プロテインのとろみは糸を引く性質でも違う?混ぜる粘りと伸びる粘りを読む

プロテインを混ぜたときのとろみと、口の中で引き伸ばされるときの粘りは同じではない。ホエイと唾液の成分を混ぜた実験から、せん断粘度と伸長粘度の違いを読む。一気に飲むかゆっくり飲むかを物性だけで決めず、飲み心地、補給量、運動後の反応を分けて考えるための記事である。

スプーンは軽く回るのに、口に入れるともったりする。仕事帰りに作ったプロテインで、そんな違いを感じたことはないだろうか。容器の中の液体と、口の中で唾液に触れた液体を、同じ「とろみ」のひと言で比べていないかを考えたい。ホエイたんぱく質と唾液の成分であるムチンの混合実験は、混ぜるときと引き伸ばすときの粘りが、同じ割合では変わらないことを示している。[1]

答えの芯は、とろみには流し方によって異なる顔がある、ということだ。隣り合う液体の層がずれるときの抵抗と、液体を引き伸ばすときの抵抗を分けると、スプーンの手応えだけで飲み心地を決めにくい理由が見えてくる。ただし、実験で伸びる粘りが増えたことを、一気に飲む方がよい、ゆっくり飲めば安全だ、という結論に置き換えることはできない。[1]

一口の量と間隔の話は、既存記事「女性のプロテインは一口でどれだけ飲む?口へ運ぶ量と間隔を分けて読む」に譲る。ここで扱うのは、液体にどのような力を加えて測ったかという違いである。栄養の量を測る話や、胃で分解される過程とも分け、コップの中から口の中へ移る間の物性を読む。[1]

既存記事「ダイエットの間食の納豆は混ぜるほど栄養が増える?糸の粘りと成分量を読む」は、混ぜる操作と栄養成分量の関係を扱う。こちらはホエイと唾液成分の混合系で、せん断と伸長という力の加わり方を比較する問いに絞る。[1]

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混ぜる粘りと、引き伸ばす粘りは別の測定である

せん断粘度とは、液体の隣り合う層がずれて流れるときの抵抗を表す量だ。伸長粘度とは、液体が引き伸ばされるときの抵抗を表す量である。ホエイとムチンを扱った研究では、両方の粘度を測っている。同じ液体についても、せん断の測定だけでは、伸長の測定で見える変化をそのまま代弁できない。[1]

スプーンでかき混ぜる場面と、液体の一部が引かれて細く伸びる場面を思い浮かべると、違いをつかみやすい。日常の動きは実験装置そのものではないが、液体への力の加わり方を分ける手掛かりにはなる。「混ぜやすかった」という感想と「伸びる感じがした」という感想を別々に残すのは、この測定上の区別に沿った整理である。[1]

題名の「糸を引く性質」は、伸びるときの粘りをイメージするための言葉だ。家庭で目に見える糸の長さを測れば伸長粘度が分かる、という意味ではない。液体を見た印象と、装置で得た物性値は別物である。この研究が比べたのは、ホエイとムチンを混ぜた系での、流れへの抵抗の変化だ。[1]

物性の説明で便利な言葉ほど、使い過ぎには注意がいる。「さらさら」「どろどろ」は飲み物を選ぶときに役立つが、何に抵抗しているかまでは指定しない。混ぜる抵抗なのか、伸ばす抵抗なのか。ここを言い足すだけで、同じとろみの話に見えたものが、違う測定の話だったと分かる。[1]

たとえば、同じ一杯を前に「混ぜている間は軽い」「口に含むとまとまりを感じる」と話す人がいたとする。その観察だけで伸長粘度が高いと診断することはできないが、異なる場面の感想を矛盾として捨てる必要もない。研究が流れ方を分けて測るのは、単独の感触ではまとめきれない性質を区別するためだ。[1]

この区別は、研究の見出しを読むときにも使える。単に「粘度を測定」とあれば、せん断を調べたのか、伸長を調べたのかを確かめたい。ムチンの混合実験は両方を測り、その比まで比べている。測定の名前まで読むことが、見た目のとろみの話から、どの変形に対する抵抗が変わったかという話へ進む入口になる。[1]

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唾液の成分が入ると、容器の中とは条件が変わる

中心になるのは、分離ホエイたんぱく質とムチンを混ぜ、分子間の相互作用や流れ方を調べた物理化学の実験である。分離ホエイたんぱく質は乳由来のたんぱく質素材、ムチンは唾液に含まれる高分子成分として登場する。人に飲料を飲ませて、飲み込みの成績を比べた試験とは研究の型が異なる。人を対象にしていないため、18〜39歳の女性の飲み心地や飲み込みの安全性へそのまま当てはめることはできない。[1]

