冷え性の足の温度は鏡面でずれる?赤外線の反射と皮膚の冷たさを読み分ける

冷え性の足をサーモグラフィで比べるとき、画像の色や表示温度だけで改善を決めてよいのか。赤外線の反射、放射率、撮影範囲が測定に関わる理由を、人の皮膚や運動中の測定研究から読む。鏡面で何度ずれるかを決めつけず、背景と設定、冷たさの実感を分けて記録する視点を示す。

靴下を脱いだ足を温度画像で見る。昨日より赤い。足先も少し楽な気がする。そこで「冷え性が改善した」と記録したくなるが、その前に画像を撮った場所と、温度を拾った範囲を見直したい。赤外線による皮膚温の測定は、皮膚の放射率に加え、周囲の反射温度などを使って計算する測定だからだ。[16]

鏡面の近くなら必ず温度が高く出る、あるいは低く出る、と一方向には決められない。女子競歩選手の皮膚温を調べた方法研究では、反射温度への感度は使う赤外線カメラの方式でも異なった。18〜39歳の女性の日常の足の測定に、その競技中の結果をそのまま当てはめることはできない。比較には撮影条件の確認が要るが、鏡面を見つけただけで、足の冷たさを画像の誤差と片づけるのも早い。[15]

ここで扱うのは、足の冷えを測る画像の読み方である。「冷え性改善の足マッサージは向きで違う?なでた後の楽さと皮膚温を分けて読む」で扱う接触の向きの話はそちらに譲る。こちらでは、温度の変化を読む前に、何が計算に入り、どの場所の数字を比べているかを整理する。

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足の写真に見えても、温度は計算されている

サーモグラフィは、赤外線を使って表面の温度を調べる非接触の方法である。人の皮膚を測る研究でも、正確な読み取りのために放射率を知る必要があると位置づけられている。放射率とは、表面が赤外線を放射する性質を表す値だ。肌が見えていれば、設定に関係なく同じ温度が得られる、という仕組みではない。[19]

褐色脂肪組織という、熱をつくる組織の活動を調べる測定手順では、ソフトウェアが対象までの距離、皮膚の放射率、反射する室内の温度、気温、相対湿度を使って温度を計算すると説明されている。対象は健康な人のボランティアと雌のマウスで、人では首周辺を測っている。18〜39歳の女性の足の冷え性へ、そのまま適用する手順ではない。それでも、画面に出る皮膚温が、複数の入力を経た数字であることは読み取れる。[16]

日常の記録に置き換えるなら、「足の画像を保存した」で終わらず、どこで、どの設定で撮ったかも保存する発想になる。カメラと足の間だけを見ていては、反射温度や気温という計算条件が記録から落ちる。これは冷えを改善する方法ではなく、比較する記録を整えるための工夫だ。[16]

ここで、皮膚温という言葉の範囲も押さえたい。研究が扱うのは皮膚の表面の温度や、その分布である。表示された足の表面温度を、そのまま身体全体の状態の名前に置き換えることはできない。皮膚の測定を丁寧に読むことと、画面から冷えの原因を決めることは、別の作業になる。[15][19]

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鏡面の有無だけでは、ずれの向きは決まらない

反射という言葉から、洗面所の鏡に足が映り込む様子を想像するかもしれない。しかし、この問いで確かめたいのは、目で見える映り込みよりも、温度計算に反射温度が関わることだ。測定手順で反射する室内の温度が入力項目になっている以上、撮影場所を替えた前後の画像を、足だけの変化として読むのは慎重でありたい。[16]

屋外の競技中に撮影した方法研究は、その慎重さを具体的に示す。女子競歩選手18人を対象に、中波長と長波長の赤外線カメラで皮膚温を比較した研究である。18〜39歳の女性の家庭での撮影とは活動や環境が異なり、競技中の測定結果をそのまま当てはめることはできない。長波長側は、その波長帯で皮膚の放射率が高いことから、気温や反射温度への感度が低かった。反射の影響を考えるときは、周りに何があるかに加え、測定に使う波長帯も関わる。[15]

この結果から「長波長なら周囲の確認はいらない」とは読まない。感度が低いという比較は、影響がなくなるという宣言ではない。また、競技中の皮膚を撮った結果を、家庭の鏡の材質や足先の条件にそのまま当てはめることも避けたい。鏡面で温度が何度ずれるかを、この研究から計算することはしない。[15]

