体幹トレーニングは先に自分で採点する?助言と照らす感覚と動きの分け方

体幹トレーニングで「できた感じ」と先生の助言が食い違うとき、何を確かめればよいのか。自己採点を上達の保証にせず、体幹へのフィードバック研究を手がかりに、感覚・動き・筋力の記録を分ける考え方を示す。40代・50代女性がレッスンで使える質問と、研究結果の読み方を整理する。

マットから起き上がって、先生の顔を見る。「今のはどうだったか」と聞かれる前に、自分では腰が動かなかったと思っていた。ところが返ってきたのは、腕と一緒に上体も前へ出ていた、という助言だった。お腹は働いた気がするのに、話が合わない。

こうした場面では、よかったか悪かったかを丸ごと採点するより、自分が感じたことと、先生が見た動きを分けて照らすところから始めたい。本記事でいう自己採点は、そのための会話上の工夫である。先に採点すれば体幹の学習が速くなる、という効果を約束するものではない。

体幹の動きをその場で知らせる方法が、患者の上肢リハビリ中の動きを変えた試験はある。[12] ただし、それを健康な40代・50代女性のヨガでの自己採点の効果へ置き換えることはできない。確かめる対象は「自分の感覚が優秀か」ではなく、「感覚と観察が何について一致し、何について違ったか」である。

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自己採点では、何を採点したのかを言葉にする

「今日はできた」という言葉には、違う出来事が入り込む。前より楽だった、揺れた気がしなかった、言われた位置まで腕が届いた、途中でやめずに終えた。これらは日常の感想としてどれも自然だが、先生は別の点を見ていることがある。そこで、助言を受ける前に感想を言うなら、対象を添えるという案がある。「お腹に力を感じた」「腰の位置は分からなかった」といった言い方だ。

この提案の目的は、自己採点の点数を上げることではない。先生に渡す情報を具体的にすることにある。本人が分からなかった場所を、先生がその場で一緒に確かめるための入口にする。自分の感覚を先に話しても、先生は観察した動きを伝え、本人は感覚を伝える。先生の言葉を聞いてから感覚を思い出す日があってもよい。

なぜ対象を分けたいのか。脳の疾患によって片側に麻痺がある患者の試験では、手の移動が短く見える場合でも、体幹の動きを使って課題をこなしている状況が示された。[12] 手の経路の短さと、上肢を選択的に動かせたことは同じ評価ではなかったのである。[12] 日常のレッスンへ持ち込むなら、「手が届いた」という結果を聞いたあとに、「そのとき胴体はどう動いたか」も質問する、という読み方になる。

ここで「代償運動」という言葉が出てくる。紹介する試験では、上肢の課題に伴って体幹が動き、腕の動きを補うことを扱っている。[12] 体幹を使うこと一般が悪いのではない。課題で求めている動きと、実際に使った動きを区別する話である。レッスンでも、先生に「今回は胴体を動かす課題か、なるべく保つ課題か」を確認しておくと、自己採点で何を書くかを決めやすい。

既存記事「体幹の鍛え方は助言を少しずつ減らす?見てもらわない日の再現を考える練習」には、助言の頻度を変える問いを譲る。ここでは、助言を減らす予定を立てず、助言と自分の言葉を照らす場面に絞る。「ダイエットの運動はずれを先に予想する?助言の前の自己採点と翌日の再現を読む」とも区別し、本記事では体幹の評価対象そのものを整理する。

既存の「筋トレの胸は助言の前に自分で採点する?予想したずれと答えを照らす練習」には、胸の筋トレで予想と答えを照合する問いを譲る。こちらで扱うのは、体幹の移動、筋力、痛みの感覚を同じ採点項目にしてよいかという問いである。胸の運動の学習法を体幹にも当てはめる構成にはしない。

例えば先生から「上体が前へ出た」と聞いたとき、本人の「お腹に力を感じた」という報告を取り消さなくてよい。感じた場所を述べた言葉と、動きを見て述べた言葉だからだ。ノートに書くなら、本人の言葉を残し、その隣へ先生の観察を書くという形を提案したい。答えを聞いてから最初の予想を正解に書き換えるより、会話で何が分かったかを残す用途にする。記録の役目は、感想と観察の対応を後から確かめることに置く。

