを確かめ、台所で香りを足す前の判断につなげる。

夕食の支度中には魅力的だった焼きたての匂いが、食べ終えて皿を片付ける頃には少し重い。そんな場面を考えると、料理の香りは音量つまみのように強くすればよいのか、疑問が残る。人を対象にした実験では、空腹時に強い食品の匂いを選んでいた参加者が、その匂いに対応する食事をした後には弱い方を選ぶようになった。ただし、食べていない食品の匂いでは強い方を選び続けた。[15]

答えの芯は、香りの強さだけで魅力を決めないことである。同じ人でも何を食べたかによって好む強さが変わり、食品の匂いで唾液が増えることと、食べる量や満足が増すことも別の結果である。強く感じるか、おいしそうか、実際に食べるかを順に分ける必要がある。[1][15]

既存記事「食欲をそそる匂いは空腹で強まる?食前と食後で違う鼻の感度と心地よさを読む」には食前後の感度の問いを譲る。ここで扱うのは、料理の香りを濃くする判断である。鼻へ届く成分の濃さと、その香りを選びたい気持ちの間に、どんな条件が挟まるのかを追う。

ヨガとからだの記事のイメージ写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

香りの濃度と「強く感じる」は同じ数字ではない

濃度とは成分がどれほど含まれるか、知覚される強さとは人がどれほど強いと感じるかである。食品の香りを扱う分析研究では、濃度をその成分の匂いが分かる境目で割った値が使われる。これを匂い活性値と呼ぶ。同じ濃度でも、感じ取れる境目が違う成分を同じようには評価できないという考え方である。[14]

食品中に存在する成分を全部足せば、料理の匂いの強さや魅力が出る、という計算でもない。ラム酒と赤ワインを例にした分析法の研究は、食品全体の香りに寄与する主要な香り成分を同定し、量を測って評価した。目的は香りの特徴を捉えることであり、食事量を増やす処方を決めることではない。[14]

台所で「香りを濃くした」と言うときも、同じ成分の量だけを増やしたのか、別の材料を足して匂いの組合せを変えたのかは分けたい。後者なら、強さと同時に香りの内容も変えている。人の鼻を対象にした実験では、混ぜる相手の成分によって、単独では感じ取れない濃度の香りが知覚された。香りは、各成分の働きを足すだけでは読めない場合がある。[11]

この違いは料理を評価する言葉にも関わる。「濃厚になった」は成分量の測定ではなく、食べた人の感想として使われる言葉である。その感想を大切にすることと、食欲が強まったと結論することは分けられる。香りの分析研究で得た濃度の情報と、人がどちらの匂いを選ぶかという実験の結果は、それぞれ違う場所を照らしている。[14][15]

たとえば夕食のスープに香りのある材料を加える場面では、「匂いが分かりやすくなった」と「もっと食べたい」を別々に尋ねるとよい。これは特定の調理法を勧める話ではない。材料を足す判断の前に、何を変えたいのかを言葉にする整理である。研究を日常に持ち込むなら、濃さの数字から食事の満足までを一足飛びにつながない姿勢が役立つ。[11][14][15]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

強い方を選ぶ気持ちは、食べた料理ごとに変わる

匂いの強さを直接選ばせた人の実験が、今回の問いの中心になる。参加者には食品を思わせる匂いが提示され、匂いを嗅ぐ選択課題と脳画像の測定が組み合わされた。空腹時には、価値をそろえた食品の匂いのうち、強度が高い方が選ばれた。ところが、片方の匂いに対応する食事をすると、その匂いでは低い強度へと選択が移った。[15]

ここで見落としたくないのは、食べていない側の食品の匂いでは、高い強度への選択が残った点である。変化したのは、食べた食品に対応する香りの魅力だった。夕食を終えたら世界中の料理の匂いが同じように遠ざかる、という単純な話ではない。[15]

このように、食べた食品に関する反応が選択的に変わることを、感覚特異的な変化として読む。専門用語を覚えるより、何の匂いに変化が起きたかを見る方が実用的である。食後にある匂いが重く感じられても、それだけで鼻全体の感度が落ちたとは決められない。実験が示したのは、食品ごとに好む強さが変わる選択だった。[15]

