ダイエットの運動後のプロテインは燃える?分岐鎖アミノ酸と筋肉の酵素を読む

ダイエット中、運動後に飲むプロテインも燃料になるのか。分岐鎖アミノ酸を分解する酵素と、筋肉のたんぱく質合成を分けて考える。男性の運動介入、動物実験、培養細胞の研究を読み分け、血中濃度だけでは分からない代謝の変化と、補給を考える際の視点を整理する。

運動を終え、シェイカーに粉を入れる手が止まる。飲んだたんぱく質が燃料になってしまうなら、筋肉のためには無駄なのだろうか。運動によって分岐鎖アミノ酸の酸化、つまり代謝の経路で燃料として使う反応が進むことは、運動と栄養を扱ったレビューで整理されている。燃料として使う反応と、筋肉の合成を調節する働きは両立する。[1]

分岐鎖アミノ酸は、ロイシン、イソロイシン、バリンというアミノ酸の総称である。略してBCAAと呼ぶ。これらを分解する酵素の働きと、筋肉のたんぱく質を合成する働きは区別して考える必要がある。運動後のロイシンは、燃料になる側面と合成の調節に関わる側面を持つ。[7][13]

既存記事「女性の筋トレの食事は糖質も添える?たんぱく質と筋肉の合成・分解を読み分ける」には食事全体と筋肉の合成・分解の論点を譲る。ここで追うのは、分岐鎖アミノ酸を使う酵素の動きである。「運動後だから何でも筋肉になる」という見方から、体内で何が別々に調節されているかへ目を移したい。[1][13]

既存記事「BCAAは減量の味方か、肥満の印か 分岐鎖アミノ酸をめぐる二つの顔」は補給と減量、血中濃度の意味を扱い、「疲労回復のアミノ酸飲料は配合で違う?分岐鎖だけと必須成分の比較を読む」は飲料の配合比較を扱っている。こちらでは成分の優劣を決めず、運動によって分解の経路がどう調節されるかを中心に読む。

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分岐鎖アミノ酸を燃やす入口はどう動くか

運動によるBCAA代謝を整理したレビューでは、分岐鎖アミノ酸は骨格筋で酸化できる必須アミノ酸と位置付けられている。必須という位置付けと、燃料にも使うという性質は矛盾しない。体にとって必要な成分だから、すべてをそのまま保管するという仕組みではないのである。[1]

分解経路の進み方を左右するのが、分岐鎖αケト酸脱水素酵素複合体である。長い名前なので、ここからはBCKDHと記す。BCAA分解経路の第2段階を進め、経路全体の速度を制限する役割を持つ。酵素とは化学反応を進める働きを持つものだが、この場合は関連する酵素がまとまった複合体として働く。[1]

BCKDHの働く強さは、存在量だけでなく活性の調節でも変わる。リン酸基が付く「リン酸化」で不活性になり、リン酸基が外れる「脱リン酸化」で活性になる。別の酵素が付け外しを調節しているため、アミノ酸が入ってきた量だけでは、分解がどれだけ進むかを決められない。[3]

日常の理解としては、材料の量と、処理する設備の稼働状態を分けるとよい。プロテインの表示を読めば、口に入れる側の量は確かめられる。一方、筋肉での酸化を左右するのは、こうした酵素の調節も含む。シェイカーには目盛りがあるが、酵素の稼働率までは印刷されていない。[1][3]

調節の細部を追った生化学的な実験では、カルシウムとチアミンピロリン酸の組み合わせも調べられている。後者はBCKDHの働きに必要な補酵素、つまり酵素の働きを助ける成分であり、BCKDHを不活性にする調節酵素を抑える働きも持つ。実験ではカルシウムがあると、その抑制が起きやすくなった。[7]

著者らは、この仕組みが運動中の骨格筋などでBCAA酸化が促進される理由に関わる可能性を示している。これは反応の仕組みを探る実験であり、運動後にカルシウム入りの飲料を飲ませて回復を比較した結果ではない。成分名が食事にも登場するからこそ、化学反応の条件と食べ方の比較を混ぜないでおきたい。[7]

酵素に必要な成分が見つかると、それを多くとれば反応が進むように感じやすい。しかし、この実験で操作したのは反応の場の条件である。食事でとる量と、反応の場の濃度は分けて考える必要がある。体内の調節を説明する研究は、まず「運動でなぜ経路が動くか」という問いに使うのが適切である。[7]

