ダイエット中の麺は、ゆで汁を捨てれば塩分もなくなるのか。パスタの調理実験をもとに、塩を加えてゆでる工程、湯切り、水洗いの違いを読む。他のミネラルも減るという結果を踏まえ、麺に残る成分と後から加えるつゆを別々に確認する方法、調理条件の数字を家庭の一皿へ読み替える際の注意点を考える。
鍋の麺をざるへあけると、白く濁った湯が流れていく。その湯を見て、「塩もこれで落ちたはず」と思う。だが、湯を捨てたことと、麺にナトリウムが残らないことは別である。パスタを調理して成分を測った実験では、塩を加えた湯でゆでると、出来上がりのナトリウムが増えていた。[19]
減塩を考えるなら、ざるを強く振る前に、鍋へ塩を入れる工程を見直す余地がある。同じ実験では、無塩の湯で調理したパスタは、有塩の湯で調理したものよりナトリウムが少なく、他のミネラルが多かった。一方、水洗いでは調べたすべてのミネラルが減った。洗えば塩だけが選ばれて落ちる、という結果ではない。[19]
既存記事「糖質制限のパスタは硬めなら消化が遅い?ゆで時間と噛み方を分けて研究で読む」には消化の問いを譲る。また「ダイエットの間食の麺は水洗いでどう変わる?ぬめりと栄養を別々に確かめる」とは分け、ここでは塩を加える工程から、湯を捨て、つゆを加えるまでの順序に焦点を当てる。麺を食べてよいかという許可の話ではなく、夕食のどの操作を変えるかという話である。

湯切りした麺にも、調理の履歴は残る
ナトリウムは、今回のパスタの実験で測定されたミネラルのひとつである。研究者らは、塩を加えた湯と無塩の湯でゆでる条件、さらにゆでた後に流水で洗う条件を比べた。調べたのは人の体重や血圧ではなく、調理後のパスタに含まれるミネラルである。食品を調理して分析する実験として、その範囲で受け取る必要がある。[19]
対象は、種類の異なるパスタの試料であった。成分は、試料中の元素を測る分析法で調べられ、調理後にどれだけミネラルが残るかも計算された。塩の有無も、水洗いの有無も、出来上がりの成分に統計的に有意な影響を与えていた。食べる時の成分には、麺の種類に加えて調理条件も関わる。[19]
家庭では、調理前の袋の表示を見て、そのまま皿の中身を想像しやすい。しかし、この研究で比べたのは、調理という操作を通った後の食品である。原料の情報と、調理後の測定値では、答えている問いが違う。麺を選ぶ段階で表示を確かめることと、鍋へ何を加えたかを振り返ることを、別の確認として持っておくとよい。[19]
「湯を捨てたから大丈夫」という判断は、捨てた側だけを見ている。減塩で知りたいのは、食べる側に何が残るかである。有塩の湯でゆでたパスタのナトリウムが増えた結果は、ゆで汁と麺を分ける操作だけで、調理中の影響を帳消しにはできないことを示している。ざるは、調理の履歴を初期化する道具ではない。[19]
ただし、この結果を、すべての麺が同じ割合で塩を含むという意味に広げない。研究対象はパスタであり、生地や製法の違う麺を横並びにする話ではない。乾麺、生麺、調理済みの麺を買う時は、まず手元の商品の説明と表示を読む。そのうえで、ここで扱う結果は、パスタの調理条件を比べた知見として使う。[19]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
塩を足してから洗う前に、鍋の入口を見る
この研究では、塩を加えた湯でゆでると、パスタのナトリウム量が有意に増えた。また、ナトリウム量は他のミネラル量と負の相関を示した。負の相関とは、片方が多い試料で、もう片方が少ない傾向があったという関係である。この関係だけから、ナトリウムが他のミネラルを直接追い出したとまでは言わない。[19]
無塩の湯でゆでたパスタは、有塩の湯でゆでたパスタより、ナトリウムが少なく、他のミネラルが多かった。著者らは、ミネラルの面から、無塩の湯でゆで、水洗いしない方法を最良の調理法としている。ここでの「最良」は、調べた調理条件と評価項目に対する結論である。好みの食感や料理全体の完成度まで含めた、普遍的な順位ではない。[19]
夕食の段取りに置くなら、塩を加えて調理した後で、その分を洗って取り戻そうとするより、初めから塩を加えるかどうかを決めるほうが、研究結果に沿った考え方になる。鍋の入口で選ぶことと、ざるの出口で減らそうとすることは、別の作戦である。まず入口を確かめれば、洗う操作を増やす以外の選択肢が見えてくる。[19]
