心肺機能を鍛えるランニングに跳ぶ練習を足す?酸素の節約とタイムの違いを読む

心肺機能を鍛えるランニングに跳ぶ練習を加えると、同じ速さで使う酸素は減るのか。ランニングエコノミーを調べた比較試験から、通常の筋トレとの違い、最大酸素摂取量や走行タイムとの関係を読む。走り慣れた人の結果を初心者へそのまま当てはめず、追加練習を考える際の見方を整理する。

走るための練習なのに、その場で跳ぶ時間を作る意味はあるのか。いつもの道を走る距離を延ばす以外にも、練習を変える選択肢がある。走り続ける競技のために、その場で跳ぶ。少し遠回りに見えるが、普段のランニングにジャンプを加え、同じ速さで走る際の酸素の使い方を調べた試験がある。[6]

答えの芯は、跳ぶ練習で走行時の酸素コストが改善する可能性はあるが、それをそのまま「心肺機能が上がった」「記録も縮まった」とは呼べない、ということだ。一般の長距離ランナーを対象とした試験では走る効率が改善しても最大酸素摂取量は変わらず、中年の市民ランナーの試験では酸素コストが改善しても走行タイムは変わらなかった。[1][6]

既存記事「スクワットでランニングは楽になる?走る練習とは別に育つ脚の力を研究で読む」には、脚の力を育てる練習全般の問いを譲る。ここで比べたいのは、跳ぶ練習を追加することの意味と、その成果を酸素量・跳躍・タイムのどこで判断するかである。歩調を変える工夫や靴の違いも扱わず、練習を続けた後の変化に絞る。

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同じ速さの酸素コストは、心肺機能の上限とは別である

ランニングエコノミーとは、最大能力より低い強度で走るときの酸素コストで捉えられる走行の経済性だ。同じ速さに必要な酸素が少なくなれば、経済性が改善したと読む。これに対し最大酸素摂取量は、最大限に酸素を取り込む能力を示す指標である。両者は同じ試験で別々に測定され、異なる変化を示すことがある。[6]

ここを分けると、検索窓の「心肺機能を鍛える」の意味も整理しやすい。取り込める酸素の上限を伸ばしたいのか、いつもの速さで必要な酸素を減らしたいのか。走りを良くしたい気持ちは共通でも、研究が答える場所は違う。ジャンプを加えた試験で確かめられたのは、上限が変わらないまま走行の経済性が改善する組み合わせだった。[6]

この違いは、大きな研究の整理でも現れる。中長距離の持久系選手を扱ったアンブレラレビュー、つまり系統的レビューをさらにまとめた研究では、筋力トレーニングの追加は走行の経済性に好ましい効果を示した。一方、最大酸素摂取量を調べたメタ分析では有意な変化が認められなかった。対象は男女の中長距離持久系選手であり、18〜39歳の女性でも競技経験が異なれば、そのままの適用は慎重に考える必要がある。脚への補助練習の成果を、酸素を取り込む上限の変化だけで判定すると取りこぼしが生じる。[2]

ただし、この整理に含まれる筋力トレーニングには、高い負荷を扱うもの、爆発的に力を出すもの、跳ぶ動作を使うものがある。全体の結論を、あらゆるジャンプの効果だと言い換えることはできない。ジャンプを選ぶ理由を考えるには、何と比較した試験かまで降りて見る必要がある。[2]

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跳ぶ練習を足した試験では何が変わったか

Turnerらの無作為化比較試験では、普段から走るが高度な競技訓練は受けていない長距離ランナーが対象となった。参加者は18人、平均年齢は29歳である。両群とも通常のランニングを続け、一方だけが6週間のプライオメトリックトレーニングを追加した。ここでいうプライオメトリックは、跳躍などを用いる練習を指す。男女を含む走り慣れた集団の結果なので、18〜39歳の女性一般へそのまま当てはめるには練習歴の違いを考える必要がある。[6]

評価したのは平らなトレッドミルを走る際の経済性であり、女性と男性では測定する速度が異なっていた。結果は追加群で改善し、最大酸素摂取量には変化がなかった。単に「跳んだら体力がついた」という話ではなく、通常の走る練習を両群で続けたうえで、別の刺激を加えた比較として読むべき結果である。[6]

この研究では経済性を、一定の酸素量でどれだけ進めるかという向きの指標でも示している。複数の速度を平均した値は追加群で5.14から5.26へ、対照群で5.10から5.06へ変化した。単位はm・mL⁻¹・kg⁻¹であり、この表し方では数値が大きい方向が改善になる。酸素コストを少なくするという説明を、進める距離の側から表した数値だ。[6]

数字を見るときには、指標の向きを確認したい。「前より数字が増えた」だけでは、酸素を多く使ったのか、同じ酸素で長く進めたのかが分からない。経済性という同じ言葉でも、論文が採用する表現に合わせて読む必要がある。走る時計の表示をそのまま研究の指標に重ねないことが、結果を誤解しない出発点となる。[6]

