プランクの疲労は録音で推定できる?声の高さと音声分類モデルの距離を読む

歌いながらプランクをすると声が揺れる。その変化は腹筋の疲れや運動の効果を示すのか。大学生の音声分析と、声援の有無を比べた試験から、声の高さ、保持時間、きつさ、筋電図の違いを読む。歌えた長さを成果に置き換えず、自宅で記録するときにそろえたい条件と、長期の健康効果との距離も考える。

肘をマットについたまま、好きな曲の続きを口ずさむ。プランクの途中で歌い出すと、いつもの声が出ない。「腹筋が疲れたからだろうか」と考える前に、声の変化と腹筋そのものの測定を分けたい。

運動中の声には、運動の状態を区別する手掛かりがある。健康な大学生を対象に、プランクを含む運動と音声を調べた研究では、声の高さの指標や発話時間、間の長さが運動強度によって変化した。ただし、これは「歌いながら行うほど腹筋が鍛えられる」という比較ではない。[1]

周囲から励まされることも別の問題だ。プランク中に声援を受けた試験では、保持時間と本人が感じるきつさは増したが、測定した筋電図の振幅や周波数には条件間の有意差がなかった。声が関わる場面でも、何が変わったかで答えは異なる。[17]

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声が変わることと、腹筋が疲れることは同じ問いではない

声の研究で使われたのは、健康な18〜25歳の大学生92人のデータである。研究の型は横断研究で、運動の前、最中、後に音声を集め、音響的な特徴から運動の状態を分類するモデルを作った。対象の運動には、敏捷性などをみる課題、プランク、段階的な持久走が含まれる。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、対象年齢の幅も異なる。つまり、プランクだけを歌の有無で比較した研究ではない。[1]

この研究で変化した特徴の中に、基本周波数という指標がある。声の高さに関わる指標で、論文では発話時間や休止時間とともに分析された。ここで大切なのは、声の高さだけを取り出して疲労計にしたのではなく、複数の音声特徴を統計モデルに入力している点である。音を聞いて「高くなった」と思うことと、計算で運動の状態を見分けることには距離がある。[1]

腹筋の疲れが知りたい人にとって、声は身近で、筋肉の測定装置は遠い。その距離を音声で埋められれば便利だが、便利そうであることと測定対象が一致することは違う。この研究が扱ったのは運動強度の予測であり、声から腹筋だけの疲れを確定する検査ではない。持久走という全身の有酸素運動と、姿勢を保つプランクを含む分類である。呼吸や腹圧が両者でどう違い、その違いが声にどう表れるかを、この分類結果だけから説明することはできない。運動強度の分類ができることと、体幹の等尺性収縮に伴う局所の疲労を測れることは、分けて検証する必要がある。[1]

たとえば、自宅の記録欄に「声が途切れた」と書くなら、それは発声についての観察である。「腹筋が限界に達した」と書けば、筋肉についての判定になる。同じ瞬間を記録していても、後者には別の根拠が必要だ。研究の分類対象が運動の状態である以上、家庭の記録でも観察したことと言い切ったことを分けるほうが筋が通る。[1]

既存記事「プランク中に歌うと効果が増す?声を出す呼吸と腹筋の負荷を分けて読む」には、歌う行為で負荷が変わるかという問いを譲る。こちらは歌を追加する効果ではなく、声を測定の手掛かりにできるかを考える。近い題材の「プランクは汗で筋電図も大きくなる?皮膚の電極と腹筋の疲れを分けて研究で読む」には、電極を通した筋活動の読み方を譲る。ここで追うのは、耳に聞こえる声を腹筋の疲労の代理にしてよいかという問いだ。また、隣の記事の「プランクの筋活動は最大の何割で比べる?基準にする収縮と効果の読み方を知る」とも、測定の入口が異なる。

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録音した声を分類する研究は、耳で判定する遊びと違う

音声研究では専門の録音機器を使い、音響特徴を抽出するソフトウエアでデータを処理した。そのうえで、サポートベクターマシンと呼ばれる分類手法などを用いている。これは複数の特徴を使ってデータを分ける計算方法である。研究では運動状態を高い精度で区別できたと報告されているが、そこから家庭用の声の合格点を作ることはできない。[1]

この違いは、曲を口ずさむ場面に置くと分かりやすい。歌の中で声を高くする箇所を選んだのか、同じ言葉を同じ出し方で発したのか。比較したい音声自体が違えば、「声が変わった」の中身も変わる。研究が発話時間や間まで特徴に含めたことを踏まえると、ただ高い音が出たかどうかに情報を縮めるのは粗い読み方になる。[1]