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その場のフィードバックで変わった動きは何か

脳の疾患による片麻痺患者55人を対象としたランダム化比較試験では、上肢リハビリ中にスマートフォンのカメラで体幹を追跡した。動きを見つけて視覚と音でその場に知らせる群27人と、知らせない群28人を比較している。事前には別の16人で、動きを検出する閾値を調整していた。[12] 18〜39歳の健康な女性への適用は、この患者集団の結果と分けて検討する必要がある。フィードバックとは、ここでは動作の情報を本人へ返す仕組みを指す。

知らせる群では、知らせない群に比べて体幹の移動経路長が37.9%減少し、動きが占める空間の指標が35.3%減少した。前者の検定値はp=0.014、後者はp=0.003であった。[12] つまり、腕の課題を行っているときに、胴体がどれだけ動いたかを測った結果である。「お腹に効いた」という感想や、体幹の筋肉量の増加を示す数字ではない。

この試験が参考になるのは、助言の内容と評価した動きが結び付いている点だ。体幹の動きを捉え、その動きについて情報を返し、その後の体幹の経路などを評価した。[12] レッスンの会話でも、「もっと意識する」だけで終わらせず、先生が何を見たのかを尋ねる材料になる。例えば、「上体が前へ出たというのは、動かしている間か、終わりの位置か」と質問する形だ。

ただし、画面と音で動作中に情報を返す方法と、動作を終えてから自分で出来を予想する方法は別である。紹介した試験の改善率を、先に自分の感想を述べる方法の改善率として使ってはならない。[12] 自己採点を会話に取り入れることと、その方法の効果が確かめられたと言うことの間には距離がある。

また、この患者集団で体幹の移動が減ったからといって、すべての運動で胴体を止めるのが正解とも言えない。試験の狙いは、上肢のリハビリで体幹による補いを抑えることにあった。[12] ヨガで胴体を回す課題や、姿勢全体を変える課題へ、そのまま同じ採点基準を持ち込むべきではない。何をする練習なのかが、評価より先に来る。

筋力と動きの感覚を同じ成績表にしない

体幹が動かなかったという観察と、強い力が出たという測定も分けたい。高齢女性32人、平均年齢67.6歳を対象としたランダム化比較試験では、監督下で週2回、24週間、専用のバーを用いたデッドリフトを中心に筋力トレーニングを行っている。[7] 18〜39歳の女性に同じ変化が生じるかは、年齢と運動条件をそろえた検証が必要である。これは継続的な運動を比較した試験である。

体幹を伸ばす筋力について、一定の速度で測定した最大の回転力は、毎秒60度の条件で運動群が26.0%増加、対照群が6.3%減少であった。体幹の除脂肪量も運動群で0.4kg増加、対照群で0.2kg減少した。一方、全身の除脂肪量と下肢の等速性筋力には群間差がなかった。[7] 体幹の成績が変わっても、体全体の指標には変化の有無が混在していた。

この結果を使うなら、「体幹がよくなった」と書く前に、力なのか、体組成なのか、動きなのかを尋ねることになる。体幹の除脂肪量は、本人が感じた力の入り具合の点数ではない。測定装置の数字と、マット上での感想には別の欄を用意する、というのが本記事の提案だ。感想を消す必要はないが、感想から測定値を推定する必要もない。

40代・50代女性が参考にするときも、研究対象の年齢と運動条件を残して読む。平均年齢67.6歳の女性が24週間取り組んだ結果を、今夜のレッスンで先生に確認してもらった効果に変換できない。[7] 「女性の研究」という共通点に加えて、介入の中身を確かめたい。年代の見出しより、誰が何を続けたかを読むことが大切だ。

数字で読む体幹の評価と助言

55人:その場の視覚・聴覚フィードバックを比較した片麻痺患者の試験対象である。[12]

37.9%:フィードバック群で示された体幹の移動経路長の減少であり、筋力の増加率ではない。[12]

24週間:高齢女性への監督下の筋力トレーニングを行った期間である。[7]

26.0%:同試験の運動群で、毎秒60度の測定条件における体幹伸展の最大回転力が増加した割合である。[7]

1.28:腰の手術後の監督下運動と自己主導運動を比較した、直後の体幹伸展持久力の標準化平均差である。[19]

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宮川涼 Founder

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