ダイエットのプロテインは運動前後どっち?腸の時計と食後の熱を分けて読む

ダイエット中のプロテインは運動前後のどちらがよいのか。腸の栄養輸送を調べたラット実験と、人の食後の熱産生を調べた試験を読み分ける。朝夕の差を吸収率や減量効果に置き換えず、食事時刻、睡眠、運動の予定を分けて記録し、自分の生活で補給の時刻を考えるための記事である。

着替えの横にシェイカーを置き、レッスンの開始時刻を確かめる。プロテインは今飲むか、体を動かした後に飲むか。朝なら吸収しやすいという話まで加わると、一杯の飲み物を用意するだけで予定表まで組み直したくなる。

答えの芯は、腸の働きに時間による変化があるという研究から、プロテインは運動前と後のどちらが有利かまでは決められない、ということだ。ラットでは食事の組み合わせと給餌時刻に応じた腸のアミノ酸輸送能力の変化が観察され、人では食後に生じる熱に体内の時間による差が示された。しかし、測っているものは同じではない。[2][8]

近い題材の「夜の運動は筋肉の時計にも届く?睡眠時刻と分けて読む末梢のリズムとメリット」には筋肉と運動の問いを譲る。ここでは、食事の時刻と腸の栄養を運ぶ働き、その先で測られる熱を分けて読む。体重を減らすことを全員の目標にせず、補給の予定を研究の数字で追い詰めないための読み方である。

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運動の前後と、朝夕の違いは別の比較である

運動前後を比べる問いは、運動に対して飲む順序を変えたら何が変わるか、という問いだ。一方、朝夕の比較は、その日のどの時間帯に摂るかを変える。夜の運動前と朝の運動後を並べた場合には、前後関係と時間帯が同時に違う。仮に体の反応が違っても、そのまま前後の効果とは呼べない。この区別をしないと、時刻に関する研究がいつの間にか補給の順番の推奨になる。[2][8]

たとえば仕事前の運動を終えて飲む日と、残業後の運動に向かう途中で飲む日を考える。手帳には「後」と「前」と書けるが、食事の間隔も、起きてからの過ごし方も違う。ここで必要なのは、自分の体験を疑うことではない。比べた条件の名前を正確にすることだ。体内の時間の影響を調べた人の実験が、睡眠、活動、姿勢、光、食事の周期を慎重に扱ったのも、時刻以外の条件が重なるのを避けるためである。[8]

また、「よい」の中身を決める必要がある。腸の細胞がアミノ酸を取り込む能力なのか、食事の後に増えるエネルギー消費なのか。前者を扱ったラット実験と後者を扱った人の試験は、同じ成績表の別の欄ではない。別々の問いに答える研究だ。どちらも時間を扱っているからといって、数値をつなぎ合わせてプロテインの最適時刻を計算することはできない。[2][8]

「女性のプロテインは昼と夜で同じように使われる?体内時計から飲む回数を考える」という既存記事の問いとも区別したい。この記事の焦点は飲む回数ではなく、腸で測った輸送能力と、人の体で測った熱産生をどこまで結び付けてよいかにある。

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腸の時計を考える手掛かりは、ラットの食事実験にある

成長期のラットを使った実験では、朝の9〜11時と夜の20〜22時に食事を与えた。食事はカゼインを40%含む飼料と、たんぱく質を含まない飼料である。朝に前者、夜に後者を与える条件と、その逆の条件を設けた。普段の食事に少しプロテインを足す場面とはかなり違う、組成をはっきり変えた実験である。動物の組織での反応であり、18〜39歳の女性の補給時刻にそのまま当てはめるには、人での検証が必要だ。[2]

25日後、各群から各時点で4匹ずつを調べ、朝から夕方にかけて小腸と膵臓を採取した。小腸の一部である空腸の粘膜を用い、ロイシンというアミノ酸の取り込みや、たんぱく質合成を調べている。食べたものが体の中を通過した総量を、そのまま家庭で量った研究ではない。採取した組織の機能を測ることで、消化器の働き方を細かく見ようとした研究だ。[2]

膵臓の消化酵素の活性は、高カゼイン食の後に増え、たんぱく質を含まない食事の後に減った。研究者は、酵素を合成する材料の供給によって説明できるとしている。一方、小腸にもともとある加水分解酵素の活性は大きく変動しなかった。加水分解酵素とは、物質を分解する働きを持つ酵素である。同じ消化器でも、指標によって食後の変化の向きは異なった。[2]