自宅で観察するなら、録音を研究と同じ精度の検査と見立てる必要はない。何を話したか、運動のどの場面だったかを添えた日誌として扱うのがよい。昨日は歌の冒頭、今日はサビという比較では、運動の条件と発声の条件が入り交じる。声を使う研究が運動前、運動中、運動後を区別して集めた点は、記録の整理の参考になる。[1]

また、分類に成功したことは、将来の変化を保証したことでもない。横断研究が示した運動状態の区別と、練習を続けた後の筋力や体組成の変化は、時間の向きが違う。今日の音声を分析できたという結果を、来月の腹筋の成果まで予測した結果に広げない。音声を健康管理に役立てる可能性と、すでに確かめた測定結果を分けて読む必要がある。[1]

中央線で帰る間に見た動画が、帰宅後には自分専用の検査機に見えてくることがある。しかし、スマホが横にあるだけで、録音条件と解析モデルまで研究室になるわけではない。研究の面白さは残してよい。ただし、声の変化を見つけたときの記録は「変化があった」で止め、腹筋の成長率のような別の数字を付け足さないことだ。[1]

研究で使われた運動が複数あることにも意味がある。敏捷性などの課題とプランクと持久走を含む分類では、異なる運動状態を区別することが課題になる。そこで得られた結果を、プランクの途中だけに絞った腹筋疲労の細かな段階へ、そのまま移すことはできない。分類の対象を狭めることは、単に同じ研究を詳しく読むことではなく、別の問いを立てることになる。[1]

また、声を集めることと、声を使って運動を変えることは研究上の役割が異なる。録音した特徴を説明に使うなら、音声は測定の材料である。歌うよう指示して結果を比べるなら、発声は試す条件になる。この音声研究では前者の役割に注目したい。測定の材料として役立つ可能性が示されたからといって、それ自体を追加すれば運動の成果が増すとは推論できない。[1]

声援で長く続いても、筋電図の変化まで増えるとは限らない

自分の声を測る研究と並べて読みたいのが、身体活動を行っている成人30人の無作為化試験である。同じ参加者が、言葉による励ましのある条件と、ない条件で従来のフロントプランクを行った。条件の順序は無作為化され、保持時間、主観的なきつさ、筋電図の振幅と中央周波数が調べられた。身体活動を行っている成人の結果であり、18〜39歳の女性全体へそのまま当てはめるには対象の違いを考える必要がある。[17]

筋電図は筋肉の電気的な活動を記録する方法である。この試験では信号を1秒の窓で処理し、運動中の変化をモデルで分析した。振幅は信号の大きさ、中央周波数は周波数分布を分ける指標だ。研究で比較したこれらの指標には、励ましの有無による有意差がなかった。一方、筋肉同士では指標の変化に違いがあった。[17]

保持時間の中央値は、励ましのある条件で125.9秒、ない条件で97.0秒だった。差の効果量は0.49で、中程度と評価されている。この結果は、声援のある場面で長く姿勢を保てたことを示す。測定した筋電図の指標には条件間の有意差がなかった。ストップウォッチの記録と筋活動の信号では、結果が異なった。[17]

しかも、長く続いた条件で本人のきつさも増した。研究ではきつさの上昇に関するオッズ比が5.09、効果量が0.29と報告された。オッズ比は統計上の比であり、「きつさが5.09倍になった」という点数の倍率ではない。効果量は小さいと評価されている。長く続いたのだから楽だったはずだ、という読み方はこの試験の結果に合わない。[17]

たとえば、友人が隣で励ました日の記録だけが伸びたとする。それを、声援があった日のパフォーマンスとして残すことには意味がある。けれども、それだけで腹筋が急に強くなったと決めると、条件の違いを身体の変化に置き換えてしまう。声援という周囲の条件も、記録の一部なのである。[17]

なお、この試験で操作したのは周囲からの言葉による励ましだ。本人が歌う条件を加えた試験としては扱えない。声援で保持時間が延びた結果を見て、「歌えば同じだけ延びる」と期待するのは、介入を取り違えている。自分の声を出すことと、他者の声を受け取ることを、ひとまとめの「声の効果」にしないことが出発点になる。[17]

数字で読む声とプランクの研究

92人:音声から運動強度を予測した横断研究の参加者数。健康な大学生が対象である。[1]

18〜25歳:音声研究の対象年齢。幅広い年齢の共通の判定基準と同一視しない。[1]

30人:声援の有無を無作為化して比較したプランク試験の参加者数である。[17]

125.9秒と97.0秒:声援あり、なしの保持時間の中央値。個人への目標時間ではない。[17]

0.49と0.29:保持時間と主観的なきつさに関する効果量。変わった指標と変化の大きさを分けて読む。[17]

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