ダイエット中のぬか漬けはビタミンも移る?漬ける日数と菌の働きを分けて読む

ダイエット中のぬか漬けは、長く漬けるほどビタミンB1が増えるのか。乳酸菌の培養実験、野菜とぬか床の菌の比較、発酵中の成分分析を手がかりに、成分の移動と微生物による産生を分けて考える。漬ける日数の読み違い、野菜による違い、動物実験と人の食事の距離まで整理する。

夕食のきゅうりをぬか床から出すとき、昨日より酸っぱければ、そのぶんビタミンも増えていそうに感じる。せっかく食べるなら栄養も、と思うのは自然だ。ただし、発酵が進むこととビタミンB1が増えることは同じではない。ぬか漬け由来の乳酸菌を調べた培養実験では、高い量のビタミンB1を作る菌は見つからなかった。[1]

ビタミンがぬか床から野菜へ移るという問いと、菌が新たに作るという問いは分ける必要がある。この実験が確かめたのは後者であり、家庭の野菜へ移る量や、栄養面で最適な漬け日数を決める実験ではない。菌の産生結果だけで、ぬか漬けにB1がないとも、長く漬ければ増えるとも決められない。[1]

水洗いと塩分の扱いは、既存記事「寝る前のぬか漬けは水洗いで塩分が減る?表面のぬかと内部の残量を分けて読む」に譲る。ここで考えるのは、漬ける時間を栄養の目盛りにしてよいか、という別の問いだ。ダイエットという検索語から入ってきても、まず確かめたいのは体重への期待より、食品の中で何が起きたかである。

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ビタミンが移ることと、菌が作ることは別の現象だ

ぬか床にある成分が野菜へ移動するなら、成分の出発点はぬか床である。一方、乳酸菌がビタミンを産生する場合は、微生物の働きによってその成分が作られる。食べる側にはどちらも「栄養が増えた」と映りうるが、確かめるための実験は違う。ぬか漬けから分離した菌を培養し、培養液の細胞外に出るビタミンを測った研究は、菌による産生能力を調べたものだ。[1]

この研究では、葉酸、ビタミンB12、チアミンを比較している。チアミンはビタミンB1の別名である。ぬか漬け由来の乳酸菌180株を調べると、葉酸を高い量で産生する菌があった一方、チアミンでは同じ結果にはならなかった。発酵食品というまとまりだけでは、どのビタミンも増えるとひとくくりにできない。[1]

ここでの「株」は、同じ菌の種類の中でも区別して扱う菌の単位だ。実験で性質の異なる菌を比べるとき、乳酸菌という大きな名前だけで判断しないための区別になる。ある株があるビタミンを作った結果を、乳酸菌全体の性質へ広げることも、別のビタミンへ広げることも避けたい。[1]

たとえば、買ってきたぬか漬けの紹介に「乳酸菌を含む」と書かれていたとしても、その文だけをB1の産生量へ読み替えることはできない。必要なのは、何の菌を、どの条件で調べ、どの成分を測ったかという対応だ。発酵という言葉は食品の説明にはなるが、ビタミンごとの産生量は個別の測定で確かめる。[1]

野菜へ成分が移ったと確かめたいなら、野菜側の成分量の変化を見る問いを立てる必要がある。菌の培養液での産生は、それとは別の測定である。「菌が作らなかった」から「ぬか床からも移らない」へ飛ぶのは、問いを途中で取り替えている。この区別を置くと、肯定にも否定にも急ぎすぎずに済む。[1]

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乳酸菌の実験では、ビタミンごとに結果が違った

ぬか漬け由来の乳酸菌を調べた研究では、葉酸について、ラクトバチルス・サケイの2株とラクトバチルス・プランタルムの1株が、培養液中で約100µg/Lという高い産生を示した。ビタミンB12では別の菌株が約2µg/Lを産生したが、研究ではその量を高いとは評価していない。B1では高産生の株はなかった。[1]

研究対象はぬか漬けから分離した菌であり、菌の培養実験である。18〜39歳の女性が食べたときの栄養摂取や体調に、そのまま当てはめることはできない。µg/Lは培養液の容積あたりの量を表し、夕食の小皿を食べたときの摂取量ではない。葉酸の数字が大きく見えても、そのまま野菜の含有量として紹介したり、人の栄養状態が改善する量として扱ったりはできない。[1]

研究では比較対象となる保存菌株53株も調べられ、それらがさらに高い産生を示すことはなかった。また、一部の分離株には塩分、アルコール、低い初期pHに対する耐性が見られたが、葉酸やB12の産生とこれらの性質との間に有意な関係は見られなかった。環境に耐える強さを、そのままビタミンを作る強さとは呼べない。[1]

