筋トレと有酸素運動で体重が増える?飲んだ水と血漿量の戻り方を分けて読む

筋トレと有酸素運動の後、体重が増えたら脂肪が増えたのか。飲んだ量、尿として出た量、血液中の水分の変化は同じ指標ではない。暑い環境での運動試験と腎臓のレビューから、補水後の数字と回復時間の読み方を考える。特殊な飲料や塩分補給の結果を、日常の運動へそのまま当てはめない視点も示す。

筋トレの後に自転車をこぎ、帰宅して水を飲む。シャワーの後に体重計へ乗ったら、運動直後より数字が増えている。汗をかいて頑張ったはずなのに、と画面を見直したくなる。ただ、その増加をすぐ脂肪の増加と呼ぶ前に、運動から測定までの飲水と体液の動きを分けて考えたい。[2][11]

運動後の研究では、飲料を変えても水分出納が変わらない場合と、尿量や血漿量の一部が変わる場合がある。血漿とは、血液のうち血球を除く液体の部分である。体に残る水分の収支と、その水分が血液中でどう変化したかは、研究でも別々に測られている。[2][8]

したがって、体重だけで「血漿が戻った」「筋肉が増えた」「太った」と内訳を決めるのは早い。ここで扱うのは、運動直後から補水後までの数字の読み方である。運動の間隔は既存記事「筋トレと有酸素運動は何時間あける?脈が戻る時刻と次に動ける判断を分ける」に譲り、こちらは飲んだ水の行方に焦点を絞る。[2][8][11]

既存記事「女性の有酸素運動は血液の量も変える?続けて増える血漿と持久力の関係を読む」の継続的なトレーニングの問いとは分け、ここでは運動を終えて飲み物を飲む場面を扱う。

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体重の増減と、血液中の水分は別の問いである

体重計が返すのは体全体の重さである。一方、血漿量は血液の液体部分の量を指す。体重の画面には、血漿だけを取り出す欄がない。運動研究で血漿量、水分出納、尿量を並べているのは、それぞれが違う問いに答えるからである。飲料を飲んだ後の体重の変化から、血漿の変化率を逆算する読み方は避けたい。[2][8]

水分出納とは、水分の出入りの差をみる考え方である。飲んだ量と、体に残る量は別である。健康な男性を対象にした無作為化比較試験では、飲料の条件によって総尿量に違いが出た。入ってきた量だけを記録しても、出ていく側の違いまで説明できないという、具体的な例である。男性で得た飲料間の差が18〜39歳の女性にも生じるかは、この試験だけでは判断できない。[8]

また、体の中で水分の配分が変わることと、体全体に水分が入ることは区別したい。運動後に空気圧で脚などを圧迫する研究は、組織にたまる体液と血漿量の減少を背景に、循環の回復を調べている。体液がどこにあるかという問題を、そのまま体重が何ほど増えたかという話に置き換えることはできない。[18]

ここを混ぜると、「血漿が増えたなら、その割合だけ体重も増える」という誤読になる。血漿量の変化率は、全体重に対する増加率ではない。飲料試験が示した血漿量の数字を、自分の体重に掛け算して増加分を説明するのは、測定対象の取り違えである。数字が細かいほど、何を分母にした数字かを先に見る必要がある。[8]

既存記事「運動後のヘモグロビンは汗だけで上がる?採血までの時間と血漿量を読み解く」は採血値を読む問いである。また「筋肉痛で体重が増えるのは脂肪?筋肉に残る水と体重計の変化を研究で読む」は筋肉痛に伴う変化を扱う。ここではその説明を借りて増加の原因を決めず、補水と排出が研究でどう扱われたかを追う。

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運動後に飲んだ水は、研究でも時間をかけて追っている

持久系のトレーニングを積んだランナーを対象に、難消化性のでんぷんを含む飲料と対照飲料を比較した無作為化試験がある。参加者は男性8人、女性2人の計10人で、条件の順序を無作為に変え、同じ人が両方を試す方式であった。個人の違いを減らして飲料同士を比べる設計である。女性が少ない持久系ランナーの結果を、18〜39歳の女性の日常の運動にそのまま当てはめるには限界がある。[2]

運動は最大酸素摂取量の60%に相当する走行を2時間、その後に疲労困憊までの走行テストを行うものだった。環境は約30°C、相対湿度35%である。仕事帰りに短い筋トレと散歩を組み合わせる場面とは、運動時間も暑さも違う。結果を読むときには、飲料の名前より前に、この負荷の条件を確認したい。[2]

