疲労回復の食べ物は頭の疲れでも増やす?考え続けた後の空腹と消費を読み分ける

考え続けた仕事の後、疲れた分だけ食べ物を増やす必要はあるのか。若い成人を対象にした実験から、頭を使う作業の消費エネルギー、空腹の実感、実際の食事量の違いを読む。運動休憩で食事量が変わった試験と変わらなかった試験も比べ、仕事帰りの補食を疲労感だけで決めない視点を考える。

表計算の修正を終えた机に、昼食の包み紙が残っている。脚はほとんど動かしていないのに、今日はよく働いたという実感がある。「頭を使ったから、いつもより食べたほうが回復するのか」と迷う夕方だ。

答えの芯は、頭の疲れを、そのまま追加の食事が必要なエネルギー消費へ換算しないことである。若い女性の実験では、読んで文章をまとめる作業と座って休む条件の消費はほぼ同じだったが、その後の食事量は作業後のほうが多かった。疲れた感じ、消費した量、食べた量は、別々に見る必要がある。[8]

ただし、頭を使うと誰でも食べ過ぎるという結論でもない。別の成人の試験では、認知課題後の摂取量は安静条件より低かった。[1] 既存記事「脳の疲労回復に飲み物は役立つ?糖単独と配合飲料の試験を分けて研究で読む」に飲料の効果の問いは譲り、ここでは、考え続けた後に食事を増やす理由をどう判断するかに絞る。

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頭の仕事は、消費と食事量を別に測る

食事に含まれるエネルギーを摂取エネルギー、活動などで使う側を消費エネルギーと呼ぶ。その差を扱うのがエネルギー収支である。知的作業を調べた実験では、作業そのものの消費と、作業の後に自由に食べた量を別々に測っている。この区別があるから、食事が増えたとしても、消費が増えた結果なのかを照合できる。[2][8]

若い女性学生を対象にした反復測定の実験では、同じ参加者が座位で休む条件と、資料を読み、パソコンで文章をまとめる条件を経験した。どちらも45分である。参加者は健康な女性15人、平均年齢は24.1歳だった。作業の後は好きなだけ食べられるビュッフェで、摂取量を測った。[8]

消費エネルギーの条件間の差は13 kJにとどまった一方、作業後の摂取量は休息後より959 kJ多かった。[8] ここで重要なのは、増えた食事の分を、作業による追加消費で説明できるような対応にはなっていない点だ。机に向かって頑張った時間だけでは、追加のおやつの必要量は決められない。[8]

この比較は、脳が働いていないという意味ではない。座って休む条件を基準に、読解と文章作成という課題を上乗せしたときの差を見ている。日々の体の働き全体を無視して「頭の仕事はエネルギーを使わない」と言い換えるのは、比較の範囲を越える。正確には、この実験では知的作業条件と安静条件の消費がほぼ同じだった、である。[8]

別のランダム化クロスオーバー試験でも、健康な若年成人35人が座位安静、読み書き、トレッドミル運動をそれぞれ45分経験した。クロスオーバーとは、同じ人が異なる条件を経験して比較する方法だ。ここでも安静と知的作業のエネルギー消費はほぼ同じだった。男女を含む若年成人の試験であり、18〜39歳の女性全体に同じ結果が当てはまるかは、この集団の比較だけでは決められない。[7] 対象や課題が変わっても同じ点が観察されたことは、「疲れた分だけ消費した」と決める前に立ち止まる理由になる。

仕事の大変さを否定する必要はない。締め切りのある資料作りと、座って窓の外を見る時間では、本人の経験は違う。ただ、仕事の大変さを認めることと、食事の追加量を消費の測定から決めることは別の話だ。頑張りを採点する役を、夕食の皿に任せなくてよい。

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空腹を感じた量と、実際に食べた量は一致するか

女性学生の実験では、作業後に多く食べていたにもかかわらず、空腹などの食欲の指標には条件間で有意な差がなかった。[8] ここでいう有意な差がないとは、この実験で条件による違いを統計的に確かめられなかったという意味だ。全員が同じ気持ちだった、食欲を感じることには意味がない、という話ではない。

食事量だけを見れば増えている。食欲の自己評価だけを見れば、明確な違いを捉えていない。同じ実験の中で、この両方が成立している。[8] 「空腹感が強くなったはずだから食べたのだろう」と、研究が測った結果を後から揃え直す必要はない。食欲と摂取を別々の指標として残すほうが、仕事帰りの自分の状態にも近い見方になる。

