女性の腹筋は光で酸素の使用量も分かる?皮下脂肪より先に確かめたい測定の場所

女性の腹筋に近赤外線を当てれば、酸素の使用量や鍛え方まで分かるのか。腹部の酸素化と血流、脳の光測定、筋電図を区別し、動物実験と患者の研究を読み解く。皮下脂肪の厚さを筋肉の働きに結びつける前に、センサーの場所、対象、測定指標から数字の意味を確かめるための記事。

お腹に小さなセンサーを貼るだけで、腹筋がどれだけ酸素を使ったか分かるのだろうか。腹筋運動の動画には、測定値の曲線が添えられていることがある。画面の曲線が下がるほど、腹筋が酸素を使い、よく鍛えられているように見える。女性の腹筋を調べるときも、この曲線をそのまま努力の成績表にしてよいのだろうか。

答えは、まず測った場所と指標を確かめる必要がある、である。近赤外分光法という光を用いた測定は、腹部を含む組織の酸素化や、色素を併用した血流評価に使われている。一方、腹筋を扱う実験でも、光を当てた場所が脳で、腹筋は筋電図で測っている場合がある。酸素化、血流、筋肉の電気活動を入れ替えて読むことはできない。[2][7][11]

既存記事「体脂肪率は女性の腕に光を当てて測れる?近赤外線の推定と部位の違いを読む」には体脂肪推定の問いを譲る。ここでは、お腹の研究に出てくる光の数字が何を表すのかを考える。皮下脂肪の厚さから酸素使用量を決めたり、筋肉の働きを見た目の割れ方に翻訳したりする前の、測定の読み方が主題である。[1][2][16]

既存記事「HIITの筋肉の酸素はどう測る?皮下脂肪と光の届く深さで変わる数字を読む」には、皮下脂肪と測定の深さの問いを譲る。ここで先に確かめるのは、その曲線がお腹から得られたのか、脳から得られたのか、血流なのか酸素化なのかという区別だ。[2][7][11]

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腹筋を調べた論文でも、光は脳に当たっている

近赤外分光法は、英字ではNIRSと表記される。名前を見つけただけで「腹筋の酸素を測った」と判断すると、研究の設計を取り違える。腹筋と脳を同時に調べる実験では、それぞれに別の道具を使うからだ。測定法の名前の隣に、部位と指標を書き添えると読みやすくなる。[7]

18歳を超える健康な成人27人を対象にした予備的な比較試験では、反射的な運動パターンを引き出す刺激と、刺激を行わない条件を比較している。腹筋の活動を記録したのは表面筋電図であり、近赤外分光法を用いたのは運動に関わる大脳皮質だった。腹筋の電気活動と脳側の酸素化ヘモグロビンの変化を対応させた研究であり、18〜39歳の女性だけの反応を示す結果としては扱えない。[7]

酸素化ヘモグロビンは、酸素が結びついたヘモグロビンを指す。この実験では、刺激側とは反対の右半球で、刺激前から最初の休息期にかけてその濃度が増加した。また、その休息期には脳側の信号と筋電図信号の時間的な対応が強まった。これは刺激、脳の反応、筋収縮の関係を考える結果であり、お腹の皮下脂肪を通して腹筋の酸素消費量を計算した結果ではない。[7]

「腹筋の研究」「光による測定」という言葉はどちらも正しい。それでも、組み合わせ方を間違えると別の実験になる。動画の字幕に腹筋と書かれていても、光のセンサーが額にあるなら、その曲線を腹筋の局所の酸素化として読む理由にはならない。研究では腹筋を筋電図、脳を光で調べるという役割分担が実際に使われている。[7]

仕事帰りの中央線で研究紹介を読むなら、グラフの色より先にセンサーの位置を見る。確認したいのは、額なのか、お腹なのか、そして光の信号と同時に何を測っているかである。これは論文の価値を下げるためではない。脳と筋肉の連動を調べた研究を、その研究が答えた問いのまま受け取るためだ。[7]

同じ理由で、脳の反応が大きかったという結果から、女性の腹筋を割るための種目の優劣は決めない。この試験の比較は触覚刺激の有無であり、日常の腹筋メニューを長く続けた後の外観比較ではない。刺激直後の信号を読む場面と、トレーニングの成果を確かめる場面を分けておく必要がある。[7]

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腹部で測った酸素化も、酸素の使用量とは分ける

では、お腹で光を測っている研究ならどうか。集中治療室で人工呼吸器から自発呼吸へ移る患者24人を調べた前向き観察研究では、前頭部、首の筋、腹直筋、手の筋で同時に測定している。近赤外分光法に色素を併用し、血流の指標、酸素供給、組織の酸素飽和度を評価した。ここでは腹直筋も実際の測定部位に含まれる。重症患者の人工呼吸器離脱時の呼吸生理を調べた研究なので、健康な18〜39歳の女性が腹筋運動をするときの反応にそのまま当てはめることはできない。[2]