運動後は水分不足量の150%に当たる水分を3時間かけて補う設計だった。その後の正味の水分出納は、でんぷん飲料でプラス1,636±687mL、対照でプラス1,662±697mLだった。飲料条件による水分出納への影響は認められず、血漿量や浸透圧の変化にも条件間の差はなかった。浸透圧は、水分と溶けている物質の関係をみる指標である。[2]

この結果の読みどころは、「特別な成分で体重を操作できる」という話ではない。研究では補水を行った上で、その成分に水分保持を上乗せする効果があるかを比較している。そして、この条件では上乗せが確認されなかった。両条件で水分出納がプラスでも、片方の成分が優れていた証拠にはならない。[2]

さらに、プラスの水分出納を「血漿がその量だけ増えた」と読むこともできない。研究は水分出納と血漿量を別の結果として示している。帰宅して飲んだボトルの量を、そのまま血液の増加量と呼ばないこと。それだけで、体重計に表示された増加を過剰に意味づけするのを防げる。[2]

なお、この水分出納の数値に添えられた「±」は、参加者の値にばらつきがあることも示す。平均が似ているという比較結果を、参加者全員が同じ水分量を保持したという意味に変えてはいけない。試験の平均値は自分が飲むべき量でも、帰宅後の体重が増えてよい幅でもない。飲料の優劣を調べる数値と、個人の補水を決める数値には役割の違いがある。[2]

補水の途中に測った数字と、研究が一定の観察時間を経て出した値も同じではない。論文の3時間という時間は実験手順であり、全員の水分がそこで元どおりになる時刻ではない。翌朝になれば必ず一定の体重へ戻る、といった個人用の期限をこの試験から作るべきではない。[2]

血漿量の保持と、運動成績の改善は分けて読む

別の無作為化二重盲検クロスオーバー試験では、健康な男性13人が、水またはグリセロールとナトリウムを含む飲料などを飲んだ。二重盲検とは、参加者と研究側がどの条件か分からないように比較する方法である。暑さの中で水分を多く保持するための、特殊な飲料条件を調べた試験である。18〜39歳の女性でも同じ反応になるかは、この男性の試験からは判断できない。[8]

環境は32°C、相対湿度50%。飲料1Lを40分かけて飲み、その後に30分の自転車運動を3回行い、さらに高い強度で疲労困憊まで運動した。グリセロールとナトリウムを含む飲料は水に比べて尿量を抑え、糖質の種類によっても一部に違いが出た。イソマルツロースを加えた条件の尿量は331±84gで、糖質を加えない条件の429±68gなどより少なかった。[8]

血漿量にも条件差がある。最初の運動区間では、水の条件の変化がマイナス2.2±6.7%に対し、ショ糖を加えた条件ではプラス4.3±5.4%を示した。一方、疲労困憊まで運動を続けられた時間に、飲料間の有意差はない。水分に関する指標が改善しても、この試験では運動成績の改善につながらなかった。[8]

体温の結果も単純な「水分を多く保持するほど有利」という図にはならない。グリセロールとナトリウムを含む条件では、水に比べて直腸温の上昇が大きく、局所の発汗反応は低下した。研究全体の結論は、水分出納は部分的に改善しても、体温調節反応や運動成績は改善しないというものであった。[8]

また、最初の運動区間と最後の高強度運動では、血漿量の変化を比較する場面そのものが違う。後者では、水の条件がマイナス9.1±4.4%、イソマルツロースを加えた条件がマイナス4.1±4.0%だった。ここでの差は、減少が小さかったという意味であって、どちらも運動前より増えていたという意味ではない。「血漿量を保った」という表現にも、減少を抑えた場合と増加した場合がある。[8]

帰宅後の体重が気になる人にとって、これは飲料をまねする処方ではない。血漿量、尿量、体温、運動成績は、それぞれ確かめる必要があるという実例である。水分を保持したという結果だけを取り出して、「だから回復した」「だから次の運動を足せる」と話を進めない。この試験の参加者も健康な男性に限られる。[8]

数字で読む運動後の水分

10人:でんぷん飲料を比較した持久系ランナーの試験。女性は2人である。[2]

3時間:同試験で運動後の補水を行った時間。万人に共通する回復期限ではない。[2]

プラス1,636mLとプラス1,662mL:運動後の水分出納の平均値。血漿だけの増加量ではない。[2]

マイナス2.2%とプラス4.3%:水とショ糖入りの特殊飲料でみた最初の運動区間の血漿量変化。全体重の変化率ではない。[8]

24時間:長時間走の研究が運動後の飲水と尿中ナトリウム排出を追った期間。運動終了後にも評価が続く。[20]

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宮川涼 Founder

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