筋トレの炭水化物はたんぱく質の代わり?体に残る量と筋肉の合成を読み分ける

筋トレ後、ご飯を食べればたんぱく質を減らしてよいのか。炭水化物とたんぱく質を比べた試験から、全身のアミノ酸保持と筋肉の合成、短時間の反応と長期の変化を読み分ける。若い男性と高齢者で異なる結果にも触れ、白米の量を決める前に確かめたい食事の条件を考える。

筋トレ後の食卓に、ご飯と豚肉のおかずが並ぶ。ご飯を食べれば、おかずのたんぱく質を減らしてもよいのか。「炭水化物がたんぱく質を節約する」と聞けば、ご飯を増やした分だけおかずを減らしてもよさそうに思える。

しかし、体に取り込んだ成分の保持と、筋肉のたんぱく質を作る反応は同じ問いではない。若い男性の試験では食事と運動によってアミノ酸の保持が変わった一方、食品を比べた別の試験では、たんぱく質を含む食事と炭水化物だけの条件で筋肉の合成反応が異なった。男性を対象にした結果や、女性の参加者が少ない食品比較を18〜39歳の女性にそのまま当てはめることはできず、炭水化物とたんぱく質の交換比率も求められない。[10][7]

既存記事「女性の筋トレの食事は寝る前にも必要?夜のたんぱく質と筋肉の合成を読む」には時刻の論点を譲る。ここでは白米の適量表を作る前に、何が体に残り、どこで何を測った数字なのかをたどる。

既存の「ダイエット中の炭水化物は冷やすと変わる?運動日の主食とでんぷんを読む」は主食の加工、「筋肉痛に炭水化物を足せば早く戻る?糖質の補充と痛みの回復を分けて読む方法」は痛みの回復、「腹筋の筋肥大は炭水化物でも大きく見える?糖と水分による体積の変化を読む」は見え方を扱う。それらの問いは各記事に譲り、ここでは栄養素を置き換えてよいかという判断に絞る。

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体に残ることと、筋肉を作ることを分ける

「たんぱく質が節約される」という表現を読んだら、まず測った対象に目を向けたい。筋肉量は、筋たんぱく質の合成と分解の両方によって調節される。若い成人の筋トレと栄養を扱うレビューは、この両面を区別し、アミノ酸の供給と運動負荷に対する反応を整理している。18〜39歳の女性への適用を考える際も、若い成人全体の整理と女性に絞った検証を分けて読む必要がある。合成だけが増えたという話を、そのまま筋肉量の増加に置き換えることはできない。[20]

筋たんぱく質合成とは、筋肉のたんぱく質を作る過程である。研究では、そのうち筋肉の収縮に関わるたんぱく質の合成速度を測ることがある。レビューによれば、血中のアミノ酸が増えると合成速度は一時的に高まり、筋トレはその反応を増強する。繰り返された反応と、時間をかけた筋肉の成長をつなぐ見方である。[20]

一方、アミノ酸の保持を調べる研究には、摂取した量と酸化された量の差に着目するものがある。酸化とは、ここではアミノ酸が代謝される行方の一つであり、保持の指標は摂取量から酸化量を引いて求められた。筋肉を直接採って調べる合成速度とは、計算の入口も測定の範囲も異なる。[10]

窒素の出入りという言葉を、すぐに「増えた筋肉の量」と読み替えないことが大切だ。今回取り上げる呼気の試験が追うのはロイシンというアミノ酸の酸化と保持であり、筋肉の太さを測った試験とは別の結果である。成分が体内で利用される様子を知る数字には意味があるが、数字の名前を省くと意味まで変わってしまう。[10][20]

夕食のおかずを減らすかどうかは、食卓の判断である。その根拠にするなら、「保持が多かった」「合成速度が高かった」「筋肉が大きくなった」のどれを確かめた研究なのかを残して読みたい。レビューも、量だけでなくアミノ酸の構成が筋肉の合成に関わるとしている。ご飯とおかずを同じ役割の升に入れて比較するより、それぞれを含む食事の条件を見るほうが研究に沿う。[20]

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呼気で分かったのは、ご飯だけの効果ではない

健康な若い男性を対象にした無作為化試験では、体重当たり0.25 g/kgのたんぱく質と0.75 g/kgの炭水化物を含む飲料を、安静時または筋トレ後に摂取した。別の群は、測定用の目印を付けたロイシンだけを摂取した。研究者は呼気を利用してロイシンの酸化を調べ、食事と運動による反応の違いを検出できるか確かめた。男性を対象とした試験なので、18〜39歳の女性でも同じ反応になるかは別に検証する必要がある。[10]

