運動の心拍数は呼吸の速さと混ざる?腕時計の数字と周期の揺れを読み解く

運動中、息の速さと一緒に腕時計の心拍数が揺れても、呼吸をそのまま数えたとは限らない。光で捉える血液量の変化、呼吸に伴う実際の心拍の変化、動作による雑音を分け、測定部位や姿勢の違う研究を読む。精度の数字の意味と、日々の運動記録に添えたい条件も具体的に考える。

マットの上で腕を上げ、息を吸う。その姿勢で腕時計をのぞく。息が速くなるのに合わせて数字も動くと、「これは心臓を数えているのか、呼吸を拾っているのか」と気になる。光学式の測定では呼吸も体の動きも信号に関わるため、表示を読むには、それぞれを分けて考える必要がある。[1]

答えの芯は、呼吸に伴って心拍そのものが変わることと、呼吸などが光の信号に影響することは別だ、という点にある。呼吸周期と心拍の変化の対応を捉えた実験がある一方、測定のレビューでは呼吸、皮膚にかかる圧、体動などが誤差の要因として整理されている。数字が息と一緒に揺れただけで、呼吸数を心拍数と取り違えたとは決められない。[1][6]

既存記事「ボクササイズの連打は途中で息を吸える?腕の周期と呼吸の同調を読み解く」には動作と呼吸の合わせ方を譲る。ここで扱うのは、運動の目安にする前の測定値の読み方だ。体のリズムが似て見えることと、装置が何を推定したかを同じ問いにしない。[1][6]

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腕時計が光で見ているのは血液量の変化

光電容積脈波、略してPPGは、組織内の血液量の変化に伴う光の通り方の変化を利用する方法である。Fineらのレビューは、この非侵襲的な光学技術が心拍数の監視に使われるとともに、波形を詳しく解析すると呼吸に関する情報なども得られると整理している。光の記録には、心拍以外の情報も重なっている。[1]

ここでいう波形とは、信号の強さが時間とともに変わる様子だ。同じ光の記録から心拍に関する値と呼吸に関する値を取り出せることは、呼吸の情報も解析の目的になり得ることを示す。何を知りたいかによって、有用な情報と邪魔になる変化の関係が変わる。呼吸を知る研究にとっての手掛かりが、別の解析では考慮すべき要因にもなる。[1]

レビューが挙げる要因は呼吸だけではない。個人差として皮膚の色、肥満、年齢、性別、生理的な条件として静脈の拍動、測定部位、体温、外部からの影響として体動、周囲の光、皮膚に加わる圧がある。呼吸を疑った時も、ほかの要因を候補に残す。運動中の測定を考える際には、体内の変化とセンサーの置かれた条件を一緒に見る視点が要る。[1]

たとえば、立って腕を動かしていた記録と、座って腕を落ち着けていた記録を比べる場面を考える。違うのは運動の負担だけではなく、光を測る条件でもある。このレビューを日常の記録に生かすなら、「値が違った」という結果の横に、姿勢や腕の動きを残す方法が考えられる。数字だけを切り離すより、比較の前提を確かめやすいからだ。[1]

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呼吸で心拍が変わることと測定の乱れを分ける

Grundらは健康な男女41人を対象に、指への弱い電気刺激を感じ取る課題を行い、心電図、呼吸活動、指のPPGを同時に記録した。心電図は心臓の電気的な活動を捉える記録である。この実験では、参加者が刺激の予想される時点に呼吸周期を合わせる様子と、呼吸周期に沿った心拍数の変動との対応が観察された。男女を含む知覚課題の結果であり、18〜39歳の女性が運動する場面への適用は別に検証する必要がある。[6]

この研究の中心は運動負荷の判定ではなく、刺激の知覚と体のリズムの関係だ。したがって、結果をヨガ中の腕時計の精度の証明にはできない。それでも、呼吸とともに心拍が変わる現象を、最初からセンサーの間違い扱いしないための材料にはなる。呼吸と心拍は、実際の生理的な関係も持つのである。[6]

他方で、Fineらのレビューでは呼吸が光学測定に関わる生理的な要因に含まれる。つまり「体の心拍が変わった」と「測定する波形が影響を受けた」は、どちらも検討すべき話だ。前者を確かめずに呼吸を雑音と決めるのも、後者を確かめずに表示を心臓の変化そのものと決めるのも、判断を急いでいる。[1][6]

日常では、呼吸を整えた直後に表示が変わると、その操作だけを原因にしたくなる。しかし同時に腕を下ろしたり、姿勢を替えたりしていれば、測定の条件も変わっている。ここでの実用的な読み方は、原因の名前をすぐ付けることより、何を同時に変えたかを思い出すことだ。呼吸、姿勢、腕の動きを別々の欄として扱う発想につながる。[1]