無塩でゆでることを、味つけを一切しない食事の提案に変える必要もない。麺をゆでる段階と、盛りつけてから味を決める段階を分けて考える、という提案である。調理実験が扱ったのは前者であった。食卓では後者もあるため、塩を入れない鍋を選んだら、次にどの調味料を使う予定かまでを、料理の手順として確認したい。[19]
研究の結果を生活へ持ち帰る時には、「何かを減らすには、手間を増やさなければならない」と考えなくてよい。今回の比較で著者らが選んだのは、無塩でゆで、水洗いをしない方法であった。洗う回数を競うより、足す工程が必要かを先に考える。帰宅が遅い夜にも使えるのは、こうした手順の見直しである。[19]
水洗いで動くのは、塩だけではない
流水でパスタを洗うと、調べたミネラルはすべて減った。研究は、パスタをポーランドの食生活におけるマグネシウム、銅、マンガンの重要な供給源とも位置づけている。したがって、水洗いを評価する時は、ナトリウムが減る方向だけを取り出さず、他のミネラルも一緒に減ったという結果を残しておく必要がある。[19]
ここで、減ること自体をすべて悪いと決めるのも早い。何を目的に調理しているかで、判断の軸は違う。塩分を確認したい時にはナトリウムを見る。一方、食品のミネラルをどう保つかという問いでは、他の成分も見る。どちらかの目的を選ぶ時にも、もう片方の結果を消して説明しないことが大切である。[19]
また、洗って成分が減った結果から、食事全体が栄養不足になると結論することはできない。この実験の対象は、調理されたパスタの成分であった。ある操作で変化した食品の値と、その人が食卓全体から取る量は、同じものではない。水洗いをした夕食を失敗扱いするのではなく、次回どの条件を選ぶかの情報として読めばよい。[19]
成分の変化を「湯へ出た」とだけ説明することにも注意が要る。緑茶粉末入り乾燥麺を調べた別の食品実験では、ゆでるとフェノール成分が減り、その損失に熱による分解が重要な役割を果たしていた。成分の行き先を考える際には、ゆで汁への移動と熱による分解を分ける必要がある。これは特殊な配合の麺での結果であり、塩の減少率を教える実験ではない。[16]
この区別は、「麺から減ったのだから、汁まで飲めば元どおり」という考え方を点検するのに役立つ。移動した成分を追う問いと、加熱で変化した成分を追う問いは違う。どの成分を測った研究なのかを先に読むと、ゆで汁の見た目だけから、残った栄養を推測する必要がなくなる。[16][19]
研究で使われた有塩条件は、湯の量に対して塩の量を定めた設定である。家庭で使う塩の量や湯の量は、この実験の設定と区別して扱う。そのため、実験の条件を紹介する数字は、手順を再現するための指示として読まない。自分の鍋に同じ量を入れるのではなく、塩を加えるかどうかが比較されている点を見るための数字である。[19]
また、統計的に有意な違いがあったことと、自分の一皿でどれだけ変わるかが分かることは別である。「増えた」「減った」という方向を確かめた後にも、使う麺と調理条件の違いは残る。家庭の食事を比べるなら、麺の種類まで同時に替えるより、普段の調理でどの操作を選んだかを記しておくほうが、次の調理を考えやすい。[19]
この研究では、調理したパスタからのミネラル摂取も評価され、ポーランドの子ども、若者、大人の推奨量と比較された。これはパスタの食品分析とポーランドの推奨量との比較であり、18〜39歳の女性の摂取量や健康への影響にそのまま当てはめることはできない。食生活の中での位置づけと、家庭の鍋の操作を区別して読む視点も必要である。[19]
数字で読むパスタの調理条件
6種類・35試料のパスタ:塩の有無と流水での水洗いが、ミネラル量に与える影響を調べた食品分析である。[19]
湯1リットルに塩16g:有塩条件として用いられた設定であり、家庭で勧める塩の量ではない。[19]
緑茶粉末1.5%配合の乾燥麺:ゆで調理でフェノール成分が減り、熱による分解が損失の重要な要因だった。[16]
下ゆで2分、または下ゆで1分と蒸し2分:再加熱用の特殊な麺で、良好な官能評価と引っ張り特性を示した前処理条件である。家庭の標準ゆで時間ではない。[20]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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