また、この試験では炭水化物、脂質、たんぱく質それぞれの摂取エネルギーの絶対量は増えたが、食事全体に占める割合は条件間で同程度だった。特定の栄養素への好みが強まったとは認められていない。[8] したがって、この結果を「頭を使った後は糖だけを特別に欲しがる」と読むことはできない。増えた食事量の話と、何を選んだかの話を分ける必要がある。

さらに参加者は、その日の残りの食事を減らすことで、作業後に増えた摂取量を埋め合わせてはいなかった。[8] この実験では、増えた分がその日のうちに自然に相殺されなかった。ただし、若い女性の短期の実験であり、働く成人の普段の食生活すべてに同じ変化が起こると決めるものではない。

生活に引き寄せるなら、帰宅前の買い物で「お腹がすいた」と「仕事が終わったので何か食べたい」を、言葉の上で分けてみる。これは空腹を疑って我慢するための採点ではない。昼食が遅れたのか、まだ夕食まで間があるのか、すでに食事を取った後なのかを、一緒に眺めるための整理だ。

空腹の実感を記録するときは、その後に何を食べたかも同じ場所に残すと比較しやすい。感覚の記録だけでは食事量は分からず、食事の記録だけではそのときの実感が抜ける。研究が食欲と摂取量を別々に測っていたことを、日常の観察にも借りるのである。[8] 記録は正しい食欲を作る試験ではなく、自分が何を判断材料にしていたかを確かめるメモでよい。

食事が増えない試験も、同じ重さで読む

頭の作業の後に食事が増えた実験だけを並べれば、話は分かりやすくなる。しかし、標準体重の成人19人がランダムな順で条件を経験した試験では、30分の認知課題後の摂取量は、安静条件より低かった。18〜39歳の女性に絞った結果として、そのまま当てはめることはできない。[1] 知的作業と食事量の関係を、一方向の決まりとして扱えない結果である。

この試験では、安静、認知課題、認知課題後の高強度インターバル運動、机で自転車をこぎながらの認知課題を比べている。机でこぐ条件の摂取量も、認知課題だけの条件より多かった。一方、全体をまとめた食欲スコアには条件間の差がなかった。[1] 食べた量と食欲の実感を分ける必要は、この試験でも残っている。

先ほどの女性学生の実験と、こちらの成人の実験は、参加者、課題、比較条件が異なる。[1][8] その違いを飛ばして平均的な答えを作るより、「課題後に増える結果も、増えない結果もある」と残すほうが正確だ。異なる試験の食事量を、同じ人の連続した反応のようにつなぐことも避けたい。

若年成人35人の試験では、知的作業後の摂取は、女性では安静後より増える傾向、男性では逆の傾向が見られた。食欲の感覚を示す指標では、男女間に有意差はなかった。[7] ここでの「傾向」を、女性は必ず増え、男性は必ず減るという決まりへ強めてはいけない。研究集団の比較は、目の前の人の夕食を予言するものではない。

疲労回復の食べ物を探すとき、「精神的に疲れた日用の追加量」が決まっていれば便利である。しかし、これらの結果は、そのような一律の対応表を作る方向には揃っていない。[1][7][8] 今日の食事の事情を確認する手間は残る。検索結果がすぐに商品を指さしてくれなくても、その手間には意味がある。

実験のビュッフェは、食べる量を参加者自身に任せる仕組みである。[8] 持参した弁当を食べ切る昼食と、用意された食品から自由に取る昼食では、観察している選択の余地が違う。自分の夕方に結果を重ねるときも、何をどれだけ食べられる場面だったのかを先に確認したい。会社に置いた菓子をつまむ場面と、決まった夕食を取る場面を同じ条件として比べる必要はない。

同じ人が複数の条件を経験する方法は、もともとよく食べる人と少なく食べる人の違いを、そのまま作業の効果にしないために役立つ。[7][8] それでも対象は若い成人であり、測定したのは実験で設定した課題の前後だ。[7][8] 長い勤務の中で起こる食事の遅れや、その日の移動まで、読解課題の効果として引き受けさせないことが読み方の要点となる。

数字で読む頭の仕事と食事

45分:女性学生が読み書きと座位安静を比較した、それぞれの条件の長さである。[8]

13 kJ:同じ実験で、消費エネルギーの条件間に生じた差を示す。[8]

959 kJ:同じ実験で、知的作業後の自由な食事が安静後より多かった量である。[8]

35人:読み書き、座位安静、運動を比較した若年成人の人数。男女で異なる摂取の傾向が見られた。[7]

19人:認知課題後の摂取量が安静条件より低かった成人の試験の人数である。[1]

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宮川涼 Founder

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