朝の運動のために目覚ましをかけても、スヌーズを押してしまう。二度寝は起床直後の注意力を必ず下げるのか。習慣的にスヌーズを使う人の実験と調査を比べ、眠気の実感、認知課題の成績、運動の準備を分けて読む。起きる時刻だけでなく、実際に布団を出てから動き始めるまでの予定を考える。
マットは昨夜のうちに敷いた。運動着も置いた。それでも朝になると、伸ばすのは脚より先にアラームの時刻である。スヌーズを押した瞬間、「もう朝の運動は失敗だ」と思う必要はあるのだろうか。
習慣的にスヌーズを使う人の実験では、二度寝を挟んだ起床直後の認知課題は、急に起きた場合より改善したか、変わらなかった。したがって「二度寝をすると頭の働きは必ず悪くなる」とは扱えない。ただし、その結果を走る準備やヨガの動作の完成に置き換えることもできない。[4]
「朝の運動は何時から」と考えるなら、最初に目覚ましが鳴った時刻と、実際に布団を出た時刻を分けて予定を立てたい。ここで扱うのは、二度寝という起き方をどう評価するかである。既存記事「朝の運動でむくみが取れたら尿も増える?起床後の排尿と体液の移動を研究で読む」の体液の話とは分けて考える。
疲労回復として二度寝を評価する問いは、既存記事「疲労回復にスヌーズは役立つ?二度寝の時間と起きた後の注意力を研究で読む」に譲る。こちらは、スヌーズ後に朝の運動を始める予定で、注意の研究をどこまで判断材料にできるかに焦点を置く。

スヌーズは「眠ったまま」と「起きた後」の間にある
スヌーズとは、起床を達成するために複数のアラームを使う行動として研究されている。目覚ましを止めて、そのまま予定なく眠り続ける場合も、途中で自然に目が覚めて眠り直す場合も、日常語では二度寝と呼ばれる。しかし、研究で比較された起き方を理解するには、この違いを残しておく必要がある。[5]
起きた直後に、頭の働きがまだ低下している状態を睡眠慣性と呼ぶ。音による対策の系統的レビューでは、覚醒に伴って生じる認知機能の低下として扱っている。アラームが聞こえたこと、音を止められたこと、考えたり判断したりする準備ができたことは、ひと続きに見えても同じ出来事ではない。[1]
朝の運動では、この区別が予定表に表れる。起床欄に書いた時刻が最初のアラームなら、実際にはそこから布団の中で時間を過ごしているかもしれない。運動開始までの余裕を考えるときには、「鳴った」「起き直した」「布団を出た」「動き始めた」を言葉で分けるほうが、自分の朝を説明しやすい。これは研究で決められた待ち時間ではなく、予定の整理の仕方である。
目を開けたら体内の準備も一斉に終わる、という捉え方も単純すぎる。睡眠と覚醒を扱うレビューは、明暗に同調する体内時計と、時間とともに蓄積する睡眠の必要性が関わることを説明している。仕事や学校の時刻に合わせた起床と、体の側の眠りやすさ・起きやすさにはずれが生じる。[2]
だから、朝が苦手という実感を、そのまま運動への意欲の点数にする必要はない。体内時計と社会の予定のずれという見方を持つと、アラームの押し方だけに原因を集めずに済む。[2] 中央線に間に合う時刻と、自分が気持ちよく目覚める時刻は、相談なしに同じ欄へ書き込まれがちだ。
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
習慣的に二度寝する人では、認知成績が悪くならなかった
スヌーズを直接調べた研究では、まず1,732人に起床習慣を尋ねている。若い人や夜型の人ほどスヌーズが広く使われ、使う人には朝の眠気や短い睡眠も多かった。これは生活の中で一緒に見られた特徴であり、スヌーズが睡眠を短くした、と因果の向きを決める調査ではない。[4]
続く実験の対象は、普段からスヌーズを使う31人だった。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるには、その人の起床習慣も考える必要がある。同じ人が異なる起床条件を経験する実験室研究で、睡眠ポリグラフという睡眠の状態を調べる検査も用いた。比較したのは、30分のスヌーズを挟む起き方と、急に起きる場合である。起床直後の認知課題の成績は、スヌーズによって改善したか、影響を受けなかった。[4]
ここで効いてくるのが「普段から使う人」という対象の条件だ。いつも最初のアラームで起きられる人まで、明日から二度寝を足すべきだという結果ではない。また、30分という実験条件は、すべての人に最適な二度寝の長さを決めた数字ではない。自分の朝に移すときには、対象と比較の組み合わせを一緒に持ち帰る必要がある。[4]
