指を鳴らすと太くなるは本当か、腫れが割れた2つの調査と60年決着しない音の正体

指を鳴らすと太くなるのか。1990年の300人の調査では手の腫れが多く握力も低かったが、2017年の400関節の研究で腫れは見られなかった。関節炎との関連は300人の調査と215人の研究で出ていない。軟骨の厚さの比較、泡が生まれる音か潰れる音かの議論まで読む。

太くなる、という話から片づけたかった。片づかない。1990年に300人を調べた研究では、習慣的に指を鳴らす74人は手の腫れが多く、握力が低かった[21]。2017年に40人、400の関節を調べた研究では、腫れはどの人にも見られなかった[13]。診察した整形外科医は、誰が鳴らす人なのかを知らされていなかった[13]。答えは割れている。

ただ、関節炎との関連が出ない点はかなり揃っている。1990年の300人でも手の関節炎はどちらの組にも偏らず[21]、50〜89歳の215人の研究でも、どこかの関節に関節炎があった割合は、鳴らす人で18.1%、鳴らさない人で21.5%で、統計的な差はなかった[19]。

そして1990年の研究には、見落とせない続きがある。指を鳴らす人たちは、手を使う肉体労働、爪かみ、喫煙、飲酒が多かった[21]。腫れの原因は指の音なのか、働いている手なのか。鳴らす人のほうが軟骨が厚かった、という一時点の比較もある[11]。そもそも、あのポキッが何の音なのかを、研究者は60年以上たった今も決められていない[14]。

ヨガとからだの記事のイメージ写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

1990年の300人と2017年の40人で、腫れの答えが割れた

1990年の論文の書き出しは物騒である。指を鳴らすと急激なエネルギーの放出が起き、水力機械の羽根や船のスクリューを壊す力によく似ているという[21]。そこで45歳以上の患者300人を順に調べ、習慣的に鳴らす74人と鳴らさない226人を比べた[21]。手の関節炎はどちらにも偏らなかったが、鳴らす人は手の腫れが多く、握力が低かった[21]。著者たちの結論は、習慣的に鳴らすと手の機能が損なわれる、というものだ[21]。

ただ、この結論にはすぐ疑問がつく。鳴らす人は手を使う肉体労働が多く、爪かみ、喫煙、飲酒も多かった[21]。手をよく使う仕事の人の手が腫れていたのだとしたら、指の音のせいとは言えない。受診した患者の調査で、因果を決められる形でもない。

2017年の研究は、形が違う。症状のない成人40人のうち30人が、毎日自分で指を鳴らす習慣のある人だった[13]。2人の整形外科医が、習慣を知らされないまま、腫れ、握力、関節の動く範囲を調べ、超音波の担当が鳴らす前、鳴らす最中、鳴らしたあとの映像を記録した[13]。

手の使いにくさを自分で答える質問票の点数は、鳴らす人が3.7、鳴らさない人が3.2で差はなかった[13]。握力にも差はなかった[13]。腫れは、鳴らす前後の比較を含めて、誰にも観察されなかった[13]。論文の結論も、鳴らした直後の診察で悪い所見の証拠は見つからなかった、というものだ[13]。超音波の映像では、鳴らす瞬間に関節の中に明るい点が新しく現れるのが特徴だった[13]。

どちらも指の太さをそのまま巻き尺で測った研究ではない。2017年は盲検だが40人で、1990年は300人だが別の習慣が混ざっている。太くなると証明されたわけでも、完全に否定されたわけでもない。少なくとも、鳴らした直後に指が腫れるという話は、この40人では見られなかった。

検索する人の感覚に近いのは、むしろ「鳴らすと楽に動く」のほうだろう。空洞ができると関節の動く範囲が増えることは古くから指摘されていて[6]、鳴らした直後、関節の曲がる範囲は実際に少し広がった[13]。他動で動かす範囲の合計で、鳴らす前の137.8度が145.6度になっている[13]。平均7.7度の差で、音のした関節とそうでない関節を比べても、音のした関節のほうが動く範囲は広かった(143.8度と134.9度)[13]。

この習慣はどれくらい広いのか。同じ論文は、自分で指を鳴らす習慣のある人の割合を25〜45%と紹介している[13]。50〜89歳の調査では20%だった[19]。中央線の1両に、鳴らす人が何人か乗っている計算になる。

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

空き枠を見て予約電話で予約 042-595-8039LINE

鳴らす人のほうが軟骨は厚かった、ただし一時点の比較で

太くなる説に、もう1つそれらしい顔をしているのがこの調査である。1日に5回以上指を鳴らす19〜27歳の35人(男性20人、女性15人)と、年齢、性別、BMI をそろえた鳴らさない35人を比べた研究では、超音波で測った中手骨の先の軟骨が、利き手でもそうでない手でも鳴らす人のほうが厚かった[11]。握力には差がなかった[11]。軟骨の厚さと握力のあいだに相関もなかった[11]。

