ヨガは朝と夜で汗の出始めが違う?体内時計と発汗の境目を読み解く時間帯の話

朝のヨガでは汗が遅く、仕事帰りには早く出る。その違いを体内時計だけで説明できるのか。発汗が始まる体温、運動前の体温、汗の総量を分け、小規模な比較実験と熱産生をそろえた研究を読み比べる。朝と夜の優劣を決めず、自分に合う時間帯を考えるための見方を示す。

朝のレッスンではタオルを使わないままポーズが進むのに、夜は動き始めから額が濡れる。同じ自分なのに、時間帯でこんなに違うのか。軽い運動で汗や体温調節の反応に時刻による違いを認めた実験はある。ただし、朝なら必ず汗が遅い、夜なら必ず多いという単純な規則ではない。[14][16]

答えの芯は、運動を始める前の体温、汗が出始める体温、出た汗の総量を別々に考えることだ。朝夕で開始時の体温が違っても、運動で生じる熱をそろえた実験では、運動中の体温上昇と発汗の変化に差がなかった。[11] 朝のタオルが乾いているだけで、運動の出来を採点する必要はない。

既存記事「朝ホットヨガをすると頭が冴える」の覚醒や気分の話から離れ、ここでは汗が動き出す境目を追う。ホットヨガでの時刻の選び方に、自転車運動や暑熱負荷の研究をどう役立てるか。そのために、研究が測った現象と、スタジオで目にする汗を丁寧につないでいく。

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

汗の出始めは、時計より体温との関係で読む

発汗閾値とは、汗が出始める境目となる体温のことである。健康な男性5人の自転車運動を朝と夜に比べた研究では、夜は発汗が始まる平均体温の閾値が高い方向へ移動した。一方、安静時の平均体温も夜の方が高かった。男性の比較実験なので、18〜39歳の女性の発汗の境目にも同じ時刻差が出るかは、この結果だけでは判断できない。[16] 境目が高いことと、そこへ到達するまで長くかかることは同じ意味ではない。

階段にたとえると分かりやすい。到着する段が高くても、出発する段も高ければ、上る距離だけは短いかもしれない。これは仕組みを整理するためのたとえであり、汗が出るまでの分数を予測する計算式ではない。発汗の境目の高さだけを見て「夜は汗をかきにくい」と読むと、出発点となる体温の違いを落としてしまう。[16]

さらに、汗をかき始める時点と、その後に出続ける量は違う指標だ。境目を越えたあとに、体温の変化とともに汗がどう増えるかを調べる必要がある。朝夕の実験では、発汗速度と平均体温の関係が平行にずれる様子が観察された。[16] タオルを初めて使った瞬間だけでは、この関係全体を見たことにはならない。

研究で使う体温にも注意したい。体の内部の温度を指す深部体温、皮膚の温度、両者を扱う平均体温は、言葉が似ていても同じ測定値ではない。[5][16] 額に手を当てた感覚を、論文の直腸温とそのまま交換することはできない。汗が早かったという体験と、深部体温が何度だったかという測定は、別の記録として扱いたい。

深部体温の概日リズムを論じたレビューは、直腸温と消化管の温度を、リズム研究に使える測定として挙げている。また、深部体温は体内時計だけでなく睡眠と覚醒の影響も受けると説明する。[5] 朝の自分と夕方の自分を比べるとき、時計の針だけが動き、ほかはすべて同じだったとは考えない方がよい。

たとえば朝は起床後に家から直行し、夜は駅から歩いて入室した、と予定を振り返ってみる。これだけで汗の差の原因を決定することはできないが、比較した条件を言葉にできる。研究が開始時の体温や運動負荷を測るのは、「朝だったから」という説明を、ほかの条件から切り分けるためでもある。[11][16]

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軽い運動では朝夕の差が見えた実験がある

健康な参加者8人が、負荷90 Wの自転車運動を異なる時刻に行った比較実験がある。時刻は安静時の深部体温が低い時期、上昇する時期、高い時期、下降する時期に対応するよう設定された。運動は深部体温が落ち着くまで続け、前腕の皮膚血流や皮膚温、心拍、主観的なきつさなどを調べた。18〜39歳の女性に絞った比較ではなく、その年代の女性の朝夕差を直接示す結果としては扱えない。[14]

この実験では、発汗による総損失量や前腕の皮膚血流・皮膚温の上昇に時刻による違いがあり、全般に17時は5時より、23時は11時より大きい反応だった。主観的なきつさは5時に最も高かったが、心拍の上昇には時刻間の有意差がなかった。[14] 体感、心拍、汗が、すべて同じ順位になるわけではない。

体温の経過にも読みどころがある。開始時の体温が低いほど、初期の上がり方と、落ち着いた温度までの上昇幅は大きかった。一方で、落ち着くまでの変化の動態が時刻に依存する証拠は得られなかった。[14] 「朝は体温が低い」から「運動中もすべてゆっくり反応する」へ、一足飛びには進めないのである。