また、この試験では下肢の弾性エネルギーの蓄積・再利用を間接的に調べる跳躍検査も行われたが、その能力が改善したことを示す変化は得られなかった。走行の経済性は良くなった。それでも「脚がばねのようになったからだ」と原因まで決めることはできない。効果を示す結果と、その仕組みを証明する結果は別なのである。[6]

通常の筋トレと比べると、跳ぶ方が優れているのか

Berrymanらの無作為化比較試験は、ある程度から十分に鍛えられた男性の持久系ランナー35人を対象にした。全員が同じ持久トレーニングを8週間続け、追加練習なしの群、跳ぶ練習を行う群、重りを使い筋肉を縮める動作に絞った群を比較した。補助練習は週1回で、介入群同士の量と強度がそろえられた。男性の持久系ランナーの比較であり、18〜39歳の女性に同じ優劣が成り立つかは別に検証する必要がある。[5]

走行コストは跳ぶ群で218から203、重りの群で207から199mL・kg⁻¹・km⁻¹へ低下し、対照群では変わらなかった。この試験では跳ぶ群の低下がより大きかった。両方を「脚を鍛える」で一括りにしても、使う方法によって結果が違う可能性を示している。[5]

一方、Eiharaらの中年の市民ランナー20人を対象とする無作為化比較試験では、違う景色が見える。通常のランニングに加え、跳ぶ群と抵抗運動の群がそれぞれ週2回、10週間練習した。跳ぶ群には反動を使うジャンプ、連続的な跳躍、ハードルを越える動作、台からの着地を伴うジャンプが含まれた。比較群ではレッグプレスなどが使われた。中年の市民ランナーの結果を18〜39歳の女性へそのまま当てはめるには、年齢と練習歴の差を考慮する必要がある。[1]

この試験では時速8〜12kmの酸素コストが両群で2.0%改善し、群間に有意な差はなかった。したがって「ジャンプは筋トレより必ず走りに効く」とは言えない。男性の持久系ランナーを調べた試験と、中年の市民ランナーを調べた試験では、対象も練習内容も期間も異なる。[1][5]

ここで片方を正解、もう片方を例外として片付けると、読者が自分の状況へ当てはめる手掛かりが消えてしまう。比較に使われた抵抗運動も同じ内容ではない。重りを使う練習全般に対して、ジャンプ全般が勝ったという対決ではないのである。どんなランナーが、何を続け、どの方法を追加したかをひと組で受け取るのが妥当だ。[1][5]

中年の試験では、抵抗運動群は測定した各種目の最大筋力が19.0〜21.1%増えた一方、跳ぶ群で有意に増えたのはレッグカールの8.5%だった。それでも走行の酸素コストに群間差はなかった。この比較では、筋力が改善した種目の数に違いがあっても、走行コストの改善には有意な群間差がなかった。[1]

比較の条件をもう少し見よう。男性ランナーの試験で採用された重りの練習は、筋肉を縮める局面を使う方法だった。中年ランナーの試験では、レッグプレス、レッグカール、カーフレイズを用い、最大挙上重量に対する割合で負荷を設定していた。「抵抗運動と比較した」という紹介だけでは、この違いは見えなくなる。同じ比較相手だったかどうかを確認してから、優劣の結論を並べたい。[1][5]

さらに、男性ランナーの試験では、介入前の走行コストとその変化との間に関連が認められた。出発点の違いにも目を向ける必要がある結果だ。ただし、この関連だけから、酸素を多く使う人ほどジャンプを選ぶべきだという処方は導けない。研究内で見られた関連と、個人に方法を振り分ける判断は、同じものではない。[5]

中年の試験でも、カーフレイズの最大筋力の変化と酸素コストの変化に関連があった。研究者は足首で地面を押す方向の力の重要性を示唆しているが、関連があったことは、その力だけが改善を引き起こした証明ではない。跳躍能力、筋力、走行コストを複数測っているからこそ、全部が同じように連動するという単純な説明を避けられる。[1]

数字で読む跳ぶ練習と走行の経済性

18人・6週間:通常のランニングに跳ぶ練習を加え、経済性が改善した比較試験の規模と期間である。[6]

35人・8週間:男性ランナーで、跳ぶ練習と重りを使う練習を比べた試験である。[5]

218から203mL・kg⁻¹・km⁻¹:その試験の跳ぶ群で測られた走行コストの変化である。[5]

2.0%:中年の市民ランナーで認めた酸素コストの改善で、跳ぶ群と抵抗運動群に有意な差はなかった。[1]

5km:中年の試験でタイムが有意に変わらなかった距離であり、酸素コストの改善とは結果が分かれた。[1]

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