日常の言葉では「よく育つ菌」「強い菌」「栄養を作る菌」が重なりやすい。けれども、塩分のある環境で生きられることと、目当てのビタミンを多く作ることは、別々に確かめる性質である。ぬか床が元気そうに見えるという家庭の感覚も、特定のビタミン量を示す測定の代わりにはならない。[1]

この結果から持ち帰るべきなのは、ぬか漬けへの失望ではない。「発酵でビタミンが増える」という広い言葉を聞いたら、ビタミンの名前を確かめるという習慣だ。葉酸の研究結果を見てB1の話をしたくなったら、いったん止まる。ビタミンという同じ棚に並んでいても、実験ではそれぞれ異なる結果が出ている。[1]

野菜を替えると、ぬか床の菌の構成も変わる

ぬか床は、同じ菌だけがいつも同じ割合でいる場所としては捉えにくい。異なる野菜を漬ける実験では、野菜の種類によってぬか床の微生物の構成が変わった。研究では、生または焙煎した米ぬかを塩水と混ぜ、24℃で40日間発酵させたのち、きゅうり、キャベツ、大根を漬けて比較している。対象は食品と菌であり、18〜39歳の女性の健康への効果にそのまま当てはめることはできない。[2]

この40日間は、野菜を食べ頃にするための推奨日数ではない。野菜を漬ける前の、ぬか床を発酵させる実験条件である。数字だけを抜き出して「長く漬けるほど栄養が増す」と紹介すると、研究の時間軸を取り違える。何を置いていた期間なのかまで含めて読む必要がある。[2]

研究者は、野菜を洗った液、ぬか床、漬けた野菜の菌の構成を、菌の遺伝子を調べる方法で比較した。新鮮な野菜にいた菌が、そのままぬか床へ定着したという変化は観察されなかった。一方、成熟したぬか床とぬか漬けでは、一部の乳酸菌が優勢になった。野菜を入れることの影響を、野菜から菌が引っ越しただけと説明するのは単純すぎる。[2]

とくにラクトプランチバチルス・プランタルムは、調べた野菜と成熟したぬか床のすべての組み合わせで優勢だった。ほかの乳酸菌では、野菜の種類に応じた移り方が観察された。野菜によって異なる部分と、共通する部分が同時にあったのである。「きゅうりでこうだった」から、別の野菜でもすべて同じと決めることはできない。[2]

また、ぬか床と野菜では検出された菌にも違いがあった。この実験では、あるブドウ球菌が各ぬか床である程度観察された一方、ぬか漬けでは検出されなかった。床の中身と、皿に出す野菜の中身を同一視しないことは、菌の話でも大切だ。これはその菌についての観察であり、ぬか床全体の安全性を判定する説明ではない。[2]

こうした菌の比較は、野菜とぬか床の関係を考える材料になる。ただし、優勢だった菌の名前を知ることと、野菜のB1含有量を知ることは別である。菌の構成を比べる研究と、ビタミンの産生を測る研究は、互いの背景を照らしても、測っているものまで置き換えられない。[1][2]

菌の構成を調べる際に用いられたのは、16SリボソームRNA遺伝子という、菌の識別に使う遺伝子を標的にした解析である。培養してビタミンを測る実験とは観察の入り口が違う。どんな菌が存在するかを比較する結果と、取り出した菌がどんな物質を作るかを比較する結果を分けると、研究どうしの役割が見えてくる。[1][2]

興味深いのは、最終的に優勢になった一部の乳酸菌が、新鮮な野菜や米ぬかでは検出されていなかった点だ。最初に検出された菌の一覧を、その後のぬか床の姿として固定することはできない。発酵後の構成を知るには、その時点を調べる必要がある。ただし、この観察だけから菌がどこに由来したかを断定することも避けたい。[2]

こうした変化には野菜ごとの違いがありながら、乳酸菌が優勢になるという共通点もあった。研究が見ているのは、この共通性と違いの両方である。家庭で使う野菜の名前を省いて「ぬか漬けなら同じ」と話すと、実験で比べた大切な条件が抜け落ちる。[2]

数字で読むぬか漬けの研究条件

180株:ぬか漬け由来の乳酸菌について、ビタミンの産生を調べた規模である。[1]

約100µg/L:一部の菌株が培養液中で産生した葉酸の量であり、野菜のB1量ではない。[1]

約2µg/L:一部の菌株によるB12の産生量で、研究では高い量とは評価されなかった。[1]

24℃・40日間:野菜を漬ける前のぬか床の発酵条件であり、家庭向けの漬け日数ではない。[2]

2種類:形を保ったまま成分変化を分析する実験で用いられた野菜の種類数である。[3]

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宮川涼 Founder

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