別の比較実験では、健康な男性5人が9時と20時に自転車をこいだ。18〜39歳の女性に同じ負荷で同じ差が出るかは、別に確かめる必要がある。室温26℃、相対湿度50%で、最大酸素摂取量に対して30%と60%の負荷を比べた。最大酸素摂取量は有酸素的な運動能力の指標であり、この割合は実験で負荷をそろえるためのものだ。[16]

30%の負荷では20時の発汗速度が9時より有意に高かったが、60%の負荷では発汗速度の時刻差が観察されなかった。[16] 同じ研究の中で、運動負荷を変えると時間帯の差が見えなくなっている。夕方に多く汗をかいたという結果だけを切り出して、どんな動きにも当てはめるのは早い。

その研究では、酸素摂取量、二酸化炭素排出量、換気量、平均皮膚温には、どちらの負荷でも時刻間の有意差がなかった。一方、心拍や平均体温、直腸温には時刻の影響が認められた。[16] 汗の結果を読むときには、一緒に何が変わり、何が変わらなかったかも大事だ。濡れたタオルだけが研究結果の代表ではない。

これらは軽い自転車運動についての小規模な比較である。[14][16] ポーズの保持と休息を組み合わせるヨガの参加者全員に、同じ順序で反応が出るという約束にはならない。ヨガの時間帯を決める際には、差があり得るという見通しを持ち、汗の出方を一律の合格線にしない、という使い方が現実的だ。

熱をそろえた研究では、発汗量は変わらなかった

ここで、朝夕の差を認めなかった研究も読む。男性10人、平均年齢26歳を対象とした実験では、8時と16時に60分間の自転車運動を行った。室温は23℃または33℃で、運動に伴って体内で生じる熱、すなわち熱産生の速度が対応するよう負荷を設定した。[11] 単に同じ時計時間だけ動く比較より、発熱の条件を細かく整えている。男性のみの結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできず、ここでは熱産生をそろえた比較として読む。

開始時の直腸温は朝36.8℃、午後37.0℃だった。それでも、運動中の直腸温の上昇や局所の発汗速度の変化、全身の汗による損失には、朝夕の有意差が認められなかった。[11] 出発点の体温に違いがあることと、そこから先の反応に違いがあることは、ここでも分ける必要がある。

具体的には、室温23℃、体重当たりの熱産生が7.5 W/kgの条件で、全身の汗による損失は朝579 g、午後579 gだった。室温33℃、熱産生5.5 W/kgでは朝558 g、午後555 gで、有意差はなかった。[11] これらは実験条件に対する平均値であり、ヨガで出すべき汗の量を示す目標値ではない。

室温33℃、熱産生7.5 W/kgの条件でも、汗による損失は朝796 g、午後783 gで有意差がなかった。[11] 温かい環境で測れば必ず朝夕の差が大きくなる、という読み方も成り立たない。時間帯の説明は、室温や運動で生じる熱という条件の中に置いて考えるべきなのである。

古い実験が間違いで、新しい実験だけが正しいと並べる必要はない。軽い負荷で時刻差が見えた研究と、熱産生を対応させた条件で差がなかった研究では、問いと実験の組み方が違う。[11][14][16] 共通して読めるのは、時刻だけで汗の多さを決めることの難しさだ。朝にも夜にも、タオルを濡らすノルマはない。

ここで、体温の「値」と「上昇幅」を具体的に分けてみる。室温23℃の条件では、運動開始から60分後までの直腸温上昇は朝0.83℃、午後0.75℃で、この差は有意ではなかった。[11] 開始時の体温が違うと、運動中のある瞬間の温度が違っても、運動によって増えた分まで違うとは限らない。朝夕の比較に使う物差しを、途中で交換しないことが大切だ。

局所の発汗速度と全身の汗の損失にも、測る範囲の違いがある。この実験は両方を調べ、いずれも朝夕で差がなかった。[11] 額だけ早く濡れたという観察は、その場所の変化として残す価値があるが、全身から出た汗の量を測り終えたことにはならない。鏡で見える汗と、研究で集めた全身の数字は、同じ広さの窓ではないのである。

また、有意差がなかったという結果を、どの人でも朝夕の汗が一滴まで一致するという意味に読み替えてはいけない。研究に示されたのは、男性10人が設定された条件で運動した際の群としての比較である。[11] 自分の朝夕に違いを感じても、それだけで研究と矛盾したことにはならない。研究は平均的な結果を示し、日々の記録は自分が参加した場面を残す。それぞれの役割を分ければ、数字に体験を無理やり合わせずに済む。

数字で読む朝夕の体温と汗

8人・90 W:軽い自転車運動で、発汗や皮膚血流の反応に時刻差が見られた。[14]

5人・9時と20時:発汗速度の時刻差は30%負荷で見られ、60%負荷では見られなかった。[16]

10人・60分:熱産生を対応させた実験では、発汗と体温上昇に朝夕の有意差がなかった。[11]

朝36.8℃・午後37.0℃:同じ実験でも、運動前の直腸温は朝の方が低かった。[11]

朝579 g・午後579 g:室温23℃の条件で測った汗の平均損失量で、推奨量ではない。[11]

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