筋トレと有酸素運動を両立すると、女性も筋力が伸びにくくなるのか。男女別のメタ分析と若い女性・閉経後女性の試験から、下半身筋力、筋肥大、持久力を分けて読む。女性で明確な干渉が見つからないことと、影響がないと証明することの違いを、比較対象や信頼区間も含めて確かめる。
レッグプレスを終えたあと、隣の自転車マシンへ移るか迷う。「有酸素運動を足すと筋トレの効果が消える」と聞いたからだ。脚の力も持久力も伸ばしたいのに、同じ日に両方行うことが遠回りになるのだろうか。
女性にも男性と同じ干渉が起こる、と一括りにはできない。健康な18〜50歳の男女を対象とした系統的レビュー・メタ分析では、下半身筋力の伸びに対する小さな干渉が男性で認められた一方、女性では明確ではなかった。18〜39歳の女性も対象年齢に含まれるが、その年代だけの結果として読むには範囲が広い。[6]
「筋トレと有酸素運動の順番、女性はどちらが先?同じ日に伸ばしたい力から考える」は順番の問いを扱う記事である。ここでは、男女をまとめた結論を女性の予定表に持ち込む前に、誰の、どの能力を、何と比べた結果なのかを確かめる。

女性の下半身では、男性と同じ干渉が見つかったか
筋トレと持久的な運動を組み合わせる方法は、研究では並行トレーニングと呼ばれる。干渉とは、組み合わせたときに、それぞれを単独で行う場合より適応が小さくなることを指す。単に運動後に脚がだるいという意味ではない。数週間の取り組みの結果として、筋力などの伸びに差があるかが問題になる。[6]
この問いに直接向き合ったのが、性別とトレーニング歴を調べた系統的レビュー・メタ分析である。対象は健康な18〜50歳の成人で、介入期間は4週間以上。59研究、計1,346人を統合し、上半身と下半身の筋力、パワー、筋肥大、最大酸素摂取量を検討した。最大酸素摂取量とは、運動中に取り込める酸素の最大量を表す指標である。18〜39歳の女性に使う際にも、男女全体の人数と女性だけの結果を区別する必要がある。[6]
下半身筋力について、男性の標準化平均差は−0.43、95%信頼区間は−0.64〜−0.22だった。著者らは男性で小さな干渉があると結論している。一方、女性では0.08、95%信頼区間は−0.34〜0.49で、明確な干渉は認められなかった。男女の群間差も統計的に認められている。[6]
標準化平均差は、測る尺度の異なる研究を共通の物差しに換算した差である。ここでの−0.43は、筋力が43%落ちたという数字ではない。筋トレをしたのに筋力が減った、とも限らない。比較相手より伸びが小さいことと、開始時より弱くなることは、別の出来事だ。[6]
女性の0.08という中心の値だけを見れば、差はほぼないように見える。しかし、信頼区間は負の側にも正の側にも広がる。この解析で女性の干渉を明確に検出できなかったのであって、あらゆる女性、あらゆる条件で差が完全にゼロだという保証にはならない。著者らも女性の研究を増やす必要性を挙げている。[6]
この違いは、日々の選択に関係する。「男性で干渉があったから、女性も有酸素運動を外すべきだ」という読み方は、男女別の結果を飛び越える。逆に「女性ではなかったから、いくらでも足せる」という読み方も、検討された範囲を飛び越える。研究が支持するのは、女性への一律の警告を弱めることであって、運動量の上限をなくすことではない。[6]
男女を混ぜた平均は、混ぜる前の内訳を消してよい許可証ではない。自分が知りたいのが女性の下半身筋力なら、まず女性の推定値に目を戻す。そのうえで区間の幅も読む。中心だけを抜き出すより手間はかかるが、予定から何かを消す前には必要な手間だ。[6]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
筋力が保たれる話を、筋肥大に広げない
同じメタ分析でも、評価項目を替えると答えは替わる。上半身筋力、パワー、最大酸素摂取量の変化には、統計的な男女差が認められなかった。パワーは、速さも関わる力の発揮を評価する項目であり、重いものを動かせる最大筋力と同じ項目ではない。[6]
ここで気をつけたいのは、「男女差がない」と「干渉がない」の区別である。男性と女性の変化が違うかを調べる問いと、組み合わせた運動が単独の運動に劣るかを調べる問いは異なる。上半身で男女差が見つからなかったという結果だけを使い、女性の全身で干渉が起こらないと宣言することはできない。[6]
