筋トレの腹筋は下ろす局面だけでよい?起こす動きの代わりを筋力評価から考える

腹筋を起こせない日は、下ろすネガティブ動作だけで十分なのか。健康な成人の腹筋トレーニング試験から、筋力と持久力、運動中の筋活動を分けて考える。回数や頻度を増やしても最大の力が伸びなかった結果と、全身の運動で得られた成果を読み、練習の優先度と記録の見方を整理する。

マットに座り、背中を床へ戻すことはできるのに、起き上がろうとすると止まる。そこで「下ろすところだけ練習すればよいのでは」と考える。腹筋を起こせない日の練習を、戻る動きだけで組み立ててよいのだろうか。

下ろす局面も評価する価値はある。しかし、「下ろす動作で筋肉が働く」と「下ろすだけで必要な筋力が伸びる」は別の問いである。腹筋運動中の筋活動を測った研究と、練習を続けた後の筋力を測った試験を分けて読む必要がある。[19][6][7]

先に答えを置くと、ネガティブ腹筋だけを万能な方法として優先する根拠にはならない。健康な成人の試験では、腹筋運動の頻度を増やしても筋力が有意に改善しなかった結果がある。選ぶべきは、名前の強そうな方法より、自分が伸ばしたい能力と、その変化を確かめられる練習である。[6][7]

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下ろす局面の働きと、下ろすだけの成果を分ける

ここでいうネガティブとは、腹筋運動で体を戻しながら力を出す局面を指す言葉として使う。研究では、求心性、遠心性、等尺性という異なる筋収縮を区別して評価している。起こす動き、戻す動き、姿勢を保つ働きを、ひとまとめの「腹筋が強い」に押し込めないための区分である。[19]

ただし、見た目に体が下がる動きなら、種目が違えば評価も変わる。腹直筋と外腹斜筋の活動を比べた研究では、脚を動かす課題と動的な上体起こしとで、相対的に活動の大きい筋肉が違った。動く方向だけでなく、どの動作をしているかをそろえることが大切になる。[19]

既存の「女性の腹筋は下ろす時もゆっくり?戻る速さと負荷、きつさの違いを研究で読む」には、戻る速さの論点を譲る。ここでは秒数の選び方よりも、下ろす局面だけに練習を絞ってよいのか、その判断に何の測定を使うかを考える。

たとえば、今日は床へ静かに戻れたという記録は、今日の動作についての記録である。それを長期の筋力向上という評価に進めるには、練習の前後で同じ力の課題を比較する段階が要る。運動中の電気的な活動と、介入後の最大の力は、研究でも別々の指標として扱われている。[19][6]

また、「できない動作の代わり」と「最も効果が高い練習」も同義ではない。起き上がれないから戻す局面を練習候補にすることと、他の局面を省いたほうがよいと決めることの間には距離がある。本記事で紹介する腹筋の介入試験は、求心性と遠心性の筋力を成果として測っている。成果の測定に遠心性があることを、遠心性だけで練習した証拠に読み替えてはいけない。[6][7]

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腹筋運動を増やしても最大の力が伸びない試験がある

健康な男女を対象とした無作為化比較試験では、外から重りなどの抵抗を加えない腹筋運動で、最大の力が伸びるかを調べた。参加者は19〜40歳の71人で、開始時の腹筋力をそろえたうえで、腹筋運動をしない群、週3日行う群、週6日行う群に分けられた。研究期間は11週間であった。男女を合わせた結果であり、18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、性別と年齢の条件を分けて考える必要がある。[6]

結果は、週3日でも週6日でも、求心性と遠心性の筋力に有意な改善はなかった。研究者は、この試験で用いた運動は、それらの筋力を有意に高めるには十分な刺激ではなかったと考察している。腹筋の日をカレンダーに増やすだけでは、最大の力の伸びは約束されなかったのである。[6]

これは腹筋運動全般が無意味だという結論ではない。調べたのは、特定の運動を決められた頻度で続けたときの、最大の力としての腹筋力だ。違う負荷、違う動作、違う成果まで一度に否定した試験としては読めない。とりわけ「遠心性の筋力が伸びなかった」と「遠心性の練習だけは必ず効く」を混ぜると、結果と提案がすれ違う。[6]

仕事帰りに腹筋を続けていて、起き上がれる回数は記録しているが、負荷はずっと同じ。その記録から分かることを考える際には、この試験がよい手掛かりになる。実施日数は練習の量を示すが、筋力の変化そのものではない。週に何度行ったかと、前よりどの力が伸びたかを別の欄に置きたい。[6]