ここで早合点しないようにしたい。一時点で2つの集団を比べた調査なので、鳴らすから厚くなったのか、もともと厚い人が鳴らしやすいのかは分からない。厚いことが良いのか悪いのかも、この研究の結果からは言えない。

「太くなる」という言い伝えが、この結果に都合よく見えるのは事実だ。ただ、ここで測ったのは関節の中の1枚の層の厚さで、指の太さではない。

yogaのレッスン前の様子生徒の足もとにあるヨガマット 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

関節炎の答えと、握力の答えの強さは違う

関節炎の話は、答えがかなり揃っている。解剖学の総説は、関連を調べた証拠は主に観察研究で、関連を示せていないとまとめる[1]。300人の調査でも手の関節炎は偏らなかった[21]。215人の研究は、右手の X 線を過去5年以内に撮った人を対象に、関節炎のある135人とない80人を比べた症例対照研究で、関節ごとに見ても、年数や回数を掛け合わせて累積量にしても、関連は出なかった[19]。

ただし過去の習慣を本人の記憶で答える形である。無作為に「鳴らす組」を作った試験ではない。それでも、関節炎になるから鳴らすな、という注意には根拠が足りない。むしろ逆に、鳴らす人のほうが指の付け根の関節炎が少なかったという先行研究が紹介されていて[19]、繰り返す関節の解放が関節炎を減らす可能性を挙げた総説まであるが[5]、これも仮説の段階である。効くと思って鳴らす話ではない。

握力については古い調査と新しい調査が食い違う。1990年の調査と1995年の総説は、握力の低下との関連を挙げている[21][6]。新しい研究は、40人の調査でも35人ずつの調査でも握力に差がなかった[13][11]。新しいほうが小さく、古いほうは別の習慣が混ざっている。どちらかに決めるには足りない。

ポキッの正体を、研究者はまだ決められない

音の話に移る。説は1世紀にわたって次々と出されてきた[1]。関節の中の液には気体が溶けている。関節を引き離すと内部の圧が急に下がり、溶けていた気体が空洞になって現れる。ここまでは、ほぼ合意がある[6][1]。1995年の総説は、現れた気体は関節の体積の約15%を占め、その約80%が二酸化炭素だとしている[6]。音のしない解放もあり、関節の音がすべて解放の音とは限らない、という総説もある[5]。

割れているのは、その先だ。音が鳴るのは泡が生まれる瞬間か、泡が潰れる瞬間か。10の関節を、1秒に3.2コマの磁気共鳴の動画で撮った研究は、音が出るのは空洞が生まれる瞬間で、その後も空洞は見えていたと報告した[18]。向かい合う面が離れまいとして、限界で急に離れて気体の空洞ができる現象で、トライボヌクレーションと呼ばれる[18][3]。潰れる説は、これで葬られたように見えた。

ところが3年後、数理モデルが逆の答えを返す。泡が潰れるときの音を計算すると、大きさも主な周波数も、実際に測った音と一致した[14]。泡の一部が潰れるだけで音は再現でき、音のあとも泡が残ることと矛盾しない、というのである[14]。60年以上の研究があるのに決着しない理由として、この論文は測定の時間の解像度の限界を挙げる[14]。1秒に3.2コマでは、ポキッの一瞬は写りきらないのかもしれない。

同じ指が、すぐにはもう1度鳴らないのも、この話の一部である。吸盤と液で作った模型の実験でも、音のあとに空洞ができ、それが液に吸収されるまでは音が出ない時間が再現された[16]。もう1度鳴らそうとして力を入れても鳴らないのは、気のせいではない。

この議論は指だけの話で終わらない。関節を手で動かす手技の分野では、初期の関節の音の研究が読み違えられ、そこから生まれた有名な模型に欠陥が残った、と指摘する総説がある[2]。音を何と読むかで、治療の説明まで変わるのである。

数字で読む指の音

  • 400の関節: 40人を調べた規模。腫れはどの人にも観察されなかった[13]
  • 18.1%と21.5%: 鳴らす人と鳴らさない人で、どこかの関節に関節炎があった割合。差はなし[19]
  • 7.7度: 鳴らした直後に増えた他動で動かす範囲の合計の平均[13]
  • 25〜45%: 指を鳴らす習慣のある人の割合として紹介されている数字[13]
  • 74人と226人: 1990年の調査で比べた鳴らす人と鳴らさない人。鳴らす人は手の腫れが多く握力が低かった[21]
  • 3.2コマ: 音の瞬間を撮った磁気共鳴の動画の1秒あたりの枚数[18]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

空き枠を見て予約電話で予約 042-595-8039LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

author avatar
宮川涼 Founder

1

2

関連記事

ご体験予約