作り置きのマヨネーズを解凍したら油が浮いた。その変化は脂質が増えた印なのか。油の種類と凍結温度を比べた実験、でんぷんやゲルで分離を抑えた研究から、乳化の安定性を読み解く。冷凍に強い配合と家庭の保存方法を区別し、ダイエット中も見た目だけで食べる量を決めない考え方を示す。
冷凍庫から出した作り置きに、透明な油の層が見える。混ぜる前はなめらかだったのに、解凍後は別の調味料のようだ。「ダイエットにマヨネーズはダメなのか」と検索していたら、保存の失敗まで食べ方の失敗に見えてくる。しかし、ここでまず考えたいのは、油の量より油の居場所である。
マヨネーズ型の乳化物を調べた実験では、冷凍と解凍によって安定性が崩れ、上に油の層が分かれた。油の種類や保存温度で結果も違う。したがって、元のなめらかさを保つ目的で、どのマヨネーズも気軽に冷凍できるとは考えないほうがよい。[8] 油が浮いた見た目は、乳化の変化を読む手掛かりであり、そのまま食べる量の判断には使わない。
既存記事「ダイエットの豆腐は凍らせると腹持ちが変わる?組織の変化と消化を分けて読む」に豆腐の話を譲り、こちらは調味料の油滴が解凍後も離れていられる条件を考える。研究の主役は食品の構造である。対象は人ではなく乳化物やゲルであり、18〜39歳の女性が食べた後の減量効果へ、そのまま当てはめることはできない。[5][6][7][8][19] 冷凍庫の中の出来事から順に見ていく。
既存の「マヨネーズは加熱で油が増える?焼いた後の分離と追加した油を区別する」は加熱調理、「ダイエット中のマヨネーズは低脂肪ほど出やすい?粘りと皿に出す量を読み解く」は容器から出す量、「ダイエットのスープは冷凍すると油が浮く?乳化の崩れと成分の見方を研究で読む」はスープの成分評価を扱う。こちらの問いは、マヨネーズ型乳化物の凍結への耐性を、油の結晶と油滴を支える配合から比べることである。

なめらかさは、油が消えた姿ではない
乳化とは、ここでは水を含む側に油が小さな滴として分散した状態である。マヨネーズ型の油中ではなく水中に油が分散する乳化物を使った実験では、その滴の安定性を冷凍と解凍の前後で調べている。油滴が分散している状態と、上部に油の層ができた状態は、同じ見た目にはならない。[8] なめらかなときに見えなかった油が、分かれた後には目立つのである。
この研究の対象は、菜種油または大豆油を重量比で70%含むモデル乳化物だった。研究者は解凍後に上部へ分かれた油の層を測り、凍結に対する安定性を評価した。[8] この測定が答えるのは、油を分散したまま保てたかどうかだ。上に見える油だけを見て、製品全体の栄養成分を読み直すための試験ではない。
台所では、表面の透明な部分だけを「油」、白く残った部分を「油ではないもの」と呼びたくなる。けれども、実験で使われる乳化物は、もともと油を含む構造として設計されている。[8] 分かれた層を眺める作業と、食べた製品の量を確かめる作業は別にしておく。成分表示が示すのは、分離して目立った層だけでなく製品全体だ。
また、まとまっていることを「滴が合体していない」と同じ意味にしない。アルギン酸という多糖類を使った乳化ゲルの実験では、硬さや流れ方に加えて、顕微鏡で油滴の合一、つまり滴同士が一体になる変化を調べている。冷凍・解凍後も明瞭な合一は認められず、ゲルの硬さはわずかに増した。[7] 内部の油滴の状態は、外から見た硬さと分けて評価するのである。
冷凍して固まったときと、解凍して再びなめらかになったときも区別したい。冷凍中の形が整っていることより、戻した後に油滴の分散が保たれるかが、凍結・解凍安定性の問いである。[6][8] 食卓でほしい状態が解凍後のソースなら、凍った表面のきれいさだけで成功を決めない、という見方になる。
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
最も低い温度が、最も安定した条件ではなかった
油滴を傷める要因として、水の凍り方だけを思い浮かべるかもしれない。ところが、菜種油と大豆油のモデル乳化物を比較した食品実験では、油にできる脂肪結晶の形と結晶構造にも注目している。保存条件は−15℃、−20℃、−30℃だった。[8] 冷凍を単純な温度の低下だけで扱わず、油の内部で何が起こるかを追った研究である。