この実験では、酸性度を表す指標であるpHを変えた条件が比較された。pH3とpH7のいずれでも、ホエイとムチンの凝集に伴う相分離が起きた。凝集は成分が集まること、相分離は混合物の中で状態の異なる部分に分かれることである。口に入った後の食品を考えるとき、ただ水が加わって薄まるだけのモデルでは足りないことを示す結果だ。[1]

混合物が分かれるというと、すぐに「品質が悪い」と読みたくなるかもしれない。しかし、ここでは食品たんぱく質と唾液成分が接触したときに何が起きるかを調べている。市販の飲料が保存中に分離するかどうかの判定でも、飲み残しの原因を調べる試験でもない。研究の対象を、コップの底の見た目へ直結させないことが大切になる。[1]

pH3では、静電的な作用が、エントロピーに駆動される相互作用に寄与していた。一方、pH7では、静電的ではない異なる相互作用が凝集と相分離に関わっていた。専門語を全部覚える必要はない。同じ素材を混ぜても、酸性度によって、集まり方を支える仕組みが異なる点を押さえればよい。[1]

したがって、この結果から家庭の飲み物に酸味を足す方法を組み立てることはしない。実験のpHは比較条件であり、飲みやすさを得るための目標値ではない。果汁の量や味の好みの話へ移る前に、どの素材を、どんな環境で混ぜた結果なのかを置いておく。物性の数値には、その数値が生まれた住所がある。[1]

ムチンで増えた粘りは、せん断と伸長で同じではない

研究では、pH7でホエイをムチンに置き換えていくと、pH3の場合と比べて、せん断粘度が大きく増えた。ムチンは伸長粘度も高めた。大事なのは、ただ「粘度が上がった」で終えず、どちらの粘度かを確認することだ。著者らは、伸長粘度とせん断粘度の比が増えたことも示している。[1]

具体例として、ホエイとムチンが6対4の系では、pH3で伸長粘度が0.27から0.85Pa s、pH7で0.38から0.89Pa sへ増加した。論文では、それぞれ3倍以上、2倍以上の増加として示されている。数値が動いた対象は、飲む時間でも、たんぱく質の吸収率でもなく、引き伸ばすときの抵抗である。[1]

6対4という条件は、口腔内での食品成分と唾液成分の相互作用を切り分けるための混合系を指す。ムチンを加えたとき、せん断と伸長の抵抗がどう変わるかを見る設計だ。飲料の調合ではなく、口腔内レオロジー、つまり口の中で食品が変形し流れる性質を理解する基礎実験として読む。比率と粘度を一緒に示すのは、測定値をこの実験条件に結び付けるためである。[1]

伸長粘度をせん断粘度で割った比は、トルートン比と呼ばれる。この研究では、その比の増加が注目されている。言い換えれば、ムチンによる変化を「混ぜるときに重くなった分」だけで表すと、引き伸ばすときの変化を十分に捉えられない。とろみをひとつの目盛りに押し込めないための指標である。[1]

また、倍率と最終値は別の情報だ。pH3の方で倍率が大きく示されていることだけから、最終的な伸長粘度も高いとは読めない。出発点と到達点を一緒に読む必要がある。飲み物の科学でも、増え方の見出しだけを読むと、隣に書かれた実際の値を見失う。[1]

数値を見る際には、単位にも役割を持たせたい。Pa sはこの研究で粘度を表す単位であり、増加の倍率は変化の相対的な大きさを表す。同じ結果を記述していても、単位付きの値と倍率では伝える内容が違う。倍率だけを取り出して別の飲料の話に使うと、最初の粘度も混合条件も抜け落ちてしまう。[1]

もうひとつ区別したいのは、ムチンの関与を示すことと、個人差を説明し切ることだ。この実験は素材の混合系を調べ、口の中で起きる相互作用を考える基盤を示している。だから、自分だけ飲みにくい理由を唾液の性質に決めつける材料としては使わない。人ごとの感触の違いを問うことと、素材の相互作用を問うことには、観察する対象の違いがある。[1]

数字で読む、ホエイとムチンの流れ方

pH3とpH7:酸性度が異なる条件で、凝集と相分離を比較した実験である。[1]

6対4:ホエイとムチンの系で示された比率であり、家庭の水割りの指定ではない。[1]

0.27から0.85Pa s:pH3で示された伸長粘度の変化である。[1]

0.38から0.89Pa s:pH7で示された伸長粘度の変化である。[1]

3倍以上と2倍以上:論文が示す伸長粘度の増加であり、飲み込みやすさの改善倍率ではない。[1]

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宮川涼 Founder

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