BCAAは減量の味方か、肥満の印か 分岐鎖アミノ酸をめぐる二つの顔

BCAAを飲めば減量中の筋肉を守れるのか。一方で、血中BCAAが高い人ほど肥満やインスリン抵抗性と結びつくのはなぜか。132人の補給試験、減量食での血中濃度の変化、食事の摂取量を調べた相反する研究をたどり、サプリの上乗せ効果と体内の目印を分けて考える。

132人が参加した減量試験では、BCAAを追加しても全身の除脂肪量を保つ効果は示されなかった。[18] 筋肉のための補給という説明は頼もしく聞こえるが、脂肪以外の体の重さが実際に保たれたかは、補給しなかった人との比較で決まる。食事を減らす日に足す価値を、比較試験から考えたい。

さらに別の研究では、血液中のBCAAが高いことが、肥満やインスリン抵抗性と結びついている。[1] 筋肉のために足したい成分が、代謝の状態を知らせる目印にもなる。同じ名前でも、飲んだ量を調べる話と、体内で測った濃度を調べる話とでは、問いの向きが違う。

たんぱく質補給全般の話から、ここではBCAAに焦点を絞る。本記事では、BCAAサプリの補給、食べ物からの摂取、血中の値という区別を軸に、減量との関係を追う。

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食べるBCAAと、血液で測るBCAAを分ける

BCAAは分岐鎖アミノ酸の略で、ロイシン、イソロイシン、バリンを指す。体内で合成できず、食事から得る必須アミノ酸にあたる。[13] BCAAの分解経路がうまく働かないことは、肥満や糖尿病に伴う代謝異常を説明する候補として研究されている。[1] 口から入る量だけで血中の値を説明しようとすると、体内で処理する側が抜け落ちる。

ここでいうインスリン抵抗性は、インスリンの働きに対する体の反応が鈍い状態を指す。レビューでは、その状態の人や糖尿病の患者で血中BCAAの上昇が繰り返し観察されている一方、上がる根本の理由は不明だと整理されている。[1] 高い値を見つけたことと、その値を高めた原因を突き止めたことは、別の到達点なのである。

この区別は、成人を追った食事の研究にも表れる。中国の成人について、食べたBCAAと血清中のBCAAを調べた研究では、総摂取量と血中濃度の相関係数は0.12だった。[15] 同じ方向の関連はあっても、摂取量から血中濃度がそのまま決まるような強い関係ではなかった。摂取量の調査と採血は、それぞれ食べ方と体内の状態を映す。

この研究は食事を一度だけ尋ねたものでもない。1年間に季節ごとの食事調査を行い、それぞれ3日分を聞き取って摂取量を評価した。[15] それだけ食事を丁寧に集めても、血液の値との関係は限定的だった。袋の表示は摂取する量を示すが、体の中でどう処理されるかまで印刷してはくれない。

動物実験から考えられる仕組みもある。BCAAの分解経路を変えると糖の代謝が変わることが示され、分解を促すことは将来の治療戦略の候補とされている。ただ、人での組織ごとの分解を統合した理解はまだ十分でなく、裏づけは動物のほうに多い。[1] 研究の焦点は、分解を担う組織の働きと糖代謝とのつながりにある。

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筋肉を守る補給は、減量試験で上乗せされたか

サプリを足す価値は、同じ減量に取り組んだ人を補給の有無で比べると見えやすい。中国人の成人132人を対象とした試験は、男性63人、女性69人、年齢21〜45歳、体格指数BMIが25〜36の人を集めた。[18] 食事の摂取エネルギーを減らす条件のもとで、BCAAの追加が体の組成と代謝にどう働くかを調べている。

参加者は性別とBMIを考慮して無作為に割り付けられた。比較したのは、標準的なたんぱく質の食事に偽の補給品を加える群、同じたんぱく質の食事にBCAAを加える群、高たんぱく質の食事に偽の補給品を加える群である。[18] 単に「BCAAを飲んだ人が痩せた」と眺めるより、追加した成分の差を問いやすい設計だ。

食事は1日500kcalのエネルギー不足となるように設計され、標準たんぱく質の群はエネルギーの14%、高たんぱく質の群は27%をたんぱく質からとった。BCAA群の追加量は体重1kg当たり1日0.1gだった。[18] 食事のエネルギー不足を共通にし、補給とたんぱく質の割合の違いを比べた。

最初の16週間は食事と補給品が提供され、その後8週間は体重維持の期間として補給品だけが提供された。[18] 食事まで支給される減量期と、食事の提供がなくなる維持期が続く。試験の「期間」を読む際には、同じ支援がずっと続いたと考えず、何が提供されていたかにも目を向けたい。