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運動中の分解は筋肉の減少と同じ意味か

骨格筋のBCAA代謝を扱った研究報告では、通常の安静時には筋肉のBCKDHのほとんどがリン酸化された不活性状態にあり、運動で活性化してBCAA分解が増えると整理されている。つまり運動の前後で変わるのは、成分の名前だけでなく、その成分を処理する側の状態でもある。[11]

ここで「アミノ酸の分解」と「筋肉のたんぱく質の分解」を同じ言葉で済ませると、話が飛ぶ。運動後のロイシンとたんぱく質合成を論じた論文は、運動中の筋たんぱく質合成の低下、たんぱく質分解の増加、BCAA酸化の促進をそれぞれの変化として扱っている。関連するが、同じ測定項目ではない。[13]

ロイシンが酸化されたという結果は、筋肉全体がその割合で減ったという結果ではない。アミノ酸の行き先を調べることと、筋肉量の変化を調べることには距離がある。運動中に起きた反応を見て、翌朝の体の見た目や長期の筋肉量まで一息に予測するのは、研究が答える問いを広げすぎている。[1][13]

筋肉を大切にしたい人ほど、「分解」という単語に反応しやすい。ただ、ここで確かめたいのは、何が、どの経路で、いつ分解されるのかである。BCKDHが扱うBCAAの酸化と、筋たんぱく質の出入りを分けておくと、運動後に食べることの意味も整理しやすくなる。[1][13]

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ロイシンは合成の調節にも関わる

運動後の骨格筋を扱った論文では、ロイシンはたんぱく質合成の開始を調節する因子に関わると説明されている。たんぱく質を作る工程には、材料があるかという問題だけでなく、作る工程を始めるかという調節がある。ロイシンを燃料としてだけ眺めると、この側面を見落とす。[13]

そこで登場するのがmTORという、細胞内で合成の調節に関わる酵素である。この論文は、運動後に食事由来のたんぱく質やBCAAで組織内のロイシンが増えることと、合成開始の抑制が解除される仕組みを結び付けている。また、ロイシンとインスリンの作用が協調することも論じている。[13]

だからといって、「ロイシンが多いほど筋肉が増える」という直線的な買い物の基準にはならない。合成を調節する反応の説明と、ある製品を飲み続けた時の筋肉量の比較は、別の問いである。細胞内の仕組みが分かったところから、購入する袋の大きさへ直結させないことが大切だ。[13]

運動後の補給を考える時には、まず何を期待しているかを言葉にしてみる。筋肉の合成を考えているのか、筋肉痛を軽くしたいのか、体重の変化を見たいのか。BCAAのレビューは運動と回復への有用性を示唆するが、そこで扱う代謝の説明は、そのまま体脂肪を減らす効果の説明にはならない。[1][11]

男性の運動介入では血中濃度と組織がずれた

人の研究で興味深いのは、普段あまり運動しない中年男性26人を対象にした12週間の介入である。標準体重または過体重で、血糖調節に異常のある人とない人を含んでいた。持久性運動と筋力運動を各週2回行い、血液だけでなく骨格筋と皮下脂肪組織も調べている。18〜39歳の女性に同じ変化が起こるかは、この中年男性の介入だけでは判断できない。[8]

介入後には、インスリンへの反応のしやすさを表すインスリン感受性が改善し、肝脂肪も減少した。一方、血中BCAA濃度は全体としてほとんど変化しなかった。血糖調節が正常な群のイソロイシンには増加が見られたが、血中のBCAAを一括して下げるという経過ではなかった。[8]

組織の遺伝子の働きを調べる解析では、骨格筋と皮下脂肪のBCAA代謝が高まる方向の変化が示唆された。血液にある量が大きく変わらなくても、組織で使う側の仕組みは変わり得るという読み方になる。濃度はその時の血液の状態であり、経路を通る流れそのものと同じではない。[8]

研究開始時には、血糖調節に異常のある群で血中BCAAが14.4%高かった。しかし、その群間差を見て、飲んだBCAAが異常の原因だと決めることはできない。もともとの代謝状態と血中濃度の関連を調べた結果を、補給の効果を比べた結果として読まないようにしたい。[8]

数字で読む血液と組織の違い

26人:運動介入に参加した、普段あまり運動しない中年男性の人数である。[8]

12週間:血液、筋肉、皮下脂肪を介入前後で比較した期間である。[8]

各週2回:持久性運動と筋力運動をそれぞれ行った頻度であり、ヨガの推奨回数ではない。[8]

14.4%:開始時に血糖調節異常群で高かった血中BCAA濃度の群間差である。[8]

10 μmol/l:血糖調節が正常な群で介入後に増えたイソロイシンの濃度で、補給量ではない。[8]

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宮川涼 Founder

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