さらに、空腸粘膜で測ったたんぱく質合成能力とアミノ酸輸送能力には、膵臓の酵素活性とは逆の傾向が見られた。研究者は、給餌の予定を手掛かりとする概日リズム、つまり体の機能が時間に沿って変動する仕組みの関与を考察している。ここでの「腸の時計」は、食事の予定に伴う機能変化を考える言葉であり、全員に共通の飲み頃を示す時報ではない。[2]

この結果のおもしろさは、たんぱく質が多い食事を与えれば、関係する機能がすべて同じ向きに動く、という単純な見方に収まらない点にある。消化酵素の活性と、腸粘膜の輸送能力を区別して測ったから見えた違いだ。「消化がよい」という日常語に一括りにすると、この研究の肝心な部分が消えてしまう。[2]

測定のために組織を採取した時刻は、9時、11時、14時、18時だった。朝夕の食事を設定していても、測定したのは一日のうちの限られた時点である。食事を与えた時刻と、機能を調べた時刻を分けて読むと、「夜の食事を含む実験」という説明と、「人が夜に飲むとどうなるか」という問いの違いがはっきりする。研究の時間割を、そのまま読者の食事の時間割に写すことは避けたい。[2]

また、空腸粘膜のたんぱく質合成という表現を、運動後の筋肉の合成と取り違えないことも大切だ。どちらもたんぱく質という言葉を使うが、この実験で採取した組織は腸である。測った場所を文の主語に戻すだけで、「体のどこかで増えた」から「筋肉に有利だ」へ飛ぶのを防げる。腸の変化を知る価値は、その先の効果を大きく見せなくても残る。[2]

人の朝の熱産生と、たんぱく質の吸収率は別の指標である

人の体内の時間を調べた機序的な無作為化試験では、過体重または肥満のある健康な成人16人が参加した。男性が12人で、平均年齢は36歳だった。一定の条件を保つ実験手順を使い、睡眠と覚醒、休息と活動、姿勢、明暗、絶食と食事の周期から、体内の時間そのものの影響を分けようとしている。男性が多く、過体重または肥満のある集団の結果を、18〜39歳の女性全体にそのまま当てはめられるかは、別に検証する必要がある。[8]

参加者は36時間、起きたまま安静にし、上体を少し起こした姿勢と薄暗い環境を保ち、6時間ごとに同一の試験食を摂った。これは、自宅で朝食と夕食を入れ替えただけの試験ではない。測定したのは食事誘発性熱産生、すなわち食事に伴って増えるエネルギー消費である。腸粘膜のアミノ酸輸送能力を測ったラットの研究とは、評価の入口が違う。[8]

食事誘発性熱産生には、体内の時間による有意な変動があった。生物学的な朝に高く、夕方に低く、山と谷の振幅は44%、約10 kcal/4時間だった。ここでいう生物学的な朝は体内のリズム上の位置を指し、研究では通常の時計の朝8時ごろ、谷は夜8時ごろに相当すると説明されている。時計の数字だけを切り取って、全員の朝食を指定する結果ではない。[8]

絶食時のエネルギー消費にもある時間変動を調整すると、食事誘発性熱産生のリズムは残ったが、振幅は約29%、約7 kcal/4時間となった。調整の前後で数字が変わるのは、どの成分の変動を見ているかが違うためだ。大きな割合だけを読むと印象は強いが、研究が報告した絶対量と、何に対する割合かもセットで確認したい。[8]

この熱の差を「朝ならプロテインを44%多く吸収する」と言い換えることはできない。44%は食事誘発性熱産生の山と谷の振幅であり、たんぱく質の吸収率ではない。同様に、約10 kcalという値を毎日の体重変化に換算して約束するのも、この機序研究の役割を越える。体に時間差が存在するという結果と、特定の飲み方が減量に優れるという結論の間には距離がある。[8]

参加者のうち男性が多かった点にも目を向けたい。成人の体内リズムを調べる手掛かりにはなるが、若い女性だけで確認した結果ではない。対象が違うことを理由に研究を捨てる必要はなく、誰に測った反応なのかを保って読む。それによって、朝の熱産生という発見と、自分の補給の判断との距離を見積もれる。[8]

数字で読む腸の働きと食事の時刻

40%:ラット実験のカゼイン飼料の組成。人のプロテイン摂取量の推奨ではない。[2]

25日:給餌条件を続けてからラットの消化器を調べた時点である。[2]

16人:食事誘発性熱産生の体内リズムを調べた人の機序試験の参加者数である。[8]

44%:調整前の熱産生の山と谷の振幅。約10 kcal/4時間という絶対量と併記して読む。[8]

約29%:絶食時のエネルギー消費のリズムを調整した後の振幅。約7 kcal/4時間に相当した。[8]

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宮川涼 Founder

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