自発呼吸を試す時間は30分だった。試行に成功した群と失敗した群を比べると、前頭部の酸素飽和度の反応には群間の違いがあった。一方、腹直筋の血流指標、酸素供給、酸素飽和度の反応には、有意な群間差がなかった。頭で見つかった違いを、同時に測ったお腹にもあったことにはできない。[2]

この結果が教えるのは、同じ人の同じ時間帯でも、測る場所と指標で結果が異なるということだ。腹直筋に差がなかったことは、腹筋が働いていなかった証明でもない。比較したのは自発呼吸試行の成否による反応の差であり、「腹筋の使用の有無」という比較とは問いが違う。[2]

酸素飽和度の曲線を、酸素の使用量そのものとして読むことにも注意が要る。この研究は血流、酸素供給、酸素飽和度を別の指標として扱っている。腹筋がどれだけ働いたかを知りたいとしても、まず手元の数字がどの指標なのかを確認する必要がある。すべてを「酸素の数字」で済ませると、研究が分けた情報が消えてしまう。[2]

別の実験は、慢性閉塞性肺疾患の患者10人が一定の負荷で運動したときのものだ。通常の空気を吸う条件と、ヘリウムと酸素を混ぜた気体、酸素を吸う条件を比較し、肋間筋、腹筋、太ももの筋への血流を色素併用の近赤外分光法で測定した。こちらの主題は呼吸器疾患のある患者の運動中の血液配分であり、健康な18〜39歳の女性の腹筋トレーニングへの適用は別に検証する必要がある。[11]

混合気体の条件では通常の空気より運動を続けられる時間が長く、運動終了時の腹筋血流も多かった。ところが酸素を吸う条件でも運動時間は延びた一方、腹筋血流は通常の空気と有意に違わなかった。運動時間はどちらでも延びたが、腹筋血流の反応は条件によって異なった。[11]

研究者らは、呼吸筋から脚の筋へ血流を回したことが運動時間延長の説明になる、という仮説を支持しなかった。測ってみると、分かりやすい説明の筋書きと結果が一致しないことがある。血流が増えたから鍛えられた、酸素の数字が変わったから脂肪が減った、と話を進める前に、何と何を比べたのかに戻りたい。[11]

皮下脂肪を気にする前に、表面の条件を見直す

お腹の表面にセンサーがあると、皮下脂肪の厚さが気になるだろう。しかし、ここで女性の皮下脂肪を測定誤差の原因と決めつけたり、厚さに応じた補正値を作ったりはしない。表面の条件が測定に関係することと、特定の厚さから筋肉の酸素使用量を算出できることは、別々に確かめるべき問いである。[1][3]

表面の影響を具体的に調べたのが、腹直筋を含む皮膚と筋肉の組織を用いたブタの実験である。皮膚の色素がある場所とない場所を同じ組織内で比較し、血流を遮断したときの酸素飽和度の変化を光で追った。対象はブタ4頭、組織片6つであり、18〜39歳の女性の腹筋運動時にも同じ反応が生じるかは別の検証を要する。[1]

通常の酸素状態での測定値は、色素のない皮膚で49±7.9%、色素のある皮膚で47±6.2%だった。この開始時点の値に有意差はなかった。一方、血液が入らなくなる虚血や、血液が滞るうっ血の場面では、測定値の変化が色素のある皮膚で小さくなった。開始時点が似ていても、血流遮断後の反応の見え方には違いがあった。[1]

この実験で比較したのは皮膚の色素であり、皮下脂肪の厚さではない。色素による結果を、脂肪が厚い人では決まった割合で低く表示されるという説明に置き換えない。同じ「表面の影響」という箱に入れてしまうと、何を操作した実験なのかが見えなくなる。[1]

別のブタの実験では、筋肉内に置く熱を利用した血流センサーと、皮膚に当てる近赤外線装置を同時に使った。動脈や静脈を遮断したとき、筋肉内の血流信号は虚血とうっ血に反応し、回復時には開始時点に戻った。光による組織酸素飽和度との対応も良好だった。血流と酸素化は対応したが、異なる指標である。このブタの血流遮断実験から、18〜39歳の女性の運動中にも同じ対応が得られると判断することはできない。[3]

数字で読む腹部と光の測定

27人:健康な成人で、腹筋は筋電図、脳は近赤外分光法を使った比較試験の人数である。[7]

24人:腹直筋を含む複数部位を測った、自発呼吸試行の観察研究に参加した患者の人数を表す。[2]

4頭・6組織片:皮膚の色素と光による酸素化測定の関係を調べたブタ実験の規模である。[1]

10人:呼吸する気体を変えて運動中の腹筋血流を調べた患者が参加した実験の規模を示す。[11]

18人:腹部に力を入れる方法を、超音波と筋電図で比べた健康な成人の人数である。[16]

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宮川涼 Founder

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