心肺機能にマッスルメモリーはある?初めて鍛える時と再開後の適応を読む

久しぶりの運動で息が上がると、昔鍛えた体力は残っていないのかと気になる。心肺機能のマッスルメモリーを、人の片脚トレーニング、休止後の選手、マウスの分子研究から読む。筋肉に変化が残ることと、持久力が早く戻ることを分け、再開時に昔の記録をどう扱うかを考える。

久しぶりに走り始めた公園で、以前の折り返し地点より手前から息が上がる。「体は覚えているはず」と思ったのに、脚より先に呼吸が忙しい。そこで知りたいのは、昔の運動歴に今も意味があるのか、ということだろう。

答えの芯は、持久的な運動の履歴が筋肉などの分子反応に影響する可能性はあるが、人の心肺機能が初回より早く戻るかは、まだ確かな答えがない、である。人の片脚トレーニング研究では一貫した転写の記憶は確認されず、マウスの研究では記憶を支えうる変化が報告されている。対象と測定したものが違うため、両者を同じ答えに丸められない。[3][14]

既存記事「有酸素運動の頻度を減らしても体力は保てる?持久力を維持する負荷と条件を読む」には、運動を減らしながら保つ問いを譲る。ここでは、いったん休んでから鍛え直すとき、初めて鍛えるときと何が違うのかを追う。昔の自分との再会に、体力の即日配送までは頼めない。

ヨガとからだの記事のイメージ写真 立川駅徒歩1分年中無休の溶岩ホットヨガスタジオ

「覚えている」を何で確かめるか

マッスルメモリーという言葉からは、以前できた動作や筋肉の大きさを思い浮かべやすい。しかし持久的な運動の研究で問われる記憶には、再トレーニングへの適応が以前の運動によって変わる現象が含まれる。マウスを用いた研究では、この観点から筋肉の代謝や成長への反応が調べられている。[14]

ここで分けたいのは、休んでも何かが残ることと、再開した後の変化が大きいことだ。さらに、それが運動テストの成績として現れることは別の問いになる。人の片脚研究は筋肉の遺伝子の働きを、選手の休止研究は走るテストの成績を調べている。測る場所が違えば、「記憶があった」という言葉の中身も変わる。[3][17]

たとえば、運動後の筋肉で特定の遺伝子の働きが強まったとしても、その結果だけで駅まで楽に走れるようになったとは判断できない。反対に、走る成績が戻っても、遺伝子の働きを調べずに分子の記憶が原因だったと決めることはできない。分子反応を扱う研究と実際の運動能力を扱う研究は、互いに補い合うが代用品ではない。[3][14][17]

記事を読むときは、「何が残ったのか」「再開時に何が変わったのか」「初回との比較があるのか」を順にたどるとよい。以前から鍛えていた人が再開して改善した、だけでは、初めて取り組む人より速い適応だったかは分からない。これは言葉の細かさではなく、昔の運動歴から今の予定を立てるための区別である。[3][17]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

人の片脚実験では、一貫した記憶を確認できなかった

この問いに直接近いのが、Lindholmらによる人の持久的トレーニングの介入研究だ。参加者23人が片脚を3か月鍛え、その9か月後、同じ参加者のうち12人が両脚を鍛える次の期間に進んだ。以前に鍛えた脚と鍛えていない脚を比べられる設計である。18〜39歳の女性の全身の心肺機能が戻る速さへ、この片脚の結果をそのまま当てはめることはできない。[3]

両脚の筋肉から各トレーニング期間の前後に採取した試料を調べ、計119の試料で遺伝子の働きを解析した。ここでいう転写とは、遺伝子の情報を読み出す過程である。解析では、遺伝子から生じる異なる型の転写産物も区別している。同じ遺伝子という看板の下にも、異なる形の情報がある。[3]

最初の注目点は、運動への反応自体は広く見つかったことだ。トレーニングによって3,404の遺伝子アイソフォーム、つまり同じ遺伝子由来の異なる型の発現が変わり、主に酸素を使うエネルギー産生に関係していた。54の遺伝子では、異なる型が逆方向に変化した。遺伝子ごとに増えたか減ったかだけを見れば、この違いは見落としかねない。[3]

だが、運動に大きく反応することと、休止後もその違いが残ることは同じではなかった。9か月の休止後には、以前に鍛えた脚と鍛えていない脚の間で、トレーニングに由来する転写産物全体の違いは検出されなかった。繰り返しのトレーニングへの生理的・転写的な反応に違いはあったものの、持久的トレーニングによる一貫した転写の記憶を裏付ける証拠は得られなかった。[3]

この結果を「過去の運動は無意味だった」と読むのは行き過ぎだ。調べたのは、この期間と方法で比較した筋肉の転写の記憶である。一方、「人でも筋肉が確実に覚えていて、再開すればすぐ戻る」という説明にも使えない。運動で多くの変化が起こるという肯定的な結果と、記憶について一貫した証拠がなかったという結果を、同時に受け取る必要がある。[3]

