ダイエットにそばを選ぶとき、生麺と乾麺の違いをどう考えるか。乾燥で変わる内部構造、水の状態、ゆでた後の硬さを食品実験から読む。冷凍麺との比較や調理損失の数字も取り上げ、噛み応えから消化の速さや体重の変化を決めつけず、売り場と台所で確かめたい条件を整理する。
鍋の湯が沸く間、生そばと乾そばの袋を見比べる。ゆでればどちらもそばになるのに、乾かしたほうが中まで締まり、消化もゆっくりになりそうだ。そんな想像には、確かめられた部分と、まだ飛び越えてはいけない部分がある。
生麺と乾麺を比べた食品実験では、乾麺の内部はより密で、硬さも高かった。一方、生麺ではゆでる間に失われる成分や麺の切れが少なく、弾力が高かった。乾燥は単に水を減らすだけでなく、麺の中の構造と水のあり方を変える工程なのである。[6]
ただし、密な麺だから人の体内で消化が遅い、だからダイエットに向く、という判定は別だ。ここで読むのは、まず食品としてのそばの違いである。「ダイエットの卵は生と加熱で何が違う?ゆでたまごと運動後の消化を研究で読む」が扱う加熱と消化の問いから離れ、そばを乾かす工程と、再びゆでたときに何が変わるかに焦点を置く。

生麺と乾麺は、水を足せば同じに戻るのか
中国で流通する生麺と乾麺を対象にした研究では、押出加工したそば粉の配合割合を20%から80%まで変え、調理特性や食感、水の状態、内部構造を調べた。押出加工とは、材料を押し出して加工する方法である。この研究で比較したのは、配合も考慮して作られた実験用の麺であり、店頭のあらゆるそばを代表する商品試験ではない。18〜39歳の女性の消化や体重への影響に、そのまま当てはめることはできない。[6]
乾麺はゆでれば水を含む。しかし、水を含むことと、生麺と同じ内部状態に戻ることは同義ではない。研究では、生麺のほうが調理損失と切断の割合が低く、より弾力があった。乾麺には密な内部構造が見られ、それが高い硬さを説明する結果だった。最終的に食べる麺にも、乾燥工程を通った違いが現れている。[6]
台所で考えるなら、「ゆでる前の硬さ」と「ゆでた後の噛み応え」を分けたい。袋から出した乾麺が硬いのは見れば分かる。研究が面白いのは、その当たり前を越えて、調理特性や麺の中を調べているところだ。ゆでて軟らかくなった麺にも、加工の履歴は構造の違いとして残る。[6]
ただし、この研究の配合割合を、そのまま二八そばの表示に置き換えて読むことはできない。実験では「押出加工したそば粉」の割合が条件になっている。売り場で二八の文字を見つけたときにも、同じ実験条件だと考えず、原材料の表示と製品の種類を別々に確認するのがよい。[6]
生麺を選べばいつもよい、という順位表にもならない。官能評価、つまり人が食べて評価した点数では、研究内で最も高かったのは配合割合20%の生麺で、その次は50%の乾麺だった。生か乾燥かという区別だけでなく、配合との組み合わせが食べた印象を左右している。[6]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
麺の中の水は、量だけでなく動き方も違う
水分が多い、少ないという表現は分かりやすい。しかし研究者は、それに加えて水がどれほど動きやすい状態にあるかを調べている。生麺と乾麺の比較では、低磁場核磁気共鳴という、水の状態を調べる測定法を用いた。内部の形は走査電子顕微鏡で観察された。[6]
生麺の水は主として比較的緩く結びついた状態で、乾麺ではより強く結びついた状態だった。また、生麺では動きやすい水と均一な内部構造が、麺の切れにくさと関係していた。ここでいう結びつきは、飲んだ水の体内での働きの話ではなく、食品の中での水の状態を表している。[6]
大切なのは、水と食感の関係が、生麺と乾麺で同じ方向ではなかったことだ。「水が動きにくいほどよい麺」といった単純な法則にはならない。研究では、乾燥工程と押出加工したそば粉の添加が一緒に、調理特性と食感の違いを生み出していた。[6]
これは、商品を比べるときの見方にもなる。冷蔵の麺が口に合わなかったときは、その商品の配合とゆで方を振り返る。反対に、好みの乾麺を見つけても、すべての乾麺が同じ噛み応えになるとは考えない。研究で条件として扱われた配合や加工を、商品の違いを考える手掛かりにするのである。[6]
食べ手に水の測定装置は要らない。必要なのは、感想に条件を添えることだ。「硬かった」で終えず、どの麺を、表示のどのゆで方で作ったかを残す。その記録なら、次に調理を変えたときにも比べやすい。麺の中の水を直接見られなくても、比較の条件は自分で整えられる。
冷凍と熱風乾燥の比較では、硬さの向きが変わる
