ダイエットのチートデイで体が温まる?食後の熱と代謝回復の証拠を読み分ける

食事を増やした夜に体が温まると、落ちた代謝が戻ったと思いたくなる。だが熱をつくる反応、安静時の消費量、体重の変化は別の指標である。食事制限と再摂食の試験から、温かさだけでチートデイの必要性を決められない理由を読み、翌朝の体重や日常の記録との付き合い方を考える。

久しぶりに夕食をしっかり食べ、皿を片づけるころには袖をまくりたくなった。「体が温まった。これで代謝が戻ったのか」。食事を控えていた人ほど、そんな答えが欲しくなる場面である。

食べる量の変化に応じて熱産生やエネルギー消費が変わる反応はある。しかし、その夜の温かさだけを、食事制限で下がった安静時の消費量が回復した証拠として扱うことはできない。食事制限への適応を調べた試験では、体組成、安静時の消費量、体液の収支を組み合わせて評価している。[5][15]

「ダイエット中のチートデイは週末に必要?土日の食事量を決める前に読む比較研究」には週末の食事配分の問いを譲る。また「ダイエット停滞期のチートデイは自由な日?予定した食事と止められない感覚を読む」には食行動と制御感の問いを譲る。ここで考えるのは、食べた後の熱をどこまで代謝の回復と呼べるかである。チートデイを予定表に入れる前に、体の感覚と研究で測った量の間を確かめたい。

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温かさ、熱産生、安静時の消費量を分ける

熱産生とは熱をつくることである。食べ過ぎや栄養不足への応答を扱うレビューでは、熱産生は摂取と消費の変化に対応する過程として位置づけられ、交感神経系が調節に関わるとされている。交感神経系は体の活動を調整する神経の働きの一部であり、このレビューでは急な食事制限によりその働きと熱産生反応が低下し、過剰摂取では働きが増す方向が示されている。[15]

これは「食事を変えると消費側も動き得る」という説明である。一方、安静時エネルギー消費量は、安静にしている間に消費するエネルギーの量を指す。食事制限の試験で問題になるのは、食べた直後の感想ではなく、安静時の消費量が体の構成の変化を考慮しても低下するかどうかである。測りたい対象が違う。食後という場面が同じでも、感覚を尋ねる問いと、消費する量を調べる問いは分けておきたい。[5]

夕食後に「暑い」と感じたという日記は、経験として残してよい。ただし、それを消費量の欄へそのまま転記すると、感覚がいつの間にか測定値の代役になる。熱産生への反応を論じるレビューと、安静時の消費量を測る試験をつないでも、温かさを代謝回復へ換算することにはならない。[5][15]

ここで「回復」という言葉もほどいておきたい。食事を増やした日に反応があったという意味なのか、制限前の安静時消費量へ戻ったという意味なのか、同じ食事を続けた後もその状態が保たれるという意味なのか。それぞれ別の問いである。食事制限と再摂食を追う試験は、こうした時間の流れと測定条件を持っている。その夜だけを切り取る体験談では、その区別が抜けやすい。[5]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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代謝の低下をすべて省エネ反応と呼ばない

適応性熱産生は、食事制限に伴う安静時消費量の低下のうち、除脂肪量だけでは説明しきれない部分を扱う概念である。除脂肪量とは体重から脂肪量を除いた部分を指す。筋肉だけを指す言葉ではない。非肥満の男性32人を対象とした介入試験では、除脂肪量の中にある臓器や筋肉の変化まで調べている。男性で得た結果を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできず、食後の体感から女性の消費量の変化を求める用途には使えない。[5]

この試験では必要量より50%多い食事を1週間、必要量より50%少ない食事を3週間、その後に必要量より50%多い再摂食を2週間、順に行った。日常の食事の手本ではなく、摂取を大きく変えたときの体の反応を追う実験である。ここでの再摂食は食事制限後に再び摂取を増やす操作であり、好きなものを自由に食べる日と同じ条件ではない。[5]

食事制限期には安静時消費量が1日266 kcal低下した。一方、適応性熱産生として算出された量は1日108 kcalであり、さらに除脂肪量の構成変化で説明される分を考慮すると、残る量は1日72 kcalだった。消費量が下がった総量と、その中で適応として扱う量には差がある。[5]

この違いは生活の言葉へ戻すと分かりやすい。「代謝が落ちた」という短い表現の中には、体の構成が変わった分も、それでは説明しきれない反応も含まれ得る。だから、食後に温まったことで、その全体が逆向きに戻ったと考えるのは飛躍になる。低下を測る時点で分解が必要なのだから、回復にも何を比べたかが必要である。[5]