筋肥大、すなわち筋肉が大きくなる変化については、このレビューでは結論を出すためのデータが不十分だった。下半身の筋力で女性に明確な干渉が見つからないことを、そのまま筋肉の大きさの話へ移してはいけない。持てる重さと筋肉の大きさを同じ欄に書けば、研究が分けて測った意味がなくなる。[6]
運動を始めると、体重、脚の見た目、階段の楽さ、扱う重さが一つの「効果」にまとめられがちだ。だが、今回の中心となる結論は下半身筋力についてのものである。見た目が変わらないから干渉している、体重が変わったから両立が成功した、とこの結果から判定することはできない。[6]
トレーニング歴にも別の論点がある。同レビューでは、持久系のトレーニング経験がない人で、並行トレーニングによる最大酸素摂取量の伸びが小さかった。一方、持久系の訓練者や高度な訓練者では、その傾向が認められなかった。これは18〜50歳の男女を含むトレーニング歴による解析である。18〜39歳の女性への当てはめでは、女性だけの結果として扱わないことが必要だ。[6]
したがって、「女性だから大丈夫」という情報だけで予定を決めると、能力の種類や経験の違いが抜け落ちる。息切れしにくさを優先したい時期と、脚で押す力を伸ばしたい時期では、研究から拾う項目も異なる。性別は大切な比較軸だが、ほかの軸を閉じるための分類ではない。[6]
たとえば、友人が「両方やると伸びない」と話していても、その「伸びない」が走る能力なのか、脚の最大筋力なのかで確かめる先は変わる。運動メニューの名前だけが一致していても、目標まで一致しているとは限らない。相談する際には、何を伸ばしたくて、何が伸びていないと感じるのかを分けて伝えたい。[6]
若い女性の試験は、筋力と持久力の両立を示す
若い世代を対象にした無作為化比較試験もある。運動習慣の乏しい18〜25歳の成人144人を、対照群、中強度の運動群、高強度の運動群に割り付け、24週間、監督下で並行トレーニングを行った研究だ。女性だけを集めた試験ではなく、男女別に反応を検討している。18〜39歳の女性のうち若い層には近い対象だが、それより年齢の高い女性にも同じ増加率を期待できるかは別の問いになる。[15]
女性では、最大酸素摂取量が中強度群と高強度群で対照群より増え、その増加はおよそ5.5%と報告された。脚で重りを押すレッグプレスの成績も、中強度群で約15.5%、高強度群で約18%増え、約1%だった対照群より改善した。少なくとも、この条件では有酸素運動を含む取り組みと下半身筋力の向上は両立していた。[15]
ただし、この試験の対照群は筋トレ単独群ではない。「並行トレーニングで伸びた」は示しても、「筋トレだけと同じだけ伸びた」までは示さない。比較相手が違うからだ。両方行った人が改善することと、単独で行う場合に比べて干渉がないことは、同じ判定ではない。[15]
この区別を置くと、メタ分析との関係も見えやすい。男女別メタ分析は、並行トレーニングの干渉が性別で異なるかを検討した。若い成人の試験は、決められた運動プログラムが対照群に比べて体力を高めるかを調べた。片方をもう片方の代役にせず、異なる問いへの答えとして読む必要がある。[6][15]
また、女性のレッグプレスで約18%という数字を見て、高強度がすべての女性に最適だと決めることもできない。ここで挙げたのは各運動群と対照群の比較であり、中強度と高強度のどちらを選ぶべきかという処方箋ではない。著者らは、女性では設定された強度にかかわらず、心肺体力と下半身筋力に効果があったとしている。[15]
研究の舞台は、監督のある継続的なプログラムである。仕事帰りに気が向いた日にだけ行う運動と、条件まで同じではない。数字をそのまま自分の目標値にせず、女性でも筋力と持久力を同時に伸ばす可能性が実際の試験で示されている、という位置に置くのが適切だ。[15]
数字で読む女性の並行トレーニング
59研究・1,346人:性別とトレーニング歴を検討したメタ分析の規模である。[6]
−0.43:男性の下半身筋力の標準化平均差。95%信頼区間は−0.64〜−0.22だった。[6]
0.08:女性の下半身筋力の標準化平均差。95%信頼区間は−0.34〜0.49だった。[6]
24週間:若い成人が監督下で並行トレーニングに取り組んだ期間である。[15]
約15.5%と約18%:若い女性の中強度群と高強度群におけるレッグプレスの増加である。[15]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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