心肺機能が落ちたかは同じ靴で比べる?履物の重さと歩く消費を研究で読む

心肺機能が落ちた気がする通勤路。以前と違う靴で歩いた日のきつさを、そのまま体力低下と考えてよいのか。歩行と走行の研究から、履物の重さや構造、路面が変えるエネルギー消費と、最大酸素摂取量との違いを読む。靴で差が出なかった試験も含め、前回と比べる条件を整理する。

玄関で靴ひもを結ぶ。昨日と同じ道を歩くつもりなのに、今日は足取りが重い。運動不足が進んだのかと考えてから、足元が普段の運動靴ではなく、外出用の靴だったことを思い出す。体力を採点する前に、比較している条件を確かめたい。

履物は、同じ速さで動くために必要なエネルギーを変える要因である。消費への影響は軽さだけで決まらず、比べる靴と動き方によって異なる。走行研究には、重量をそろえても効率に差が残った試験と、異なる設計の靴で呼吸や心拍に有意な差がなかった試験がある。[9][13]

したがって「今日はきつい」だけで心肺機能が落ちたとは決められない。走る効率を経時的に評価するレビューでも、履物や検査時刻、栄養状態をそろえる必要が指摘されている。[15] 足裏と着地の変化は既存記事「ウォーキングは裸足だと歩き方が変わる?靴の重さとは別に読む足裏と着地」に譲り、ここでは履物が違う日の消費を、以前の自分と比べてよいかを考える。

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同じ速さの酸素量は、体力の上限とは別である

ランニングエコノミーとは、限界より低い一定の速度で走るために必要なエネルギーのことである。日本語なら「走る経済性」だ。同じ速さを保つとき、より少ないエネルギーや酸素で済む走者ほど経済性がよいと表す。訓練された長距離走者を扱うレビューでは、安定した状態の酸素消費量と、呼吸に伴うガスの比を測って評価すると説明されている。18〜39歳の女性の日常歩行に、その評価法や走行成績との関係をそのまま当てはめることはできない。[15]

ここで測るのは、その運動をこなすために必要な量だ。一方、最大酸素摂取量は、酸素を取り込んで使う能力の上限を扱う指標であり、経済性と同じものではない。同じ最大酸素摂取量に近いエリート走者でも、経済性と走行成績には強い関連があると、このレビューは整理している。[15] 酸素を多く使えることと、同じ速さで酸素を少なく使うことは、違う問いなのである。

靴の比較試験で酸素消費量が低かったとしても、その場で心肺機能の上限が増したと読むのは早い。靴を替えた条件で、一定の運動に必要な量が少なくなったと読む。[9][15] 逆に、前より消費量の多い条件で動いたからといって、上限の低下を示したことにはならない。通勤路のきつさを考えるときも、能力の変化と、その日に必要だった仕事を分けることから始めたい。

また、息の感覚と測定された酸素量は、同じ欄に書かない方が整理しやすい。靴を比較した試験では、酸素消費量だけでなく心拍、換気量、主観的なきつさも別々に測っている。[13] 「楽だった」という感想は生活の記録として大切だが、酸素をどれだけ使ったかという測定値に置き換えることはできない。家庭の記録は診断表にせず、どんな条件で何を感じたかを残すメモにする。

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歩行の研究では、靴と道をセットで読む

歩く消費を扱った比較試験では、健康な若い男性14人が、登山用の靴を履いて平らな自然の道を歩く場合と、運動靴で傾斜を変えたランニングマシン上を歩く場合を比較している。対象者の平均年齢は23.9歳で、調べた速度は毎秒0.28〜1.39mだった。消費の指標は、体重と移動距離当たりのエネルギーである。男性の歩行試験なので、18〜39歳の女性にも同じ負荷の差が生じるかは別に確かめる必要がある。[11]

この試験では、屋外歩行の消費を最もよく反映したのは、マシンの傾斜を3%にした条件だった。また、調べたどの屋外歩行速度でも、酸素摂取量は換気性作業閾値より低かった。[11] 換気性作業閾値とは、運動を強めていくときに呼吸の増え方が変わる境目を指す。ここで大切なのは、平らな屋外と、水平のマシンが同じ負荷とは扱われなかった点だ。

ただし、この比較は靴の重さだけを取り出した実験ではない。登山用の靴と自然の道、運動靴とマシンという組合せが変わっている。結果を「登山靴を履くと傾斜3%分だけ重くなる」と読むことはできない。[11] 通勤靴に替えた日の変化を考えるときも、靴だけでなく、歩いた場所も比較表に置く必要がある。

日常なら、駅へ急いだ日と公園で散歩した日を比べていないかを見直せる。研究の速度や傾斜を、そのまま自分の運動設定に移す必要はない。むしろ、研究で条件を具体的に書く理由を借りたい。何を履き、どこを、どんな速さで歩いたかが分かって初めて、「同じ運動だった」という前提を点検できる。靴の名前だけでは、道の違いまでは消えない。[11]

