ホットヨガで肌が濡れ続けると汗は減る?蒸れと発汗の時間変化を読み解く

ホットヨガで肌は濡れているのに、途中から汗の滴りが減ったと感じたことはないだろうか。湿った暑さや自転車運動の実験をもとに、濡れ続けた皮膚で発汗が減る現象、風や運動強度による違いを読む。汗の見た目だけで涼しさや安全を決めず、夏のレッスンで何を観察するかを考える。

ポーズをほどいてマットに座ると、額から落ちる汗が先ほどより少ない。ところが背中のウェアはまだ肌に張りついている。「もう体が冷えたのか」「汗を使い切ったのか」。夏のホットヨガでは、同じ肌の様子から逆向きの想像が浮かぶ。

健康な男性の湿熱曝露実験では、肌が濡れ続ける状況で、汗の分泌が後から減る現象が観察されている。湿った暑さの中で、最初は多かった汗の滴りが時間とともに減り、その背景に皮膚の濡れや通気の悪い部位での過剰な発汗があると考えられた。18〜39歳の女性のホットヨガに同じ経過が現れるかは、この男性実験だけでは判断できない。[11]

答えの芯は、濡れている量と、今まさに出ている汗の速さは別だという点にある。汗が減ったから暑さの負担がなくなった、とも決められない。風を変えた運動実験では、汗の総量が多い環境で体内に熱がたまりやすい結果も出ている。タオルは体温計の代わりにはならない。[15]

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濡れた肌は、今の発汗量をそのまま映さない

まず「汗が多い」という言葉をほどきたい。額の水滴が大きい、背中の布が肌につく、床に汗が落ちる。日常ではまとめて汗の量と呼びがちだが、研究では皮膚の濡れ、汗の分泌速度、滴り落ちる速さなどを分けて調べる。湿った暑さへの適応を調べた実験でも、体全体の発汗と汗の滴りの時間変化が測られている。[11]

この区別が必要なのは、見えている水滴だけでは、汗腺が現在どれだけ働いているかを読み切れないからだ。男性を対象とした実験では、通気の悪い皮膚の部分で最初に汗が過剰になり、その後に発汗が減るという経過が示された。濡れた状態が続くことと、分泌が同じ速さで続くことは一致しない。18〜39歳の女性でも同じ変化が起こるかは、女性を対象とした検証が必要だ。[11]

たとえば、動きを止めて座ったときに「背中はずっと濡れている」と感じても、それだけでは現在の分泌速度は分からない。反対に、滴りが減った様子だけで分泌が完全に止まったとも言えない。実験が捉えたのは、時間の途中で発汗の出方が変わる現象であり、濡れたか乾いたかという二択ではない。[11]

床に落ちる汗と蒸発による冷却の違いは、既存記事「ホットヨガで汗かきすぎるとよく冷える?床に落ちる汗と蒸発の違いを読む」に譲る。ここでは、そのさらに手前にある「濡れた状態が続いたあと、汗の分泌そのものはどう動くか」を追う。

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湿った暑さで観察された、後半の汗の減少

中心になるのは、健康な男性8人を連続10日間の暑熱曝露で調べた実験である。暑熱曝露とは、暑い環境に身を置くことだ。湿った暑さに慣れる過程で体全体の発汗量が増えると、滴り落ちる汗も増えた。18〜39歳の女性への適用には性別の違いが残るため、同じ増減幅を見込むことはできない。一方、各日の曝露では、開始から1時間を過ぎると滴りの速さが時間とともに明らかに下がった。[11]

このような発汗の減少を、ここでは濡れに伴う発汗抑制と呼ぶ。論文ではヒドロメイオシスと表現される現象だ。研究者は、皮膚の各部位がどこまで濡れたかが関係し、換気の悪い部分で先に汗が過剰になることが、その後の減少につながると解釈している。[11]

興味深いのは、暑さに慣れるほど最初の発汗量が増え、その後の減少も大きくなった点である。しかも、慣れによってこの現象が始まる時刻が早まることはなかった。最初の汗の勢い、後半の減り方、減り始める時刻は、それぞれ分けて読む必要がある。[11]

適用の限界は、対象と運動条件にある。男性の湿熱曝露、女性の自転車運動、女性のホットヨガは、それぞれ条件が異なる。男女で同じ発汗の量や時間経過になると仮定せず、18〜39歳の女性への適用は女性の研究と照らして考える必要がある。自転車を一定の負荷でこぐ運動と、ポーズや休止を含むヨガでは、負荷のかかり方も違う。「1時間」をレッスン共通の境界には使えない。実験の時間は、現象を観察した条件を伝える数字である。[11]