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「周期を取り違えた」という説明はどこまで使えるか

心拍の表示が一定のリズムで上下すると、別の周期を拾ったように見えることがある。ただし、規則的に見えることだけでは、その発生源は分からない。光学測定のレビューに複数の誤差要因が並ぶのは、複数の影響が波形に重なり得るからだ。呼吸との見た目の一致は、原因を確定する証拠より、確かめたい条件を挙げる入口と考えたい。[1]

測定上の乱れはアーチファクトと呼ばれる。Chenらの呼吸実験を用いた技術比較では、指を上下させる動きは左右の動きより大きなアーチファクトを生み、動作の頻度が増すと酸素飽和度の推定誤差が増えた。酸素飽和度は血液の酸素に関する別の指標であり、この結果を心拍数の誤差の大きさとして読むことはできない。何の出力が乱れたかまで区別する必要がある。呼吸実験での技術比較であり、18〜39歳の女性の運動中の腕時計に同じ結果を当てはめるには、その条件での評価が要る。[2]

同じ研究では、雑音を抑えるための適応フィルターを入れた結果も一様ではなかった。低いサンプリング頻度で行ったこれらの試験では、酸素飽和度の推定について、フィルターが雑音を減らさず増やした。一方、心拍数の推定では、比較した中で特定のフィルターが体動の影響の除去に優れていた。信号を記録する細かさと処理の方法、取り出す指標の組み合わせが問われる。[2]

この比較は「処理を増やせば必ず正確」という考えを崩すが、「すべての腕時計が呼吸の速さを誤表示する」という結論にはならない。研究の装置と実験条件に結び付いた結果として読むべきだ。周期の取り違えという言葉は分かりやすい。しかし分かりやすい原因名を得ることと、目の前の装置でその原因を確かめることには距離がある。[1][2]

精度の数字には測定部位と選んだ信号が付いてくる

Maoらは日常生活動作で得たPPGを使い、体動の影響を減らした信号を作って、信頼できる区間を選ぶ方法を検討した。処理後の信号の71%が高品質とみなされ、その区間から得た心拍数の平均絶対誤差は毎分1.46拍、呼吸数では毎分3.93回だった。平均絶対誤差とは、基準との差の大きさを平均した指標である。日常生活動作の信号を評価した結果であり、18〜39歳の女性の運動中にも同じ精度が得られるかは別の問いだ。[4]

この結果の読みどころは、誤差の小ささと信号を選ぶ条件が一組になっていることだ。高品質と判定された区間の成績を、記録した全時間の成績として扱ってはいけない。「測れた場所ではどれだけ合うか」と「どれだけの時間を評価に使えるか」は別の問いになる。きれいな数字の横には、採用された信号の範囲も置く必要がある。[4]

Abdulsadigらの首に装着するセンサーの研究では、呼吸数の推定のために健康な22人が安静で視覚的な合図に合わせて呼吸した。脈拍数の評価では健康な16人が、安静のまま別の呼吸条件で測定を受けた。首の光学信号や加速度を利用する技術の研究であり、腕時計を着けて運動した試験とは区別して読む。健康な参加者の安静時の成績を18〜39歳の女性の運動場面にそのまま当てはめるには、測定部位と動作の違いがある。[5]

首の研究は、瞬間的なアーチファクトによる変化と、解析する区間をまたぐ変化に対処するため、信号処理を組み合わせている。また、値そのものだけでなく、幅を持つ値として推定を評価した。ここから読めるのは、光の明暗をそのまま画面に移すだけではなく、乱れに対してどう推定を安定させるかが設計の一部だという点である。[5]

ただし、推定を安定させた成績を、心拍がどんな速さで変わっても正しく追える証明としては扱わない。この研究の脈拍測定は安静で行われた。運動の開始や終了のような別の場面に話を移すなら、その場面での評価を別に考える必要がある。装着する場所だけでなく、測っている間に何をしたかまでが研究の条件だ。[5]

日常生活動作の研究にも、別の意味で条件への注意がある。Maoらは、人工的に雑音を加えた信号や高強度活動で得た信号だけでは、実生活へ一般化しにくいという問題意識から方法を検討した。運動が激しい場面で評価したというだけで、通勤や家事での測定成績まで保証することはできない。激しい動作と普段の動作を、難しさの順位だけで並べない視点である。[4]

研究の数字を手元の記録に近づけるには、自分の場面を具体的に言葉にすることから始められる。「運動中」だけでなく、腕を振って移動したのか、同じ場所で姿勢を保ったのかを書く。これは誤差を計算する方法ではないが、どの研究の条件が近く、どこが違うかを読むための準備にはなる。[1][4]

数字で読む光の測定と呼吸

41人:呼吸、心電図、指の光学信号を同時記録した知覚課題の対象である。[6]

71%:日常生活動作の処理後の信号のうち、高品質とみなされた割合を示す。[4]

毎分1.46拍:その高品質区間から得た心拍数の平均絶対誤差である。[4]

毎分3.93回:同じ研究の高品質区間から得た呼吸数の平均絶対誤差を表す。[4]

22人と16人:首で呼吸数と脈拍数を評価した、それぞれの測定の対象である。[5]

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宮川涼 Founder

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