比較した中で最も安定していたのは、−20℃で保存した大豆油の乳化物だった。それ以外の条件では、保存6時間の間に不安定化が起きた。[8] この結果は「低温なら低温ほどよい」という一直線の説明に合わない。同じ温度でも油が違えば結果は変わり、同じ油でも保存条件を変えれば挙動を見直す必要がある。
菜種油の乳化物では、低い温度で溶ける側の油成分に由来する脂肪結晶が、調べた保存温度のすべてで増えた。それに伴って部分合一が起きたと報告されている。[8] 部分合一とは、油滴が完全に独立したままではなく、一部でつながるような変化である。油の結晶化は、凍った水に押されるという説明とは異なる角度から乳化の崩れに関係する。
大豆油の乳化物については、−15℃と−20℃で、比較的高い温度で溶ける成分に由来する脂肪結晶の構造変化が、不安定化に関わると研究者は考察した。一方、−30℃ではその結晶構造の変化も、凍結中の結晶量の増加も見られず、別の仕組みで不安定化したとされる。[8] 同じ油が分かれたとしても、内部で起きた経路は条件によって異なる。[8]
ここから家庭用の「最適な冷凍温度」を選ぶのは飛躍である。この比較は、油の種類と割合を決めて作った乳化物の食品実験だ。[8] いま手にしている製品の配合、料理へ混ぜた状態、その保存条件をすべて代表するものとして読まない。−20℃という数字だけを抜き出して冷凍庫の設定に直結させると、実験がそろえていた条件を置き忘れてしまう。
冷凍庫に入れる前に考えるなら、「冷たいか」だけでなく「何を凍らせるか」が先になる。油の種類が違うモデルで結果が変わったことは、食品ごとの保存表示を確認する理由になる。[8] 別の製品でうまくいったという経験は、次の製品でも同じ状態に戻る保証として扱わない。作り置きの容器が同じでも、中身の構造は別物かもしれない。
低脂肪でも、配合次第で凍結に耐えられる
「油が少なければ乳化は弱そうだ」という予想にも、配合という条件が付く。小麦のでんぷんを使った食品実験では、加熱処理して水を吸って膨らみやすくしたでんぷんのペーストで、マヨネーズに似た乳化系の油を最大60%置き換えた。分子構造と水を保持する能力がほぼ同じで、膨らみ方が違う材料を比較している。[5]
その結果、油を減らした乳化物は、比較対象の通常脂肪のマヨネーズより油滴が小さく、流れにくさを示す指標が高く、乳化の安定性も増した。特に冷凍・解凍に対する安定性が改善した。[5] 油の量だけで、凍らせた後のまとまりやすさを順位付けできないことを示す結果である。油を減らすと同時に、周囲を支える仕組みも変えている。
この研究で差を生んだのは、単に水を保持する能力だけではなかった。冷たい状態でのでんぷん粒の膨らみ方が、乳化物の流れにくさと安定性に強く影響し、よく膨らむ材料ほど油の代替として良好に働いた。[5] 原材料名に「でんぷん」がある、と確認するところで読み終えず、材料の加工と働き方まで製品設計に含まれると考えると理解しやすい。
別の食品実験では、アルギン酸と、こんにゃく由来の多糖類であるグルコマンナンを組み合わせ、油滴を支えるゲルを作った。両者の重量比が5対5の系では、−18℃で24時間凍結する条件や、100℃で30分加熱する条件の後でも、油滴の合一が観察されなかった。[6] 水を含む側の構造を工夫することで、安定性を保つ設計の例である。
ただし、これは家庭で調味料に粉を足せば同じ結果になる、という話ではない。研究ではゲルの形成と増粘の手順を組み合わせている。[6] 料理の仕上げに混ぜることと、乳化物そのものを設計することは、作業の出発点が違う。研究を読む楽しさは、材料を買い足すことより、なめらかさの裏側に複数の支え方があると分かるところにある。
数字で読むマヨネーズ型乳化物の冷凍
70重量%:菜種油または大豆油を含ませた、脂肪結晶を調べるモデル乳化物の油の割合である。[8]
−20℃:比較した条件の中で、大豆油の乳化物が最も安定していた保存温度である。[8]
最大60%:でんぷんペーストで置き換えた油の割合であり、食べた人の減量率ではない。[5]
−18℃・24時間:アルギン酸とグルコマンナンの乳化ゲルで、油滴の合一が観察されなかった凍結条件である。[6]
30体積%:卵黄顆粒とキトサンの乳化ゲルが、マヨネーズに似た流れ方と食感を示した油の割合である。[19]
疑問の続きは、体で確かめるのがいちばん早い。
1
2