ここで知っておきたいのは、汗が後半に減るという変化が、単に「暑くなくなった」という物語だけでは説明できないことだ。この実験では、暑い環境の中で汗の滴りが減っている。見た目が落ち着いたことと、環境の暑さが解消したことを一緒にしない読み方が必要になる。[11]

この実験を読む際には、連続した日数と、その日の中の時間を混ぜないことも大切だ。日を重ねると最初の汗が増えるという変化があり、同時に、その日の曝露が進むと滴りが減るという変化もあった。「慣れたら増える」と「濡れ続けると減る」は、違う時間の区切りを見ているため、両立するのである。[11]

夏に通い始めた人が、先週と今日の違いを知りたいのか、今日の前半と後半の違いを知りたいのかで、立てる問いも変わる。実験は暑さへの反復曝露を扱っているが、日をまたぐ変化と当日の変化を別々に見るという整理は、レッスンの体感を話す際にも役立つ。汗の減り方をひとことで評価する前に、比較している時間の幅を確かめたい。[11]

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

汗腺が休む数より、出す量が変わる可能性

汗が少なくなると、「汗腺が閉じた」と説明したくなる。しかし男性8人の実験が示した解釈は、それよりも細かい。働いている汗腺の数が減るより、活動中の汗腺から出る汗の量が減ることが、発汗の低下に関係するらしいというものだった。汗を出す場所の数と、それぞれの場所が出す量は別の問題である。18〜39歳の女性でもこの仕組みが同じ程度に働くかは、この男性実験だけでは判断できない。[11]

この結果から、毛穴を何かがふさいだ、汗が体内で尽きた、といった説明へ進む必要はない。研究が検討したのは、濡れの程度と発汗の時間変化の関係だ。読者が背中の蒸れを感じた場面でも、見えない汗腺の状態をひとつの仕組みに決めつけるより、環境と経過を合わせて考えるほうが実験に忠実である。[11]

別の小規模実験では、男性4人が43℃の湿った暑さに繰り返し曝露された。初回には3人で過剰な発汗と滴り、その後の発汗抑制が見られ、反復後には全員で、増えた発汗に続く強い抑制が観察された。対象はごく少なく、18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできないが、後半に汗が減る経過を別の実験から見ている。[13]

この実験はホルモンも測った。体の水分調節に関わる抗利尿ホルモンやアルドステロン、血漿レニン活性について、発汗抑制とともに変化する所見は認められなかった。著者らは、調べたホルモン系がこの現象に関与することを支持しない結果だとした。あらゆるホルモンの関与を否定した研究として読むものではない。[13]

したがって「汗が減ったのはホルモンが節水に切り替えたからだ」とひと足飛びに説明するのも適切ではない。皮膚の局所で起こる変化を考える研究と、血液中の変化を測る研究を重ねると、もっともらしい説明にも確認が必要だと分かる。短い言葉で納得できることと、実験で確かめられたことは同じではない。[11][13]

女性の運動実験でも、強度によって経過が違う

男性の湿熱実験だけで女性のホットヨガを語るのは無理がある。そこで手掛かりになるのが、若い女性の訓練者と非訓練者を比較した自転車運動の研究だ。室温30℃、相対湿度60%の環境で2時間運動し、背中の汗を5分ごとに採取して、発汗の出方を追っている。[14]

訓練者では汗の出始めが速かった。一方、訓練者が高い運動負荷でこいだときには、発汗速度が次第に低下したが、低い負荷では同じ低下は観察されなかった。非訓練者では、この発汗抑制はまれだったという。女性でも現象は観察されたが、「運動中ならいつでも起こる」という結果ではない。[14]

さらに、非訓練者が60日間の身体トレーニングを受けた後には、発汗が早く始まり、発汗抑制も見られた。最初に汗が出やすくなることと、後から汗が減ることが、同じ人の変化の中に並んでいる。汗の立ち上がりだけで、その後の推移を予想できるわけではない。[14]

この研究の観察対象は背中であり、運動は自転車だ。背中の発汗速度を、顔の滴りや全身の水分損失へそのまま置き換えることはできない。ホットヨガで「今日は額より背中が蒸れる」と感じたなら、どの部位のどんな変化を話しているかを明確にする。それだけでも、体感と研究結果を混同しにくくなる。[14]

数字で読む濡れと発汗の実験

男性8人、連続10日間:湿熱への適応に伴う発汗と滴りの経過を追った実験である。[11]

曝露開始から1時間後以降:滴りが明らかに減った時間帯であり、レッスン共通の境界ではない。[11]

男性4人、43℃:発汗抑制と水分調節に関わるホルモンの関係を調べた実験条件である。[13]

30℃、相対湿度60%:女性の自転車運動で、負荷による発汗経過の違いを観察した環境だ。[14]

男性6人、60分間:風の速さを変え、汗の総量と体温を比較した運動実験である。[15]

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