有酸素運動のローイングは足板を傾ける?足首の角度と脚の力を分けて研究で読む

ローイングで足を置く板を傾ければ、脚の力は伝わりやすくなるのか。足板の設定と筋力、引く力と有酸素負荷、足首の動かしやすさと運動の上達を分けて考える。競技者や初心者を対象にした研究から、最適角度を決めつけず、自分の設定と運動の記録を見直すための判断材料を整理する。

座席を前へ戻したところで、足首の前が詰まる気がする。ハンドルを握り直すより、足を置く板をもう少し寝かせた方がよいのだろうか。ローイングマシンの前でそんな疑問が出たとき、欲しいのは気合いよりも設定の見方である。

足板の角度には、全員に勧められる正解の数字をここで置かない。まず分けたいのは、足元の合わせ方、脚が出せる力、その運動を続けた先の変化である。筋力とローイングの成績には関連があるが、それを足板の傾斜による効果と読み替えることはできない。[1]

さらに、強く引ける感覚と有酸素運動としての負荷も同じではない。競技女性を対象にした装置の比較では、引く力が小さくなっても最大運動中の平均酸素摂取量には差がなかった。[11]足首の窮屈さから足板を変えたいと考えるときも、足元で確かめたいことと、運動の成果として確かめたいことを別々にしよう。

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足板の傾きに、脚の筋力の話を重ねすぎない

この記事でいう足板は、ローイング中に足を置く支持板のことである。板をどう合わせるか相談するときには、傾斜のことなのか、足を置く高さのことなのかを言葉で分けたい。「足元を変えた」だけでは、自分が何を試したのか後から戻れなくなる。設定の名前は機器ごとに確認するのが出発点だ。

脚の力がローイングと関係すること自体には、研究の裏付けがある。筋力とローイングマシンの成績との関連をまとめた系統的レビューとメタ分析では、条件に合う研究が11本選ばれた。系統的レビューは研究を一定の手順で集める方法、メタ分析は複数研究の結果を統計的にまとめる方法である。ローイングの筋力と成績を扱う研究の統合であり、18〜39歳の女性の日常的な運動にそのまま当てはめるには、競技経験や実施条件の違いを考える必要がある。脚の最大筋力の指標には、脚で重りを押す運動や、重りを担ぐスクワットが使われていた。[1]

その統合解析で、脚の最大筋力とローイング成績との相関係数は−0.72だった。相関係数は関係の向きと強さを表す値であり、この負の関連は、筋力が高いほど所要時間が短い方向の関係として読む。背中や腕で重りを引くベンチプルでも−0.71という関連が報告された。[1]ローイングを腕だけの仕事として眺めると、こうした脚の力とのつながりが見えにくくなる。

ただし、この数字は「足板を傾けると成績がその割合だけ上がる」という意味ではない。筋力を測った研究と、設定を変更して効果を比べる研究では、答えられる問いが違う。関連が強くても、設定変更の効果量には変換できない。[1]相関係数は、調整ねじの目盛りではない。

また、最大筋力は大きな力を出す能力、爆発的筋力は素早く力を立ち上げる能力として読み分けたい。このレビューでは、爆発的筋力とローイングの出力の間にも正の関連が報告されたが、その強さは研究によって幅があった。[1]足板に足を置いた瞬間の押しやすさだけで、こうした能力全体を測れたことにはならない。

爆発的筋力を扱った6研究では、出力との相関係数は0.29〜0.86、所要時間との相関係数は−0.53〜−0.81だった。[1]この幅は、ローイングに関係する力を単独の指標で代表させる難しさも教える。ある人が大きな力を出せることと、短い時間で力を出せることを、同じ能力として扱わない方がよい。足板を動かす相談と、筋力をどう育てるかという相談にも、それぞれ別の目的を置ける。

仕事帰りにマシンを使う人なら、「今日は板の位置が違う」「今日は疲れている」「今日は強く漕ごうとした」が同時に起こりうる。これは設定を比べる際の実務上の注意である。足元の相談では、何が気になるかを先に決めたい。戻った位置で窮屈なのか、押し始めに足の接触が気になるのか。成績の話を始める前に、本人が困る場面を具体的な言葉にするのである。

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引く力が小さくても、有酸素負荷は軽いとは限らない

足板の角度を考えるときに役立つのは、別の装置条件を比べた研究の読み方だ。ただし、装置全体の違いを足板だけの効果と混同してはいけない。ここで紹介するのは、マシンをスライド上に置いて動くようにした場合と、固定した場合の比較である。[11]

