睡眠と運動の記録は十五分刻みでよい?丸めた時間で小さな変化を決めない読み方

運動した夜の睡眠時間を、きりのよい数字で記録していないだろうか。十五分刻みを正解と決めず、記録の丸め方、睡眠日誌と機器の違い、研究の平均値を読み分ける。運動で睡眠時間が長くなるという研究を、自分の朝の記録へどう持ち帰るか、対象と比較条件から考える記事である。

体を動かした翌朝、枕元で睡眠日誌を開く。「いつもより眠れた気がする」と思いながら、昨日と同じ時間を書く。日誌には朝の手応えを残しても、睡眠時間の欄では変化が消えている。きりのよい数字に直すと、手応えだけが欄の外へ出てしまう。

十五分刻みを、誰にでも正しい睡眠の記録単位と決めることはできない。暮らしの記録としてその幅を選ぶなら、概算であることを残し、途中で丸め方を変えず、その幅より細かな改善まで判定しない、という運用が考えられる。これは記録を比較するための提案であり、十五分刻みの精度や治療効果を保証する基準ではない。

研究でも、睡眠日誌と身につける機器では同じ夜でも異なる結果が出る。また、運動による睡眠時間の変化は、誰を対象に、何を対照に、どう測ったかによって読む必要がある。数字を細かく書く前に、その数字が何を表すかをそろえたい。[4][16][20]

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十五分刻みは、眠りの性質ではなく書き方の選択

ここでいう丸め方とは、思い出した時間をきりのよい数字へ置き換える書き方である。概算と、時計を見て残した時刻は、見た目が同じでも成り立ちが違う。まずは欄の余白に「およそ」と書く。それだけで、その数字を正確な測定値のように扱うのを避けられる。

切り上げるのか、近い区切りに寄せるのかも分けて考えたい。どちらも同じ「丸めた数字」だが、実際に書き換えている方向が異なる。眠れた気分の日だけ長めに直し、寝不足の日は短めに直すなら、時間の欄に感想まで混ぜることになる。記録上は、眠った長さの見積もりと朝の感想を別の欄に置く方法が考えられる。

たとえば寝つくまでの時間を、ある朝は時計の記憶から、別の朝は布団にいた長さから書いたとする。比較したいのは眠りの変化でも、比べている材料まで変わってしまう。これは日誌を作るときに避けたい取り違えの例である。医学的に推奨される刻み幅の話とは区別しておこう。

睡眠研究が日誌を使うことと、家庭で自由に作った欄が研究と同じ精度を持つことは別の話だ。成人の不眠を対象としたデジタル認知行動療法のメタ分析では、睡眠日誌による総睡眠時間や寝つきなどが評価されている。日誌は治療の評価にも使われるが、家庭で選ぶ刻み幅の検証とは目的が違う。不眠の成人の結果を、18〜39歳の女性の家庭での記録精度へそのまま当てはめることはできない。[11]

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日誌と機器の差を、丸め誤差だけで片づけない

がん治療を経験した人を対象に、睡眠日誌と装着型の睡眠計測機器を比較した研究がある。複数のランダム化臨床試験のデータを用いた比較で、対象は62人だった。がん治療経験者の結果なので、18〜39歳の女性一般に同じ差が生じるかは別に検討する必要がある。睡眠時間だけでなく、夜中に起きていた時間や目覚めの回数なども比べている。[16]

機器の総睡眠時間は日誌より平均14.6分長かったが、この差は統計的に有意ではなかった。一方で、夜中に起きていた時間は機器で平均28.7分長く、寝床にいた時間は平均24.4分短く、これらの差は有意だった。同じ夜を記録しても、項目によって差の出方が異なったのである。[16]

平均14.6分という数字を見ると、日誌の時間にその分を足せば機器とそろいそうに見える。しかし総睡眠時間の差の標準偏差は84.9分だった。標準偏差は、差がどのくらい散らばっていたかを表す数字である。平均的なずれを、そのまま個人の補正量として使う読み方はできない。[16]

総睡眠時間には中程度の相関があった。相関とは、片方の数字が大きいときにもう片方も大きい傾向を表すもので、この研究では相関係数が0.41だった。連動する傾向があっても、同じ値が出るという意味にはならない。日誌と機器を交互に使うときは、記録欄に出所を残す理由になる。[16]

この比較はがん治療経験者の研究であり、健康な若い女性や、すべての市販機器に同じ差が出ると一般化はできない。また、観察された差をすべて日誌の切り上げのせいにすることもできない。ここから持ち帰れるのは、測り方の違う数字をそのまま接続しないという読み方である。[16]

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運動の研究では、日誌で伸びた時間をどう読むか

不眠の成人を対象とした運動の系統的レビューとネットワークメタ分析は、22件のランダム化比較試験、計1348人をまとめた。ネットワークメタ分析は、複数の介入の比較をつないで効果を検討する方法である。この研究では、ヨガ、太極拳、歩行やジョギングなどが調べられた。不眠の成人をまとめた結果を、18〜39歳の女性全般の運動後の変化へそのまま当てはめることはできない。[4]