試験には摂取量の操作、順序、期間がある。食事を控え始めた人の日常と比べるときは、この実験条件にも目を止めたい。自分の夕食はその条件と同じか、という確認を挟めば、研究の数字を自分への罰則やノルマにせずに読める。[5]

食事を増やす反応と、食べた分の帳消しは違う

過剰摂取で熱産生を調節する働きが増すというレビューの説明は、追加して食べたエネルギーがすべて消費へ回るという意味ではない。体重の変化を調べた系統的レビュー・メタ分析では、摂取や運動の介入に対して補償が生じ、単純な予測より体重変化が小さくなることが示されている。[10][15]

このメタ分析は、自由に暮らす成人の無作為化比較試験28件を採用した。18〜39歳の女性だけを対象にした結果ではなく、その集団で同じ大きさの補償が生じるかは別に検証する必要がある。食事や運動の計画に対する遵守が高く、客観的な方法でその遵守を確認した試験が対象である。それでも食事制限の研究では、行動による補償がないとする予測に比べ、体重減少が最大で12〜44%小さくなり得た。食事の数字を入力すれば体重がその通りに出てくる、という計算には収まらない。[10]

ここでいう補償は、介入に対して摂取や消費の側が変化し、予測とのずれを生むことを扱う。補償があるから食事の量は関係ない、と読むのも違う。実際の変化が単純な見積もりより小さいことと、追加分が無条件に消えることは、同じ主張ではない。[10]

非肥満男性の試験でも、過剰摂取期の体重変化はプラス1.8 kg、再摂食期はプラス3.5 kgだった。これらは体重の変化であり、その全部を脂肪の増加とも、熱で処理できた残りとも呼べない。ただ、摂取を増やす操作の後に体重が増えたという事実は、「温まれば食べた分が帳消し」という説明に慎重さを求める。[5]

夕食を楽しんだこと自体に、代謝の物語を添える必要はない。「今日は人と食事をした」で終えてよい日もある。代謝回復に成功した日と名づけると、翌朝の数字が期待どおりでなかったとき、食事そのものを失敗と見なしやすい。研究を読む目的は採点を増やすことではなく、何を確かめたら答えに近づくかを整理することである。

もう少し試験の中を見てみよう。食事制限期には心拍数、交感神経の活動、レプチンなども低下した。しかし、その値が下がったことと、適応性熱産生の大きさを説明することは同じではなかった。交感神経の活動やレプチン、甲状腺ホルモンの値とその変化は、この試験では適応性熱産生との関連を示さなかった。複数の指標が同じ時期に動いていても、どれかを残り全部の代理にはできない。[5]

これは、熱産生と交感神経の関係を論じるレビューを否定したという意味ではない。レビューは広い調節の仕組みを整理し、この試験は特定の対象と食事操作の中で、適応の量と何が関連したかを調べている。問う範囲が異なるのである。「交感神経が関わる」と「その変化量で自分の代謝回復が分かる」の間には、まだ確かめる段階がある。[5][15]

食事制限への適応が有意になった時点も、この試験では制限開始から3日以内と報告された。早く反応が現れたという結果だが、食事を増やした後にも同じ速さで逆転すると決める根拠にはならない。制限への反応の時間と、再摂食後の回復の時間は別々に調べる対象である。始まるのが早かったから戻るのも早い、と左右対称の図を描かないでおきたい。[5]

日常で研究結果を見かけたら、まず何を測った話かを言葉にする。「温かく感じた」「安静時消費量を測った」「体重を追った」のどれなのか。その次に、食事を増やした期間と、それ以前に制限していた条件を確かめる。これなら、感覚を無視する必要も、食べた直後に実験の結論を自分で再現しようとする必要もない。研究の測定対象へ問いを合わせる読み方である。[5][11]

数字で読む食事制限と再摂食

32人:食事制限と再摂食を連続して調べた試験の対象は非肥満の男性である。[5]

266 kcal/日:食事制限期に観察された安静時消費量の低下を示す。[5]

72 kcal/日:除脂肪量の構成変化を考慮した後に残った適応性熱産生の量である。[5]

28件:体重変化の予測と補償を検討したメタ分析で採用された無作為化比較試験数である。[10]

1.0〜2.0 kg:短期の体組成測定を扱うレビューで、従来の方法について示された脂肪量変化の最小検出量である。[11]

疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。

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宮川涼 Founder

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