飲料を摂取した条件では、目印だけの条件に比べて全身のたんぱく質合成が大きかった。同時にロイシンの酸化も多かった。ただし、食事だけの場合より運動後に食事を取った場合のほうが酸化は少なく、保持は運動後の食事、安静時の食事、目印だけの順に大きかった。[10]

ここで見逃したくないのは、食べた条件では合成と酸化がどちらも増えている点だ。「酸化された成分があるなら、飲んだものは無駄だった」という読み方は、この試験の結果に合わない。酸化だけを切り取らず、保持と全身の合成を並べて見る必要がある。食べたものの行方は、使われたか捨てられたかという単純な二択では整理しきれない。[10]

ただし、この比較で使われた飲料はたんぱく質と炭水化物の両方を含んでいる。運動後に保持が大きかった結果を、炭水化物だけのおかげと切り分けることはできない。同じ理由で、ご飯を増やせばおかずをどれだけ減らせるかという交換比率にもならない。試験の飲料の配合は、白米の必要量を求める式ではない。[10]

また、体重当たりの量は、この研究で何を摂取したかを示す条件である。読者全員に必要な補給量として掲げられた数字ではない。自分の体重を掛け算したくなるところだが、先に比較の目的を確かめたい。この試験は測定法が食事や運動への感受性の違いを捉えられるかを調べており、食事量の最適化試験とは問いが異なる。[10]

炭水化物だけと比べると、食品の中身が効いてくる

運動習慣のある成人16人を対象にした試験では、筋トレ後に脂質の多い豚肉、脂質の少ない豚肉、炭水化物だけの条件を比べた。参加者は男性12人、女性4人で、年齢は平均25歳だった。豚肉の条件はどちらもたんぱく質20 gだが、脂質とエネルギー量が異なる。研究は運動後5時間にわたる筋肉の合成反応を調べた。女性の参加者が少ないため、18〜39歳の女性に絞った食品間の差をこの結果だけで判断することはできない。[7]

筋たんぱく質合成速度は、低脂質の豚肉で0.106%/時、脂質の多い豚肉で0.072%/時、炭水化物条件で0.056%/時だった。低脂質の豚肉は、他の条件より高い値を示した。豚肉の条件はいずれも食事前の値より上がっていた。炭水化物を食べれば、たんぱく質を食べた場合の反応まで同じになる、という結果ではない。[7]

この試験では、たんぱく質の量が等しくても合成反応が異なった。研究者は、食品の中に一緒にある栄養成分も合成の調節に影響し得ると結論している。食品の作用を読むには、たんぱく質量に加えて食品全体の条件を見る必要がある。ただし、この比較を根拠に脂質を一律に避ける指示まで広げるのは行き過ぎだ。測ったのは特定の食品と運動後の反応である。[7]

エネルギー量の組み方にも注意が要る。脂質の多い豚肉と炭水化物の条件はともに266 kcalだったが、低脂質の豚肉は120 kcalだった。低脂質の豚肉の反応が大きいという結果は、「カロリーを多く入れたほうが合成も大きい」という説明には合わない。一方、全条件でエネルギー量が等しい比較でもないため、栄養素を単独で入れ替えた実験として読むのも正確ではない。[7]

主食を食べることと、主菜を残すことを対立させる必要はない。ここで試験が問い直すのは、「同じエネルギーなら筋肉への反応も同じ」という見込みである。帰宅後の食卓で参考にするなら、カロリーの合計だけを見て食材を交換せず、何を含む食事だったのかまで確認する。そのほうが食品比較の意味を保てる。[7]

この豚肉の研究では、低脂質条件の合成速度の95%信頼区間は0.088〜0.118%/時、脂質の多い条件では0.057〜0.087%/時だった。信頼区間は推定の不確かさを示す幅である。平均値だけを並べるより、推定に幅があることも併せて受け止めたい。読者自身の筋肉が毎時その割合で大きくなる、という数字ではない。[7]

さらに、測定には血液と筋肉の採取を繰り返している。日常の「食べたら元気が出た」という感覚とは、評価の方法が異なる。感覚を否定するためではなく、合成速度という言葉が何を指すかを明確にするための区別だ。食後の反応を扱う研究を読むときは、食品名の前に測定の名前を一度置いてみると、結論の範囲を見失いにくい。[7]

数字で読む炭水化物と筋肉の研究

0.25 g/kg:呼気の試験で炭水化物とともに摂取したたんぱく質量。個人の推奨量ではなく実験条件である。[10]

16人:豚肉と炭水化物を比較した試験の対象者数。女性は4人であった。[7]

0.106%/時と0.056%/時:低脂質の豚肉と炭水化物条件の筋合成速度。食後の測定値である。[7]

75 g:炭水化物の種類を比べた試験の摂取量。白米の重さを指す数字ではない。[11]

3時間:高齢男性の試験で、食事と運動後の筋合成を評価した時間枠である。[14]

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宮川涼 Founder

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