筋トレ後の筋肉の合成は採血で分かる?全身と鍛えた場所の数字を読み分ける

背中の筋トレ後に見た「たんぱく質の合成が増えた」という数字は、鍛えた筋肉の結果なのか。安定同位体、動静脈の差、筋生検がそれぞれ何を測るかを、運動試験と栄養の研究から読む。全身の収支と筋肉の合成が一致しない例を手がかりに、測る場所と食事条件を確かめる視点を示す。

背中を引く筋トレを終え、帰りの中央線で「筋肉の合成が増えた」という研究記事を開く。血液を調べた数字なら、今日動かした背中の中まで見えているのだろうか。スマホの画面では、「全身」と「筋肉」が同じ大きさの文字で並んでいる。

答えの芯は、採血という言葉だけでは測定の範囲が決まらない、である。標識を付けたアミノ酸の動きを追って全身や特定の領域の代謝を調べる方法と、筋肉の組織を採り、たんぱく質に標識が取り込まれる量を調べる方法がある。どの方法を組み合わせたかで、数字が指す場所が違う。[4]

実際に、中高年を対象とした食事の試験では、全身のたんぱく質の収支に差があっても、筋肉の合成には群間の有意差がなかった。[1] 既存記事「筋肥大のプロテイン選びは短時間の合成で決まる?数時間と継続後の差を読む」に食品選びと継続後の評価を譲り、ここでは、その数字がそもそも体のどこを測ったものかを確かめる。

ヨガとからだの記事のイメージ写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

血液にある材料と、筋肉に取り込まれた材料を分ける

筋肉のたんぱく質合成を調べる研究には、安定同位体で標識したアミノ酸を使うものがある。アミノ酸はたんぱく質の材料であり、標識はその材料の行方を追う目印だ。測定法のレビューでは、標識アミノ酸を使って全身や特定の領域のたんぱく質代謝を評価し、さらに生検で採った組織のたんぱく質への取り込みから、その組織の合成を調べる方法が説明されている。[4]

ここで区別したいのは、血液中を動く材料を見ているのか、組織のたんぱく質になった材料を見ているのか、という点である。血液を採ったという共通点だけで、両者を同じ測定と考えることはできない。全身を流れる材料の動態と、採取した筋肉への取り込みは、研究方法の中でも別の評価として扱われている。[4]

たとえば、研究紹介に「血中アミノ酸」と書かれていたら、その後に何を算出したのかまで読む必要がある。材料の血中濃度という言葉を見て、すぐに背中の筋肉の合成量へ読み替えない。標識の動きを追った全身の代謝なのか、領域への出入りなのか、組織内への取り込みなのか。論文の測定方法は、数字に付いた住所のようなものだ。[4]

また、標識を与える手順にも違いがある。このレビューは、一定の速度で持続的に投与する方法と、まとまった量を投与する方法の特徴を取り上げている。[4] 日常の採血を受けた経験だけから、その研究の測定を想像すると大事な条件が抜ける。「採血した研究」という紹介の後ろには、標識をどう与え、どの試料を使い、どの範囲の代謝を計算したかという手順が続くのである。

濃度と流れの違いも、ここで立ち止まる理由になる。測定法のレビューが扱うのは、材料がどれだけ存在するかだけでなく、どれだけの速さで動くかという代謝の評価である。[4] 研究記事の「高かった」という言葉を読むときには、高かったのが血中の値なのか、単位時間当たりの合成なのかを確かめたい。同じ材料を調べていても、値の種類が違えば答えられる問いも変わる。検査の名前だけを覚えるより、結果の名詞と単位を一緒に残すほうが、あとで読み返したときに役立つ。

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

脚の出入りと筋肉の中身を組み合わせた運動試験

筋トレに近い具体例として、健康なボランティアを安静時と強い脚の筋力運動から約3時間後に調べた試験がある。食物の吸収が進んでいない状態で、脚の動脈と静脈のバランス測定、安定同位体のアミノ酸、太ももの外側にある外側広筋の筋生検を組み合わせた研究である。[5]

動静脈のバランスは、ある領域に入る側と出る側の血液を使って、その領域の物質の出入りを考える方法だ。ここに標識の情報を加え、さらに筋組織そのものも調べている。[4][5] 「血液で筋肉を測った」という短い紹介では、この組み合わせが見えなくなる。血液だけの話だと思って読み始めても、実際には筋肉の試料を使っていることがある。