比較相手にも目を向けたい。この実験の結果は、スヌーズを挟む条件と急に起きる条件との差である。自然に目覚めてゆっくり支度をした朝や、運動開始を後ろへずらした朝との優劣を決めたものではない。[4] 自分が困っているのが二度寝そのものなのか、起きてすぐに運動を詰め込んだ予定なのかを分けると、研究結果を使う場所がはっきりする。
睡眠そのものにも変化があった。スヌーズ条件では睡眠が約6分失われる一方、深い徐波睡眠である睡眠段階N3からの起床が避けられた。短い間隔で起こすことには、ただ眠りを足すのとは異なる側面がある。ただし、これだけで認知成績の変化の仕組みがすべて説明できた、と決めるべきではない。[4]
さらに、起床時のコルチゾール反応、朝の眠気、気分、一晩全体の睡眠構造には明確な影響が見られなかった。コルチゾールはこの研究で測ったホルモンの指標である。頭を使う課題の成績と、本人がすっきりしたと感じるかは別の指標だ。朝の自己採点を眠気だけで済ませると、別の変化を取りこぼす。[4]
論文は、結果を支える証拠の強さも課題によって異なるとしている。「必ず悪い」という思い込みを修正する価値はあるが、「必ず良い」という新しい標語に交換する必要はない。朝の運動を続けたい人には、アラームを押した事実への罪悪感を減らしつつ、布団を出た後の状態を別に見る、という読み方が合う。[4]
調査で見えた関連を、二度寝の害に変換しない
別の研究は450人の調査に、身に着ける機器による睡眠と心拍のデータを組み合わせた。参加者の57%がスヌーズを使っていた。女性、若年、夜型、歩数が少ないこと、睡眠が乱れていることなどが、スヌーズを使いやすい特徴と関連していた。ここでの数字はその参加者集団の割合で、日本の働く女性全体の割合ではない。18〜39歳の女性にそのまま当てはめるより、男女を含む集団の起床習慣として読む。[5]
スヌーズを使う人には、安静時心拍が高いことや、起床前の睡眠が浅いことも見られた。一方、使わない人より睡眠が短いわけではなく、眠気が強いことや昼寝が多いことも示されなかった。この調査では、睡眠時間や眠気よりも、起床前の睡眠と心拍に違いが表れた。[5]
先ほどの1,732人の調査では、スヌーズを使う人に短い睡眠や朝の眠気が多かった。こちらの450人の研究では、その部分は同じ結果になっていない。対象や調べ方が異なる調査を並べると、スヌーズ使用者をひとつの人物像に固定しにくいことが分かる。両方を読んで残るのは、よくある起床行動であり、背景が一様ではないという理解である。[4][5]
歩数との関連も、朝の運動を考える読者には気になるだろう。しかし、歩数が少ない人ほどスヌーズを使いやすかったという結果から、「ボタンを押さなければ歩数が増える」とは言えない。観察研究の関連と、起き方を変える介入の効果は別である。運動予定の見直しには使えても、二度寝を罰する根拠にはならない。[5]
たとえば、夜の帰宅が遅い日と、予定に余裕がある休日を同じ欄で比べると、アラーム以外の条件も違う。自分で振り返るときには、就床時刻や翌朝の予定も隣に書きたい。これは日記から原因を証明する方法ではない。行動の背景が複数あるという調査の読み方を、生活の記録へ反映する提案である。[4][5]
調査と実験では、比較の単位も違う。利用者と非利用者を比べる調査には、もともとの生活や起きやすさの違いが含まれる。同じ人が条件を変える実験では、個人差をそろえて起き方を比べられる。[4][5] その実験で確かめられるのは、参加した人の条件における違いである。朝の運動のために起き方を変える判断では、調査の人数が多いという理由だけで、実験の結果を上書きしないようにしたい。
数字で読むスヌーズと起床直後
1,732人:起床習慣を尋ねた調査。スヌーズは若い人や夜型の人で多かった。[4]
31人:習慣的な使用者を対象に、同じ人の起き方を比べた実験の人数である。[4]
30分:実験で設けたスヌーズの時間。全員に勧める標準時間ではない。[4]
約6分:スヌーズ条件で失われた睡眠。認知課題の結果とは分けて読む数字だ。[4]
57%:450人を対象にした別の研究で、スヌーズを使っていた参加者の割合である。[5]
初日の汗は、予約した人だけが持ち帰れる。
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