減量期の体重、脂肪量、腹囲は、どの群でも同程度に有意に減少した。報告された減少率は体重7.97%、脂肪量13.8%、腹囲7.27%である。[18] BCAA群にも変化はあったが、対照群にも変化があった。この数字をBCAA単独の減量効果として広告の見出しに抜き出すと、食事による減量という共通条件が消えてしまう。

除脂肪量の減少は、BCAA群4.39%、対照群5.39%、高たんぱく質群3.67%で、群の比較のP値は0.06だった。[18] 並んだ平均値には差が見えるが、統計上は明確な群間差に届かなかった。著者らの結論も、BCAA補給は減量中の除脂肪量を保持せず、高たんぱく質の食事のほうが有利な可能性がある、というものだった。[18]

局所の結果には違う表情もある。BCAA群ではふくらはぎの筋肉の体積が3.4%増え、筋細胞内の脂質はBCAA群と高たんぱく質群で減っていた。[18] 筋細胞内脂質の減少率は、BCAA群17%、高たんぱく質群18%で、有意な変化だった。[18] 局所の筋肉にはこうした変化があり、全身の除脂肪量には保持効果が示されなかったという組み合わせである。

代謝の面でも、インスリン感受性、つまりインスリンへの反応のしやすさや、その他の代謝指標に群間差はなかった。[18] 筋肉と代謝の両面を測ったこの試験では、補給による全身の利益は確認されなかった。

維持期にも除脂肪量が追跡された。8週間の変化はBCAA群1.03%、対照群1.58%、高たんぱく質群−0.002%だった。群間比較のP値は0.04で、対照群と高たんぱく質群の差は有意だった。[18] つまり、減量期には高たんぱく質食が保持に有利な可能性があった一方、維持期には対照群より除脂肪量の戻りが小さかった。[18] 減量期と維持期では、食事の提供の有無も異なる。たんぱく質の割合だけを見て、減量の開始から維持まで一貫して優れていたと読むと、この逆向きの結果を取り落とす。体重を落としている間の減少幅と、落とした後の回復幅を分けて評価したい。

血中BCAAが下がった減量で、何が一緒に動いたか

サプリを追加する試験から、減量に伴う体内の変化へ視点を移そう。POUNDS Lost試験の参加者184人を扱った解析では、2年間、血漿中のBCAAと肝臓や腹部の脂肪を繰り返し測った。[9] 血液中の値が変わった人で、脂肪の分布や代謝がどう変化したかを見た研究である。

総BCAAの低下は、肝脂肪の目印となる肝臓の密度の改善や、内臓脂肪、皮下脂肪、腹部の総脂肪の減少と関連していた。[9] 同じ「脂肪」でも、腹部で測った量と、肝臓の指標を一括りにせず、それぞれで関連が認められたと読む。

BCAAの低下は、インスリン、インスリン抵抗性の指標、中性脂肪の低下とも、減った体重の量とは独立して関連していた。[9] 体重だけでは説明しきれない代謝の情報を持つ可能性がある。ただし、独立した関連とは統計解析で体重減少を考慮しても関係が残ったという意味だ。BCAAだけを操作した試験になったわけではない。

食事のたんぱく質も、この関係を修飾していた。6か月時点では、高たんぱく質の食事をとる参加者の中で、総BCAAの減少が大きい人ほど肝臓の密度の増加が大きかった。[9] 「たんぱく質をとると必ず血中BCAAが上がり、脂肪が増える」という単純な筋書きでは、この結果を扱いにくい。食事の成分と体内の濃度を別々に見る意味が、ここでも現れる。

別の減量研究では、4kg以上減量した500人の血液を開始時と6か月後に調べている。BCAAとその関連代謝物をまとめた因子は、減量量を考慮してもインスリン抵抗性の改善と関係し、別の22人の集団でも検証された。[12] これは、誰の代謝が減量に反応しやすいかを予測するための研究である。BCAAを高めることを目標にした研究とは、目的が違う。

数字で読むBCAAと減量

132人:食事による減量にBCAAの補給を加える試験の参加者数。[18]

16週間と8週間:同じ試験の減量期と、その後の体重維持期。[18]

184人・2年間:血中BCAAと肝臓・腹部の脂肪の変化を調べた解析。[9]

0.12:食事由来の総BCAAと血中濃度の相関係数。摂取と濃度は弱い関連にとどまった。[15]

12人・7日間:BCAAを制限した食事で血中濃度を下げられるかを調べた予備的な試験。[20]

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宮川涼 Founder

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