日数を増やしてなお成果が見えないとき、すぐ自分の努力不足と決める必要もない。この研究では、実際に頻度を違えても筋力の有意な向上にはつながらなかった。見直す対象には、本人の意欲だけでなく、測る能力と運動の刺激が合っているかも入る。[6]

研究を自分の練習に重ねるなら、開始時の条件にも注目できる。この試験では、開始時の腹筋力を対応させてから群を分けている。単に力の強い人が多い群と弱い人が多い群を比べる形を避けたうえで、頻度を変えているのである。結果を読むときも「熱心な人ほど強かった」という印象の比較とは区別したい。[6]

また、外から抵抗を加えないという方法の条件を残すことも必要だ。この結果を受けて「週に何度やっても無駄」と読むと、負荷の条件が消えてしまう。反対に「もっと日数を増やせば解決する」と読むと、頻度を増やしても有意な改善がなかった結果を見落とす。運動日数、運動内容、評価項目をひとまとまりで読む試験なのである。[6]

起き上がる回数と、機械で測る筋力は同じか

別の無作為化比較試験は、健康な79人を対象に、腹筋の持久力を狙う方法と抵抗を使う筋力強化を比較した。男性45人、女性34人で、平均年齢は23.5歳、標準偏差は5.8歳だった。開始時と12週間後に、機械を使う検査と床で行う検査を組み合わせて評価している。18〜39歳の女性にそのまま当てはめる際には、女性だけの結果ではなく男女を合わせた比較である点に留意したい。[7]

機械は等速性筋力測定装置と呼ばれ、動きの速度を一定にして力を測るものだ。床の検査には、フロントプランクの保持、角度をつけた座位、上体起こし、手持ちの測定器による検査が含まれた。同じ腹筋の評価でも、姿勢を保つ課題、動作を繰り返す課題、機器で力を測る課題が並んでいたのである。[7]

ここで注目したいのは、結果の読み分けだ。上体起こし、手持ちの測定器による腹直筋と腹斜筋の測定、機械で測る遠心性の最大トルクには、群内の変化を調べる解析で有意な結果があった。一方、介入群と日常活動を維持する対照群の間には、成果の有意な差がなかった。[7]

「始める前より良くなった」と「その方法のおかげで対照より良くなった」は、同じ主張ではない。前者だけを取り出すと、持久力型でも筋力型でも十分に効果が出たように見える。しかし、試験の結論は、12週間の介入が対照群を上回る群間差を生まなかったというものだ。[7]

トルクとは、回転させる力の働きを示す指標である。上体起こしの回数が増えることと、機械で測る最大トルクが増えることを、同じ数直線に置かないほうがよい。回数で確かめたい人と、最大の力を伸ばしたい人では、成果の記録を分ける余地がある。腹筋の成績表は、腹筋という教科名だけでは足りない。[7]

こうした試験を読むと、ネガティブ腹筋の優先度も変わって見える。まず確かめたいのは下ろす練習の特別さではなく、今の練習で何が変わったと言いたいかである。測定する能力を決めずに方法だけ選ぶと、上体起こしの達成感を遠心性の最大筋力の改善として扱うことにもなりかねない。[6][7]

群内と群間の違いは、練習記録を見る場面にも関わる。ある運動を始めて上体起こしの記録が変われば、それは本人にとって確認したい出来事だ。ただ、その記録だけから別の方法より優れていると決めるには、比較する相手の条件が足りない。研究では、普段の活動を維持する人の経過と並べることで、方法にどこまで成果を帰せるかを検討している。[7]

この試験の結果は、持久力と筋力を狙う方法のどちらかを勝者にする話でもない。群間差がなかったという結果を残すと、名称だけで優先順位をつけることに慎重になれる。ネガティブという名前も同じで、方法の印象を先に決めず、対象、練習、検査の組み合わせから考える姿勢につながる。[7]

数字で読む腹筋トレーニングの評価

71人・11週間:外部抵抗を加えない腹筋運動の頻度を比較した試験である。[6]

週3日と週6日:どちらでも求心性・遠心性筋力の有意な改善はなかった。[6]

79人・12週間:持久力型と筋力型の介入で、対照を上回る群間差はなかった。[7]

35人・11種目:男性大学生の腹筋運動中の筋活動を比較した研究である。[19]

13週間・週2回:若い男性の全身トレーニングで成果を評価した期間と頻度であり、腹筋だけの処方ではない。[8]

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宮川涼 Founder

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