別の実験では、全粒のダッタンそばを押出加工して作った生麺を、冷凍処理した場合と熱風乾燥した場合で比較している。これは普通の生そばと市販の乾そばを直接比べた試験ではない。原料と加工法をそろえ、その後の処理を変えた食品実験であり、18〜39歳の女性が食べた後の反応にそのまま当てはめることはできない。[5]
最適なゆで時間は冷凍処理の麺で7分、熱風乾燥の麺で17分だった。調理損失はそれぞれ5.85%と21.88%。人が食べた総合評価は7.90点と5.20点で、研究内では冷凍処理した麺の評価が高かった。時間の差と食感の差が、一緒に観察された比較である。[5]
ところが硬さは、冷凍処理した麺のほうが高かった。生麺と乾麺の比較では乾麺が硬かったのに、こちらでは冷凍側が硬かった。この違いは研究の矛盾と決めるより、比べた麺と処理が異なる結果として受け止めたい。「乾燥」という言葉だけから硬さを予測するのは難しい。[5][6]
冷凍処理の麺には、結びついた水の割合が高く、内部に多くの孔が見られた。さらに、水の分布の均一さは、でんぷんの再結晶化や老化がより進んだことと結びつけられ、押出後のでんぷんゲルの安定性を高めると説明されている。ゲルは、水を抱えた網目状の構造と考えると読みやすい。[5]
「老化」という名前は、食品では悪い印象を持たれやすい。しかしこの実験では、それが麺の構造の安定に関わっていた。言葉の印象と、測った品質は同じではない。食品の変化を読むときには、変化の名前に加えて、切れやすさや調理損失、食べた評価のどれがどう動いたかを見る必要がある。[5]
冷凍処理と熱風乾燥の比較では、でんぷんの並び方にも数値の差がある。相対結晶化度は冷凍側で26.47%、乾燥側で16.48%だった。これはでんぷんの構造のうち、規則的に並んだ部分の程度を見る指標である。食べた人の体に何割届いたかを表す数字ではない。[5]
老化の程度も冷凍側で34.67%、熱風乾燥側で26.98%だった。どちらの指標でも冷凍側が高く、研究では、均一な水の分布とでんぷんの再配列が構造の安定に関わると説明している。孔が多いことと、構造が安定していることは、ここでは同時に観察されている。穴があるから弱いという直感だけでも読めない。[5]
こうした測定を食感と合わせて読むと、硬さの違いにも奥行きが生まれる。外見の乾き具合だけを比べるのではなく、水がどの状態で存在し、でんぷんがどう並んでいるかを見ているからだ。研究者が顕微鏡と水の測定を組み合わせた理由も、麺の硬さを単独の印象にしないためと理解できる。[5][6]
また、このダッタンそば麺では、冷凍処理側が熱風乾燥側に比べてフラボノイドの損失を避け、抗酸化能をよりよく保っていた。フラボノイドは食品中の成分の一群で、ここでの抗酸化能は食品の性質を測ったものだ。成分を保ったという結果を、食べた人が若返る、運動後の回復が早くなるといった話へ置き換えない。[5]
同じ比較でも、研究者が確かめた項目は、調理時間、調理損失、硬さ、内部の孔、水の状態、でんぷんの並び、成分の保持と幅広い。家庭ではその全部を測る必要はないが、「品質がよい」の内訳を知っておくと便利だ。短時間でゆでられることを重視する日と、好みの弾力を重視する日では、選ぶ理由も変わってくる。[5]
たとえば遅い帰宅の日に、いつもと違う麺を買ったとする。前に買った麺と同じ時間でゆでて食感が違っても、その差を乾燥の有無だけに戻してしまわない。研究では、処理によって最適な調理時間自体が違っていた。まず表示に沿って調理し、その状態で好みを判断するほうが、麺を比べる手順として納得しやすい。[5]
生麺と乾麺の研究でも、水の動きと食感の関係はそれぞれ異なっていた。食べ手が選ぶ際には、「水をよく含むから軟らかいはず」と先に答えを置くより、実際にゆでた後の弾力や切れ方を確かめる。加工条件と食べた印象を往復する読み方なら、研究の数字を商品選びに無理なく生かせる。[6]
数字で読むそばの加工と調理
20〜80%:生麺と乾麺の比較で変えた、押出加工したそば粉の配合割合である。[6]
7分と17分:ダッタンそばの押出麺で、冷凍処理と熱風乾燥を比べた最適ゆで時間である。[5]
5.85%と21.88%:同じ比較における調理損失で、冷凍処理側が低かった。[5]
3.53%と4.61%:別の冷凍押出そば麺の実験で、凍結と解凍を経た場合と、経ない場合の調理損失である。[4]
6.53%:その実験で凍結と解凍を7回繰り返した後の調理損失である。家庭で繰り返す推奨回数ではない。[4]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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