通常のケアや生活習慣の変更などを行う対照群に比べ、ヨガでは日誌による総睡眠時間が平均110.88分長かった。95%信頼区間は58.66〜163.09分で、根拠の確かさは中程度と評価された。信頼区間は効果の推定に伴う不確かさを示す範囲であり、自分の睡眠時間がその範囲だけ増えるという約束ではない。[4]

太極拳では、日誌による総睡眠時間の群間差は平均52.07分だった。一方、睡眠検査や活動量による測定をまとめた客観的な評価では平均24.09分だった。どちらも根拠の確かさは低いとされた。同じ運動名でも、測定方法を添えずに「眠りがこれだけ伸びる」と紹介すると、結果の輪郭を失う。[4]

ここで、日誌のほうが大きな差だから誇張だと決めるのも急ぎすぎである。測定法別の統合値は、同じ人の同じ夜を直接照合した誤差そのものではない。日誌で見えた変化と、機器などで見えた変化は、それぞれの評価として読む必要がある。[4][16]

既存記事「運動後の睡眠効率が上がればよく眠れた?寝床の時間と眠った時間を分けて読む」には、睡眠効率の読み方を譲る。ここで扱うのは、日誌へ時間を書き写す段階と、その数字を研究の結果に重ねる段階だ。朝の記録には、研究とは違って自分で決めた書き方が入り込む。

研究の平均値に、自分の記録を競わせない

不眠の成人に対するデジタル認知行動療法をまとめた別の系統的レビューとメタ分析では、14件のランダム化比較試験が対象になった。認知行動療法は、睡眠に関わる考え方や行動を扱う治療である。この解析の睡眠時間の結果は日誌によるものだった。対象は不眠の成人であり、18〜39歳の女性一般にも同じ効果量が得られるかは分けて考える。[11]

待機群や介入をほとんど行わない対照群と比べた場合、総睡眠時間は0.20時間増え、寝つくまでの時間は15.53分短くなった。夜中に起きていた時間は15.61分短くなっている。一方、対面や遠隔で専門家が行う認知行動療法との比較では、有意な差はなかった。相手が変われば、効果の読み方も変わる。[11]

この結果は運動の効果量ではない。ここで取り上げる理由は、睡眠日誌の研究では、小数を伴う群の平均値が報告されることを示すためだ。その小数は、読者が自宅の日誌で同じ細かさまで眠りを言い当てられるという意味を持たない。平均値の桁数と、自分の見積もりの精密さは分けて考えたい。[11]

夜の記憶は曖昧なのに、入力欄だけが細かな分まで求めてくることがある。そんなときは、分からない部分を確定した数字の顔にしない。これは日誌の運用上の提案である。記憶による概算ならそう書き、機器の表示を写したならその旨を書く。後から見た自分が、数字の作られ方を追える状態を目指す。

運動の統合解析では、採用された試験のうちバイアスのリスクが低いとされたのは4件で、15件には懸念があり、3件は高リスクとされた。バイアスとは、研究の進め方などによって結果の推定が偏ることである。大きな平均差だけを取り出すより、結果をどれほど信頼できるかまで一緒に読むほうが、自分の記録に過大な期待を載せずに済む。[4]

また、デジタル認知行動療法のメタ分析で、専門家による治療を比較相手にした試験は14件中3件だった。有意な差がないという結果も、すべての方法が誰にでも同じだけ役立つと断定する材料にはならない。比較した研究の数と、そこで検討された条件を伴う結果だからだ。自分の日誌にも、比較相手の名前を残す感覚が役立つ。「普段」とは、勤務日の朝なのか、起床予定のない朝なのかを言葉にするのである。[11]

記録を見直すときは、最初に問いを文章にしてもよい。「運動した夜は長く眠るのか」と「翌朝のつらさはどうか」では、読む欄が異なる。総睡眠時間、寝つき、夜中の覚醒、不眠の重症度を分ける研究の組み立ては、この問いの整理に使える。全部をひとつの点数へ詰め込むより、知りたいことと欄を対応させる提案だ。日誌は細かい数字を競う帳面ではなく、あとで質問を取り出せる帳面として作りたい。[7][9]

数字で読む睡眠記録の比較

62人:がん治療経験者で睡眠日誌と装着型機器を比較した人数。一般の利用者全体を代表する人数ではない。[16]

14.6分:同研究で機器の総睡眠時間が日誌より長かった平均差。統計的に有意な差ではなかった。[16]

110.88分:不眠の成人を対象とした運動の統合解析で、ヨガと対照群に見られた日誌による総睡眠時間の差。[4]

0.20時間:デジタル認知行動療法と非積極的な対照群との比較で見られた、日誌による総睡眠時間の増加。[11]

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宮川涼 Founder

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