もう一つ、歩行の比較研究では、中高年の45人が、アーチを支える履物、支えのない履物、裸足で検査を受けた。マシン上での歩行消費を測る検査は5分間で、アーチを支える履物では裸足よりエネルギー消費が有意に高かった。一方、片脚立ちの一部の条件では保持時間が長くなり、歩幅の増加を伴う歩行の改善も報告された。中高年の結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめて、消費やバランスの変化を予測することはできない。[20]

消費が少ない靴を、あらゆる意味で優れた靴と決められない理由がここにある。バランス、歩幅、消費は別の評価項目だ。[20] 消費を抑えたいのか、バランスを評価したいのかで、結果の意味は変わる。「支えがあるから必ず省エネルギー」という直感をいったん保留する材料として読むのが適切である。

靴の重さで説明できる部分と、残る部分

履物の重さが消費に関わることを示す材料には、男性14人による走行試験がある。薄く簡素な設計の靴と従来型の靴を履き、時速10kmで、下りから上りまで傾斜を変えて走った。走行のエネルギーコストは簡素な靴で平均1.3%低く、その靴の差は傾斜によって変わらなかった。男性の走行結果であり、18〜39歳の女性の歩行でも同じ割合になるかは、この比較とは別の問いである。[10]

著者らは、この差は靴の重量差に由来する可能性が最も高いと解釈している。[10] ただし、重量だけを同じにして比較した結果ではない。足の動きや接地時間なども変わった試験であり、「靴が軽くなった分だけ消費が減った」と言い切るより、重量が有力な説明だったと読む。この区別は細かそうで、購入の理由を考えるときには大きい。

一方、よく訓練された男女24人の無作為化クロスオーバー試験では、走者が複数の靴を履いて比較した。クロスオーバーとは、同じ参加者が条件を替えて体験する方法である。先進的な設計のマラソン用の靴は、比較対象のマラソン用の靴より走る経済性が4.2±1.2%よく、重量を比較対象に合わせても2.9±1.3%の改善が残った。女性も含むが、よく訓練された走者の試験であり、18〜39歳の女性一般の通勤歩行にこの割合をそのまま使うことはできない。[9]

この結果は、効率の差を軽さだけで説明する見方に合わない。少なくとも、その対象者と走行条件では、同じ重さにしても靴の違いが残ったのである。[9] ただし、実験では男性は時速14〜18km、女性は時速14〜16kmなどの速度で走っている。[9] その差を、駅まで歩くときの消費率として転用しないことも同じくらい大切だ。

軽量な設計のレビューでも、多くの研究で従来型より走行の生理的な消費が低く、おそらく重量の小ささが関わると整理されている。対象となる運動はランニングであり、18〜39歳の女性の歩行に同じ消費の差が出るかは分けて考える必要がある。[12] しかし、その知識を「一番軽い靴を選べばよい」に縮めると、重量をそろえても差が出た試験や、歩行で別の評価項目が改善した研究を取り落とす。[9][20] 足元の秤は役に立つが、体の反応までは量れない。

例えば、以前の記録が運動靴、今の記録が別の靴で、今の方がつらかったとする。この比較から分かるのは「条件の違う日に、感じ方も違った」というところまでだ。走行試験の平均差を借りて、今の自分の体力低下から一定割合を差し引くことはできない。研究の割合は、決められた参加者が決められた速度で履き比べた結果だからである。[9][10] 消費量の研究は、日常の感想を補正する計算機より、比較の条件を見つける案内として使いたい。

もう一つ、重量をそろえる実験には、原因を切り分ける意味がある。靴全体を替えた比較だけなら、重さ、材料、形などの違いが一緒に動く。重量を合わせた条件でも差が残れば、「軽いから」という説明だけでは足りないと考えられる。[9] 自宅で靴に重りを付けて再現する必要はない。論文の比較方法を読むとき、何を同じにして、何を変えた試験かを確かめればよい。それだけで、結果を必要以上に広げるのを避けられる。

数字で読む履物と移動の消費

14人:登山用の靴での自然の道と、運動靴でのマシン歩行を比べた健康な若い男性の人数。[11]

3%:その試験で屋外歩行のエネルギー消費を最もよく反映したマシンの傾斜。靴単独の効果ではない。[11]

1.3%:男性による走行試験で、簡素な靴のエネルギーコストが従来型より平均して低かった割合。[10]

2.9±1.3%:よく訓練された走者の試験で、靴の重量を合わせても残った走る経済性の改善。[9]

45人:履物のアーチ支持、歩行消費、バランスを比較した中高年の参加者数。[20]

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