対象はエリート女性選手7人で、実施順序を無作為にし、最大未満の強度と最大強度で漕いだ。18〜39歳の女性でも、競技経験が異なれば結果をそのまま当てはめることはできない。研究者は酸素摂取量に加え、ハンドルにかかる力や、引く動作の速度と長さを測った。スライド条件では、各強度で漕ぐ頻度が固定条件より高かった。[11]同じ「ローイング」という名前でも、装置の条件によって動作の配分は変わっていた。

高い方の強度条件では、スライド上の平均の力は4.7〜9.0%、最大の力は3.2〜10.6%小さかった。一方、最大運動中の心拍数と平均酸素摂取量には条件間の差がなかった。[11]引く力が小さいという結果だけを拾えば「運動が軽くなった」と言いたくなるが、酸素を使う側の測定は別の姿を示した。

これは足板を寝かせる勧めではない。装置の比較から借りられるのは、測定項目を分ける姿勢である。手に返ってくる力、漕ぐ頻度、酸素摂取量は、研究でも別々に測られた。[11]足元を調整した日の感想にも、「押しやすい」「重く感じる」「息が上がる」を別の欄で残す方が、次の相談につなげやすい。

同じ比較では、スライド条件の最大酸素不足量は30.8%大きかった。研究者は、有酸素系への要求は同程度でも、無酸素系への要求は高い可能性があると考察している。[11]無酸素系とは、酸素の利用だけに頼らずエネルギーを供給する側の働きである。力の数字が下がったことから、エネルギーの負担まで一律に下がったとは読めない。この違いは、表示された項目の意味を確認する理由にもなる。

対象が少数の競技女性であることにも目を向けたい。この条件比較は、初心者全員が同じように動くと約束するものではない。[11]運動に慣れた人の結果は、仕組みを考える手掛かりにはなる。しかし、隣のマシンで速く漕ぐ人の設定を、そのまま自分の正解にする理由にはならない。

既存記事「有酸素運動のローイングは重く引くほどよい?抵抗設定と一漕ぎの力を読み解く」には抵抗設定の問いを譲り、ここでは足を置く条件と、そこから判断する項目に絞る。また、引く時間と戻る時間の配分や、足をベルトで留めるかという問いとも分けたい。変更点が違えば、相談するときの説明も変わる。

押しやすさと成績は、同じ感想欄に入れない

感覚と成績がずれる例は、運動経験の少ない成人にもある。健康で運動習慣のない成人21人を対象に、仮想現実の映像を使う条件と使わない条件で、ローイングの終了時間などを比較した試験である。男性10人、女性11人が参加し、条件の順序を無作為に入れ替えて実施された。男女混合の集団であり、18〜39歳の女性だけの結果としては扱えない。[20]

距離は1500mで、映像を使わない条件の終了時間は平均449.57秒、使う条件は463.00秒だった。論文は映像条件で約3%遅くなったと報告している。両条件とも心拍数からは高強度の運動と判定され、映像条件では注意がより外側へ向いた。[20]目の前の景色が変わることと、漕ぐ結果がよくなることは別だったのである。

この試験も足板の実験ではない。そのため「画面を消すと足首が動く」といった結論にはつながらない。使いたいのは、環境を変えたとき、本人が向ける注意と実際の運動成績を分けて確かめる発想だ。[20]足板を触ったからといって、変化のすべてを板に帰す必要はない。

たとえば設定を変えた日は、足首ばかり見て、普段と違う力で漕いでいたかもしれない。比較メモには、設定だけでなく、何を意識していたかも添えるとよい。これは研究で効果が確定した練習法としてではなく、変更の内容を説明できるようにする記録の提案である。中央線で読んだ設定の話と、その日の自己ベストが、同じ原因とは限らない。

「楽に感じた」は捨てる必要がない。続ける際の本人の感想として残しつつ、表示された距離や所要時間とは別に読む。装置比較でも、映像の比較でも、動作や成績を複数の指標で捉えていた。[11][20]自分の感想を大事にすることと、感想だけで効果を断定しないことは両立する。

数字で読むローイングの力と条件

11研究:筋力とローイング成績の関連を扱った系統的レビューの採択数である。[1]

−0.72:脚の最大筋力とローイング成績との相関係数であり、足板変更の効果量ではない。[1]

7人:スライド上と固定した装置を比べた研究の対象はエリート女性だった。[11]

4.7〜9.0%:スライド条件で小さかった平均の力。高い方の強度条件での比較である。[11]

約3%:運動習慣のない成人の映像条件でみられた終了時間の遅れであり、足板の数字ではない。[20]

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