この実験で片脚を使った理由も、結果の意味を考える助けになる。違う人同士を比べるのではなく、同じ人の以前に鍛えた脚と、鍛えていない脚を比較している。参加者が再び研究に加わったという事実だけではなく、脚の履歴を分けて調べた点に、この問いへの近さがある。ただし、全身で行う持久的運動の能力を、そのまま左右の脚の比較に置き換えることはできない。[3]

また、次の期間に進んだのは初回の参加者の一部だった。最初の23人に対して、再び鍛えたのは12人である。研究を読む際には、最初の人数を再開後の結果の人数として扱わないようにしたい。筋肉の試料は119あっても、それは119人を調べたという意味ではない。試料の数、参加者の数、比較できた期間は、それぞれ違う情報なのである。[3]

マウスの筋肉では、代謝の反応に履歴が見えた

別の角度から記憶を示唆するのが、Weidenhamerらのマウス実験である。通常の食餌または肥満を促す高脂肪食の条件で、運動、休止、再トレーニングの各4週間を設定した。食餌条件も含め、過去の持久的運動が再開後の筋肉にどう影響するかを調べた研究だ。対象はマウスであり、18〜39歳の女性にも同じ適応が起こるかは、人を対象とする検証が必要になる。[14]

この実験では、最初のトレーニングで大きくなった筋線維の断面積が休止中に元へ戻り、再トレーニングで再び回復した。再開時の自発的な走行量が少なくても、筋肉の成長が強められる結果が得られた。外から見える筋肉の大きさが戻ったからといって、履歴による反応の違いは残りうる、という見方につながる。[14]

筋肉の内部では、ミトコンドリアの酸化的リン酸化に関係する遺伝子群の働きが強まっていた。ミトコンドリアは細胞のエネルギー産生に関わる構造で、酸化的リン酸化はそのエネルギーを作る仕組みの一つだ。この実験では関連するたんぱく質や長鎖脂肪酸の酸化能力にも変化がみられ、再トレーニング後1週間にもクエン酸合成酵素の活性が持続していた。[14]

重要なのは、筋線維の大きさ、遺伝子の働き、たんぱく質、酵素の活性という異なる層を調べていることだ。単に「再開して走った」だけでなく、筋肉の代謝の仕組みがどう応じたかを重ねて見ている。こうした結果は、以前の運動が再開時の反応を準備する可能性を支える。[14]

ただし、研究の中心はマウスの筋肉の代謝と成長である。人の最大酸素量がどれだけ速く戻るかを示す数値としては使えない。また、食餌条件によって遺伝子の働きには大きな重なりがあっても、たんぱく質の量には違いがみられた。細胞の中でも、遺伝子の働きとたんぱく質の量は別々に確かめる必要がある。[14]

人の片脚研究とこの実験は、片方が正しく片方が誤りという関係ではない。動物種、休止期間、調べた指標が異なる。人では転写の記憶が一貫しなかったという結果を保ったまま、マウスでは代謝の記憶を支える結果がある、と並べるのが適切だ。[3][14]

食餌条件を含むこの実験からは、再開後の適応を「昔鍛えたから」の一言だけで説明しない姿勢も学べる。遺伝子の働きとたんぱく質の量の結果がそろわない部分があったため、ある指標の変化を見つけても、代謝全体については別に検討する必要がある。記憶を示す研究ほど、何を記憶の証拠にしたかまで読む必要がある。[14]

再開後の筋肉の成長を見た結果から、初回より心肺機能の伸びが大きいとまでは読み進めない。研究が測った変化の名前を、そのまま保つことが肝心だ。[14]

数字で読む持久的運動の記憶

23人が片脚を3か月鍛えた人の介入研究で、初回の適応を調べた。[3]

9か月後には12人が両脚のトレーニングに進み、以前の履歴による違いを検討した。[3]

3,404の遺伝子アイソフォームがトレーニングによって変化したが、これを記憶の数とは呼べない。[3]

各4週間の運動・休止・再トレーニングを設けたマウス実験では、筋肉の代謝反応が調べられた。[14]

20人の男性サッカー選手を対象とした研究では、2週間の休止後の運動成績低下が報告された。[17]

初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。

体験レッスンを予約体験専用 03-6665-0898LINE

💬 ご質問がある場合はこちらからどうぞ

オンザショアのチャットで質問する(24時間受付)

レッスン内容・料金・体験のご予約など、気になることをお気軽にお尋ねください。

1

2

Warning: Attempt to read property "show_author" on false in /home/c1531448/public_html/ontheshore.jp/wp-content/themes/heal_tcd077/single.php on line 165

関連記事

ご体験予約