脳画像では、報酬の特徴に関わる眼窩前頭皮質という領域の活動パターンにも、食べた食品に対応した変化があった。さらに脳領域間のつながりの変化は、満腹に伴う選び方の個人差を予測した。香りの魅力を、空気中の濃度だけで固定できないことと整合する結果である。ただし、脳画像の違いを、そのまま日常の食事量の差に置き換えることはできない。[15]

食べる前の自分を基準に、食後の自分へ同じ濃さを押し付ける必要はない。料理の準備中にちょうどよいと感じた香りを、食卓でもさらに強めるべきかは別の判断になる。実験の応用として考えられるのは、香りを増やす目標を固定するより、その料理を今どう感じるか確かめることだ。強い方を選ばなくなった事実を、料理の出来の悪さと結び付けなくてもよい。[15]

濃さの比較を読むときには、食品どうしの違いを取り除いた比較なのかにも注目したい。たとえば、別の料理の弱い匂いと強い匂いを並べて好みを尋ねれば、料理そのものへの好みも答えに入る。今回の選択実験で手掛かりになるのは、食品に対応する匂いの高い強度と低い強度を選び分けた点だ。何の香りかという軸と、どれほど強いかという軸を分けて設計したからこそ、食事後にどちらへ選択が動いたかを読める。[15]

また、食事前後の変化だけでなく、対応する食品を食べていない匂いの選択が保たれたことにも意味がある。単に課題を繰り返したために弱い方へ移ったという説明だけでは、食品による違いを捉えられない。比較する相手を置くことによって、「食後は弱い香りが好き」という大まかな表現よりも、どの香りで変化が起きたのかが具体的になる。家庭で試験を再現する必要はないが、結果を読む際はこの比較相手を落とさずにおきたい。[15]

唾液が増えることと、食欲が満たされることを分ける

料理の匂いを嗅いで口に唾液が出ると、食欲が動いたと感じやすい。無作為に匂いを提示した研究では、味の種類を表す匂いを調べる試験に36人、栄養素の種類を表す匂いを調べる試験に60人が参加した。食品の匂い、食品ではない匂い、匂いなしを比べると、食品の匂いによって唾液の分泌速度が有意に増加した。[1]

一方で、調べられた唾液の組成には変化が認められなかった。分泌速度の増加と、成分の変化は別の結果だった。口の中の反応には、分泌の速度と含まれる成分という別々の評価対象がある。この研究では食品の匂いへの予期的な反応が示されたが、「濃ければ濃いほど消化の準備が進む」と読み替えるのは飛躍である。[1]

食品の匂いへの唾液反応を繰り返し測った別の実験では、提示を重ねると反応が減り、新しい食品の匂いに替えると反応が戻った。同じ匂いでも、提示する経路を変えると反応が戻った。しかも、その違いは匂いの強さや心地よさの差には依存しなかった。反応が小さくなったら単純に濃度を上げればよい、とは考えにくい結果である。[3]

鼻の前から嗅ぐ経路と、口の側から鼻へ抜ける経路は、同じ食品の香りでも別の感覚信号になりうる。調理中に嗅ぐ香りと、食べているときに感じる香りをそのまま比較しないための手掛かりである。食品ではない匂いでは、同じように快く強い匂いでも、この食品に特有の反応は見られなかった。[3]

食卓の場面なら、湯気の匂いに口が反応したことと、食後にどれほど満足したかを別々に振り返ると読み違えにくい。唾液の研究は、食べる前にすでに反応が起こることを示している。その反応を満腹の証明や、食事量を増減させる保証にしないことが大切だ。口は準備を始めても、献立の量まで決めてくれるわけではない。[1][3]

数字で読む香りと反応

36人:味の種類を表す匂いと唾液反応を調べた無作為提示の試験の参加者数である。[1]

60人:栄養素の種類を表す匂いと唾液反応を調べた別の試験の参加者数である。[1]

30人:穏やかなパンの匂いがある部屋と匂いのない条件の比較には、肥満のある女性が参加した。[2]

約15分:その部屋の匂いへの曝露後、野菜スープの自由摂取量を測るまでの時間である。[2]

77人:体格の異なる成人で、口から鼻へ抜ける香りや味の知覚を比較した研究の人数である。[8]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

author avatar
宮川涼 Founder

1

2

関連記事

ご体験予約