たとえば、運動前は自宅の洗面所、運動後は別の部屋で撮ったとする。その比較に付けたい注記は「運動後」だけでは足りない。「撮影場所も変えた」が要る。場所の変更を記録しておけば、後で数字の差を見たとき、身体の変化と測定条件の変更を同時に考えられる。反射温度を計算に使う仕組みから導ける、記録上の注意である。[16]

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放射率は肌の見た目から決めつけない

肌の色が違えば、温度画像の値も違いやすいのだろうか。この疑問を調べた成人65人の観察研究がある。18〜39歳の女性の足にそのまま当てはめるには、対象者と測定部位の違いを考慮する必要がある。上腕の内側に放射率が分かっているテープを貼り、皮膚と一緒に撮影し、両者の温度が合うように調整して皮膚の放射率を求めた。計算された平均は0.972、範囲は0.96〜0.99だった。[19]

肌の色を分類する方法と、反射光を機器で測る方法のどちらで参加者を分けても、放射率に有意な差はなかった。肌の色によって皮膚温測定の放射率が変わる、という見方をこの結果は支持していない。見える色の違いを、そのまま赤外線の測定上の違いと考えないための、人でのデータである。[19]

ただし、対象は上腕である。平均値を足裏専用の補正値として使ったり、範囲の端を個人の冷えの程度に対応させたりする読み方ではない。放射率は計算のための表面の性質であり、冷えのつらさを並べる点数ではない。小数点まで出てくると身体の成績表に見えるが、この数字の役目は別にある。[19]

同研究では、人の皮膚の放射率として0.98という値が受け入れられていることにも触れている。一方で、参加者から計算された値には幅があった。大事なのは、都合よく表示温度が上がるよう設定を動かすことではなく、何を設定して比較したかを確かめることだ。前後で放射率を変更したなら、その変更も温度差を読む材料になる。[19]

足先の点と、足全体の平均を混ぜない

反射を確認しても、まだ比較の落とし穴がある。温度を拾う場所である。競歩選手の研究では、解析対象領域、つまり画像の中で温度を集計する範囲を小さくするほど、その数字は領域全体を代表しにくくなった。足の画像なら、つま先の点を拾うのか、広い範囲の平均を拾うのかを区別する視点に当たる。[15]

同じ研究では、領域全体の平均に対して、最も高い温度の画素を使うと、中波長で1.3±0.4℃、長波長で1.2±0.3℃のずれが生じた。最も低い画素では、中波長で−1.1±0.3℃、長波長で−1.3±0.4℃だった。これは運動の効果ではなく、同じ領域をどの数字で代表させるかによる違いである。[15]

したがって、昨日は冷たい点、今日は最も温かい点を選んで、温度が上がったとする比較には無理がある。測った対象が切り替わっているからだ。画像を見てから都合のよい点を探すより、比較したい部位と集計の仕方を先に決めておく方が、数値の意味を保ちやすい。この提案は、領域の選択で結果が変わった方法研究に沿う。[15]

また、その研究で使用に適すると判断された画像だけを比べると、長波長カメラの平均皮膚温の偏りは、中波長に対して−0.1±0.6℃だった。一致の結果には、画像を選別した条件が伴っている。動いてぶれた画像まで同じ精度で使える、と読まないことも大切だ。撮影の成功と、温度の比較はつながっている。[15]

研究で比較されたカメラには、動きを捉える能力にも違いがあった。中波長側は露光と応答の時間が短く、動いている選手の画像がより鮮明で、使用可能な画像の割合も高かった。長波長側は動きが遅い場面では選択肢になるが、速い動きでは正確な測定や撮影が制限されるとされた。同じ機器であっても、静止した画像と動いている画像を無条件に同列へ置かない理由になる。[15]

足の記録でも、運動前は座って撮り、運動後は歩きながら撮ったなら、身体の変化と画像の捉え方が同時に変わっている。止まって同じ範囲を写した画像を選ぶという工夫には、この方法研究からの理由がある。ただし、競歩中の結果から家庭用機器の誤差を見積もることはしない。撮れた画像を全部残すことと、全部を比較に使うことは区別したい。[15]

数字で読む皮膚温の測定

成人65人の上腕で計算された放射率は平均0.972。足の冷えの判定値ではない。[19]

同じ研究の放射率の範囲は0.96〜0.99。肌の色で分けた群の差は有意ではなかった。[19]

競歩選手18人の測定では、解析領域を狭めると全体の代表性が下がった。[15]

領域内の最高温度の画素を選んだ場合、中波長で全体平均から1.3±0.4℃ずれた。改善量ではない。[15]

糖尿病患者50人の足底画像を使った研究では、背景を整えるカーテンの有無も解析成績に関わった。[2]

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宮川涼 Founder

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