この運動試験では、筋肉内のフェニルアラニンというアミノ酸が使われる速さと現れる速さから、たんぱく質の合成と分解を求めた。筋肉の一定量に対してどれだけ合成が進むかを表す、筋たんぱく質の分画合成率も調べている。[5] 同じ研究の中に複数の指標があるため、結果の欄に合成と書かれていても、そのすぐ隣にある単位を省いて読まないことが大切だ。

対象の場所も読み飛ばせない。これは脚の運動と脚の測定を組み合わせた試験であり、筋生検の場所は外側広筋である。[5] 「筋トレ 背中 翼」「背中 筋トレ 羽」といった言葉で背中の広がりを調べていると、筋肉という共通語だけで結果を自分の背中に移したくなる。しかし、ここで実測されたのは脚の代謝である。背中で同じ大きさの変化が起きた証明として扱うべきではない。

立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

合成が増えても、差し引きの収支とは同じでない

この試験で運動後に増えていたのは、合成だけではなかった。安静時の合成と分解はそれぞれ30±7、46±8だったのに対し、運動後は65±10、74±10だった。いずれも脚の容積100mL当たり、毎分何nmolかを表す値であり、筋肉の重さが何g増えたかを直接表す数字ではない。[5]

合成は材料をたんぱく質へ組み込む側、分解はたんぱく質がほどかれる側である。両者が同時に変わる以上、合成の数字が大きくなったことと、差し引きで残る量が同じ割合だけ増えることは別の話になる。この試験で合成と分解を分けて測っている点は、「合成が上がった」の続きを読むために欠かせない。[5]

さらに、研究者は脚の動脈へインスリンを投与し、全身の濃度を大きく変えずに、脚での作用を調べた。安静時には合成が増えたが、運動後には合成の上乗せは認められず、分解の抑制が見られた。[5] 同じ「たんぱく質を保つ方向の反応」でも、作る側の変化と壊す側の変化を分けると、説明の中身が変わる。

ここから日常の食事や運動へ持ち帰れるのは、インスリンを操作する方法ではなく、研究結果の読み方である。この試験は局所への投与を含む実験である。[5] 普段の食事のあとや背中のレッスン後にも、そのまま同じ反応が起こると決めない。何をした試験かを残したまま、合成だけでなく分解と収支にも目を向けたい。

全身の収支が良くても筋肉の合成は同じことがある

別の角度から違いを見せるのが、中高年30人を対象にした無作為化比較試験である。平均年齢は61±6歳で、食事を9時間の枠内に2回とり、たんぱく質の摂取量を体重1kg当たり1日0.8g、1.1g、1.5gの群に分けた。経口の安定同位体を使い、24時間の代謝を調べている。[1]

全身の正味のたんぱく質収支は、1.5gの群が0.8gの群および1.1gの群より高かった。一方、筋肉のたんぱく質合成には、どの群の間にも有意差が認められなかった。[1] 全身についての好ましい差と、筋肉の合成についての結果は、同じ実験の中で両立している。見出しだけなら似た意味に見える言葉が、測定結果では分かれるのである。

全身の収支の差を具体的に見ると、1.5g群と0.8g群の平均差は、除脂肪量1kg当たり1日0.55gで、95%信頼区間は0.17〜0.93gだった。[1] 除脂肪量はここで差を表す基準に使われた量であり、この差を、そのまま鍛えた背中に増えた筋肉の重さとして読んではならない。全身の収支を表す結果を、局所の筋肉の増加量へ変換することになるからだ。

この研究の食事回数や摂取量は、実験の条件である。若い女性が背中を鍛えた日の最適量を、そのまま指定する数字ではない。筋肉の合成で有意差がなかったことも、すべての条件で同じ反応だと証明したことにはならない。[1] 読み取るべき焦点は、全身の正味収支の結果を、筋肉の合成の結果として紹介しないことにある。

数字で読む測定の範囲

約3時間後:脚の筋力運動後に、動静脈の測定と筋生検を組み合わせて評価した時点である。[5]

65±10と74±10:運動後の合成と分解の値。単位は脚容積100mL当たり毎分nmolである。[5]

30人、平均61±6歳:食事回数をそろえて全身の収支と筋肉の合成を比較した試験の対象である。[1]

0.55g:除脂肪量1kg当たり1日の全身収支の群間差。95%信頼区間は0.17〜0.93gである。[1]

46人:毛細血管と筋肉の特徴、安静時の合成率との関係を調べた健康な高齢男性の人数である。[8]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

author avatar
宮川涼 Founder

1

2

関連記事

ご体験予約